ある薬の効果を確かめるために、同じ効果があるとして偽薬(何の薬効もない単なるカプセルのようなもの)を飲ませ、正しい薬を飲んだグループと偽薬を飲んだグループで、比較する調査方法があります。この時の偽薬をプラシーボ薬(プラセボ薬)と言います。
元々こんな検査が真面目に行われるくらい、人間の思い込みが体に及ぼす影響は大きいわけです。
逆に言うと薬ってその程度のものと思っていたほうがいいということでもあり、そのくらい人間の体のメカニズムってわかってないのです。初めはよく効く薬でも、続けるうちに人間の体自体が効かなくしてしまいますしね。
さて、アメリカコロラド大学で「十分に眠った」と人に思い込ませるとどのような効果が得られるかをテストした結果をJournal of Experimental Psychologyで発表しました。
この研究はプラシーボ効果から名前を取って「プラシーボ睡眠」と研究者たちから呼ばれており、研究結果によると、「十分に眠っていない」という意識は日中のパフォーマンスを低下させる一因になるとのことです。
◆実験方法
始めに被験者に「大人は睡眠時間の20~25%がレム睡眠であり、これよりもレム睡眠の割合が少ない場合学習テストなどで低いパフォーマンスになってしまい、反対に睡眠時間の25%以上をレム睡眠で過ごした場合にはテストで良い成績を収められるだろう」という虚偽の情報を与えます。
その後、被験者に脈拍・心拍数・脳波などを計測するための装置をつなぎ眠ってもらいます。
そして被験者1人1人に16.2%から28.7%のレム睡眠を取ったと嘘のレム睡眠時間を伝えてテストを実施。テストの内容は、睡眠不足に最も関連性のある聴覚と処理速度のテスト。また、実験結果の偏りを抑えるために、これらの実験を複数人の被験者に対して繰り返し行ったとのこと。
◆実験結果
実験の結果、平均以上のレム睡眠時間を取ったと伝えられた被験者(レム睡眠の割合が25%以上の被験者)はテストで良い結果を残し、平均以下のレム睡眠時間(レム睡眠の割合が20%未満の被験者)しか取れていないと伝えられた被験者たちはテストで平均以下のパフォーマンスしか発揮できませんでした。
この研究結果で、寝不足でもその気になりさえすれば、良いパフォーマンスを発揮することができると思われるのは早計です。それこそ「高度プロフェッショナル制度」の導入を喜ぶ経営者が喜びそうな結果かもしれませんが、あくまで実際に寝不足であれば体はその反応を示します。
むしろ実際には寝不足ではないのに寝不足を訴える人への改善効果が期待できると思われます。実際に不眠症を訴える人の中には、3日くらい一睡もできない日が続くなどという人がたくさんいますが、睡眠アプリなどを使って調べてみることをお勧めします。
自分では一睡もできていないと思い込んでいても、アプリで見ると、案外眠り込んでいる時間帯があったり、いびきをかいている音が録音されたりしています。
実際には睡眠自体が浅くあまり良い睡眠がとれていないために寝た気がしていないのは事実ですが、寝れないという思い込みが不眠感覚を生んでいる可能性はかなり高いのです。
実際に不眠と思っていたものがアプリで寝ていることが確認されると、気持ちまで寝た気がしてくるのです。まさに「プラシーボ睡眠」の効果ですね。
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