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(論文紹介)不安障害に対する認知行動療法

日替わりのように暖かい日と寒い日が続き、気温差が極端になって、体調崩す人が増えているようです。三寒四温という時期はもう少しなのかもしれません。

本日は「不安障害に対する認知行動療法」という論文をご紹介します。著者は北海道医療大学の教授で、認知行動療法の専門家です。

不眠症やうつ病に至るきっかけとしては、不安障害からが多いのではないかと思います。認知行動療法による薬を使わない治療が、不眠症の克服に寄与できれば、危険な睡眠薬を減らせるのではないかと考えます。

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1140091077.pdf

特集 坂野:不安障害に対する認知行動療法

著者所属:北海道医療大学心理科学部

特集 不安障害の病態・診断・治療の最前線

不安障害に対する認知行動療法

坂野 雄二

不安の問題の改善を考えるときには,不安という心理学的現象がもつ特徴を考慮する必要がある.不安は一般的に認められる情緒であり,病的な不安が改善した後も一過性の強い不安の問題を抱える場合も少なくない。したがって,不安障害の改善は,単に病的な不安の改善のみならず、その後の不安のマネジメントをどのように行うかが肝要であり,不安のマネジメントスキルの獲得を治療の中で図ることが大切である.こうした点を考えると,不安障害の治療にあたっては、不安のセルフコントロールの指導まで含めた精神療法の活用が期待されるが,これまでの不安障害に対する精神療法の効果をみた研究を展望すると,強度の不安の改善のみならず予後の不安管理までをねらいとした認知行動療法の有効性を示す成果が多い.本論では,認知行動療法では不安をどのように理解するのか,その基本的仮説について理論的に考察した後、パニック障害, 強迫性障害, 社交不安障害,外傷後ストレス障害, 全般性不安障害, 特定の恐怖症に対する認知行動療法についてその動向と効果を展望するとともに,わが国において認知行動療法を一層普及促進するための課題が議論された。

<索引用語:不安 不安障害, 認知行動療法, 実証に基づく精神療法, エクスポージャー>

Ⅰ.不安障害の認知行動的理解

認知行動療法(cognitive behavior therapy: CBT)とは,心理学の理論である認知行動理論に基づいて,非適応的な振る舞いや考え方を合理的に修正し,セルフコントロールを体系的に学ぶとともに, 患者が自立した生活を送ることができるよう援助する心理学的治療法である21), 1950年代に始まる行動療法に代表される行動的アプローチと 1960年代に始まる認知療法, 論理療法を代表とする認知的アプローチが 1970年代に融合し,統合されて生まれた新しい精神療法であり, 現在に至って,世界の精神療法のグローバルスタンダードとなっている21), CBT はその基本的発想を古典的な精神力動モデルから bio-psycho‐social モデルへと転換している.行動理論の発展とともに, CBT は,条件づけ理論, 行動分析理論, 情動の処理理論, モデリングの理論, 記憶のネットワーク理論, 心理学的ストレス理論といった共通した基礎的な理論基盤をもつとともに, パニック障害の認知行動モデル, 社交不安障害の認知行動モデル, 慢性疼痛の認知モデルといった個別の疾患モデルを発展させてきた.また,治療の目的は,単に患者が当面の問題を解決して症状から解放されることをねらうだけではなく,症状のセルフコントロールを目指すことによって患者のQOLの改善と再発予防をねらうというところに力点がおかれる.さらに, CBT は,患者が自らの問題を適切に理解するところから始まり, case formulation(症状の形成、維持、消去に関連する諸要因の関連性を明確にして治療方針を立てるプロセス)を経た結果として治療計画を合理的に立て,介入を行って治療評価に至るまでの一連の作業であると理解することができる。基本的には実証に基づく精神療法の発想をとり,実証的に確立された治療法や基本となる治療モジュールを患者の症状に適合させて治療を行っていく(tailor-made)という発想をとる2). さて,認知行動療法では不安をどのように理解するのだろうか,そこには,以下のような基本的仮説がある。

①不安は個体の生存のために必要な基本情動であり,本来適応的である.しかし,実際に危険がないときに感じる不安は不適応的である2.23)

現実に危険が差し迫っているとき, 不安がなければ個人は生存することができない.一方で, 実際に危険がないときに強度の強すぎる不安は不必要に反応を抑制し,結果として生活を妨害する。強くなりすぎた不安が元に戻ることがなければ生活は妨害され続け, QOL は低下する.しかし, 強すぎる状態になる前に適度な状態に戻すことができるならば,あるいは,強すぎたときにはそれを弱くすることができると生活に支障をきたすことは少なくなる. CBT による治療では,不安をいかにコントロールし,不安といかに上手に付き合うことができるかの学習が促進されるよう働きかけが行われる。

②不安障害では「誤った警報」に対する過度の防御反応が学習されている。

図1は, パニック障害の認知行動モデルを示したものである。何らかの外的, 内的刺激に対して脅威を感じると不安が発生する.生起した不安によって心悸亢進といった様々な身体反応が生じると,患者は身体感覚の変化に気づく、身体感覚への気づきは,「最悪が訪れる。死ぬかもしれない」といった破局的解釈を引き起こし,それが知覚された脅威をさらに増強することになり,不安を増強する.こうした悪循環が起きているとき,患者はふとした一過性の鼓動の変化や, 呼吸の乱れ, めまいといった些細な変化を「最悪をもたらすパニック発作の前兆」であると解釈し,身体を防御すべくアラームシステムを発動することになる.

③不安症状には生理的, 認知的, 行動的コンポネントがあり,回避行動が生活を妨害している. 不安反応には生理的, 認知的, 行動的という3つの反応成分があり,それらがシンクロナイズしながら不安反応を形成している18). これら3つの反応成分の中, 行動的な変化のもっとも顕著なものが不安誘発刺激, ないし不安生起場面からの回避行動であり,回避行動はオペラント条件づけの回避学習のパラダイムにしたがって維持されている。回避行動は患者に不安減少をもたらす安全確保行動(safety behavior)であるが、不安減少は一過性のものであり,それがしばしば生活を妨害する悪習慣となっている。図2は強迫性障害の強迫行為の維持メカニズムを簡略に図示したものであるが,広場恐怖ほか,多くの不安障害における回避行動も同様の仕組みによって維持されていると考えられる。

④患者は, 刺激に反応するのではなく, 刺激の主観的解釈に反応している。

われわれが日常の出来事を認知するときには, 個人に一貫して見られる考え方の特徴が影響している. パニック障害患者の身体感覚への気づきは「最悪が訪れる」という破局的解釈を引き起こし, それが不安の増強をもたらすという悪循環を引き起こしているというという点を示した図1でも明らかなように, 患者は刺激に直接反応するのではなく,患者なりに主観的に解釈した結果に対して反応している。つまり,不安の生起には患者の解釈や考え方という何らかの認知システムが影響していることがわかる.患者が行う刺激の主観的解釈は,自動思考によって引き起こされ, 自動思考はスキーマによって活性化される 2,8,10), 不安の問題を抱える人には,「この世の中は危険だらけで自分はそうした出来事に対処できない」といった考え方の枠組み(スキーマ)が認められることが多い.また,不安障害患者は, ネガティブな知識をたくさん持ち,危険に関連すると患者が判断した刺激に対しては「選択的注意」が生じる。不安に関連する身体反応の気づきに対する閾値が変化し,わずかの変化に対して敏感になるとともに, 不安を引き起こしている,あるいは不安に関連していると患者が判断する刺激に対して過度の注目 (選択的注意)を向けるようになり,不安に関連する事象を頭の中で繰り返して考える現象(反すう)が認められる.脅威や危険に関連する刺激のみが情報処理されることになるが,そのときの情報処理の仕方には,二者択一的思考や過度の一般化, 選択的抽象化,「すべし思考」といった誤った情報処理過程が認められる.また,普段ならば強い恐怖を引き起こさない刺激や自分自身の変化が,「それは強い恐怖を引き起こすものだ」と 認知され記憶されたときには,病理的な恐怖が生じることになる(恐怖記憶のネットワーク), 図3は社交不安障害の認知行動モデルを示したものであるが, このモデルの中には,選択的注意 から認知的判断を経て不安が発生する状況が示されている.社交不安障害患者は人前で相手を見ていなかったり,ただ下を見るだけで相手を見ることなく話をしているかのように感じるが,実は相手のしぐさや表情の変化に非常に敏感で,相手をよく見ていることがわかる14,15)

⑤大脳辺縁系の活性化など、生理学的基盤を考える。

CBT の基礎理論は心理学の理論であるが, 神 経生理学的モデルとも齟齬をきたすものではない。図4は, エクスポージャー, リラクセーション,認知の修正, 選択的注意の修正, 呼吸訓練, 自己強化法などから構成される, 筆者が作成した10セッションからなる CBT プログラム(薬物療法は実施せず)をパニック障害患者に実施したときの,治療前後の糖代謝の変化を見たものである20) CBT による治療の後、海馬, 橋,小脳での代謝の低下, および内側前頭前野,前帯状回吻側での代謝亢進が認められ,回避行動は海馬レベルで学習されていた恐怖反応の解条件づけと, 扁桃核を抑制している前頭葉機能を強化することによる認知機能の修正の結果生じると考えられた.なお, 患者群では治療前に, 扁桃体領域に加え,海馬視床, 延髄などのいわゆる「恐怖ネットワーク」と呼ばれる部位に代謝亢進部位を認め, パニック神経回路の少なくとも扁桃体と入力側の過敏性の存在が示唆されていた。 このように, CBT は心理学的治療法であるが, 神経生理学的裏づけのある治療法であると言える。

Ⅱ. 不安障害に対する認知行動療法の現状

CBT は今や, 世界の精神療法の中心的存在となるに至っている.治療効果研究に裏づけられた実証に基づく精神療法の代表として挙げられ,多くの治療ガイドラインで上位に推奨される治療となっている.例えば, アメリカ心理学会第12部会が公表した「十分に確立された治療法」のリストでは, うつ病やパニック障害, 強迫性障害, 社交不安障害といった精神疾患, 頭痛や過敏性大腸 症候群, 慢性疼痛といったいわゆる心身症, 発達障害など 18 の問題に対して,認知行動療法が含まれている.また, 児童思春期を対象とした精神療法の効果に関しても,不安, 強迫性障害, 恐怖症, 抑うつ, 怒りと攻撃行動, 摂食障害, 痛み,ストレス, 対人関係, 不登校, ADHD, チック,遺尿・遺糞 自閉性障害など, 多様な対象に対して,認知行動療法は「十分に確立された治療法」、ないし「おそらく効果のある治療法」としてその適用が推奨されている19. さらに, biology やphariacology との連携の結果, 医学的治療法薬物療法との併用療法として活用されることも増えてきた。単に治療室にとどまるのではなくIT技術を活用して community に飛び出すとともに治療という観点のみならず, 予防という観点からさまざまな工夫がなされてくるようになっている22)

そうした動向の中, 多様な不安障害に対する有効な治療法としてCBT が推奨されるようになってきた。

パニック障害に対する治療法としては,生物学的基盤への働きかけを行うことによってパニック発作を緩和するとともに,二次的, あるいは併存する症状としての抑うつ反応の緩和をねらった薬物療法と,予期不安・広場恐怖の改善をねらった治療としてCBT を併用することが望ましいと指摘されている 1,17).また, 強迫性障害に対する治療法の選択ガイドラインでは, Y-BOCS の得点に基づく判断で,軽症例では,成人期, 青年期, 児童期において CBT が治療法の第一選択肢として指摘され,また, 中等度および重度で専門的な 援助を必要とするほど生活機能上の障害がある症 例では,成人期と青年期には認知行動療法とセロ トニン再取り込み阻害剤の併用が,児童期にはCBT が第一選択肢として推奨されている。

社交不安障害に対する治療法では,エクスポージャー, 応用リラクセーション, SST, 不安管理訓練, 認知療法という, 行動的要因と認知的要因の両者を含む治療パッケージが有効であると言われている11. さらに, PTSD に対する治療法では,治療効果研究の結果、長時間エクスポージャー, 認知療法, ストレス免疫訓練, EMDR(eye movement desensitization and reprocessing)が有効であると言われている1).また,全般性不安障害に対する治療法の中で無作為比較試験によって長期予後を含め効果的であると指摘されている治療法は, 認知療法, リラクセーション法, 不安管理訓練であると指摘されている.

なお,各不安障害に対する CBT を構成する治療要素をまとめたものが表1である。

ところで, 不安障害に対する精神療法として推奨される CBT であるが, その長所としては, ①身体的副作用がない, ②患者による症状の controllability が高く,治療に対する動機づけが得やすい, ③再発率が低い,④患者のQOLの向上が容易である,⑤マニュアル化が進み,ある程度標準化された治療が可能である, ⑥ Self-helpも可能であり, Self-help Book やコンピュータプログラムを用いるなど、患者が自ら行うこともできる, ⑦治療者にとっては,技法の習得が容易である,といった点を指摘することができる。

一方, 短所としては, ①現在のわが国の医療現場の実情を考えると,治療者が1人の患者に割く 時間には限りがあり,費用対効果という点から適用が見送られることがある, ② CBT で用いられる技法の中には患者に不安を喚起させる手順が含まれ(例:エクスポージャー), 導入が不適切であったときには患者に余計な不安が喚起され,それがドロップアウトを引き起こすことになりかねない, 3治療経過の中でホームワークを課すことが多く,患者が負担を感じることがある,といった点を指摘することができる.その他,わが国では依然として CBT を適切に実施することのできる治療者が少なく,患者からの accessibility が小さいという点もわが国の CBT が抱える短所と言えるかもしれない。

Ⅲ. わが国における認知行動療法の課題

さて,わが国において CBT を不安障害に対して適応し,その普及を考えたときには,以下のような課題があると考えられる。

  1. 治療マニュアルの開発と普及

上に述べたように, CBT にはいくつかの長所があるが, わが国ではまだその長所を十分に活かしきれていないところがある. CBT はマニュアル化が容易であるものの,さまざまなわが国の医療事情の中で利用可能なマニュアルの開発・普及は十分ではない。 平成22年には CBT の一部診療報酬が認められ, マニュアルが公開されたが, それは入院以外のうつ病などの気分障害患者を対象としたものに限られている16). 不安障害のCBT 治療マニュアルは海外ではすでに開発され活用されているが, そうした治療マニュアルの開発とその信頼性と妥当性の検証, そしてその一般的な提供は急務である.しかも,不安障害患者の少なくとも50%は,診断の際に2つ以上の診断名がつけられているとの指摘があることを考えると3), 並存症への対応を同時に考慮した治療マニュアルを開発しなければならない。

2.Self-help の機会提供

CBT は self-help が可能であり,海外では信頼性のある Self-help Book が公開されているが, わが国で利用可能なものはない. self-helpに供することのできる材料を作成・普及することも必要である。

3.児童思春期の不安障害への対応

児童青年期の不安障害への対応も大きな課題である. 約10 %の児童が不安の問題を抱えており,不登校の児童では,不安・抑うつに関連する精神疾患の有病率が30~50%と高い, また,児童期では異なる不安障害の併存率が 58%と高いと指摘されていることを考えると,不登校や引きこもりといった児童青年期の不適応問題の中に,不安障害が隠れている可能性は高い)、児童青年期の不安障害は,発達の過程で高まる一過性の不安の範囲を超えて強い苦痛や生活上の支障をもたらすものであり,発症年齢が若いことから,早期介入は非常に重要である。わが国でも児童期の不安障害に対する CBT の効果を立証した研究成果が増えてきているが13), 今後一層の発展が期待される。

4.治療者の教育・育成

CBT には,その技法の習得が容易であるとい  う長所がある.しかしながら,わが国では CBTを適切に行うことのできる治療者は少ない、治療者を積極的に育成し, トレーニングすることのできる機会を組織的に提供する体制を整える必要がある。 また, CBT を実施しようとすると,1回の治 療セッションに必要とされる時間が長く,わが国 の医療現場では十分な時間を1人の患者に割くことが難しいという実情もある.したがって,チーム医療の中でCBT に通じたコメディカルスタッフを積極的に登用することも考えなければならない。

5.わが国におけるエビデンスの蓄積と診療報酬化の促進

上に述べたように,平成22年には入院以外のうつ病などの気分障害に対して CBT の診療報酬が認められた。しかしながら,不安障害に対するCBTの有効性を考え,患者に対してより効果的な治療機会を提供することによって患者の様々な「負担を軽減するとともに, サービス提供者側の費用対効果という点を考えると,不安障害に対するCBT の診療報酬化を促進することは急務である。

また, そのためにも,不安障害に対する CBT の効果を裏付けるエビデンスを他施設共同研究などによって組織的に蓄積していかなければならない。

文献

1) American Psychiatric Association : Practice Guideline for the Treatment of Patients with Panic Disorder. APA, Washington, D.C., 1998

2) Beck, A. T., Emery, G., Greenberg, R. L.: Anxiety Disorders and Phobias. Basic Books, New York, 1985

3) Brown, T. A., Barlow, D. H.: Comorbidity among anxiety disorders: Implications for treatment and DSM-IV. J Colsul Clin Psychol, 60 ; 835-844, 1992

4) Brown, T. A., O’Leary, T. A., Barlow, D. H. : Generalized anxiety disorder. Clinical Handbook of Psychological Disorders (ed. by Barlow, D. H.). Guilford, New York, p. 137-188, 1993

5) Clark, D. A., Beck, A. T.: The Anxiety and Worry Workbook : The Cognitive Behavioral Solution. Guilford, New York, 2012

6) Crits-Christoph, P., Frank, E., Chambless, D. L., et al.: Training in empirically validated treatments : What are clinical psychology students learning? Professional Psychol Res Practice, 26 ; 514-522, 1995

7) Essau, C.A., Conradt, J., Petermann, F.: Frequency, comorbidity, and psychosocial impairment of anxiety disorders in adolescents, J Anxiety Dis, 14; 263279, 2000

8) Foa, E. B., Kozak, M. J.: Emotional processing of fear: Exposure of corrective information. Psychol Bull, 99 ; 20-35, 1986

9) Frances, A., Docherty, J. P., Kahn, D. A.: Treatment of obsessive-compulsive disorder. J Clin Psychiat, 58 ; Supplement 4, 1997

10) Freeman, A., Simon, K. M., : Cognitive Therapy of Anxiety. Comprehensive Handbook of Cognitive Therapy (ed. by Freeman, S., Simon, K. M., et al). Plenum, New York, p. 347-365, 1989

11) Heimberg, R. G., Juster, H. R. : Cognitive-behavioral treatments : literature review. Social Phobia :

Diagnosis, Assessment, and Treatment (ed. by Heimberg, R. G., Liebowitz, M. R., et al.). Guilford, New York, p. 261-309, 1995

12) 市井雅哉:外傷後ストレス障害、不安障害の臨床心理学(坂野雄二、丹野義彦ほか編)、東京大学出版会、東京p.75-101, 2006

13) Ishikawa, S., Motomura, N., Kawabata, Y., et al. : Cognitive behavioural therapy for Japanese children and adolescents with anxiety disorders: A pilot study. Behav Cogn Psychother, 40; 271-285, 2012

14) Kanai, Y., Sasagawa, S., Chen, J., et al.: Interpretation bias for ambiguous social behavior among individuals with high and low levels of social anxiety. Cog Ther Res, 34 ; 229-240, 2010

15) Kanai, Y., Sasagawa, S., Chen, J., et al. : The effects of video and nonnegative social feedback on distorted appraisals of bodily sensations and social anxiety. Psychol Rep, 109; 411-427, 2011

16)厚生労働科学研究費助成金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」うつ病 の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル(http:// www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/d1/01.pdf)

17) 熊野宏昭(編):パニック障害ハンドブック:治療ガイドラインと診療の実際、医療書院、東京 2008

18) Lang, P. J., Melamed, B. G., Hart, J. A.: A psychophysiological analysis of fear modification using an automated desensitization procedure. J Abnorm Psychol, 88; 611-619, 1970

19) Ollendick, T.H., King, N.J.: Empirically supported treatment for children and adolescents. Child and Adolescent Therapy : Cognitive-behavioral Procedures (ed. by Kendall, P.). Guilford, New York, p. 386425, 2000

20) Sakai, Y., Kumano, H., Nishikawa, M., et al. : Changes in cerebral glucose utilization in patients with panic disorder treated with cognitive-behavioral therapy. Neuroimage, 33 ; 218-226, 2006

21) 坂野雄二;認知行動療法の基礎、金剛出版, 2011

22)山内喜久雄、坂野雄二(編):認知行動療法の技法と臨床、日本評論社、東京, 2009

23) Wells, A. : Cognitive Therapy of Anxiety Disorders. Wiley, New York, 1997

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(論文紹介)ストレスと精神障害

今日は朝の気温が高くて、猫たちも元気いっぱいに走り回っていました。昨日が節分で今日は立春。もうすぐ花いっぱいの季節です。

本日は「ストレスと精神障害」という獨協大学の論文をご紹介します。

ストレスに影響を被らない精神障害はないと言ってもよく、遺伝的要因を含む脆弱性を有する個人に何らかのストレス負荷が加わり発症するうつ病, 外傷後ストレス障害(PTSD), 摂食障害を事例として紹介しています。

ストレスと精神障害

獨協医科大学 精神神経医学教室

秋山 一文 斉藤 淳

https://dmu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=501&item_no=1&page_id=28&block_id=52

抄 録

脳には視床下部―下垂体―副腎皮質系(hypothalanic-pituitary-adrenocortical axis, HPA系)とノルアドレナリン系というストレス反応を担う2つの系が存在する. 急性のストレス反応を終焉させるためにHPA系全体に負のフィードバックが作動する.しかしストレス反応は長期化すればいわば「両刃の刃」としての性質をもつようになる.その引き金になるのがストレスの反復による海馬神経細胞への障害で,これにはbrain derived neurotrophic factor (BDNF)の減少が関与しているかもしれない、またストレスの反復によって脳内ノルアドレナリンの放出は感作される.精神障害は何らかの意味でストレスの影響を被るが、特にストレス反応を担う HPAの制御の障害が示唆される精神障害としてうつ病, 外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder, PTSD), 摂食障害を取り上げた。 いずれも遺伝的要因を含む脆弱性を有する個人に何らかのストレス負荷が加わり発症するという図式に共通点がある.しかしデキサメサゾン抑制試験で評価した HPAの制御障害の方向性はうつ病では非抑制, PTSDでは過剰抑制と相反している. MRIによるうつ病の画像研究では海馬の萎縮を認めた報告が多い.これがいつから始まるかという問題はストレスによる海馬神経細胞への障害の時間的経過という点で興味深いが更に今後の検討が必要と考えられる.近年, 児童虐待が社会問題化しているが、被虐待児が後年になってうつ病, あるいはPTSD など深刻な精神障害を高率に発症することが見いだされている.このようにストレスと精神障害との関係は大きな広がりを見せつつある。

  1. ストレス反応を担う系として脳

個体は外的環境要因(ストレッサー)が加えられると,適応のために生体内環境を変化させる.これがストレス反応である1.2. ストレス研究の歴史をひもとくと, Selye Hは「一般適応症候群」として温度, 拘束など物理的なストレッサーによって生じる一定の身体的変化(副腎皮質肥大, 胸腺萎縮, 胃潰瘍)を記載し,同時にこれらの生体反応に視床下部―下垂体―副腎皮質系(hypothalamic-pituitary-adrenocortical axis, 以下と HPA系と略)が関わっていることを強調した. この先駆的な業績はストレス反応が緊急時における生体防御としての機能をもつ反面, 長期化すれば様々な疾患の原因になるという,いわば「両刃の刃」としての性質をもつことを示唆した点で、その後のストレス研究を方向づけた。

「今日では, ストレスの概念はストレッサーが物理的要因にとどまらず心理的要因まで拡大されて捉えられることが通常で, 同時にストレス反応を担う系として脳の関与が重要視されている.特に視床下部,大脳辺縁系(海馬, 扁桃体), 前頭葉など感情, 記憶, 摂食行動を制御する部位の機能がストレスによって損なわれるとうつ病, 外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder, PTSD), 摂食障害といった精神障害につながりやすい.一方, 自律神経系, 内分泌系, 免疫系は互いに連関していることが知られている。ストレス反応はこれらの連関に大きな影響を及ぼす。 特にうつ病では, HPA系の亢進によって, 免疫反応の低下, 内臓脂肪の増加,高血圧, インシュリン抵抗性など様々な身体疾患を併発しやすいことがよく知られている(図1).

視床下部の室傍核(paraventricular nucleus, PVN) には副腎皮質刺激ホルモン(corticotropin releasing hormone, CRH)を合成する小細胞群が存在する. CRHを含む神経線維は正中隆起部外層部に至り,軸索輸送されたCRHは神経終末から下垂体門脈に分泌され, 下垂体前葉のadrenocorticotropin(ACTH)産生細胞を刺激する、引き続いて下垂体からの ACTH, 副腎皮質からの glucocorticoid(ヒトではコルチゾール)の分泌が促される.急性ストレス反応によって分泌されたコルチゾールは海馬やPVNその他に存在するコルチゾールに対するレセプター(glucocorticoid receptor (GR)とmineralcorticoid recepor (MR))に作用する.そしてこれらのレセプターの刺激がPVNのCRHの合成に対し抑制的に作用するため、急性ストレス反応は終焉する(負のフィードバック).

2. ストレス曝露と海馬神経細胞

しかし高いレベルのコルチゾールは海馬の神経細胞を障害することが知られている。ストレス曝露と海馬神経細胞の障害との関係には神経成長因子が大きな役割を演じている. 神経成長因子のなかでも brain derived neurotrophic factor (BDNF)は脳内に広汎に分布し,神経細胞の分化, 成長, そして成体に達した個体に於いて神経細胞の生存維持に大きな役割を担っている。ストレスは海馬のCA1, CA3の神経細胞と歯状核の顆粒細胞のBDNFの量を急速にしかも長期にわたって減少させる。中枢神経系では神経細胞は新生されないとされてきたが、例外的に海馬の歯状回では顆粒細胞が新たに作られ、これらがCA3錐体細胞と機能的なシナプスを形成することが明らかにされている. 顆粒細胞の神経新生(neurogenesis)は記憶形成に何らかの役割をもっていると考えられる. ストレスにより HPA系が活性化されコルチゾール濃度が上昇すると歯状回の顆粒細胞の新生が抑制され,一方で海馬CA3の神経細胞は樹状突起の短縮により萎縮する(図2).

海馬CA3領域における変化は歯状回からの苔状線維終末からのグルタミン酸放出をコルチゾールが促進させ, コルチゾールとグルタミン酸が相乗的に働くために起こるとされる. このようにして海馬の神経細胞を要とした負のフィードバックは破綻し,それはさらにHPA系を亢進させるという悪循 環を招く、同時にストレス曝露による海馬の神経細胞の障害は HPA系への抑制減弱を招くだけでなく認知機能の障害をもたらすと考えられている。ストレスによる歯状回顆粒細胞の新生の抑制は抗うつ薬の投与によって阻止されることが実験的に示されている。

3. ストレス反復によるノルアドレナリンの放出亢進

HPA系と密接な関係を保ちながらストレス応答に重要な役割を担っているのがノルアドレナリンである. 脳のノルアドレナリン神経系の細胞体は主として青斑核に存在し,ほとんどあらゆる脳部位に投射しており, 覚醒度 注意 学習, 記憶など多彩な機能と関係していると考えられている, 拘束ストレスや電撃ストレスといった物理的なストレスだけでなく動物実験でも心理的なストレスの負荷で脳内ノルアドレナリンの放出が亢進することが示されている. 心理的なストレスを動物実験で調べるには,透明なプラスチックの壁で仕切られた区画に一匹ずつ動物を置き、自らは電撃を受けない動物に周囲の動物が電撃を受けるのを目撃させる.この目撃によって当該動物は不快な視聴嗅覚刺激に曝露される.この方法を用いた心理的ストレスではノルアドレナリンの放出が視床下部, 扁桃核, 青斑体といった限られた脳部位で亢進し,しかも同ストレスの反復によって放出亢進は増強する. このことは物理的刺激によるストレスでは脳の広汎な部位にノルアドレナリン放出亢進がみられるが,同じ刺激の反復でこの効果に慣れが生じてくるのと対照的である. 一般にコントロールする手段がない ストレス, 予測がつかないストレス,発散できないストレス, 年をとってからのストレスにより脳のノルアドレナリン放出が広範な部位で生じたり,持続しやすい性質をもつ. 慢性的なストレス曝露歴をもつ個体では,その後のストレス曝露によりノルアドレナリン放出が増加する. このようなノルアドレナリン系反応の感作は PTSDでみられるストレス感作の原因の一部として考えられている, 青斑核に存在するノルアドレナリンニューロンは視床下部PVNのCRH ニューロンとストレス反応に於いて相互に増強しあう密接な関係を有する.

4. 強い情動を刻印する扁桃体

大脳皮質,大脳辺縁系, 視床下部は密接に連結し,情動行動の表出に深く関与している。体性感覚を通じて収集された外界の情報は扁桃体に送られ, 知覚に反映される外部環境要因が個体にとって有益かまたはその存在を脅かすものかという評価が行われる.扁桃体で行われた評価の情報が視床下部に送られ自律神経反応や内分泌反応などの生理的反応として表出される. 日常よく経験されるように, 強い情動を伴う出来事, 例えば非常に嫌だったことや逆に非常に楽しかったことは強く記憶に刻まれる.このような強い情動を喚起する出来事の記憶に扁桃体の神経活動の増加が重要な役割を演じていると考えられている. 扁桃体中心核はPVN に次いで CRH ニューロンを豊富に含有する. ラットの扁桃体中心核に CRHを注入すると不安行動を惹起するといわれる.また, 扁桃体中心核における CRH の発現は glucocorticoid により増加する. 扁桃体中心核と視床下部PVNのCRH系は互いを刺激しあう悪循環を形成して, 慢性的なHPA系の 活性化と不安行動を引き起こしていく可能性が示唆されている。

5. うつ病との関係 HPA制御異常, 脳画像, 小児虐待を焦点に

うつ病を含めた気分障害の分類についての考え方には長い歴史的経緯がある。当初は外的要因が絡んだexogenous depression と内的要因から生じる endogenous depression とを区別していたが, アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアルの改訂3版からは症候学的な区別は曖昧という理由でその区別は撤廃された. 分類はともかくとして,離婚, 家族の死亡などの様々な負のライフイベントがうつ病の発症に重要な役割を演じていることは疑いがない、負のライフイベントがうつ病の発症前の1年間に高率に見られることが報告されている. ただしライフイベントとうつ病発症との関係に遺伝的な要因も関与しているといわれる.この分野では一卵性双生児のペアを含む多数の住民を母集団にした Kendler の研究が有名である. ライフイベントがうつ病を引き起こす1ヶ月あたりの確率はうつ病に罹患していなかった双生児ペアでは6.2%, 双方ともうつ病に罹患したことにある双生児ペアでは14.6%と後者で有意に高いと報告されている.一方で負のライフイベントとうつ病の発症の相関を示すオッズ比は一般の女性集団で5.64であるが、二卵性双生児ペアでは4.52, 一卵性双生児ペアの女性集団では3.58と順次低下していた. つまり遺伝的要因が強まるほどストレスに依存したうつ病発症の割合は減少する。そのため「うつ病発症にストレスが関与する」という言い方は実際には「遺伝 的に規定された脆弱性を持つ個体にストレスが付加されてうつ病が発症する」あるいは「遺伝的に規定された脆弱性を持つ個体は危険性のある環境を自ら選択しやすく,その結果, うつ病が発症する」と置き換えた方がよいという主張もある.

一方, ストレスの媒体である HPA系の制御障害とうつ病との関係については研究が重ねられてきた。 うつ病ではCRHの分泌過多のため脳脊髄液中のCRH 濃度が上昇する。不適切なフィードバックのためにコルチゾールの値が上昇し, 外因性 glucocorticoidのデキサメサゾン投与に対して血中コルチゾール値は抑制されにくい。うつ状態が回復するとこれらの HPA系の制御障害は正常化するため state marker とみなされることがある. うつ病に関するこういった病態と治療による変化を図3 に示す。しかしデキサメサゾンによる非抑制はうつ病で 半数しか認められないという感受性の低さとアルツハイマー病でもコルチゾール値の非抑制がみられるなど特異性も低いことが問題とされる。

「先述したストレスによる海馬神経細胞の障害を示唆するような脳画像に関する研究が報告されている. それによると,少なくとも一部のうつ病患者で海馬の萎縮が認められるのは確実である.罹病期間, うつ病の重症度との関係などが検討され詳細は一致しない点があるものの, 初回エピソードで未服薬の患者と再発性エピソードの既往者を比較して後者のみに海馬体積の減少が認められたことから,海馬の萎縮は発症後の極めて早期に起こるものと考えられている. うつ病エピソードの反復で海馬が萎縮する機序として高コルチゾール血症への反復による神経細胞の脱落, グルタミン酸による神経障害、ストレスによるBDNFの産生低下, ストレスによる神経新生の低下などが示唆されている. しかしながら, HPA系の制御障害と画像所見を組み合わせて検討した報告は極めてすくなく,今後の検討が必要である。

近年, 児童虐待の通告例が増加している.我が国では平成17年度には35000件を越える勢いを示している。

虐待には子供への積極的な身体的攻撃や性的虐待であるabuse と子供のニーズを満たさない無関心, 養育の怠慢。拒否などの neglectがあり,両者を総称してmaltreatment という。虐待者の6割は実母といわれる. 子供の両親を加害者へと変える最大の要因は家族機能不全 が引き起こす「孤立」であるといわれる.一方, 子育てにあたる母親からみると,子育てが楽しみや生き甲斐になっていないという意識が指摘され,上述した児童虐待の背景にも子育てに関連した母親のストレスとの深い関係が考えられる.虐待体験は子供の認知・記憶過程や情動・行動特性に多くの影響を与える.近年の研究によると,児童期に受けた虐待によって子供が成長してからうつ病, 神経性大食症, パニック障害, PTSD, 境界性パーソナリティー障害の発症が増すことが明らかにされている. 男性に比べて女性のうつ病の有病率は2倍高いことはよく知られている.これには女性ホルモンの関与も示唆されているが,児童期に受けた虐待の性差という視点での研究が行われている.一般に少女は少年に比べて小児期に性的虐待を受ける頻度が12倍も高い. 小児期での虐待(性的虐待、両親の不和・離婚も含む) を経験した女性はこれを経験しなかった女性に比べて成人に達した後のうつ病の発症率が有意に高いことが報告されている. 小児期に受けた虐待が後年にうつ病発症への脆弱性を高める機序にも中枢 HPA系の活動亢進の関与が示唆されている2). この分野は動物実験によって仮説の検証がある程度可能なため多くの研究が行われている.さらにボランティアーを募った臨床研究で, 小児期での虐待の有無, 調査時点でのうつ状態の有無によって分けた4群に心理社会的ストレスを負荷すると,調査時点のうつ状態の有無に関わらず小児期に虐待を受けた群はそれを受けたことのない群に比べてストレス負荷間の血漿中の ACTHの値が有意に高かったこと, 小児期に虐待を受けて調査時点でうつ状態を有する群は血漿中のコルチゾールの値が他の群に比べて有意に高値であったと報告されている.いずれにしても児童期に受けた「心の傷」が後年に深刻な影響を与えることは想像に難くないと思われる。

6. 外傷後ストレス障害との関係

先述したように個体の生存が脅かされる外的要因がストレッサーであり,このような状況に曝されると,怒り・恐れ・不安などの負の情動が引き起こされる.短期であっても個体の生存を脅かす度合いが強ければ、負の情動が長期にわたって続く. PTSDはそのような場合で, 診断規準では戦争, 大規模災害, 虐待など、 個人の生死に関わるような強い恐怖体験の後に再体験症状, 回避症状全般的反応の鈍麻、 持続性覚醒亢進などが1ヶ月以上持続し,それにより主観的苦痛や生活機能,社会機能に明らかな支障をきたすことを指すものをいう 2), 外傷後ストレスに暴露されたもののうち急性ストレス反応を生じるのは30-50%あり,さらにPTSDに発展するものはそのうちの50%であるとされている. 外傷後ストレスに暴露された者の全てがPTSDを発症するわけではないことから, PTSDの発症と持続に関係するいくつかの潜在的危険因子も検討されている。具体的には過去の虐待行動上の問題や心理的問題の既往, 合併精神障害, 遺伝的要因, 精神障害の家族歴などである. 再体験症状はフラッシュバックあるいは侵入的想起とも呼ばれPTSD の特徴的な症状である。この機序として、活動性が亢進したノルアドレナリン系ニューロンを介して、恐怖感を伴う出来事の記憶が扁桃体に過剰に固定され,このような記憶が侵入的想起として体験されることによってさらに記憶が強化されるという positive feedback 仮説が想定されている. うつ病と類似してPTSDでは脳脊髄液中の CRHの高値とMRIによる画像研究で海馬体積の減少が認められている. しかし,うつ病とは逆にPTSDでは HPA機能低下を示唆する所見が目立つ. 例えば 24時間尿中遊離コルチゾール量と血中のコルチゾール濃度は低下しており, デキサメサゾン抑制試験でのコルチゾール過剰抑制が認められる2). これらを明解に説明することは容易ではないが, PTSDでは視床下部由来のCRFが上昇し, CRF に対する ACTH反応の鈍化と海馬glucocorticoid 受容体に過感受性をもたらし,それがHPA系に過剰な負のフィードバックをもたらしていると考えられている。

7. 摂食障害との関係

神経性無食欲症は若年女性に発症する摂食障害である.心理的ストレスによる摂食量の減少による極端な体重減少, やせ願望, 肥満恐怖, ボディーイメージの障害が主な症状である. 神経性無食欲症では血中 ACTHコルチゾール値は上昇し, 日内変動を欠き, 低用量のデキサメサゾンでは抑制が認められない. 脳脊髄液中のCRHも高値で持続的なHPA系の活動亢進状態が認められる, 脳内のCRH はストレス時での摂食行動を抑制していると考えられる. 体重が回復すると脳脊髄液中の CRH値は正常化する. 以上より本症ではHPA系が賦活化され,しかもそれは飢餓による影響では説明できず、視床下部に主な障害があることが示唆される。 神経性無食欲症の患者はストレスに対するコーピングスキル(ストレスを適切に処理する能力)が未熟であった り, 摂食障害を発病しやすい脆弱性や性格傾向があると いわれる。発病の契機になるストレスとしては、両親の不和, 母と祖母の嫁姑葛藤, 同胞の家庭内暴力など家庭内の問題があげられているが, ストレスが摂食中枢に影響を及ぼしやすい遺伝的素因も示唆されている。摂食障害の患者の家族内に摂食障害やうつ病の発症もあることから,素因となる候補遺伝子多型の検索が行われているが、未だはっきりした遺伝子多型は見いだされていない。

8. おわりに

おおよそストレスによる影響を被らない精神障害はないといってもよい。ここでは取り扱わなかったが,統合失調症の発症と再発に及ぼすストレスの影響も大きなテーマであり,コーピングスキルや家族の感情表出に関して多くの研究がある.大学病院の精神科外来ではうつ病の患者が多く,また同一患者の再燃・再発もよく見受けられる.そのなかには軽微なストレスでも再燃・再発の徴候を示す者が少なくない、それらを見逃さないことは重要である。

文献

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(記事紹介)眠気の仕組み一部解明

不眠症って難しい。なぜ不眠症となってしまうのかがはっきりしませんね。理由もなく突然不眠症になる人が多くいて、後付けで理由を探ったりしていますが、よくわからない場合が多い。案外環境だったりするかもしれませんね。熱環境も気になっています。

筑波大の柳沢教授のニュースが出ていたので紹介します。眠気の仕組み解明が、不眠症の解決につながったり、さらにそこから引き起こされる疾患の治療につながる研究であると思います。

眠気の仕組み一部解明=脳内たんぱく群を特定―筑波大

徹夜すると蓄積し、眠れば解消される脳内のたんぱく質群を、筑波大の柳沢正史教授らの研究チームがマウスを使った実験で突き止め、13日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。眠気が脳内でどう生じるかなど、睡眠の仕組みや機能には未解明な部分が多く、研究成果は謎を解く手掛かりになると期待される。

研究チームは、通常のマウスより眠気が強くなる遺伝子変異を持つマウスと、睡眠を中断させて眠気をもたらしたマウスを使い、脳内のたんぱく質の変化を観察。いずれのマウスでも脳内の80種のたんぱく質がリン酸化(活性化)されていることが分かり、これらのたんぱく質群を「SNIPPs(睡眠要求指標リン酸化たんぱく質)」と名付けた。リン酸化の程度は、覚醒時間が長いほど進行していた。

SNIPPsのうち、69種が脳内の神経細胞をつなぐシナプスの制御に関与していることが分かっており、研究チームは今後、個々のSNIPPsの働きを詳しく調べるとしている。

筑波大学ホームページより

https://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201706140200.html

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構のZhiqiang Wang研究員、Qinghua Liu教授、船戸弘正客員教授、柳沢正史機構長/教授らの研究グループは、2つの「眠気モデル」マウスの脳内のリン酸化蛋白質を網羅的に比較解析することで、眠気の実体や眠りの機能に重要な役割をもつと見られる80種類の蛋白質を同定しました。

「眠気」とは何か、眠りの役割は何かなど、睡眠は未だ多くの謎に包まれています。「眠気モデル」の一つは、断眠させて眠気が強まったマウスです。もう一つの「眠気モデル」は、Sik3遺伝子に変異を持つSleepy変異マウス注3で、このマウスは覚醒中に速やかに眠気が強まります。この2種類のマウスの脳内で共通した生化学的変化を網羅的に解析したところ、80種類の蛋白質でリン酸化が進行していることがわかりました。断眠時間が長くなるほど、眠気の程度に応じてリン酸化が進行していることから、この蛋白質群を睡眠要求指標リン酸化蛋白質SNIPPs(Sleep-Need-Index-Phosphoproteins)と命名しました。このような、眠気の分子的実体に関する網羅的研究は世界初の試みです。

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(論文紹介)睡眠と腸内細菌叢

場所によっては梅も咲いていますね。紅梅の横には白梅も。

本日ご紹介する論文は、睡眠と腸内細菌叢

最近話題の「腸内フローラ」の状態が睡眠に与える影響についての論文をご紹介します。

眠りが脳の排泄機能ではないかという考えから、腸内フローラを改善する事が、不眠症や睡眠負債と言われる睡眠障害にどのような効果をもたらすのかを調べている一環で見つけた論文です。

論文では、睡眠が腸管に影響を与えることが知られていたが、腸の状態が、逆に睡眠に影響することが分かってきた。腸管の状態を改善する事が不眠症などの睡眠障害のみならず、生活習慣病の治療の可能性について述べています。

腸内フローラにも概日リズムがあり、食事の内容による変化は見られないが、摂食時間リズムによる変化が見られるようです。腸内フローラの変動リズムが乱れることが睡眠時間の乱れにもなるようなので、不眠症や生活習慣病の予防には、規則正しい食事時間が影響するようです。食べすぎや多すぎる間食も元々よくないことはわかってますよね。

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(論文紹介)良質な睡眠のための環境づくり

月と金星と木星。日の出前の大接近。写真でわかるかな?
昨日は久しぶりの雨。それでも空気の乾燥は一時的に緩和するだけのようです。インフルエンザが猛威を振るっているということですので、気を付けましょう。

本日ご紹介する論文は、良質な睡眠のための環境づくり – 就寝前のリラクゼーションと光の活用

面白いのが、寝る前のストレッチとして緊張弛緩の為の他動運動をしてくれるマットレスを作り、プログラムにより体を動かしてくれるという物。
これは良いですね。適度な力加減のマッサージを受けると、気持よくて眠ってしまいますから、寝る前にそういう物で筋弛緩をすると、よく眠れそうです。
不眠症の方とかに効きそうです。

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(論文紹介)なぜ眠るのか細胞内カルシウム

日進神社。市指定の無形民俗文化財である「日進餅つき踊り」が1月1日の未明に行われます。普段は参拝者もほとんどない神社ですが、初もうでと餅つき踊り見物で、参道がいっぱいに埋まります。

今回ご紹介するのは、睡眠時間が決まるメカニズムについて東京大学・理化学研究所による研究の論文です。睡眠障害および睡眠障害を合併するさまざまな精神疾患・神経変性疾患(統合失調症、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病など)の機序の解明、新規の標的遺伝子の提案に繋がることが期待されるということです。

http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20160318.pdf

なぜ私たちは眠るか
-眠りの素は細胞内カルシウム?-

1.発表者: 上田 泰己
(東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野、教授
/理化学研究所 生命システム研究センター、細胞デザインコア長 兼任)

2.発表のポイント
◆ 新規の睡眠の理論モデルに基づいてカルシウムイオン関連経路が睡眠時間に重要であることを予測し、本予測を遺伝子改変マウスと薬理実験により世界で初めて実証した。
◆ 新規の睡眠の理論モデルに基づいて、CaMKII をはじめとするカルシウムイオン関連経路に含まれる 7 遺伝子について遺伝子を改変したマウスの睡眠時間が増減することを予測し、実験で示した。
◆ 睡眠障害および睡眠障害を合併するさまざまな精神疾患・神経変性疾患(統合失調症、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病など)の機序の解明、新規の標的遺伝子の提案に繋がることが期待される。

3.発表概要:
ヒトをはじめとする哺乳類の睡眠時間・覚醒時間は一定に保たれていることが知られていますが、その本質的メカニズムはよくわかっていませんでした。東京大学(五神真総長)と理化学研究所(理研、松本紘理事長)は、神経細胞のコンピュータシミュレーションと動物実験を組み合わせることで、睡眠・覚醒の制御にカルシウムイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにしました。さらに、カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII、注1)をはじめとするカルシウムイオン依存的な経路の遺伝子をノックアウトすることで、睡眠時間が恒常的に増減する複数種類の遺伝子改変マウス(睡眠障害モデルマウス)の作製に成功しました。同睡眠障害モデルマウスは、睡眠障害だけでなく睡眠障害を合併するさまざまな精神疾患や神経変性疾患(統合失調症、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病など)に対する診断法や治療法の開発に繋がることが期待されます。本研究は、東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野の上田泰己 教授 (理研 生命システム研究センター(柳田敏雄センター長)細胞デザインコア長 兼任)、東京大学医学部の多月文哉 学部学生6年生、理研 生命システム研究センターの砂川玄志郎 元研究員(研究当時、現 理研 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト研究員)、東京大学大学院医学系研究科の史蕭逸 博士課程3年生、洲崎悦生 助教(理研 客員研究員 兼務)、理研 生命システム研究センターの幸長弘子 基礎科学特別研究員、ディミトリ・ ペリン研究員(研究当時、現 理研 客員研究員)らの共同研究グループの成果です。本研究成果は、『Neuron』 3月17日オンライン版に掲載されました。

4.発表内容:
(背景)
不眠や過眠などの睡眠障害は現代社会における重大な疾患の一つであり、精神疾患や神経変性疾患の重要な合併症でもあります。睡眠障害に対する診断法、治療法の開発には、睡眠覚醒のメカニズムを理解することが必要不可欠です。

睡眠はヒトを含む多種の生物で観察される基本的な生理現象であり、睡眠を制御する因子は主にハエを用いたフォワードジェネティクス(注2)による探索で、体内時計に関係した遺伝子を中心に複数特定されてきました。しかしながら、体内時計とは別の睡眠時間を直接制御している遺伝子(睡眠時間制御因子、(注3)は未解明のままでした。表現型から遺伝子に遡るフォワードジェネティクスに基づいた睡眠時間制御因子の探索は、遺伝子と睡眠表現型の結びつけに多くの時間とコストを要します。更に、従来の睡眠測定は、脳波を取得するための電極を手術によって頭蓋骨に装着する必要があり、侵襲が大きく、多くの時間とコストが同様にかかります。近年、本研究グループは、遺伝子と表現型を直接結びつけることができるリバースジェネティクス(注4)に注目し、この手法を迅速に行うために、高速に遺伝子改変動物を作製することができる技術(トリプル CRISPR 法、注5)を開発し、さらに、高速に睡眠表現型を解析することができる手法(SSS、注6)を開発しました。
今回、本研究グループは神経細胞のコンピュータシミュレーションにより睡眠時間制御因子を絞り込み、トリプル CRISPR 法と SSS を組み合わせることで、カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテアーゼ II(CaMKII)をはじめとするカルシウムイオン関連経路が睡眠時間制御因子の役割を担うことを明らかにしました。

(研究手法と成果)
(1)コンピュータシミュレーションを用いた睡眠時間制御因子の絞り込み(図1)
睡眠時には余波とよばれる特徴的な脳波が観察されます。本研究グループは、徐波形成に必要な遺伝子を特定するために、平均場近似(注7)を施した神経細胞のコンピュータモデルを作製して解析しました。その結果、カルシウムイオンの流入に伴う神経細胞の過分極が徐波形成にきわめて重要であることが示され、その経路に含まれる、電位依存性カルシウムチャネル(注8)、NMDA 型グルタミン酸受容体(注9)、カルシウム依存性カリウムチャネル(注10)、カルシウムポンプ(注11)が徐波形成に必要な遺伝子群として予測されました。

(2)ノックアウトマウスを用いた睡眠時間制御因子の同定(図2)
(1)の予測を実証するために、本研究グループは、カルシウムイオン依存的な過分極経路に含まれる遺伝子をマウスのゲノム情報をもとにすべて同定し、トリプル CRISPR法によりそれぞれのノックアウトマウスを作製し、SSS 法を用いて睡眠の測定を行いました。その結果、Cacna1g, Cacna1h (電位依存性カルシウムチャネル)、Kcnn2, Kcnn3 (カルシウム依存性カリウムチャネル)、Camk2a, Camk2b (カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ II)ノックアウトマウスが顕著な睡眠時間の減少を示す一方で、Atp2b3 (カルシウムポンプ)ノックアウトマウスは顕著な睡眠時間の増加を示し、これらの遺伝子が睡眠時間制御因子であることが明らかとなりました。

(3)全脳イメージングを用いた神経細胞の興奮性解析(図3)
本研究グループは(1)で予測されたカルシウムイオンの流入に必要な NMDA 型グルタミン酸受容体を、薬理学的に阻害することで詳細な解析を行いました。その結果、マウスの睡眠時間が減少することを明らかにしました。さらに CUBIC(注12)を用いて、睡眠が減少したマウスの脳を透明化し、一細胞解像度で観察しました。その結果、NMDA 受容体の阻害(すなわちカルシウムイオンの流入阻害)によって、大脳皮質の神経細胞の興奮性が上昇することを示しました。

(1)~(3)の結果から、カルシウムイオンの流入に伴う神経細胞の過分極が睡眠を誘導することを世界で初めて明らかにしました。
本研究グループは、単一の遺伝子(Kcnn2, Kcnn3, Cacna1h, Cacna1g, Atp2b3, Camk2a, Camk2b)をノックアウトすることで、安定した表現型を示す睡眠障害モデルマウスを作製することに成功しました。さらに睡眠障害と精神疾患、神経変性疾患との密接な関係から、今後、これらの睡眠障害マウスをより深く研究していくことにより、精神疾患や神経変性疾患の原因解明、治療薬探索への貢献が期待されます。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構革新的先端研究開発支援事業 (AMED-CREST)の研究開発領域「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解 に基づく最適医療実現のための技術創出」(研究開発総括:永井 良三)における研究課題「睡 眠・覚醒リズムをモデルとした生体の一日の動的恒常性の解明」(研究代表者:上田 泰己) の一環で行われました。なお、本研究開発領域は、平成27年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構から日本医療研究開発機構へと移管されています。

5.発表雑誌:
雑誌名:「NEURON」(2016年3月17日オンライン版)
論文タイトル:Involvement of Ca2+-dependent hyperpolarization in sleep duration in mammals.
著者:Fumiya Tatsuki, Genshiro A. Sunagawa, Shoi Shi, Etsuo A. Susaki, Hiroko Yukinaga, Dimitri Perrin, Kenta Sumiyama, Maki Ukai-Tadenuma, Hiroshi Fujishima, Rei-ichiro Ohno, Daisuke Tone, Koji L. Ode, Katsuhiko Matsumoto and Hiroki R. Ueda* DOI 番号:10.1016/j.neuron.2016.02.032

6.用語解説:
(注1)カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ II (CaMK2)
カルシウムイオンの流入に伴い活性化するリン酸化酵素、脳の多く存在し、記憶や学習に 重要な役割を果たすことが知られている。
(注2)フォワードジェネティクス
特定の生命現象を示す動物のゲノムの変化を詳細に調べることによって関係している遺 伝子を同定していく従来の遺伝学。
(注3)睡眠時間制御因子
遺伝子改変やノックアウトによって睡眠時間を変化させる遺伝子。
(注4)リバースジェネティクス
特定の遺伝子を改変し、生命現象がどのように変化するか観察することで遺伝子機能を解 析する手法。遺伝子から生命現象を関連付けるため、フォワードジェネティクスとは解析 法が逆向きであり、リバース(=逆方向の)ジェネティクスと呼ばれるようになった。
(注5)トリプル CRISPR 法
CRISPR 法(CRISPR/Cas 系を用いたゲノム編集技術の1つ)を改良し、3 種類のガイド RNA を用いて、1世代目で極めて高い確率(ほぼ 100%)で大量の遺伝子ノックアウトマ ウスを作製できる手法。
2016 年 1 月 8 日理化学研究所プレスリリース

『次世代型逆遺伝学による睡眠遺伝子 Nr3a の発見
-交配不要で解析も簡便かつ低コストな新しい逆遺伝学を確立-』 http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160108_1/
(注6)SSS 法
Snappy Sleep Stager 法。呼吸パターンを指標として用いることで非侵襲かつ高効率に睡 眠表現型解析を行う手法。
2016 年 1 月 8 日理化学研究所プレスリリース
『次世代型逆遺伝学による睡眠遺伝子 Nr3a の発見
-交配不要で解析も簡便かつ低コストな新しい逆遺伝学を確立-』 http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160108_1/
(注7)平均場近似
多数の要素が相互作用しているような集団を解析するために用いられる数学的な近似手法。 (注8)電位依存性カルシウムチャネル
細胞外から細胞内へカルシウムイオンを通過させるイオンチャネル。てんかんや自閉症ス ペクトラム障害との関連が知られている。
(注9)NMDA 型グルタミン酸受容体
グルタミン酸受容体の1つ。シナプスの可塑性や記憶に関連する受容体として知られる。 多くの精神依存性のある薬物(覚せい剤など)の作用部位としても知られ、NMDA 受容体の状態を乱すことで鎮静状態や興奮状態を誘導できる。
(注10)カルシウム依存性カリウムチャネル
カルシウム存在下でカリウムイオンを選択的に通過させるイオンチャネル。
(注11)カルシウムポンプ
細胞内から細胞外へカルシウムイオンを通過させるイオンチャネル。
(注12)CUBIC
Clear, Unobstructed Brain Imaging Cocktails and Computational analysis の略。
2014 年 4 月に理研の上田泰己グループディレクター、洲崎悦生 元基礎科学特別研究員(研究当時)らが発表した脳透明化と全脳イメージングのための透明化試薬(化合物の混合溶液)とコンピュータ画像解析を合わせた方法。サンプルを試薬に浸すだけの効率的で再現性の良い方法で、複数のサンプルを同等な条件で透明化することが可能。1細胞解像度の全脳蛍光イメージングと、情報科学的解析によるサンプル間のシグナル比較を実現。
2014 年 4 月 18 日理化学研究所プレスリリース 『成体の脳を透明化し 1 細胞解像度で観察する新技術を開発』 http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140418_1/

7.添付資料:

脳波が徐波を示す睡眠時は、電位依存性カルシウムチャネル、NMDA 型グルタミン酸受容体を通じてカルシウムイオンが細胞内に流入し、カルシウム依存性カリウムチャネルが開きカリウムが細胞外へ流出する。一方、覚醒時はカルシウムポンプを通じてカルシウムイオンが細胞外へ流出する。

トリプル CRISPR 法によってカルシウムイオン関連経路に含まれる 21 個の遺伝子を、それぞれノックアウトしたマウスを作製した。そのマウスに SSS を用いて睡眠解析を行ったところ、そのうちの Cacna1g, Cacna1h (電位依存性カルシウムチャネル)、Kcnn2, Kcnn3 (カルシウム依存性カリウムチャネル)、Camk2a, Camk2b (カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ II)をノックアウトしたマウスの睡眠時間が、野生型のマウスと比べて顕著に短いことが、Atp2b3 (カルシウムポンプ)をノックアウトしたマウスの睡眠時間が、野生型のマウスと比べて顕著に長いことがわかった。グラフ中の破線は野生型マウスの睡眠時間を示す。

NMDA 型グルタミン酸受容体の阻害剤を Arc-dVenus マウスへ投与したところ、神経活動の上昇(緑シグナル)が観察された。
※Arc-dVenus マウス: 神経細胞の活性化の指標である Arc 遺伝子の発現に伴い、緑色蛍光タンパ クVenus を発現する遺伝子改変マウス。

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(論文紹介)騒音による睡眠妨害に関する一考察

ビルの谷間の通り抜け道。いつもはタクシーが多いのですが、まだ時間が少し早かったようで、それほど混んではなかったですね。

睡眠障害を起こす騒音は、幹線道路などの騒音よりも、近隣生活音などのほうが多いということです。また騒音やストレスなどが原因で起こる不眠は、環境の改善やストレス元の排除などが先決であって睡眠薬・睡眠導入剤に頼ることは、依存症などを引き起こす元となりやすいようです。
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騒音による睡眠妨害に関する一考察

http://www.kobayasi-riken.or.jp/gaiyou/ASJ_A_352.pdf

1 はじめに
睡眠は人間の生理的な要求の一つであり,これを妨害されることは深刻なダメージに繋がる。騒音による睡眠妨害に関しては,種々の騒音影響の中で最も低い騒音レベルで生じるほか,常時出ている音よりも突発的な音,機械音などの無意味音よりも話し声などの有意味音,若者よりも年配者,感受性の低い人よりも高い人の方がそれぞれ妨害を受けやすく,一方で聴取妨害や作業妨害などに比べれば慣れの要素が高い,などと言われている。
最近,我が国で行われた交通騒音を対象とした社会調査では,うるささや悩ましさなどの被害に比べ,睡眠妨害を受けている人は比較的少ないという結果が報告されている[1, 2]。
筆者らは,これらの結果を踏まえ,現代人の騒音による睡眠妨害の現状を把握するためにE メールによるアンケート調査を実施した。
ここでは,そこで得られた結果や最近の社会調査の結果をもとに騒音による睡眠被害の実態について考察した結果を報告する。

2 交通騒音による睡眠妨害
2.1 最近の社会調査の調査事例
環境省の依頼を受けて平成12~16 年度に日本騒音制御工学会が幹線道路の沿道と在来鉄道の沿線の居住者を対象に実施した社会調査の結果では,当該騒音に悩まされしかも睡眠の妨害になると回答した住民の割合は,道路交通騒音に関しては22.0 %(232/1,056 名),在来鉄道騒音では7.7 %(51/662 名)と報告されている[1]。同調査において,騒音によって明確な被害を受けていると答えた回答者の割合が道路交通騒音で40 %,在来鉄道騒音で約50 %であることを考えれば,睡眠妨害を受けている人の割合は比較的低いといえる。
図 1 は,環境省の研究助成費を受けてインターネットとGIS を利用して行われた社会調査の結果の一例で,上と同じく当該騒音に悩まされしかも睡眠の妨害になると回答した住民の割合である[2]。回答者は,道路及び在来鉄道については両側100 m 以内,新幹線鉄道は150 m 以内,航空機はWECPNL > 60 の地域の居住者である。道路と在来鉄道に関する睡眠妨害の訴え率は文献[1]とほぼ同等である。原則として夜間運航のない航空機や深夜運行のない新幹線鉄道に関しては,レベル依存性が認められるものの睡眠妨害の訴え率は在来鉄道と同じく10 % 未満とみなせる。


日本騒音制御工学会では,文献[2]の調査で道路交通騒音が睡眠の妨害になると答えた200 名あまりの回答者に再アンケートを行い,
妨害になる音の詳細を尋ねた[3]。その結果を図2 に示す。横軸の夜間の等価騒音レベルは,主要道路(センサス道路)からの騒音レベルである。騒音レベルの高い道路の近くでは主要道路からの音の指摘が高く,道路から離れるに従って生活道路若しくはその他の音の指摘が高くなる傾向が明確に示されている。

2.2 睡眠妨害に関するアンケート調査
本調査は,睡眠妨害の経験者の割合,原因となった発生源,妨害が起こるようになったきっかけ,更には妨害を避けるために採った手段などを把握する目的で,平成20 年6 月~7 月に行った。アンケートはE メールにより質問票の送信と回答結果の受信を行った。主質問とその回答結果を以下に示す。回答総数は587 名(男性:60%,女性:40%)であった。

Q1.自宅や下宿先で音によって睡眠妨害を受けた経験の有無

1.ある52 %2.ない48 %

以下は,睡眠妨害を受けたことがあると回答した305 名についての集計結果である。

Q.2.妨害を受けた時期

現在4年以内10 年以内10 年以前
16 %44 %24 %15 %

Q3.睡眠妨害の原因となった音

図 3 に妨害をもたらした音源の内訳を示す。
隣近所(集合住宅の隣戸を含む)からの音の指摘が高い。2 番目に高い指摘のあった「その他」の内訳は,暴走族,救急車のサイレン,犬や鳥の鳴き声,などである。


Q.4.睡眠妨害のきっかけ
図 4 に睡眠妨害が起こるようになったきっかけの内訳を示す。問題となる騒音が引越し先にあったこと及び自宅周辺で新たに発生したことの2つが原因の大半を占めている。

Q.6.睡眠妨害解消のための発生源別の対応策
(複数回答可)
睡眠妨害を解消するために回答者が取った対応策の一覧を発生源別に図5 に示す。約4割の回答者が「我慢しているうちに慣れた」と回答しているが,隣近所・自宅内・その他の中の暴走族などの発生源に関しては「今も我慢をしている」という回答者が多い。

3 まとめ
交通騒音を対象に行われた社会調査の結果によれば,アノイアンス等に比べれば睡眠妨害を受けている住民は比較的少ないこと,道路に関しては家の周りの生活道路からの音の影響が高いことなどが明らかになった。一方,無作為抽出に近い形で行われたアンケート調査でも同様の結果が得られ,さらに隣近所や自宅内の音といったいわゆる近隣生活騒音の指摘が極めて高いことも分かった。交通騒音に比べてこの種の騒音が慣れにくいということを裏付ける結果と考えることもできる。
最後にアンケートにご協力いただいた多くの方々にこの場を借りて感謝の意を表する。

参考文献
[1] 日本騒音制御工学会,環境省請負業務結果報告書‐騒音による影響の評価に関する総合的研究,平成13~17 年3 月.
[2] 加来,横田,難波,緒方,山田,日本騒音制御工学会研究発表会講演論文集(9,2008)投稿中.
[3] 日本騒音制御工学会,環境省請負業務結果報告書‐騒音による住民反応(不快感)に関する社会調査,平成20 年3 月.

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(論文紹介)温熱環境と自律神経

日進の小学校近くにあった庚申塔。三猿が台座にいます。調べてみるとなかなか面白い。三猿は日光東照宮がオリジナルくらいに思っていました。

温熱環境の睡眠が自律神経に及ぼす影響ということで富山大学の論文をご紹介させていただきます。

富山は、年間を通して日本で最も湿度の高い地域の一つで、肌のきれいな美人が多いことでも有名ですね。その湿度の高さや夏場の気温の高さが、睡眠時に人体に与える影響についての研究です。

(論文紹介)温熱環境と自律神経

室温27度の設定で睡眠すると、人はどのような反応を示すのかという実験結果です。寝ているのに副交感神経活動が低下し、自律神経の乱れが生じることで、体に様々な影響が生じる可能性があるということです。「熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)の日数が多い年ほど熱中症死亡数が多くなることが報告されている.これらのことから,熱帯夜のような不快な環境下で就寝すると,深睡眠となっても交感神経が相対的に優位となるため心血管系に対する負担が増大し,このような生体反応が就寝中の死亡に関与している可能性があると考えられる。」

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(論文紹介)脳構造および認知能力の睡眠持続および年齢に関連した変化

睡眠不足で、脳が委縮して空間が増える。筋肉のように使っているか使っていないかで増えたり減ったりするのとはメカニズムが違う気がします。眠ることによる維持できる仕組みがあるようです。

本日は高齢者の認知能力と睡眠の関係を調査した論文をご紹介させていただきます。睡眠時間の長さと、脳の萎縮変化をMRIで調査した結果、睡眠時間が短い対象者の脳萎縮が顕著にみられたという内容です。
要約をご紹介いたします。原文は以下のURLから参照願います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4098802/

「脳構造および認知能力の睡眠持続および年齢に関連した変化」

測定と結果
参加者は2年ごとに磁気共鳴イメージングと神経心理学的評価を受けた。睡眠持続時間および質ならびに血液サンプルの主観評価を得た。ベースライン時の睡眠時間の減少の1時間ごとに、脳室の年間拡大率を0.59%(P = 0.007)、世界的認知能力の年率低下率を0.67%(P = 0.050)年齢、性別、教育、および体格指数の影響。対照的に、ベースラインにおける全身睡眠の質は、脳または認知的老化を調節しなかった。全身性炎症のマーカーである高感受性C反応性タンパク質は、ベースライン睡眠期間、脳構造、または認知能力と相関がなかった。

結論
健康な高齢者では、短い睡眠期間は年齢関連の脳萎縮および認知低下と関連している。これらの関連は、短い睡眠者間の上昇した炎症反応に関連していない。

結果
脳構造の経時変化に対するベースライン時の睡眠の影響

我々のコホートにおける全脳容積、灰白質体積、白質体積、海馬容積、総心室容積、下前頭回流容積、および上前頭回容積の縦方向変化は、報告されたものに匹敵するか、健康な高齢者の他のサンプル。

参加者は、心室拡張の割合が変化し、一部は顕著な変化を示さず、その他は最大APCが8.35%であった。心室APCの変動の約10.2%がベースライン時の睡眠持続時間によって説明された(P = 0.039)。eTIVの影響をコントロールした後、ベースライン時の睡眠持続時間の1時間ごとの減少は、脳室の年間拡張を0.55%増加させた(標準化されていない係数:B = -0.552、P = 0.013)。年齢、性別、教育、およびBMIの影響をさらに管理した後、ベースライン睡眠期間の影響は統計的に有意であった。ベースライン時の睡眠期間の1時間ごとの減少は、毎年の心室膨張率の0.59%の増加を予測した(B= -0.587、P = 0.007)。さらに、両心室の総心室容積が3SDを超える2人の参加者を除外した後でさえ、心室拡張の速度に対するベースライン睡眠持続時間の有意な寄与を見出した(B = -0.616、P = 0.005)。この睡眠期間の影響は、他の脳尺度では観察されなかった(P> 0.148)。

結論
比較的健康な高齢者であっても2 年の短い間隔であっても、自己報告されたベースライン時の短い睡眠は、より速い心室拡張を予測する。ベースラインでの短い睡眠期間の効果は、認知能力の低下を加速させる上でより多様で控えめであり、予備的とみなされるべきである。あまり健康でない高齢者の脳および認知老化を予測する上で、睡眠の持続時間がより重要な役割を果たすかどうかはまだ調査されている。

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(論文紹介)日中と夜間の明かりに関する生理の研究

今日明日は、南関東でも積雪があるかもしれないとのこと。空は明るく晴れてますけどね。西の空にどんよりとした雲が見えます。

どうしても夜間の仕事で日中睡眠をとる必要がある方たちがいます。その方たちができるだけ健康な睡眠をとり、ストレスを軽減できるよう、安眠家具Sleep Laboを使っていただきたいと思います。
不眠症の克服には、日中の活動、特にどれだけ日光を浴びるかが重要だということです。むしろ浴びないと眠れなくなるということのようですね。
奈良県立大学による光暴露の研究論文をご紹介します。
原文はURLからご覧ください。概要のみご紹介させていただきます。

光曝露およびメラトニン分泌量に関する時間疫学研究
大林賢史
奈良県立医科大学医学部 地域健康医学講座
http://chronobiology.jp/journal/JSC2015-1-013.pdf

概要
現代人は日中に屋内で生活することが多いため日中光曝露量が少なく、夜間は人工照明を使うため夜間光曝露量が多い傾向があります(図1)[2]。

現代人のこのような光の浴び方が、生体リズムの変化やメラトニン分泌の減少を引き起こし、現代社会で増加している肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、不眠症、うつ病など多くの疾病の原因になっているのではないか?これが私どもの研究仮説です。

メラトニン分泌量と関連を認めた因子は、年齢・喫煙状況・ベンゾジアゼピン内服・日長時間・身体活動量および日中光曝露量でした。夜間光曝露量はメラトニン分泌と関連を認めませんでした。これらの潜在的交絡因子を同時投入した多変量線形回帰分析モデルにおいて、日中光曝露量( 日中平均光曝露量および1000 lux以上の光曝露時間)はメラトニン分泌量と有意に関連していました(ともに回帰係数0.101, P<0.05)。それぞれの項目に平均値を代入した回帰式より、1000 lux以上の光曝露時間とメラトニン分泌の関連を図4に示します[6]。

528人を夜間平均光曝露量 = 3luxをカットオフ値として、夜間光曝露量が多い群(145人)と少ない群(383人)の2群に分け、年齢・性別・喫煙状況・飲酒習慣・世帯収入・教育年数を同時投入した多変量ロジスティック回帰分析モデルにおいて、夜間光曝露量が<3luxの群に比較して、≧3luxの群における肥満症および脂質異常症のオッズ比は、それぞれ1.89、1.72と有意に高いことが分かりました(ともにP<0.05, 図5)[7]。

これらの結果は、先に述べた三島先生やFonkenらの先行実験研究で示されていた日中・夜間光曝露による生体影響が日常生活でも同様で起こる可能性を一般高齢者集団で実証した点で重要なものであると思われます。さらに夜間の光曝露量はアクチグラフで測定した睡眠の質、質問票を用いて測定した睡眠の質やうつ症状、頚動脈超音波検査による動脈硬化指標などと関連することを報告しました[8-10]。また、メラトニン分泌量は血圧変動、夜間頻尿、白血球・血小板数、Cardio-ankle vascularindexによる動脈硬化指標などと関連することを報告しました[11-14]。

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