私の紹介しているいびきや睡眠時無呼吸の原因は、胃食道逆流症による気道の狭窄であるという物を裏付ける論文の紹介です。と言ってアカデミックな論文では、なかなかストレートに、胃食道逆流症が無呼吸の原因であるとは書いてくれません。この論文でもそうですが、無呼吸による陰圧が胃食道逆流症を引き起こしているという内容です。そして、CPAPを使って無呼吸を治療すると、胃食道逆流症も改善するという内容です。
ところが、意図してか、たまたまか、この論文では睡眠時無呼吸患者で胃食道逆流症を併発している患者に、プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)を投与すると、胃食道逆流症が改善するとともに、睡眠時無呼吸も改善したと報告しています。CPAPを使ってではなく、胃食道逆流症を治したら、無呼吸が治ったという事です。
まさに、無呼吸の原因が胃食道逆流症であると報告しているのと同じことです。ちなみに、無呼吸の患者かどうかは、AHI(睡眠時に何回/時、呼吸が止まったか)で計測結果を使っていますが、胃食道逆流症の有無は、問診票を使っています。なぜ胃カメラでびらんがあるかどうかなど明確な検査をしないのかが不思議です。大体ほかの論文でも胃食道逆流症は問診票による自覚症状の有無によるところが多いのです。何か医療界の不都合なことがあるのかもしれませんね。
原本URLよりダウンロード https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/14/3/14_491/_article/-char/ja/
睡眠時無呼吸症候群の胃食道逆流症合併とCPAPによる治療効果の検討
厚生連長岡中央綜合病院呼吸器科1) 新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座(第二内科)2)
新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部3)
佐藤 英夫 1) 岩島 明1) 河辺 昌哲1) 中山秀章2)
吉澤 弘久2) 下条 文武2) 鈴木 栄一3)
【要旨】 睡眠時無呼吸症候群(以下 SAS)の胃食道逆流症(以下 GERD)合併頻度を、QUEST 問診票を用いて検討した. QUEST は4点以上を GERD 合併ありと判断した. PSG (Polysomnography)検査を実施した 84 例中の 73 例に AHI(Apnea Hypopnea Index) ≧5 (/hr) の SAS を認めた. QUEST4 点以上が 25 例(34.2%)あり,GERD 合併の有無で2群に 分けたとき AHI,脳波上の短時間覚醒指数(以下 Arousal Index), BMI などに有意差はなかった. AHI ≧ 20 かつ QUEST ≧4点の 17 例中、11 例が CPAP 治療を開始した。CPAP治療を開始した4週間後の QUEST 得点は7例で無症状 (0点)となった。残る4例はプロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服を追加して症状の消失が得られた。SAS による胸腔腹腔内圧較差開大を CPAP 治療が改善して、胃酸逆流を抑制する機序が関与すると考える。 SAS には高頻度に GERD が合併することから積極的な問診と治療追加が望まれる。
Key words :睡眠時無呼吸症候群——胃食道逆流症― QUEST 問診票—– CPAP療法――プロトンポンプ阻害薬
緒 言
睡眠時無呼吸症候群 (SAS : Sleep Apnea Syndrome) は終夜睡眠ポリグラフ(PSG : Polysomnography) で確定診断が行われる。疫学調査によると 30~60歳の成人が睡眠呼吸障害(AHI : Apnea Hypopnea Index ≧ 5)をきたす頻度は男性 24%, 女性 9%とされ1)、有病率は高い。 高血圧症や虚血性心疾患、脳血管障害の危険因子となることから積極的な検索と治療が進んでいる。また閉塞型睡眠時無呼吸症候群は、胃食道逆流症(GERD: Gastroesophageal reflux disease)の合併が高頻度であるされている2). 両疾患ともに睡眠障害をきたす疾患として重要である。今回PSG 検査実施時に、GERD スクリーニングに用いられる代表的な問診票である QUEST 3, 4) を使用して、SAS の GERD 合併頻度を調査した。SAS の重症度とGERD 合併の関連および、経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP : nasal continuous positive airway pressure)が QUEST 得点に及ぼす影響を検討したので報告する。
対象と方法
2003年4月から 10月末までの7ヵ月間に、いびきや日中傾眠,夜間無呼吸を指摘されて外来を受診した 84 例の高血圧症、高脂血症、高尿酸血症および、境界型糖尿病を含む糖代謝異常の合併有無を検索した。PSG 入院時に主治医が直接 QUEST 問診票を聞き取り回収した。 QUEST 得点は4点以上を GERD 合併ありと判断した 5)。
PSG は Sandman (Puritan Bennett 社)で行い、AHI や無呼吸指数を算出した。脳波や眼筋電図、頤筋電図で覚醒指数(Arousal Index)や睡眠段階を検査し, Sandman soft の自動診断機能と目視解析を併用した。アメリカ睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine: AASM)の基準に従い AHI ≧5をSAS と診断した 6)。同じく重症度も AHI で軽症(5≦AHI < 15)、中等症(15 ≦ AHI < 30)、重症(30≦AHI)で分類した。
結果
84 例の PSG を実施し、73例がAHI ≧5の SAS (全例閉塞型)と診断された。軽症 21 例、中等症 17例、重症 35 例で、その合併症は高血圧症(収縮期血圧 140 mmHG 以上または拡張期血圧 90 mmHg 以上) 46.5%、高脂血症(血清コレステロール濃度 220 mg/dl 以上) 47.9%、高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl以上) 19.2%、糖代謝異常(空腹時血糖 110 mg/dL 以上) 17.8%であった(図1)。 わが国の一般な有病率は,高血圧症が全体で男性 45.1%,女性34.9%(1997 年国民栄養調査より)、高脂血症は 30~79歳男性で 20~26%、50 歳以上の女性で 37 ~44% (動脈硬化学会 1990 年調査より)、高尿酸血症は男性 24.1%、女性 1.1%(1993年藤森 新ら:高尿酸血症・痛風の疫学と背景因子, プリン・ピリミジン代謝 19: 123~133, 1955), 糖代謝異常は 19.6%(平成 14 年厚生労働省糖尿病実態調査による)であった。
SASの重症度と Body Mass Index(BMI)は軽症と重症の間(25.7 kg/m2 vs 28.2 kg/m2 p = 0.035)に有意差を認めた(図 2)。軽症と中等症の BMI は同程度であり、中等症(25.9 kg/m2) に比べ重症は肥満の傾向(p = 0.060)があった。
AHI ≧5 の 73 例のうち QUEST 問診票で、4点以上を GERD 合併ありとしたときの有症状率は 34.2% (25例)あり,その合併頻度は軽症 33.3%, 中等症23.5%、重症40.0%であった。(図3)。
SAS を GERD 合併の有無で2群に分け AHI, Arousal Index, BMI を比較した。AHI(GERD + /-; 34.84/29.36), Arousal Index(GERD + /- ; 31.84/25.92) また BMI(GERD +/- ;27.26/27.08) で、両群間に有意差は認めなかった(図 4)。
AHI ≧ 20 かつ QUEST≧4の GERD 合併 SASは17 例であった。この内6例は、Tonsillectomy またはUPPP(Uvulopalatopharyngoplasty :口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)など耳鼻咽喉科的治療の予定となり、11例が nCPAP治療を開始した. nCPAP は全例 Auto CPAP の GoodKnight 420E (Puritan Bennett 社)を使用し、4週間後の AHI 改善を確認した。4週間後の外来にて,QUEST 問診票を再検したところ、7例は自覚する逆流症状の消失が確認された。市販品を含む胃粘膜防御薬やヒスタミン H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用は全例になかった。一方、4例は QUEST 得点が低下せずに逆流症状が残存するため、PPIである Omeprazol 20 mg/日の内服を開始した。内服4週間後には4例とも症状は消失した(図5)。さらに6ヵ月経過後も逆流症状の再発は認めていない。
考察
閉塞型睡眠時無呼吸症候群に GERD が合併するという報告・論文は本邦でもみられ、菅井ら7)は SAS群で 42.6%,平田ら8) は 50.6%と報告している。また海外においても 57.8 ~62%と高頻度の合併が指摘されている9,10)。 1996 ~1998年に内視鏡検査で診断されたわが国の GERD の頻度は 16.3%(977 例/6010例)と報告されている 11)。今回の検討でのGERD合併率は 34.2%と高率であり、AHI ≧ 30 の重症例においては 40.0%であった。
OSAS(Obstructive Sleep Apnea Syndrome)の病態である胸腔内圧低下と腹腔内圧上昇や、下部食道括約筋の圧勾配を変化させる覚醒、体動の増加による胃酸逆流が、発症機序として考えられている 12)。 今回の検討では GERD 合併の有無による2群を比較したとき、「無呼吸が GERD を惹起し、その逆流現象は覚醒反応の増加に関与している。また肥満も GERD の増悪因子であるため、BMI の値も関連している」と考えた。これにより2群比較で AHI と Arousal Index および BMI は GERD 合併群で高いと予測していたが、統計学的な有意差は得られなかった。平均値では AHI で GERD 合併群 34.84/Hr に対して非合併群は 29.36/Hr と、重症(30 ≦ AHI)と中等症(15 ≦AHI <30)のレベルに分かれた。Arousal Index も GERD 合併群では 31.84/Hr, 非合併群は 25.92/Hr で, AHI・Arousal ともに GERD 合併群のほうが高い傾向はみられた。BMI はともに 27 kg/m2 であり、差はなかった。
Ing らは AHI > 15 の OSAS と、年齢,呼吸機能, BMIやアルコール摂取量をマッチさせたコンロールを比較し、睡眠8時間あたりの逆流回数,食道内 pH < 4.0 時間の割合は OSAS 群で有意に多く,逆流の 53.4%は、無呼吸低呼吸と時間的な相関があり、無呼吸の 46.8%および Arousal(覚醒反応)の 43.8%が、酸逆流と時間的な相関があり、nCPAP は逆流を減少させたと報告している13)。 自験例でも、自覚する逆流症状が nCPAP の使用により消失する症例が得られ、これは nCPAP が食道内圧を上昇させて、逆流症状を防止する可能性を示唆する。
GERD は睡眠時の酸逆流による口内酸味感や胸焼け,胸痛が出現し夜間覚醒などの睡眠障害の原因となる。また合併する Barret 上皮からの発癌のリスクも指摘される。本邦でも有病率が増加傾向にあり、積極的な治療が進められている。 Bate らは主症状として胸焼けがあり、内視鏡的に所見のない症候性 GERDに対して Omeprazolまたはプラセボを4週間投与し、逆流症状の消失が得られることから Omeprazol が有用であると報告している14)。このほかにヒスタミン H2受容体拮抗薬や消化管運動改善薬も使用される。
Senior らは 20~ 64 歳の、SAS と 24 時間食道pHモニターで診断した GERD を合併する患者10 例に Omeprazol を投与し,さらに GERD に対する患者教育と食事療法を実施している。治療の前後(30日間) で PSG を測定すると Apnea Index の平均値が 31%減少し、 GERD 治療は SAS と GERD 両疾患を合併する患者における効果的な補助治療である可能性を指摘している 15)。 またXiao らは、いびきや日中の眠気,胸焼けのある患者 18例に 24時間食道pH モニターと食道内圧検査, PSG を実施し、GERD と食道内圧・AHI ・体動・嚥下・Arousal には有意な相関がありCisapride と Omepurazol の併用が SAS を改善したと報告している 16) 。
これらの報告から SAS と GERD は共存して相互に影響を与えている可能性があり、積極的な疾患合併の検索が患者の症状軽快に寄与すると考える。
おわりに
SAS に合併する GERD について検討した。合併率は 34.2%と高率であり、 SAS 重症例では 40.0%となった。 GERD 合併の有無で AHI, Arousal Index や BMIに有意差はなく, nCPAP 治療により合併している GERD による自覚症状の改善が得られた。これはSAS による胸腔腹腔内圧較差の開大を nCPAP が改善して、胃酸逆流を抑制すると考えた。両疾患の合併は多く、互いに影響することから nCPAP を含めた積極的な治療追加を検討すべきである。
なお、この報告の要旨は第14回日本呼吸管理学会学術集会 (2004年8月;大宮市)で発表した。連日 PSG を装着し、夜間 モニターに尽力される生理検査室技師と本館4階病棟看護師の皆さんに深謝します。
Effect of continuous positive airway pressure on gastroe-sophageal reflux in sleep apnea syndrome
Hideo Sato1), Akira Iwashima1), Syotetsu Kawabe1), Hideaki Nakayama2), Hirohisa Yoshizawa2), Fumitake Gejyo2), Eiichi Suzuki3)
1) Division of Respiratory Medicine,Nagaoka Chuo General Hospital
2) Division of Respiratory Medicine,Niigata University Graduate, School of Medical and Dental Sciences
3) Division of General Medicine, Niigata University Medical and Dental Hospitl
文献
1) Young, T., Palta, M., Dempsey, J., et al.:The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults, Engl J Med, 328 : 1330 ~ 1335, 1993.
2) Samuelson, C.F. : Gastroesophageal reflux and obstructive – sleep apnea, Sleep, 12 : 475 ~ 476, 1989.
3) Carlsson, R., Dent, J., Bolling – sternevald, E., et al. : The use fulness of a structured questionnaire in the assessment of symptomatic gastroesophageal reflux disease, Scand J Gastroenterol, 1998 ; 33 : 1023 ~ 1029.
4) 永野公一,久保光彦,後藤守孝,他: GERD の診断に関する研究―上部消化管症状を訴える患者におけるアンケート (QUEST)による検討一,新薬と臨床, 47 : 841, 1998.
5) 吉田智治,岡崎幸紀,村上卓夫,他:逆流性食道炎の診断 における患者記入式アンケート(QUEST)の有用性の検討,臨床と研究, 76 : 185 ~ 192, 1999.
6) American Academy of Sleep Medicine Task Force : Sleep related breathing disorders in adults : recommendations for syndrome definition and measurement techniques in clinical research, Sleep, 22 : 667 ~ 689, 1999.
7) 菅井望,鈴木潤一: 閉塞性睡眠時無呼吸症候群における胃食道逆流症の合併頻度と病態,消化器科, 38 (2) : 143 ~ 147, 2004.
8) 平田正敏,藤田志保,小西良光,他:閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者における胃食道逆流症について,日本呼吸器学 会雑誌,40(増) : 168, 2002.
9) Valipour, A., Makker, H.K., Hardy, R., et al. : Symptomatic gastroesophageal reflux in subjects with a breathing sleep dis order, Chest, 121 : 1748 ~ 1753,2002.
10) Green, B.T., Broughton, W.A., O’Connor, J.B., et al. : Marked improvement in nocturnal gastroesophageal reflux in a large cohort of patients with obstructive sleep apnea treated with continuous positive airway pressure, Arch Intern Med, 163 : 41 ~ 45,2003.
11) 岩切龍一,岡本多代,古川徳昭,他:胃食道逆流症の頻度, 消化器科, 28 : 315 ~ 320, 1999.
12) Kerr, P., Shoenut, J.P., Millar, T., et al. : Nasal CPAP reduces gastroesophageal reflux in obstructive sleep apnea syndrome, Chest, 101 : 1539 ~ 1544, 1992.
13) Ing, A.J., Ngu, M.C., Breslin, A.B., et al. : Obstructive sleep apnea and gastroesophageal reflux, Am J Med, 108 : 120S 125S, 2000.
14) Bate,C.M., Green, J.R., Axon, A.T., et al.: Omepurazol is more effective than cimetidine for the relif of all grades of gas troesophageal reflux disease – associated heartburn, irrespec tive of the presence or absence of endoscopic oesophagitis, Aliment Pharmacol Ther, 11 : 755 – 763, 1997.
15) Senior, B.A., Khan, M., Schwimmer, C., et al. : Gastro esophageal reflux and obstructive sleep apnea, Laryngoscope, 111 : 2144 ~ 2146, 2001.
16) Xiao, G.H., Wang, Z.F., Ke, M.Y., et al. : The relationship between GERD and OSAS and effects of anti-reflux therapy, Gastroenterology, 114 (4part2) : A336, 1998.
ストレス減で活力ある未来に貢献する、株式会社RUDDER。
特許出願済み。まぶしい!うるさい!寒い!を解消。安眠家具「Sleep Labo」国産家具の安心安全をお届けします。
うるさいいびき、止まらない、止められない。でも大丈夫。 いびきを解決する唯一の方法。
お求めのショップへは緑ボタンをクリック(BASE)
代金引換現金でのご購入は黄色ボタンをクリック