「いびき」タグアーカイブ

うるさいいびきを止めたい

「旦那のいびきがうるさいので、止める方法を教えてください!」

いびきで苦しめられるのは、いびきをかいている本人ではなく、周りの人。

本人は人に迷惑をかけている自覚さえない。よくありますね。

それに対する答えで一番多いのが、「口呼吸から鼻呼吸に変える」「横向きに寝る」。いびきの原因に起因しているのですが、いびきの原因が、舌やのどの周りの組織が寝ることで脱力し、気道をふさぐことでいびきになるということです。

上の図で言うと赤丸が塞がるのですが、これが塞がると、鼻呼吸であっても息ができません。舌が大きく沈むのであれば、横に寝ても変わりません。もちろんうつぶせに寝れば大丈夫でしょうが、舌が落ち込まないうつ伏せは、鼻を敷布団に押し付ける形のうつ伏せですね。別の意味で窒息しそうです。

何度もかきましたが、重力で舌や首のまわりの組織が落ち込んで、気道をふさぐような事態があれば、そこらじゅうで窒息死が発生します。

いびきは体が食道を絞ることで、気道を絞るためにいびきになる自発的な作用です。不随意的な落ち込みではありません。ではなぜ体が食道を絞るかを解明すればいいだけです。

一番は胃食道逆流症を防ぐためです。食べたり飲んだりした後、胃に物が詰まっているときに横になれば、逆流します。それを防ぐのが胃の噴門ですが、この力が弱まれば逆流してしまいます。それを食道を絞ることで防いでいます。

胃の中が空っぽでも、ストレスや喫煙などで胃を痛めていると、その刺激でも胃や食道が収縮します。

肥満の人がいびきをかくイメージですが、肥満の原因といびきの原因が同じだから結果としてそうなるのです。肥満解消に食事制限をしたり、禁煙したりすることが結果的にいびきも低減するのです。ちょっと前に、カレーのにおいをかがせるといびきが収まるというのが流行りましたが、舌の落ち込みでは説明つきませんが、カレーの香りが食道や胃の蠕動を促すことで説明が付きますね。

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夜間の豆電球使用が肥満・脂質異常症のリスクになる可能性を示唆

寝るときの部屋の明るさについては、賛否両論あるようです。明るすぎるのは問題外として、真っ暗がいいのか、少しくらいの明かりがあったほうがいいのか、それぞれに理由があるのですが、きちんとした研究成果として、論文発表になっているものでは真っ暗に結果が出ているようです。

奈良県立医科大学  発表日:平成25年1月9日

夜間の豆電球仕様が肥満・脂質異常症のリスクになる可能性を示唆

本研究は、528人の高齢者の自宅寝室に設置した照度センサーで測定した夜間暴露照度が平均3ルクス以上の群(中央値:83.7ルクス)で平均3ルクス未満の群と比べ、肥満症や脂質異常症の有病割合が1.9倍であることを認めました。

http://www.naramed-u.ac.jp/pdf/news/2013/250109Endocrine-News.pdf

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睡眠時無呼吸症候群CPAP治療費の問題点

睡眠時無呼吸症候群の治療として代表的なCPAP治療の費用について、医療機関の経営を圧迫する話を見たため、ご紹介いたします。

CPAP治療機は加圧空気を送るマスクをつけて寝る装置ですが、重症患者は保険が適用され5000円/月で使うことができます。ただし保険適用は毎月1度病院でチェックをしてもらわなければいけません。

さてCPAP治療は14600円/月の保険請求代となるようですが、そのうち10000円は、CPAPの機械を貸し出している企業に対し、医療機関が支払う仕組みとなっているようです。

もし患者さんが、毎月一度の医療機関受診をしないとどうなるでしょう。当然医療機関は14600円の保険請求ができないわけですが、企業へはレンタル料10000円を払う必要が出てくるのだそうです。患者さんが受診したところで5000円の儲けしかないところが、1か月来てくれないと10000円の手出しが発生するわけです。

医療機関にとってはこれは痛いですね。私が見た話は2012年のものですので、現在は改善されているのかもしれませんが、最初から仕組み自体がおかしいです。元々CPAP治療自体対症療法であり、生活習慣の改善などのフォローがなければ、いつまでも使い続ける必要があり、まじめに通ってくれる患者様であれば、医療機関としてはおいしい話です。しかしながらフォローがない場合、50%の患者が継続できなくなるという話もあります。続かない患者の半分が途中で勝手に行かなくなると医療機関も大変ですね。

儲かるのは機械を作る会社だけ・・・厚生族の議員に献金がいっぱい行ってるのでしょうかね。

元のお話は http://medg.jp/mt/?p=1878 でどうぞ。

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中枢性睡眠時無呼吸症候群の機序解明に大きな進歩

いびきをかいて無呼吸となるものを閉塞性の無呼吸。いびきがなくて無呼吸を中枢性と言っています。ただ、実際の先天的中枢性の傷害は、これまで世界で1000例しか報告がない極めて珍しい症状ですので、誰にでも見られる症状であるということにかなりの疑問を感じますね。

閉塞性も含めて、無呼吸症候群の原因を見直さなければならない証拠と考えたほうが正しいと私は思っています。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の機序解明に大きな進歩
という論文紹介の記事がありました。覚醒時にも呼吸障害が出ているので、中枢性無呼吸の機序と言えるのか疑問ですが、論文をご紹介いたします。

preBotC neuronを破壊すると中枢性無呼吸症候群に似た睡眠障害がみられる点は、研究で明らかになっているが、中枢性睡眠時無呼吸症候群患者のpreBotC neuronに障害がみられるのかどうかの記述がなく、ALS,PD,MSAでの睡眠中の突然死を関連付けることでCPAPの有効性を指摘することが非常に恣意的に感じられる報告であると思います。


さて、いびきを伴わない無呼吸ですが、胃食道逆流症からの無呼吸であれば普通にあります。胃食道逆流症で食道が絞められるに伴って気道が狭められる際に、一般的にいびきをかく体形でない方や、口呼吸でもなければいびきまで行かない場合があります。
鼻呼吸ですから鼻から息を吸い込みますが、吐き出すときは口から吐き出します。この時に胃食道逆流症による症状で食道が数秒間絞められると、口から息を吐きだした状態で、数秒呼吸が止まります。
次に通常なら鼻から息を吸うのですが、呼吸が止まっていた苦しさから、一気に吸おうとして口で一息グガッと吸い込み、その後鼻呼吸に移行します。
中枢性無呼吸症候群ですが、先天性の場合は、これまで世界中で1000例ほどしか事例がありません。非常に珍しい疾患です。
また本日紹介した実験による機序も、呼吸神経の損壊です。そんなに簡単に誰でも症状として現れるとは到底考えづらいと思います。
しかしながら、現在の検査でやると、睡眠時無呼吸の中に中枢性と言われるいびきを伴わない無呼吸が5%程度は誰にでも見られ、特に男性で60歳を超えると、その比率が多くなります。
単純に定年を迎えた男性の食事時間(生活習慣)が変わって、症状が緩和されているだけのような気がしますがいかがでしょうか?

http://blog.goo.ne.jp/pkcdelta/e/8441db0adfc7b59170d8e20ac77031c2

 

中枢性睡眠時無呼吸症候群の機序解明に大きな進歩
2005年08月11日 | 睡眠に伴う疾患
睡眠時無呼吸症候群は,上気道の閉塞により生じる閉塞型,呼吸調節をする脳幹領域の障害で生じる中枢型,および混合型に大別される.中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の機序についてはよく分かっていなかったが,今回,その機序を解明する上で非常に重要な研究が報告された.
まず,呼吸中枢神経回路の中核をなすpreBotzinger complexと呼ばれる吻側部領域が腹外側延髄に存在する.この領域にはneurokinin 1 receptor(NK1R)を高発現するpreBotC neuronが一側で300個ほど存在すると言われる.これまでにratを用いた実験で,このpreBotC NK1R neuronを80%以上,障害させると,覚醒時において失調性呼吸パターンが出現することが分かっていた.今回,睡眠呼吸障害におけるpreBotC neuronの関与について詳細に検討された.
方法としては,簡単に言うとpreBotC neuronを選択的に障害する毒素を注入し,その後,ポリソムノグラフィー(PSG)を経時的に観察し,睡眠中および覚醒時の呼吸パターン,apnea(無呼吸),hypopnea(低呼吸;50%未満の呼吸flowの減少)の頻度,持続時間を経時的に観察している.具体的にはratに筋電図(横隔膜,腹,頚部)および脳波電極を植え込み,術後14日目にpreBotC NK1R neuronを選択的に傷害する毒素としてsubstance-p conjugated saporin(SP-SAP)を両側のpreBotzinger complexめがけて注入(対照としてとしてconjugateさせてないsubstance-p とsaporin混合物を使用).実際にNK1R抗体を用いた免疫染色にて,preBotC NK1R neuronの選択的な減少を確認している.
結果としては,対照では注入前との比較で,注入後に各睡眠パラメーターに有意差を認めなかったのに対し,SP-SAP注入群では注入後4日目の時点でREM期においてのみhypopnea およびapnea(中枢型)の頻度が有意に増加.注入後5-6日目ではこの傾向が顕著となり,Non-REM期でも対照と比べ,hypopnea およびapneaが軽度ながらも有意に増加した.覚醒時でも短時間のapneaが生じ始めた.7日目以降ではNon-REM期におけるhypopnea およびapnea(とくに持続時間より頻度)が顕著となり,睡眠の断片化と全睡眠時間の減少が生じた(データとしてはarousalの増加として観察される.つまりapneaに伴いStage-Wに入ってしまう).覚醒時でも呼吸パターンはさらに不規則化した.9-10日目で覚醒時の失調性呼吸が出現し,なかにはCheyne-Stokes呼吸パターンを呈するratも出現した.以上の結果は,中枢型無呼吸にpreBotC NK1R neuronが深く関与する可能性を示唆する.
ではなぜ先にREM期に変化が現れるのだろうか? たしかにヒトでも中枢性無呼吸はREM期に出現しやすい.REMではセロトニンやノルエピネフリン産生ニューロンは不活化傾向にあり,preBotC neuronはセロトニンやノルエピネフリンにより刺激を受けるため,REM期ではpreBotC neuronニューロン活動は減少する.よってREM期ではpreBotC neuronニューロンの変化が表出しやすいのではないかと著者らは考察している.
またこの結果から神経変性疾患における睡眠呼吸障害(SDB)におけるpreBotC NK1R neuronの関与を考える必要がクローズアップされる.ALS,PD,MSAでも睡眠中の突然死が生じることがあるが,PDでは60%程度,MSAでは89%ものNK1R neuronの減少が生じることがすでに報告されている.さらにMSAではセロトニン作動性ニューロンの減少も知られている.MSAの夜間突然死については,声帯外転麻痺による閉塞性の呼吸障害がその原因として考えられてきたが,preBotC neuronニューロンの減少が突然死に関与している可能性も十分に考えられる.こうなると気管切開をしても突然死は防げない(実際にこのような症例は存在する).むしろCPAP,BiPAPのほうが有効である可能性があり,呼吸障害パターンを判断した上で,適切な治療を選択を必要するがあるものと思われる.

Nat neurosci. published online 7 August, 2005

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胃食道逆流症(GERD)と睡眠障害

胃食道逆流症(GERD)と睡眠障害の論文です。これまで何回か説明文の中で一部の引用をさせていただいておりましたが、全体をご紹介させていただきます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/52/2/52_145/_pdf

耳鼻52:145~151,2006
原著

胃食道逆流症(GERD)と睡眠障害
―ランソプラゾール内服と睡眠内容の検討―

 

岩田義弘(1)・大山敏廣(2)・門山浩(3)
三村英也・小串善生・桜井一生
内藤健晴(4)・戸田均(5)

 

近年、胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease: GERD)と閉塞型睡眠時無呼吸(O-SAS)の関係が注目されている。咽喉頭異常感と睡眠障害のない正常男性5例にランソプラゾール15mg/day、7日間内服を行い、睡眠障害パラメーターの変化を検討した。epworth sleepiness scale(ESS)は全員スコアの減少を認めた。睡眠時無呼吸検査ではapnea-hypopnea index:AHIの減少を認めた。特に閉塞性無呼吸の減少と鼻腔抵抗の減少を示した。
咽頭食道は逆流胃酸等攻撃因子と唾液等中和する因子が拮抗していると考えられた。今回の検討は正常例において攻撃因子を減少し、中和などの防御因子を優位にした状態を作り出したと考えた。結果、正常例においても胃食道逆流は存在する可能性を示したと考えた。また、GERD治療を行うに当たり、攻撃と防御因子の双方を考え治療する必要性を感じた。

Key words:ランソプラゾール、正常成人、AHI、鼻腔通気度、睡眠障害

はじめに
閉塞型睡眠時無呼吸(O-SAS)の治療に伴い、胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の症状の減少を認める報告を日常臨床で経験したり、また同様の報告1)-4)をみる。GERDの症状好発臨床的背景と、睡眠時無呼吸を引き起こす臨床的背景が酷似しているため、両者の間には強い関連性が指摘されている。
では、GERD症状のない正常例では睡眠中の呼吸状態への影響はないのであろうか?症状を訴えない正常例と考えられる例にもある程度の頻度をもって胃酸逆流が存在するが、その影響は自覚しないだけではないかと考えた。
正常例に胃内容物の食道へ逆流が恒常的にあるのであれば、胃酸の気道への影響もあることも予想され、先の例と逆で睡眠への影響があるのではないかと疑った。これらを検討するに当たり、正常例においてどの程度逆流による影響があるか、またその結果見られる睡眠障害がどの程度隠れているのか明らかにする必要を感じた。
これらの疑問を明らかにするためPPI内服で胃酸の量を減少させ、逆流症状と睡眠への影響の測定を試みた。咽喉頭異常感と睡眠障害の訴えのない正常例にランソプラゾール15mg/day、7日間内服を行い、睡眠障害にかかわるパラメーターのその前後で行い、その変化を検討した。

対象と方法
対象:健康診断などで異常を指摘されていない成人男性で、咽喉頭異常感や自覚的な睡眠障害を有しない例で本検討に了解を得たボランティア5名(平均年齢32.6歳、24から46歳)について検討を行った。5名につては扁桃肥大や鼻中隔彎曲症やアレルギー性鼻炎など認めなかった。またbody-mass index BMIは平均24.5であった(表1)。
方法:被験者には検討の内容を説明し、ランソプラゾール15mgを一日1錠ずつ内服を7日間行ってもらった。その前後で以下の検査を行った。
GERDの症状や睡眠の自覚的状況をQUEST問診票5)とepworth sleepiness scale(ESS)6)を用いアンケート形式で行った。問診票の聴取には筆者が症状など直接説明しながら行った。また、器質的疾患の否定と咽頭所見の確認のため喉頭ファイバースコ― プを行った。睡眠障害の有無確認のため、チェスト社製携帯型睡眠時無呼吸検査装置Apuno V(R)を用い検査装置の指示書に従い装着、AHI、AHI with desaturationを測定した。測定結果は閉塞性成分と中枢性成分も抽出した。さらに、睡眠障害部位の検討に役立つよう鼻腔通気度をリオン社製通気度鼻腔検査装置にて測定した。

結果
協力いただいたボランティア男性5名の身長、体重は表1のとおりで平均のBMIは24-5であった。
アンケート結果を図1に示す。

QUESTの問診票では、内服前は平均0.4点であった。内服後では著明な変化無く平均0.0点となった。ESSでは内服前では内服前が平均8.6で内服後は6.6と減少を認めた(図2)。

睡眠検査では経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は一晩の平均と最低酸素飽和度で検討を行った。内服前では平均96.3%から内服後96.3%と変化を認めなかった。最低酸素飽和度は平均86.0から内服後84.2と同様に大きな変化を認めなかった(図3)。

睡眠時無呼吸低呼吸指数AHIは内服前の平均11.4に対し内服後では3.1と減少を認めた(図4)。

AHIは閉塞性成分と中枢性成分と1時間当たりの回数で検討を行った。1時間当たり無呼吸低呼吸のうち閉塞性成分は内服前に平均8,4回であったが、内服後3.0回と減少した。中枢性成分は平均3.0回から2.3回と現象を示した。AHIwith desaturationは内服前3.1から内服後2.5とやや減少をした(図5)。

鼻腔通気度は両側の合成である最大呼気/吸気抵抗は内服前平均1.50/1.44(cm/L/sec)から内服後1.27/1.51(cm/L/sec)となった(図6)。

喉頭ファイバー所見では、鼻腔、咽頭に内服前後に著明な変化を見いだすことはできなかったが、下鼻甲介後端の色調の変化と両側披裂間部の粘膜の色調の変化を認めた。

考察
正常と思われる成人においても24時間pHモニタリングを行うと食道内のpHが減少する例が確認されている7)。しかしながらこれらの正常成人がGERD特有の症状を訴えるわけではない。今回検討を行った5名のボランティアにおいても同様で、QUESTの問診票では胃酸逆流の症状は認められなかった。胸部や咽頭の不快感のない5名のボランティアではランソプラゾールの内服前後で行ったESSアンケートで睡眠の自覚的改善を4名自覚しており、内服前後で点数は有意に減少を示していた。GERD症状のない成人例において、PPI内服は、何らかの形で睡眠へ影響していると考えられた。では、どこが睡眠として良いと思われる変化を来したか。

SpO2は1回の測定の平均SpO2と一回の測定の最低SpO2とも大きな変化を示さなかった。しかしながらAHIはいずれの例でもPPI内服に伴い減少を来し、睡眠中の無呼吸および低呼吸が減少したことを確認した。特にAHI減少のうち、中枢性無呼吸低呼吸の減少より、閉塞性無呼吸低呼吸の減少が著しいことも今回確認できた。睡眠時無呼吸の検査においてファーストナイト効果8)と呼ばれる「検査の慣れ」現象が見られ、これによりAHIの現象が指摘されている。が、今回は中枢性の無呼吸成分の減少が示されている。検討において短期間の検討であったが、「検査の慣れ」については考慮しなくてよいと判断した。その上で、ランソプラゾール内服のこのボランティア群は閉塞性無呼吸低呼吸成分の減少がAHI全体の減少を来し、その結果ESSスコアの減少に影響したと考
えられた。
鼻腔通気度検査では1名を除き最大呼気/吸気鼻腔抵抗は減少が見られた。BMIと鼻腔通気度の関係において有意な相関関係は認められていない9)。機序は不明であるが、ランソプラゾール内服により鼻腔粘膜の容積に変化が生じ鼻腔通気度に影響を与えたものと考える。内服後、鼻腔通気度の値が上昇している1名においてもAHIの減少が見られ、鼻腔抵抗の減少がAHIの減少のすべての要因ではないことが示唆された。
喉頭ファイバースコープの観察から、喉頭披裂間部の粘膜の色調の変化からも喉頭粘膜の変化の存在が疑われた。これらの所見10)も胃酸逆流の症状が疑われる。この事実からも逆流した胃分泌液は何らかの形で喉頭や咽頭、鼻腔粘膜に影響を与えていると考える。
ランソプラゾール内服を行ったこのボランティア群ではこの胃酸分泌物減少による鼻咽喉頭への影響を軽減させその結果、気道抵抗全体を減弱させ、AHIの減少からESSの減少につながったと考えられた。
症例1、3と年齢の進んだ二人がAHIの変化が大きかった。この2例はともに検診胃内視鏡で異常は指摘されていなかった。内視鏡的異常所見を認めない狭義の症候性GERD症例(s-GERD)においてpHモニタリングでも異常を認めない症例も多く、酸分泌抑制剤で治療効果が低いことが報告されている2)。また、これらは健常人とオー
バーラップすることが知られている11)。また、後の聞き取りからs-GERDの影響の一つである心理150 耳鼻と臨床 52巻2号的ストレス12)は他の3名とも特に自覚はなく、これらの影響は少ないと考えられた。
老人性の口腔内乾燥症13)や糖尿病に伴う唾液の減少が見られる病態において胃酸逆流に対する防御機構の減少がGERD症状の増悪因子として指摘されている14)。
唾液分泌能力は年齢などに影響されると考えられが、喫煙や口腔内乾燥の自覚はなかった。これらこの2症例はs-GERDに近い状態であることが疑われ胃酸逆流の影響を受けやすいことが考えられた。
健常成人においても潜在的に胃酸逆流が存在していても、胃酸そのものを中和する機構(唾液分泌など)が十分機能していれば症状として表れてこないことが考えられる。
ボランティア群はいずれも、咽喉頭の違和感や逆流に伴う胸部症状の自覚のない集団であった。胃酸分泌の抑制を行いその結果、睡眠等に影響が見られたことから、逆流した胃酸の中和などにより症状を抑制する能力が相対的に強く働いていた結果、普段からGERD症状の訴えがなかったと考えられる。
今回の検討は正常成人において潜在的に逆流した胃分泌物よりも、その中和機構が優位になった状態を作り出したと考えられる。その結果、上部気道に作用する要因が減少し、気道の狭窄にかかわるパラメ-タ― を中心に睡眠の質に影響を与えたものと考えられた。下部食道括約筋の機能障害がGERDの症状発現には重要な因子であることは間違いないと考えるが、症状の抑制因子としての口腔咽頭機能の存在を改めて認識する結果となった。このことはGERD症状の診断・治療において、攻撃因子である胃分泌物の逆流と、症状の抑制因子である唾液分泌などの双方を考慮に入れていく必要があると考えた。

本稿の内容は第8回食道逆流症(GERD)と咽喉頭疾患研究会にて報告した。
本検討を行うに当たり、ご協力いただいた当院検査部生理検査部門の協力に感謝します。

文献
1) Demeter P et al:Correlation between severityof endoscopic findings and apnea-hypopneaindex in patients with gastroesophageal refluxdisease and obstructive sleep apnea.World J Gastroenterol 11 : 839-841, 2005.
2) Fass R et al : Nonerosive reflux disease-Currentconcepts and dilemmas-. Am J Gastroenterol96 : 303-314, 2001.
3) Gislason T et al : Respiratory symptoms andnocturnal gastroesophageal reflux-A population-based study of young adults inthree European countries-. Chest 121 : 158-163, 2002.
4) Ing AJ et al : Obstructive sleep apnea andgastroesophageal reflux. Am J Med 108(Suppl 4 a) : S120- S125, 2000.
5) 永野公一他: GERDの診断に関する研究-上部消化管症状を訴える患者におけるアンケート(QUEST)による検討-. 新薬と臨47: 841-851, 1998.
6) Johns MW : A new method for measuringdaytime sleepiness-The epworth sleepinessscale-. Sleep 14 : 540-545, 1991.
7) 林良紀他: 健常者、逆流性食道炎患者の胃食道逆流のメカニズム. Therapeutic Research 24:800-804, 2003.
8) 川名ふさ江: 睡眠時無呼吸症候群-睡眠時無呼吸症候群の検査法終夜睡眠ポリグラフィー、その他-. Medical Technology 33: 468-474, 2005.
9) 樋上茂他: 睡眠時無呼吸症候群患者における睡眠前後の鼻腔抵抗について. 日鼻誌43: 331, 2004.
10) 渡嘉敷亮二他: 逆流性食道炎症例にみられた耳鼻咽喉科領域の症状. 日気食会報53: 337-342, 2002.
11) Masclee AA et al : Ambulatory 24-hour pHmetryin the diagnosis of gastroesophagealreflux disease. Determination of criteriaand relation to endoscopy. Scand J Gastroenterol25 : 225-230, 1990.
12) 秋山純一他: 症候性GERDの病態と治療-症候性GERDにおける病態因子-. 消化器科40: 236-243, 2005.
13) 中田裕久: 日常診療で診るGERD(胃食道逆流症)-特殊な例のGERD高齢者のGERD-.Medicina 42: 111-113, 2005.
14) 松井秀隆他: 日常診療で診るGERD(胃食道逆流症)-GERDを起こす病態糖尿病とGERD-.Medicina 42: 96-98, 2005.
(受付2005年10月24日)

Relationship between gastroesophageal reflux disease andsleep disorder : An examination of sleep after the oral administrationof lansoprazole
Yoshihiro IWATA(1), Toshihiro OYAMA(2), Hiroshi KADOYAMA(3), Hideya MIMURA,Yoshio OGUSHI, ISShO SAKURAI, Kensei NAITO(4) and Hitoshi TODA(5)
Recent studies have reported a relationship between gastroesophageal reflux disease (GERD)and obstructive sleep apnea syndrome (O-SAS). We orally administered 15mg/day of lansoprazoleto 5 healthy males without pharyngeal/laryngeal discomfort and sleep disorder for 7 days and thisinvestigated the changes in the parameters of sleep disorder. The epworth sleepiness scale (ESS)scores decreased in all 5 males. A sleep apnea test showed a marked decrease in the apnea-hypopneaindex (AHD. In particular, the frequency of obstructive apnea and nasal resistance decreased. Inthe pharyngeal esophagus, attack factors such as the reflux of gastric acid may antagonize neutralizingfactors such as saliva. In this study, the attack factors including neutralization were enhancedin these healthy adults. The above findings suggest that GERD occurs in healthy adults. In treatingGERD, both attack and preventive factors should be carefully considered.
(1)碧南市民病院診療部耳鼻咽喉科
Department of Otolaryngology, Hekinan Municipal Hospital, Hekinan 447-0084, Japan
(2)大同病院耳鼻咽喉科
Department of Otolaryngology, Daido Hospital, Nagoya 457-8511, Japan
(3) 門山医院
Kadoyama Clinic, Fujisawa 251-0872, Japan
(4)藤田保健衛生大学医学部耳鼻咽喉科学教室
Department of Otolaryngology, School of Medicine, Fujita Health University, Toyoake 470-1192,Japan
(5)耳鼻咽喉科武豊醫院
Department of Otolaryngology, Taketoyo Clinic, Chita 470-2380, Japan

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胃食道逆流症といびき。睡眠時無呼吸症候群。

胃食道逆流症と睡眠時無呼吸の関係で、睡眠時無呼吸の人の合併症として、胃食道逆流症を上げているサイトが多いようです。

まとめサイトというのが最近少なくなったので、少しはまともになってきたかと思いますが、やはりまだ反対のことをかいているところが多いですね。

ちなみに、胃食道逆流症といびきも、いびきを原因として胃食道逆流症になると書いているところが多く見受けられます。

睡眠時無呼吸症候群になると、息を吸おうとして食道内が陰圧になるために、胃液を吸い上げてしまうというようなことです。

胃液が肺に吸い込まれるとは恐ろしいですね。もし実際にそうなったら、逆流性食道炎よりも逆流性肺炎のほうが怖いですし、将来的なリスクとかではなく、緊急治療が必要なレベルになるでしょう。でも実際にはそうなっていません。

睡眠時無呼吸症候群やいびきの原因を最初から間違えているから、そのような判断になります。喉や口蓋垂や舌が気道に落ち込んで物理的にふさぐために睡眠時無呼吸やいびきになるとしたら、睡眠時無呼吸の人が気絶とかしたら、死んでしまいます。柔道の大柄の選手が絞め技で落ちたら、大変なことになりますよ。相撲のけいこも頻繁に救急車騒ぎになるでしょうね。でも、実際にそういうことにはならないのです。

胃食道逆流症がいびきや睡眠時無呼吸を引き起こしているのです。寝ているときに胃の中のものが逆流してくるのを抑えるために、体が食道を狭めます。それにつられて気道が狭くなるのが、いびきや睡眠時無呼吸の原因です。

食べてすぐ寝ることが、肥満の原因にもなっているし、右を下にして横向きに寝れば、胃の入り口が上になるので、逆流が防げるためいびきを抑えることができます。横向き寝でいびきをかかないといわれる所以です。ちなみに左を下にして寝ては意味がありません。

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寝不足はダイエットの敵

柳沢正史教授が機構長を務める筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構から、新たなプレスリリースが出ています。
睡眠にまつわる脳活動の解明で次々と新しい発見を行っていますので、注目しています。

http://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/…/si…/2/2017/01/0110_LazPR.pdf

プレスリリース
2017.1.10|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)

寝不足はダイエットの敵

睡眠時間が足りないと甘いものがほしくなる理由

研究成果のポイント
1. レム睡眠量が減少すると、ショ糖や脂質など、太りやすい食物の摂取量が増加する原因の一端を見出しました。
2. 前頭前皮質の神経活動を抑制すると、レム睡眠量が減少してもショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の抑制の影響を受けることなく増加しました。
3. レム睡眠が不足しているときに、肥満につながる食物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしました。食べ物の味や香り、食感などの嗜好を判断する役割を担う脳部位である前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が減少しても、ショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の神経活動抑制の影響を受けることなく、対照群と同様に増加しました。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、体重を増加させる可能性のある、ショ糖が多く含まれる食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。
本研究成果は、eLife誌にて2016年12月6日付でオンライン公開されました。
研究の背景
睡眠不足は、体重増加をもたらす要因のひとつであることが知られています。睡眠不足の人は、十分な睡眠をとっている人に比べて、体重を増加させる嗜好性の高い食品をより多く摂取し、太りやすくなる傾向があるからです。睡眠の成分の中でも特にレム睡眠が不足すると、体重が増加することも報告されてきました。しかし、睡眠不足になるとなぜ高カロリーの食品を欲するようになるのか、その背景にある神経機構は不明でした。また、食物の嗜好に関わる前頭前皮質が重要な役割を果たしていると考えられてきたものの、睡眠との直接的な関係は不明でした。

研究内容と成果
研究グループは、マウスのレム睡眠だけが特異的に減少することが観察された器具を用いてレム睡眠不足に陥ったマウスを準備し、その摂食行動に注目しました。レム睡眠が不足したマウスでは、ショ糖、脂質ともに摂食量が増加しました(図 1)。遺伝子改変技術と化学物質の組み合わせにより、人為的に前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が不足してもショ糖の摂取量は増加しませんでしたが、脂質の摂取量は神経活動を操作してもその影響を受けず、対照群と同様に増加することがわかりました(図 1)。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、ショ糖を多く含み体重を増加させる、いわゆる「太りやすい」食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質によって直接的に制御されている可能性が示唆されました。この成果は、レム睡眠と前頭前皮質、食物の嗜好性との直接的なつながりを示した初めての成果です。

今後の展開
レム睡眠は加齢とともに減少することが知られています。本研究から、レム睡眠量の減少は代謝やエネルギーバランスに悪影響を与え、体重増加につながる可能性があることが示唆されました。糖尿病や心血管疾患など、肥満と密接に関連する疾患は増加の一途を辿り、社会的に多大な経済的損失を招く原因にもなることが懸念されています。今回得られた知見を足がかりに、高齢化社会で健康的な食事行動を促進する、新たな神経薬理学的な戦略の開発が期待されます。

参考図

図 1|レム睡眠が不足するとショ糖・脂質ともに摂取量が増加する。前頭前皮質の神経活動を 阻害すると、ショ糖摂取量の増加は抑えられる。

図 2|レム睡眠の不足は、糖質や脂質などを多く含む「不健康な」食べ物への欲求を高める。

掲載論文
【題 名】Chemogenetic inhibition of the medial prefrontal cortex reverses the effects of REM sleep loss onsucrose consumption
【著者名】McEown K, Takata Y, Cherasse Y, Nagata N, Aritake K, Lazarus M.
【掲載誌】eLife DOI: 10.7554/eLife.20269.001
お問い合わせ
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)広報連携チーム 担当:雀部(ささべ)
住所 〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1 睡眠医科学研究棟
E-mail wpi-iiis-alliance@ml.cc.tsukuba.ac.jp
電話 029-853-5857

 

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Yahoo!知恵袋でのQ&A

先日知恵袋の質問に回答した内容を転記します。

質問

いびき 睡眠時無呼吸症候群

マウスピースを作製して、いびき自体は改善されました。
1週間経過しています。

しかし、昼間の眠気はなかなか取れません。

一年以上眠気と戦ってきたので
、脳や身体が、なかなか元に戻らないのかなと自分では思っています。

病院には来週行く予定です。

どのくらいで眠気がなくなるのかお聞きしたいです。

ご経験のある方アドバイス願います。

回答

マウスピースでいびきがなくなったとしても、睡眠時無呼吸がなくなったのかは調べているのでしょうか?
それと、もともと睡眠時間が短いということはありませんか?
仕事が忙しくて睡眠不足なのに、眠気があるのは無呼吸のせいだと思っている方が多いです。無呼吸がなくなっていたとしても睡眠時間が少なければ眠気は消えませんよ。
マウスピースは、口呼吸でいびきがうるさい方が、鼻呼吸に変えることの効果はありますが、無呼吸の原因は取り去っていません。
生活習慣を見直し、胃の中を空っぽにして寝ないと、無呼吸は消えませんよ。
詳しくは、いびきを解決する唯一の方法を検索してみてください。このままだとマウスピースをしていても鼻いびきに移行するだけになりますよ。

以上のように、いびきが睡眠時無呼吸の原因と考えると、きちんと治療ができない場合があります。いびきも睡眠時無呼吸も別の原因から起こる症状ですので、原因の解決をしないと症状は良くなりません。

なかなか、伝えられないですね。

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総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果

安眠と香りを調べるうちに見つけた論文です。ハーブなので香りというより効能かもしれません。
昔から寝る前にハーブティーを飲むとよく眠れるなどと言われてはいますが、その実証ということです。カモミールは母の薬草と言われるように、女性に効果があると言われていたようですが、実験でも男女で大きく効果の差があるようです。男性よりも女性のほうがハーブティーを好むと思っていたのですが、実際に効果に違いがあるわけですから当然と言えば当然だったのですね。論文をご紹介いたします。

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/14686/1/2005-97-95.pdf
北海道大学大学院教育学研究科
紀要第97号2005年12月
Title 総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果
Author(s) 角田(矢野), 悦子; 森谷, 絜
Citation 北海道大学大学院教育学研究科紀要, 97: 95-103
Issue Date 2005-12-20
DOI 10.14943/b.edu.97.95
Doc URL http://hdl.handle.net/2115/14686
Right
Type bulletin
Additional
Information
File
Information 2005-97-95.pdf

総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果
角田(矢野)悦子* 森谷**
*北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座修士課程(健康科学・健康教育研究グループ)
**北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座教授(健康科学・健康教育研究グループ)

Physiological and Psychological Effects in Humans
of Chamomile (a kind of plants)Drinking and Eating
Etsuko YANO-KAKUTA Kiyoshi MORIYA
【要旨】植物カモミール(Matricaria chamomilla)は,ヨーロッパを中心に古くから鎮静効果をもつ植物として利用されてきた。カモミールの摂食によるリラックス効果及び睡眠影響について報告された論文を総説としてまとめた。カモミール茶の摂食が末梢皮膚温を上昇させる,心拍数を低下させる,自律神経系を副交感神経優位にするという報告,感情測定尺度(MCL-S.1)によってリラックス感得点の上昇を認めたことが報告されている。
また,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合には末梢皮膚温の上昇や心拍数の低下が起こり,副交感神経優位の傾向が示されたが,低温で摂食した場合にはその効果が認められなかったと報告されている。OSA 睡眠調査票を用いた睡眠実験から,カモミールエキス添加ゼリー摂食日の夜間睡眠では,ねむ気の因子,寝つきの因子などが無添加ゼリーを摂食した日に比べて改善したことが報告されている。
【キーワード】カモミール,摂食,自覚的感覚,睡眠,中高年女性

1.はじめに
近年,日本の社会では経済活動の停滞や急速な高齢化の進行などが顕著となり,それに伴い人々の心身に対するストレスが増加してきている。厚生労働省の保健福祉動向調査1)では,心身の健康とストレス,睡眠の結果が以下のように報告されている。ストレスの程度別構成割合では,最近1か月間の日常生活においてストレスがあったとする者の割合が54%を超えており,ストレスが「大いにある」とする者の割合は,男性が10.8%,女性12.8%であり,一方ストレスが「多少ある」とする者の割合は男性39.7%,女性44.9%である。なんらかのストレスありの者のストレス要因をみると,「仕事上のこと」30.5%が最も多く,「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」「職場や学校での人づきあい」が続いている。性別にみると男性は「仕事上のこと」が41.3%ときわだって多く,女性は「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」が25%を超え,年齢階級別にみると,男性65歳以上,女性55歳以上では「自分の健康・病気・介護」が最も多いと報告されている。また,睡眠について最近1か月で問題と感じていることは「朝起きても熟睡感がない」が24.2%で最も多く,加齢とともに「朝早く目が覚めてしまう」「夜中に何度も目が覚める」が増加している。
加齢とともに睡眠障害で悩む人の割合が増加し,女性で男性よりも多いとの報告もある2)。特に中高年の女性(55歳以上)がストレスの内容として「自分の健康・病気・介護」をあげている一方で,睡眠不足の理由として「悩みやストレスなどから」をあげる者が66%(45歳~54歳および55歳~64歳)程度と報告されている1)。一方,更年期の女性の睡眠の質に関する調査3)では,閉経後の人達では何らかの睡眠困難を感じることが多く,入眠しにくく睡眠効率が低下し,日中の眠気や意欲の低下を感じ,総合的に睡眠の質の悪化を示唆すると報告されている。
このようなストレスに対する対処法の一つとして,生活の質(QOL)の向上と健康増進などを目的として植物を用いる補充療法の社会的認知と普及が進みつつある。例えば薬用人参(Panax Ginseng),イチョウ葉(Ginkgo Biloba)などの摂取による身体的ストレスの改善効果やハーブのセントジョンズワート(Hypericum Perforatum)によるうつ症状の緩和などが良く知られている4)。また,植物の香り成分によるアロマセラピーやフィトンチッドと呼ばれる森の香りを利用した森林浴による鎮静・リラックス効果などを,生活の中により積極的に取り入れることが注目されている。
筆者らはこのような観点に立ち,植物カモミール(Matricaria chamomilla)を食品のお茶やゼリーとして摂食することによる生理・心理的効果,夜間睡眠への影響について研究を続けてきた5)6)。
本稿では植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果について,歴史的背景や食文化とその生理心理的効果および夜間睡眠に対する影響についての研究をまとめることを意図する。

2.カモミール摂食の歴史と文化
上述のように人々はその社会活動や食生活の中で増加する多種類の人為的ストレスにさらされているが,その解決には必ずしも現在の西洋医学だけで充分とはいえない。近年になり西洋医学を補う医療として補充医療(Alternative Therapies)が再評価されつつある。例えば東洋医学における漢方やインドのアーユルヴェーダなどの伝統的医学が知られている4)。これらの医療体系の中では,ハーブ(香草)を含むさまざまな植物を薬草として治療手段に用いている。
また,漢方の分野では医食(薬食)同源と呼ばれる概念があり,人間の健康維持や医療における食物摂取の役割や機能を認めている。またアーユルヴェーダでは1000種類もの薬用植物が記載されており,古代のエジプトでは薬草療法にハーブが利用され,例えばフェンネル,クミン,アロエなどのハーブが食品・薬・化粧品・香水・香料や殺菌剤などに広く利用されていた7)。また,古代ギリシャ・ローマ時代においても,古くは植物誌(Theophrastus,BC 3世紀頃)に数百種類のハーブが記載されその利用が行われていた。その後16世紀頃から草本書(ハーバル,Herbal)が多数著される時代になり,数千種類ものハーブが記載され栽培法や料理法が詳しく知られるようになった。17世紀には草本家のカルペパー(Nicholas Culpeper,1616-1654)により,占星術とハーブの医学的効用などを関連づけた本草百科(The Complete Herbal)が著された。一方,アメリカ新大陸では健康を維持するために,家庭菜園にラベンダー,ローズマリー,カモミールなどの多種類のハーブが栽培された。このようにハーブは薬草療法の素材植物として,例えばうがい薬や煎じ薬,入浴剤そして誘眠効果をもたらす自然の睡眠薬などとして広く用いられてきている8)。このようなハーブ植物の一つにカモミール(カミルレ,カミツレ,Chamomile)があり,補充医療の一つであるアロマセラピー(Aromatherapy,芳香療法)や日常の食生活においてハーブティーなどに広く用いられている9)。このカモミールはサクソン人の時代からイギリスでよく用いられている薬用植物の一つで,ラベンダーやペパーミントなどとならぶイギリス産精油植物として知られている。ギリシャ人はこの花の香りがリンゴの香りに例えられることから「カマイ・メロン」(地面のリンゴ)と呼びこれがChamomileの語源とされている10)。また,スペインでは現在でも薬草としてカモミールがシェリー酒マンサニリャの香り付けに使用されている。
カモミールはヨーロッパ,北アフリカおよびアジアの地域に生育し四つ程度の属に分類される11)。薬用・香料用として用いられるのは,主にローマンカモミール(Chamomile Roman,学名Anthemis nobilis L.)とジャーマンカモミール(Chamomile blue,学名Matricariachamomilla L.)の二種類である。両者ともに開花した花部から精油を水蒸気蒸留により抽出・生産されている12)。
ジャーマンカモミールは世界的に各国の薬局方に公定薬品として登録されていることが多く,抗炎症,鎮痙,消毒用に用いられている。また化粧品業界ではスキンケア製品に利用されている。主な生産国はアルゼンチン,エジプト,ハンガリーそしてドイツなどである。カモミールの精油の主要な化学成分としてテルペノイド類(モノテルペン,セスキテルペンなど)が含まれ,ジャーマンカモミールの特徴成分としてはアズレン(azuren)誘導体,ビサボロール(bisabolol)誘導体があり,ローマンカモミールはアンゲリカ酸エステル,チグリン酸エステルが特徴的成分であると報告されている12)。精油に含まれるカマズレンは品種や産地により含有量には差があるが,抗ヒスタミン作用とロイコトリエン生合成阻害などのメカニズムにより抗炎症作用があるといわれている。また,嘔吐抑制や精神的ストレスによる鼓腸性消化不良,喫煙・水泳などが原因の目の刺激,擦過傷や虫さされなどに用いられている13)。
ローマンカモミールはジャーマンカモミールと異なり多年生植物であり,精油が豊富に含まれ,消化器疾患や毛・頭皮の治療や鎮静・鎮痙剤そして発汗剤などに使用される。その精油の主な用途は化粧品などであり,主産地はベルギー,オランダ,イギリス,フランス,ローマなどである。一般的にカモミールは強肝,強壮,駆虫,解熱,健胃,抗うつ,抗アレルギー,抗リウマチ,抗神経障害,消化促進,鎮痛,通経,瘢痕形成,皮膚軟化,癒傷,利尿作用などがあるとされている14)。
カモミールの食品への応用では,菓子,デザート類およびゼリーなどの香料として用いられているほか,お茶として世界中で慣習的に飲用されている。また苦味酒,ベルモット,ハーブビールなどにも使用されている。近年の日本では高齢化が進行し,高齢者は外部から水分や食物を口に取り込み咽頭と食道を経て胃へ送り込む運動(嚥下)に異常の生じる傾向がある。この嚥下(swallowing,degulutition)障害の結果,栄養摂取不良,誤嚥そして食べる楽しみの喪失などの問題が生ずる15)。この問題を解決するための食品として多種類のゲル化食品(ゼリー)が開発されているが,今後は病院食だけではなくハーブなどを用いた日常の嗜好にかなう嚥下障害の少ないゼリーが期待されていると考える。

3.カモミールの摂食による生理・心理的影響
カモミールは日常生活のなかで食品としても用いられており,健康に良い効果があるお茶としてヨーロッパやアメリカを始め世界的に飲まれている。童話のピーターラビット(PETERRABBIT)では,母さんウサギが子供のピーターに就寝前にカモミール茶を飲ませる場面が記載されている。童話の世界だけではなくカモミール茶の利用は古くから行われているが,就寝前に飲むことから鎮静や催眠効果を期待していると考えられる。しかし,その作用や効果についての学術的報告は極めて少ない。食生活に取り入れられているハーブ茶の効果については,森谷らがカモミール(Matricaria chamomilla)について,カモミール茶(55℃,150ml)摂取による青年男性の自律神経機能と感情指標の変化について白湯と比較した検討を行い,心拍数や末梢皮膚温の変化および感情得点の変化を計測した報告を行った5)。この報告ではカモミール茶と白湯を飲用後の心拍数変化量について検討した。飲む直前の心拍数の平均値には2群間に有意差は無く,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の心拍数の平均低下量が有意に大きいことが示された。また,心拍R-R 間隔変動周波数解析の結果から,交感神経の指標として参考にされるLF/HF 比について,同様に飲用後30分間の2群の平均低下量はカモミール茶を飲用したほうが有意に大きいことが明らかにされた。一方,副交感神経の指標と考えられているHF パワー成分にはカモミール茶と白湯を飲む直前の,2群間には有意差はなく,それぞれを飲んだ後の30分間の変化量についても有意差は認められなかったと報告している。末梢皮膚温変動については,右足の第5趾趾根部で計測が行われ,飲む直前の末梢皮膚温平均値については2群間に有意差はなく,飲用後の時間変動に有意差が認められ,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の平均上昇値が有意に大きいことが示された。心理指標については,橋本と徳永により開発されたMood Check List -Short Form 1(MCL-S.1)16)を用いて感情得点の変化について検討された。飲む直前のリラックス感得点には有意差はないが,カモミール茶を飲用後15分後と30分後には白湯およびカモミール茶のそれぞれの場合に有意なリラックス感得点の上昇が認められた。飲用後の2群間に有意差は認められなかった。また,快感情得点についても同様の検討が行われたが,有意差はなかったと報告している。


森谷と小田は,感情得点と自律神経機能の関連について,心拍数,LF/HF,末梢皮膚温とリラックス感得点などとの相関について検討を行った17)。その結果,図1に示すように心拍数とリラックス感得点の変化量に負の相関(ピアソンの相関係数(r)=-0.496,P=0.019,n=22)が認められた。またピアソンの相関係数による評価から,リラックス感得点とHF の変化量の間に有意な正の相関があることが認められた。さらに末梢皮膚温の実測値とリラックス感得点の間にも有意な正の相関が明らかにされた((r)=0.465,P=0.006,n=22)。このようにカモミール茶飲用後には,自律神経機能の心拍数や末梢皮膚温の測定値とMCL-S.1によって評価したリラックス感得点の間にかなり良い対応関係があることが示されている。この報告ではカモミール茶の飲用は白湯の飲用よりも副交感神経系優位の効果が現れることを明らかにしているが,感情指標についてはその効果が必ずしも明確でない場合があり,嗜好の影響の可能性について示唆している。
近年,井上らは18)ジャスミン茶の香りの嗜好性と自律神経系の活動の関係について,POMSで評価した感情得点を用いた報告を行っている。香りが高濃度と低濃度の場合について,嗜好性の違いによる感情得点とその自律神経活動に対するへの影響について検討し,ジャスミン茶の香気成分が低濃度の場合は好む群と好まない群の両方とも副交感神経活動が上昇し,高濃度の香りの場合は好みの群で副交感神経活動を亢進させ心理状態を鎮静化させ,好まない群においては交感神経活動を上昇させると報告している。
また,角田らはカモミール(Matricaria chamomilla)エキス入りの温めたカモミールゼリーを摂食させたときの自律神経機能と感情指標に対する影響について検討を行った6)。この報告では無農薬栽培のジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla)を原料として抽出したエキスに,果糖・砂糖,ゲル化剤等を加え,ブリックス糖度を14としたゼリーを調製試作(北海道夕張市,S社製造)し,実験に用いている。カモミールエキス以外の成分をほぼ同一とし,同エキスを添加および無添加(対照)のゼリー(75ml)の2種類を用意し,飲食前に60℃あるいは10℃の2種類の温度に調整したものを被験者(健常な30代及び40代の男女40名)に摂食させ,末梢皮膚温(左足第5趾趾根部)および脳波・感性スペクトルの計測および心理指標値としてMCL-S.1による感情得点の測定を行った。その結果,低温で摂食させた場合には末梢皮膚温の上昇は認められないが,温めた状態で摂食させた場合には男性(n=7)および女性(n=8)の両グループともに摂食後22分間に有意(二元配置分散分析,P<0.05)に末梢皮膚温が上昇することを明らかにした。また同エキス無添加のゼリーを摂食した場合には,低温および温めた状態の両者ともに有意な末梢皮膚温上昇は認められなかったと報告している。
MCL-S.1による感情得点の結果から,温めたカモミールゼリーを摂食後の男女のグループについてはリラックス感の増加する傾向が認められたと報告している。また同実験において自律神経活動を評価した報告19)によれば,温めたゼリーを摂食した男女のグループともに心拍数の低下と副交感神経優位の傾向が示された。
これらの結果から,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合,お茶より少ないカモミール量で,揮発性香り成分がより効果的に発散し,生理的効果を与える可能性が示唆されたと考えられる。

4.カモミール摂食と睡眠
近年になり,夜間睡眠における睡眠不調・睡眠障害に悩む人たちが多く,中でも中年期以降に睡眠不調・障害の多発することが知られるようになってきた。健康づくりに関する意識調査20)において,「眠りを助けるための睡眠剤や安定剤などの薬やアルコール飲料を使いますか」の質問に対して「時々ある」「しばしばある」「常にある」と答えた人の割合が14.1%あり,健康日本21「3.休養・こころの健康づくり」では2010年までの到達目標を13%としている。
例えばハーブ植物の一種のバレリアン(吉草根)については,鎮静作用等のほかに,OSA 睡眠調査票を用いた実験調査による睡眠の改善作用が最近報告されている21)。また,樹木由来の香気成分の一種であるセドロールについて,その睡眠に与える影響の検討が報告された22)。この報告では,何らかの睡眠不満を自覚している20代女性の性周期低温期において,自宅で3日間の生活調整期間後6日間の宿泊試験を1クールとして実験を実施している。セドロール使用量は被験者が全く感じないかあるいはかすかに感じる程度の濃度に調節され,就寝前・就寝時合わせて4時間提示している。この実験では睡眠段階(覚醒,睡眠深度,レム・ノンレム睡眠など)の判定は睡眠脳波により行われ,眼振電位,オトガイ筋筋電位,心拍,呼吸および皮膚電位反応が記録され,プラセボ夜およびセドロール夜の試行はダブルブラインドテストで実施されている。この実験結果から,総睡眠時間はプラセボ夜では平均394.7分に対し,セドロール夜では平均408.0分であり,有意に延長したことが示された。入眠潜時は前者が平均16.8分に対し,セドロール夜では9.3分と有意に短縮し,睡眠効率については前者が91.9%に対し,セドロール夜では95.2%まで上昇する傾向が認められている。中途覚醒時間には,有意差はなかったと報告している。この報告では,セドロールが交感神経系を鎮め,睡眠前に副交感神経活動優位に切り替えることをスムーズに行うことで心身がリラックスし,入眠が円滑に起こり良好な睡眠が維持されたと推察している。一方,徐波睡眠出現率および段階REM 出現率に関する解析では全く差がなく,セドロールは本来の睡眠構造自体には変化を与えず,睡眠を良好な状態にすることを示唆している。
カモミールについては伝統的に睡眠改善に良いといわれてきているが,明確な実証データや学術報告は多くない。一つの報告としては23),心臓病患者を被験者として心室カテーテル実施の際にカモミール茶(約170ml,白湯摂取などの対照実験なし)を飲用させ,血行力学的反応について評価した実験である。この実験結果ではカモミール茶飲用後に全ての患者(10名)が眠りについたと報告され,催眠効果があるとされている。カモミールの催眠効果については殆どがこの報告を基に引用されているが,その後詳細な研究報告は未だ行われていない。
既に報告されているように,カモミール茶やカモミールエキスを含んだゼリーの摂食がリラックス感得点の上昇や副交感神経活動優位の傾向をもたらすことから,睡眠への影響が期待されると考えられる。そこで,筆者らはカモミールゼリーの摂食が被験者の副交感神経系および自覚的睡眠感に及ぼす影響について検討を行った24)。この実験では前述の摂食実験と同様の実験条件下で,カモミールエキス添加ゼリーと同エキス無添加ゼリーを温めて摂食させ,OSA睡眠調査票起床時調査によって検討がされた。睡眠感の評価には,睡眠現象を統合的に把握するために小栗ら25)が開発したOSA 睡眠調査票を用いた。この調査票は,睡眠前調査により不適切な被験者の除外と生活態度や就寝前の身体的・精神的状況を把握するための21項目の質問と,起床時の調査により睡眠感を構成する因子のもとになる31項目の質問および身体的愁訴とその有無に関する質問に答えてもらうよう構成されている。この報告ではOSA 睡眠調査票の結果をもとに,小栗らの抽出した①ねむ気の因子,②睡眠維持の因子,③気がかりの因子,④統合的睡眠の因子そして⑤寝つきの因子の5つの下位因子に分けて検討が行われた。同実験は第1期と第2期に分けて実施され,第1期の被験者は特に睡眠障害を持たない健常な30代および40代の男性7名を被験者として実施され〔年齢:37.7±5.4(mean±SD)〕,第2期は同様に健常な閉経後の50代および60代の女性7名を被験者として〔年齢:60.3±2.7(mean±SD)〕実施されている。第1期の実験結果では,無添加(対照)と比較し,カモミール添加ゼリーの摂食夜は3つの因子,①ねむ気の因子(t=-2.4679,p=0.0486),②睡眠維持の因子(t=-2.5809,p=0.0417),⑤寝つきの因子(t=-2.5262,p=0.0449)について有意に高い値を示した。(図2参照)

この報告の第2期の実験では,第1期と同様に温めたゼリーを摂食させ,睡眠に関する5つの下位因子について比較分析を行った。その結果,①ねむ気,②睡眠維持,③気がかり,④統合的睡眠そして⑤寝つきの5因子について対照と比較し,カモミール添加ゼリー摂食夜には②睡眠維持の因子について有意差(t 検定,p=0.0313)が認められた。(図3参照)

筆者らは,温めたカモミールゼリーを摂食した場合に,皮膚温の上昇と末梢血流の増大,副交感神経優位状態やリラックス感が増大することを既に報告している。一般に情動が睡眠状態に関係しリラックス感のようなポジティブな感情が睡眠を良好にすることが知られており,これらの結果から温めたカモミールゼリー摂食の心理生理的効果が帰宅後の就寝前まで持続し,ねむ気,寝つきを良くする傾向をもたらし,睡眠維持に効果のあった可能性が示唆されている。前述のセドロールの場合においても,就寝前の精神的・生理的状態の重要性が指摘され,眠りにつく前の自律神経活動が交感神経支配から副交感神経支配優位に切り替わることが入眠を円滑にすると指摘されている。
また最近,セドロールが野生のカモミール(Chamomilla recutita,Matricaria chamomilla)とその組織培養株に含まれる新しいテルペノイドとして報告され,カモミールの自覚的睡眠感や自律神経系へ影響する作用物質としての可能性が注目される26)。

5.おわりに
植物カモミールは人類の歴史や食文化,医薬学などの進歩・発展とともに,その補充・伝統医療や身近な生活の場面などに用いられてきている。今後の日本は高齢化社会が進み,人々の日常生活のなかでの健康維持やストレスが大きな課題になると考えられる。それにともない加齢による睡眠障害に悩む人の割合が増加し,ストレスに悩む中高年の男性や女性にとって大きな心身上の課題となり,この解決に植物カモミールの摂食が貢献できる可能性が期待される。
既にカモミール茶や温めて食べるカモミールゼリーが自律神経活動に影響を与え副交感神経優位をもたらし,この現象と相関して感情評価尺度によるリラックス感得点が上昇することが明らかにされた。一方,植物カモミールに含まれる香気成分やその他の含有成分が心身に及ぼす作用機構や作用物質などについて,新しい知見も見出されつつあるが未解明の部分がまだ多く,特に睡眠に対する影響などについての研究が必要と考えられる。
今後はこれらの研究成果が,例えば睡眠不満やストレスに悩む中高年世代や介護高齢者の睡眠改善へ応用され,人々の健康維持や向上に貢献することが期待される。
[引用文献]
1) 厚生労働省:平成12年度保健福祉動向調査,2000,http://www.mhlw.go.jp/
2) 中沢洋一,小鳥居湛:不眠,睡眠の科学(鳥居鎮夫編),朝倉書店,224-227,1989.
3) 香坂雅子:固有の診療科を離れた立場から―女性に特有な睡眠障害,診断と治療,92⑺,1207-1212,2004.4) Christine Maguth Nezu, Arthur M.Nezu, Kim P.Baron, and Elizabeth Roessler:Alternative Therapies,
Encyclopedia of stress, 1, 150-158, 2000.
5) 森谷,小田史郎,中村裕美,矢野悦子,角田英男:カモミール茶摂取による自律神経機能と感情指標の変化―青年男性における検討―バイオフィードバック研究,28,61-70,2001.
6) 角田英男,矢野悦子,前田智雄,武藤俊昭,森谷:カモミールのリラックス効果とその応用―機能性を有する温めるゼリー食品―AROMA RESEARCH,Vol.3,No.2,31-36,2002.
7) 陽川昌範:ハーブの科学,養賢堂,1998.
8) 鳥居鎮夫:香りの謎,フレグランスジャーナル社,1994.
9) Shirey Price(高山林太郎訳):実践アロマテラピー,1983.
10) Robert Tisserand(高山林太郎訳):アロマテラピー芳香療法の理論と実際,フレグランスジャーナル社,1985.
11) 阿部誠:カモミールとその近縁種,Aromatopia 8,44-47,1994.
12) 和智進一:カモミールの精油と分析,Aromatopia 8,52-55,1994.
13) K.P.ズボボダ,J.B.ハンプソン:エッセンシャルオイルとその成分の生理活性―ローマンカモミール―(Chamaemelum nobile L.),AROMA RESEARCH Vol.1,No.3,80-85,2000.
14) ワンダー・セラー(高山林太郎訳):アロマテラピーのための84の精油,フレグランスジャーナル社,1996.
15) 聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル,医歯薬出版,2003.
16) 橋本公雄,徳永幹雄:運動中の感情状態を測定する尺度(短縮版)作成の試み―MCL-S1尺度の信頼性と妥当性―,健康科学,18,109-114,1996.
17) 森谷,小田史郎:香り効果判定における自律神経機能と感情指標の対応,AROMA RESEARCH,Vol.3,No.4,72-77,2002.
18) Naohiko Inoue, Kyoko Kuroda, Akio Sugimoto, Takami Kakuda, and Tohru Fushiki:AutonomicNervous Responses According to Preference for the Odor of Jasmine Tea,Biosci.Biotechnol.Biochem.,67(6), 1206-1214, 2003.
19) 橋本恵子:カモミールゼリーの摂食がもたらす生理心理的効果,北海道大学大学院教育学研究科修士論文,2002.
20) 財団法人健康・体力づくり事業財団:平成8年度健康づくりに関する意識調査,1997.
21) 株式会社ファンケル:プレスリリース,重工記者クラブ,平成14年11月22日配布資料,1-5,2002.
22) 山本由華吏,白川修一郎,永嶋義直,大須弘之,東條聡,鈴木めぐみ,矢田幸博,鈴木敏幸:香気成分セドロールが睡眠に及ぼす影響,日本生理人類学会誌,Vol.8,No.2,25-29,2003.
23) Lawrence Gould, C.V.Ramana Reddy, Robert F.Gomprecht:The Journal of Pharmacology, Nov.-Dec., 475-479, 1973.
24) 矢野悦子,橋本恵子,生野寿恵,角田英男,森谷:温めたカモミールゼリーの摂食が自覚的睡眠感に与える影響,日本生理人類学会誌,Vol.9,特別号⑴,132-133,2004.
25) 小栗貢,白川修一郎,阿住一雄:OSA 睡眠調査票の開発,精神医学27⑺,791-799,1985.
26) Eva Szoke, Emoke Maday, Erno Tyihak, Inna N Kuzovkina, Eva Lemberkovics:New Terpinoidesin cultivated and wild chamomile (in vivo and in vitro), Jouranal Of Chromatography. B, AnalyticalTechnologies In The Biomedical And Life Sciences, Vol. 800, Issue 1-2, Feb. 5, 231-238, 2004.

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なぜ安眠家具「Sleep Labo」がいびきを解決する唯一の方法なのか

1、いびきの原因は何か
① いびきはなぜうるさいのか
  a、いびきの音を小さくする

その為、いびき対策でよく言われるのは、口を閉じること。鼻呼吸にして口を閉じれば、いびきをかいても、口を開けているよりは静かです。

舌の奥や喉の周辺の組織をふるわせて音を出すいびきは、鼻呼吸では出せません。

では、口呼吸を防止して鼻呼吸になれば、いびきをかかないかというとそうではありません。
鼻で呼吸をしていても根本の原因が別にあるので、やはりいびきはかきます。
口呼吸ほどうるさくないかもしれませんが、気になる他人の睡眠を妨げます。

② いびきはなぜかくのか

  a、どういう時にいびきをかくのか

これまでは、肥満や顎が小さい、舌が大きい、鼻炎があるなどの身体的特徴により気道の周りの組織が
厚く、気道が狭小となっている場合、いびきをかくと言われていましたが、そうではない人もいびきをかき
ます。
どんな時にいびきをかくかを見ると、身体的特徴とは直接関係がないように感じますね。

  b、胃食道逆流症

  c、対症療法の危険

逆流性食道炎や肺炎を予防するために、食道が狭まり、同時に気道も狭くなるため呼吸で音が出てしまうのが「いびき」ですが、いびきを予防する様々なサプリやツールなどは、果たして効果が
あるのでしょうか?

根本的には胃食道逆流症を直さなければいけないわけですが、胃食道逆流症の自覚症状が出る前はいびきや睡眠時無呼吸症候群としてしか現れないので、ついついいびきを止めようとしてしまいます。

注意をしなければいけないのは、その作用によって、食道が開いたり、逆流性肺炎になる危険を増加させないようにしなければいけません。
やみくもに、気道を広げればいいわけではないのです。
睡眠時無呼吸症候群の治療で使われるCPAPは、対症療法ではありますが、加圧空気を気道に送る際、同時に食道にも送られるため、逆流性肺炎を防ぐ効果もあります。
しかしながら、根本治療をしなければ、いつまでも使い続ける必要があるのです。

2、いびきをかかなくする方法
① 生活習慣の改善
  a、いびきの根治
原因がわかれば、治療も根治もできそうな気がします。
暴飲暴食を避ける。腹八分目にする。寝る5時間前までに食事を済ませ、寝るときには胃の中が空っぽになるようにする。
酒たばこもできるだけ控える。睡眠薬を飲まない、ストレスのたまらない生活にする。
規則正しい生活をし、
でも、早めの治療で、生活習慣を切り替えることができれば、いびきも根治可能です。
たまのお酒や、疲れによるいびきも継続しなければ問題ではありません。
ただ、生活習慣を切り替えても体がそれに慣れるまでは少し時間がかかります。

  b、根治不可能
さて、根治可能と書いた直後ですが、落とし穴があるのです。
胃と食道の間の仕切りを噴門といいますが、この噴門は一度緩んでしまうと元に戻らないようです。また、老化や女性の場合は閉経に伴うホルモンの影響なども噴門が緩む原因となるそうです。そのため生活習慣を切り替えて、胃の中を空っぽにしても、胃酸が出れば寝ているときに逆流してしまう可能性が残ります。
逆流した胃酸が食道を焼けば逆流性食道炎となりますし、胃酸が肺に入れば、逆流性肺炎となり、誤嚥性肺炎以上に肺へのダメージが大きくなります。
噴門は弁のようなものではなく、ぞうきんを絞るような形でしまります。子供がいびきをかかないのは、噴門の力が強く逆流しないからで、暴飲暴食やストレスなどで、胃に負担をかけているのは大人と変わりません。赤ん坊のいびきは、逆に成長しきっていない為、噴門が弱くミルクなどを吐くのを抑えているからと思われます。

3、いびきの「解決」とは
① 家族の安眠
  a、安眠家具というカテゴリー
さて「いびき」の原因や、「いびき」をかかなくする方法などを書いてきました。
いびきをかいているのは、決していい状態ではありません。特に激しい大きな音が出るのはそれだけ体への負担が大きく、体からのSOSと受け止めるべきです。
そして、家族の安眠を脅かしています。
家族に迷惑をかけないようにするために、生活習慣を見直す決意と、音の対策をしましょう。
毎日激しいいびきをかいている方は、生活習慣の根本的改善が絶対に必要です。
それには、大変な決意と時間が必要です。
時間がかかる間は、Sleep Laboが、家族の安眠を取り戻す助けになります。
Sleep Laboは、安眠家具です。世の中には安眠家具というカテゴリーがありません。
いびきの解決は、早期であれば根治も可能ですが、最終的には音の減少しかないのです。
唯一の解決策がSleep Laboである所以です。

  b、本人の安眠
さて、Sleep Laboは、安眠家具です。家族のためのいびき対策はその機能の一部であり、本来は使う人の安眠を助けるための家具です。

       ・まぶしさを防ぎ、安眠を助けます。
  ・騒音を遮断し、静かな時間を提供します。
  ・寒さを退け、暖かい空間を作ります。
  ・乾燥から守り、潤いを逃しません。
  ・被災時の避難空間になり落下物から守ります。
  ・自分だけの落ち着ける空間を創造します。

 

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