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(paper)不眠症の診断と治療

昨日突然yahoo IDによる知恵袋の利用ができなくなりました。特にいびきに関して回答をしていたのですが、どうやら広告ととられたようです。いびきに関しては結構いい加減な回答をしている人が多かったので、修正していたのですが、少しやり方を変えるしかなさそうですね。

本日は、不眠症の診断と睡眠薬の使い方辞め方が分かりやすく説明されている論文を見つけたのでご紹介いたします。

不眠症の診断と治療
村崎 光邦
不眠は臨床的には痛みに次いで多い訴えであり, 日常の臨床場面で不眠症患者の治療が必要になる機会はきわめて多い, アメリカの国立精神保健研究所NIMHでの最初の調査では10.2 % が重い不眠に悩み,そのうちの31 % は1 年後もなお不眠を訴えており,全体の3% は厳密な意味での慢性不眠症と判断されている。また,1950 人のインタビューによるGallup 調査では9% が慢性的に不眠を訴え,うち20 % か睡眠薬を服用している。ヨーロッパでの調査でも2% はいわゆる不眠症であるとの結果が得られている。資料のとり方や不眠症の定義の違いなどで、多少の開きはあるが,調査対象の2~ 3% が慢性の不眠症で治療が必要があるとのコンセンサスがある。
最も外来患者数の多い病院の1 つである北里大学病院,北里大学東病院における1991年度の外来処方箋1万枚あたりの睡眠薬の処方頻度をみてみると,全科平均8.1% に及び,精神神経科のみでは51%と外来患者の半数以上に睡眠薬が処方されるように,現実に外来患者のいかに多くが睡眠薬を服用しているかが明らかである(表1)。したがって,不眠症の正しい知識とその治療法を知ることは,一般治療科の医師にとってきわめて大切である。ここでは,不眠症の診断と治療,とくに睡眠薬の使い方とやめ方について解説しておきたい。
http://ci.nii.ac.jp/els/contents110004696666.pdf?id=ART0007435515

不眠症の診断
1. 睡眠調査表を用いた診断
不眠症の診断は、眠れない、あるいは眠れないために翌日気分が優れず、日常生活に支障があるといった 患者の主観的訴えに基づくことになる。例えば、国際疾患分類案(ICD-10)による不眠症診断ガイドラインでも、①入眠困難 (2時間以上寝つけない)、睡眠の持続の障害 (中途覚醒:一晩に2回以上、早朝覚醒: 普段より2時間以上早く目覚める) および熟睡感のなさのうち、1つ以上を訴える、②不眠の訴えは少なくとも週3回以上あり、1か月以上持続している、といった2項目を重視し、付加的に、③眠れないとの先入感があり、不眠を過剰に気にしている。④顕著な苦悩, 社会的、職業上の困難を惹き起こしている、との2項 目を加えているように、主観的訴えが診断の中心となっている。
ここでは、睡眠調査表を用い具体的点数化を試みた 診断の仕方を紹介しておこう(表2)。この表から。中等度以上の不眠があると判定された場合には治療が必要となる。


項目①~⑦の合計点が多いほど下位へランクする。但し、合計点が6点以下でも1つの項目で3点がある場合は1ランク下位へ、7点以上で2つ以上の項目に3点がある場合は2ランク下位へ下げて評価する。中等度以上の不眠がある場合は治療が必要となる 。
⑧と⑨の項目は睡眠の精神身体に及ぼす影響や不眠症の原因を考えるうえの参考になり①~⑦の点数が低くても、この項目での点数が高い場合には精神医学的治療が必要である。

2.睡眠ポリグラフィ記録による診断
主観的訴えのみでは把握しえない特殊な不眠症の診断に、脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図を中心とする睡眠ポリグラフイ記録 (polysomnography。 PSG) を実施して、一夜の睡眠経過や夜間のエピソー ドを客観的に知ることが必要となる。PSG からは次のような情報が得られる。
a) 睡眠経過と睡眠パターンのパラメーター
Rechtschaffen – Kalesの基準を用いて、①全睡眠時間、②入眠潜時、③覚醒時間の長さおよび中途覚醒の頻度、④各睡眠段階の量と比率 (徐波睡眠とレム睡眠)、⑤レム睡眠潜時、⑥睡眠効率などの睡眠パターンのパラメーターを計算するとともに、一夜の睡眠 経過を描くことによってどの程度のおよびどのタイプの不眠症が存在するかを客観的に明らかにすることができる(図 1)。
本態性不眠症とも特発性不眠症とも呼ばれている精神生理性不眠症は、神経質な人や心気的傾向のある人にみられ、寝つきがわるくなったり、眠りが浅くなったりするが、全体としては睡眠の量や質は正常者のそれと変わらないことが多いといった事実が PSG で明らかにされているし、客観的所見を欠 不眠症と呼ばれるものも、PSG によって実際にはよく眠っていることが証明されよう。
b) 睡眠時無呼吸の有無と程度
覚醒時には呼吸障害がみられないのに、一晩7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸の回数(apnea index)が5回 以上みられる場合を睡眠時無呼吸症候群と診断する。PSG の所見から、睡眠時無呼吸の型 (閉塞型、中枢型、混合型) や程度(無呼吸指数 apnea index)を知ることによって、睡眠時無呼吸症候群の存在が明らかにされる。同時にパルスオキシメトリーによって動脈血酸素飽和度を連続測定することで、より正確な情報のもとに正しい診断が可能となる。表3にみるような 症状が認められて、とくに不眠が強い症例は睡眠時無呼吸不眠症候群ということになる。主な原因は上気道の閉塞であり、アルコールや睡眠薬はこれを悪化させることがあるので、主訴が不眠でも、本病態が疑われる場合には PSG を施行し、診断を確定し、上気道狭猪の除去を中心とする治療をすすめることが必要である。

c) 睡眠時ミオクローヌスの有無と程度
入眠とともに両側下肢の前腔骨筋にミオクローヌスが出現し著しい場合には睡眠が中断されて不眠症をきたす。睡眠時ミオクローヌス不眠症候群の存在を疑った場合には、前脛骨筋の表面筋電図を同時記録することで、容易に確定診断される。むずむず脚症候群 restless legs syndrome.に随伴して出現することが稀でない。
d) 夜間の異常行動と睡眠パターンとの関連
高齢者やアルコール離脱期にみられる夜間せん妄や、高齢者や小児にみられる夢中遊行と睡眠パターンとの関連をみることができる。近年、高齢者の夢中遊行とレム睡眠との関連がレム睡眠行動障害として注目されている。
以上のように、PSG から得られる情報はきわめて多く、睡眠障害の診断には決定的といえるが、一晩のみの記録では初夜効果のために正確な情報とはなりえず、最低二夜連続の記録は必要である。単なる不眠症には睡眠調査表のみで診断可能であるが、睡眠薬などの治療でむしろ悪化するような場合には、こうした検査を積極的に施行して、診断を確定した上で治療を行なうことが必要である。PSG の実施には特別の施設と専門医が必要であり、遠慮なくこうした施設へ依頼することをすすめたい。

不眠症の原因と分類
1.原因
ヒトの睡眠・覚醒リズムは、脳内の上位機構としての体内時計のコントロールのもとに覚醒中枢と睡眠中枢が相反性に働き、サーカデイアンリズムが形成されていると仮定するとよい。このリズムを乱すようないかなる因子も睡眠・覚醒障害としての不眠をもたらすことになるが、外から入ってくる刺激による不眠症を大別すれば、心因性と身体因性とに分けられる。これを模式的に示したのが図2である。

心因性の不眠とは, 大脳辺縁系を中心とする情動中枢に不安、懸念、心配事、恐怖などの情動性ストレスが入って興奮させ、情動中枢からの強いインパルスが覚醒中枢へ送りこまれてそこを興奮させる結果、覚醒中枢が優位となって睡眠中枢の働きを抑え、脳全体を覚醒させる方向に展開して不眠をもたらす。一方、身体因性の不眠は、知覚経路からのインパルスが側鎖を通って脳幹網様体-視床非特殊核からなる覚醒中枢へ送りこまれて興奮させ、同じくこれが睡眠中枢の働きを抑えて不眠をもたらす。なお、内因性のものは、躍うつ病や精神分裂病のように内因性に規定された脳内のある部位の活動性異常が直接-間接に睡眠・覚醒機構に作用して不眠をもたらすと考えられている。
実際の臨床では、不眠症の原因は5つの P として 表4のようにまとめられており、きわめてわかりやすい。2. 分類
睡眠・覚醒障害の国際分類は、アメリカのASDC-APSS 分類と ICSD 分類”が有名であるが、詳細をきわめており、ここに紹介しきれない。ここでは期間別に分類したものが臨床的に有用であり、理解しやすいので紹介しておく。診断の項で述べたように、いわ ゆる不眠症とは、長期不眠のことであり、この中に重要な不眠症のすべてが網羅されている(表5)”。

精神生理性不眠とは、とくに原因もないのに不眠が現われる特発性不眠症あるいは本態性不眠症と同義であり、性格要因が強い。はっきりと取りあげるほどのストレスはかかってはいないかにみえるが、性格的に過敏で、内省的、心気的であることから、日常の生活の中で、不断のストレスが情動中枢をチリチリと刺激し続け、覚醒中枢へこまかいインパルスが送り続けられることによって、結果的には心因性不眠と同じ機序で不眠に陥ってしまうものをいう。心因性不眠症の1 つのタイプで、ストレスが表面化していないものといえ、その代表的なものが不眠を恐れる神経質性不眠である。

不眠症の治療
不眠症の治療は、まず第一に睡眠薬によらない治療を試みるべきである。うまく成功すれば、そのまま不眠症状の改善が得られて、睡眠薬を使用することなく治療しうることになる。現実には睡眠薬の使用の段階へ進まざるをえない不眠症が多いのも事実であるが、治療法の順序はこれから述べる方法をまず試みることである。

1. 睡眠薬によらない治療
まず、毎晩の睡眠を良好なものとするにはいくつかの工夫が有用なことが知られている。そのすべてを列記したのが表6である。ここに書かれている項目は, いずれも比較的容易に実行可能なものであり、まず実施してみることである。これらの工夫はいずれ次の治療段階へ進む場合にも引き続いて実行すべきものである。

次に、不眠の改善のための行動療法について述べておこう (表7)。ここにあるすべての療法を一つ一つ 試みることは不可能で、いくつかを組み合わせて実施することになる。いずれも専門家の指導が必要であり、例えば最も有用性の高い自律訓練法を例にとると、専門家のいる精神科なり心療内科を受診してまず自律訓練の方法を教わる。何回か通院してそのやり方をマスターすれば、あとは自宅で自分で続けることによって不眠症の治療をめざして頑張るということになる。
以上のような薬物によらない治療を行なうのみならず、薬物療法に進んだ場合にも、認知療法を基底にした精神療法を併用すると、より効果的になる。患者の不眠症の詳細を領解したうえで、治療者はヒトの睡眠はどのように起きているのか、患者の不眠はどうして起きているのか、どの程度のものなのか、不眠が続いた場合にどういうことが起きるのか、詳しく教えこむ。よく患者は睡眠中に死亡することがあるのではないか、不眠症が続くうちにどうにかなってしまうのではないか、翌日の仕事に悪い影響を及ぼして、だめになってしまうのではないかといった不安感、恐怖感を抱く一方で、睡眠薬への恐れを抱いていることが多いのである。まず患者の抱いている不安をやわらげるような状況に導いたうえで治療に入ることが肝要である。

2. 薬物による治療
可能な範囲で薬物によらない治療を試みたうえでなお不眠症状が改善しない場合には、睡眠楽による治療へ進むことになる。
a) 睡眠薬の種類
睡眠薬は大きくはbarbiturates, nonbarbiturates,およびbenzodiazepine受容体作動薬系睡眠薬 (BZ 系睡眠薬) の3つに分類される。barbiturates は図3にみるように、脳全体を抑制し、強力な麻酔作用ともいうべき催眠作用をもたらすが、高用量になると、脳幹の生命維持機構をも抑制するために、常用量の10倍量で皆睡状態に陥り、大量服用で呼吸中枢の抑制による死亡に至らしめ、中毒量との安全幅が狭いという欠点を有している。しかも耐性が早く形成され、 退薬症候もせん妄、けいれん発作など激しいものが起こりうる。こうした barbituratesの欠点を克服すべく開発された nonbarbiturates も、 barbiturates と同じ欠点を有してこれを克服しきれず、多くのものが姿を消し、現在では bromvalerylurea と新しいタイプの perlapine, butoctamide のみが残っているが(表8)、いずれも処方頻度は低く、私自身は barbiturates は例外的にしか用いず、 nonbarbituratesも perlapine を分裂病患者の不眠に用いることがあるくらいで、睡眠薬といえば BZ系睡眠薬のことを指すといってよい。
BZ 系睡眠薬は、現在benzodiazepines, thienodiazepines, cyclopyrrolones の3種類があり、いずれもBZ 受容体作動薬であり、共通の作用機序と作用特徴および副作用を有していることから、一括して BZ系 睡眠薬と呼んでいる (表8)。すなわち、主として情動中枢である大脳辺縁系に存在する BZ受容体に結合ることによって、脳内の抑制系伝達物質である GABAの活性を高め GABA 受容体と chloride channel 2 のカップリング機能を高め、chloride channelの開存頻度を増加させ、Cl⁻の細胞内流入を増加させて脳の興奮を鎮めるという作用を有している。いずれも催眠 作用のほかに、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弾地緩作用を有しており、情動中枢に選択的に作用することから (図3)、過量服用による自殺に成功しないくらいに生命的には安全性が高い。


c) 薬物動態からみた BZ系睡眠薬の特徴
BZ 系睡眠薬は、作用時間の長さによって、①超短時間作用型,②短時間作用型,③中間作用型,④長時間作用型の4つに分類される(図4)。
超短時間作用型
消失半減期が2〜4時間ときわめて短い超短時間作用型は、服用とともに素早く血中濃度が上昇して、睡眠の前半に強く作用し、入眠障害に対して優れた催眠効果をもたらす。翌朝の覚醒時には、血中濃度はすでに有効濃度を割っており、残薬感を残さず、目覚めのよさを自覚させる。入眠障害を主たる訴えとする精神生理性不眠に最適であり、熟眠感の欠如に悩むタイプ の不眠症にもきわめて有効である。その反面、一夜の後半、とくに早朝期に血中濃度が低下しているために、早朝不眠 early morning insomniaとして明け方の5~6時に覚醒してしまうことがある。また、日中不安 daytime anxiety、反跳性不眠 rebound insomnia, BZ 健忘をきたしやすいとの指摘もあり、作用時間の短いものほど退薬症候や臨床用量依存との関連が深いとするのが一般的見解である。

短時間作用型
消失半減期が 6〜10 時間の短時間作用型も超短時間作用型と同様の経過をとり、朝方には何らかの作用を発揮しうるレベルを下回っていることから、翌朝の覚醒時の気分は良好で、超短時間作用型と同様な適応を有すると考えてよい。ともに、毎日服用することが あっても、最高血中濃度はほぼ同じ値を示して、蓄積することがない (図4)。

中間作用型
消失半減期が20〜30時間の中間作用型では、翌日の就寝時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに中等度の蓄積が生じ、4、5日のうちに定常状態に達する。したがって、朝の覚醒時に眠気、頭重、ふらつきなどの持ち越し効果 hangover をきたすことがありうる。中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持の障害を主訴とするタイプの不眠症に向いている。日中もある一定レベルの血中濃度が維持されることから、朝、覚醒時に不安・緊張を呈しやすい病態。とくに不安神経症やうつ病、あるいは精神分裂病といった精神医学的疾患に伴う不眠症には適応といえる。 1991年度の北里大学病院、北里大学東病院でのBZ系 睡眠薬の処方頻度をみても、この間の事情が如実に示されている (図5)。

長時間作用型
活性代謝物を含めて、消失半減期が50~100時間と長い長時間作用型になるとこの傾向はさらに強く、最高血中濃度の上昇とともに、昼間の血中濃度もかなり高いレベルに維持され、定常状態に達するのに1週間前後かかる。持ち越し効果や日中の精神運動機能に及ぼす影響は、それだけ出やすくなる。反面、急に中断しても反跳性不眠や退薬症候は出にくく、睡眠維持の 障害や日中の不安・緊張の強い病態によく、精神医学的疾患にみられる不眠症への適応は高いといえる。

睡眠薬選択の基準
睡眠薬の選択基準には、不眠症の原因別に選ぶ方法,タイプ別 (入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒) に選ぶ方法、不眠症患者の病態に応じて選ぶ方法 (不安や抑うつ病状の有無) の3つがある。いずれも睡眠薬の持つ作用時間の長さが選択基準の基本になっている。睡眠薬の処方に当たっては、3つの方法を総合的に組み合わせることになるが、以下に期間別の不眠症の分類 (表5) に従って述べておく。
1,一過性不眠
作用時間の短いものを1、2日の単発的、アドリブ的投与する。ゴルフの前夜のみ服用して成功している例を知っている。

2。短期不眠
やはり作用時間の短いものを不眠時のみ、あるいは 2日1回くらいの割合で投与して、できるだけ短期の使用にとどめる。時差呆けに超短時間作用型はきわめて有用である。短期不眠から長期不眠に移行しうるので、ここでしっかり治療して長期への移行を防止しておかねばならない。

3. 長期不眠(慢性不眠症)
a) 不眠症のみの場合: 日中に不安症状のない、不眠のみの場合には、本態性不眠症 (精神生理性不眠) や身体疾患に伴う不眠症が中心であり、主に入眠障害を呈することから、寝つきをよくし、翌朝に持ち越し効果のない作用時間の短いもの、ことに超短時間作用型がよい。
b) 不安や抑うつ症を伴う不眠症の場合: 持続性のストレスや精神医学疾患に伴う不眠症では、日中の不安、緊張、焦燥や抑うつ症状が存在することが多い。こうした場合には、日中に BZ系抗不安薬を投与されている症例には、入眠障害には作用時間の短いもの、中途覚醒あるいは早朝覚醒の睡眠維持の障害には、中間型ないし長時間型のものを選べばよい。
日中に BZ 系抗不安薬が投与されていない場合には、どのタイプの不眠症にも中間型ないし長時間型の BZ 系睡眠薬を投与して、日中にもある程度の血中濃度を維持することによって、不眠症のみならず、抗不安作用をも期待する方法がよい。
c)高齢者の不眠症:高齢者では、BZ 受容体の感受性が亢進するとともに、薬物動態上、肝クリアランス の低下に伴って、最高血中濃度の上昇と消失半減期の延長が認められることから、作用・副作用とも強く出て、ふらつきによる転倒・骨折などの危険性がある。 作用時間の短いものほどよく、また、代謝過程の単純な lormctazepam や筋弛緩作用の弱いrilmazafone が推奨される。原則として成人量の1/2から始めるのが安全である。

眠眠薬の副作用
BZ 系睡眠薬は辺縁系を中心とする情動中枢に選択的に作用することから、それ自体の単独使用では、自殺に成功しないといわれ、臓器障害を惹起することがなく、主作用に耐性が形成されないとされて、優れた臨床効果と高い安全性から全世界で広く用いられている。しかし、いくら安全とはいっても、BZ系睡眠薬の副作用としていくつかの問題点が指摘されている (表9)。

この中で、とくに問題となるのは、健忘作用, 反跳性不眠、退薬症候および臨床用量依存である。
健忘作用は、diazepam の静注製剤をよく用いる麻酔科領域では、BZ 健忘として古くから知られていたが、高力価の超短時間作用型睡眠薬が繁用されるようになって、経口剤による報告例が増加し、とくに triazolam の高用量やアルコールとの併用といった不適正使用による健忘や多彩な精神病様症状がマスコミに過大かつセンセーショナルに取りあげられ、一時は社会問題とさえなった。その経緯は別の総説に詳しいが、適正目的による適正使用によって triazolam の使用には問題となることはないとの結論が出されている。
次の反跳性不眠、退薬症候、臨床用量依存は睡眠薬はのみ始めると癖になってやめられなくなると、医師も患者も等しく睡眠薬の使用を怖れる原因となっているもので、その成立過程は図6のように説明されている。

全国の内科医と精神科医を対象して実施したアンケート調査にも、処方する医師自身にこうした現象を恐れて、睡眠薬の処方に強い抵抗があることが明らかにされている”。図6の説明によると、睡眠薬によって一時は症状改善するが、耐性形成のために効果が薄れ、睡眠薬を増量する。そうするとそれにまた耐性が生じて眠れなくなるために思い切ってやめようとする。ところが、反跳性不眠と退薬症候が出現するために薬物を再開せざるをえなくなり、ここに依存が形成されるとの悪循環に陥るというのである。BZ 系睡眠薬は原則として耐性形成はなく、効果が薄れて増量していくことはないのであるが、一挙に中止した際、反跳性不眠や退薬症候が出現しうることは事実であり、やめるにやめられない臨床用量依存が形成されることはよく知られている。
これらの問題は、不眠症状が十分に改善したのち。 医師・患者間で睡眠薬を漸減・中止の方向への努力を進めることで解決していくべきものであろう。

眠薬のやめ方
不眠症状が改善して、睡眠薬なしに眠ることが可能な状態になったと判断されたときには、睡眠薬を中止することになるが、反跳性不眠や退薬症候を避けるために、いくつかの工夫が必要となる。 1. 漸減法 tapering method
BZ系睡眠薬は作用時間が短いものほど、一挙に中止すると反跳性不眠や退薬症候が出現しやすいので、徐々に減らすことが肝要である。まず、1日1/4量を減量し、3/4量を1~2週間続け、経過がよければ次には1/2量とし、さらによければ1/4量にする。減量して不眠症状が再現する場合には、その前の量でとどめて服用し、1〜2か月の経過をみて再び挑戦する。
2,隔日法
作用時間の長いものでは、一挙に中止しても血中濃度がゆっくり下降するので、反跳性不眠も退薬症候も遅れて現れ、程度も軽い。したがって、中止する際には、服用しない日を1週1日から始めて経過をみながら徐々にのまない日をふやしていく。
3. 長時間作用型への置き換え
漸減法が成功しない場合には、いったん短いものから長いものへ置き換えたのち、漸減法なり隔日法で減量する方法をとるとよいことがある。薬物動態学的にみて、長いものの方がやめやすいからである。超短時間作用型を長いものに置き換えたときに、一過性に不眠症状が出現することが少なくないが、1週間の我慢で症状が改善されることを知っておく必要がある。
実際には、図7にみるように長いものも短いものも、まずは漸減し、それ以上減らせない段階で隔日法で経過をみていくのがよい。
4、認知療法の併用
長年不眠に悩み、睡眠薬の助けで症状改善をみたものの、なんとか睡眠薬なしに眠りたいとの欲求を持つケースはきわめて多い。自分の不眠症状を現実的に検討し、対応していく力を身につけさせる認知療法を中心とする精神療法的接近を併用することが大切であり、何回失敗しても再挑戦する心意気をもたせるべく努力すべきである。
慢性不眠症とは本来きわめて難治なものであることから、以上に述べた方法をどう用いても減量・中止の方向にもっていけない症例は少なくない。BZ 系睡眠薬は必要最小限の臨床用量の範囲であれば、長期連用によっても危険性はないとするのが筆者の立場である。自信をもった態度で使用し、quality of life を高めることも立派な治療法であると考えている。最近の超短時間作用型睡眠薬の危険性についてのマスコミの誇大な報道にまとわされることなく、不眠症を正しく理解し、睡眠薬の適正目的に沿った適正使用を心掛けることが肝要である。

おわりに
不眠症の診断と治療について簡単な解説を加え、とくに睡眠薬の使い方とやめ方について説明した。不眠症は、患者にとってきわめて苦しい病態であり、決して軽く扱ってはならない。適切な治療法を用いて苦痛を軽減・消失させることは、患者を救うのみならず、 社会一経済的にも大きな利益を生むことになる。日常の臨床に少しでもこの解説が役立てば幸せというものである。

文,献
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〔北里医学,24:1~14,1994〕

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胃食道逆流症GERD

先日の午後から散歩で、同じ市内にある小山本家酒造まで歩いてみました。来てみてかなり大きな工場なので驚いてしまいました。
地方の酒蔵などはいくつか行ったことがあったので、もっとこじんまりしていると思っていました。
実は東京23区の唯一の酒蔵。丸眞正宗の赤羽の小山酒造が、清酒製造事業から撤退したため、その本家である小山本家酒造が商品を引き継ぐという話があるようです。赤羽のおでん屋の丸眞正宗が、今後ここから出荷されることになるのでしょうか。

胃食道逆流症GERD
いびきの原因を探るうちにたどり着いた答え。
寝ているうちに胃の中の物が逆流するのを防ぐために、食堂や気道が狭まる。そのため呼吸するときに気道の周りの組織をふるわせるためにいびきとなってしまう。
この逆流現象を胃食道逆流症と言い、日本人であれば40%の人がかかっていると言われています。もう病気と呼んでいいのかと思われるレベルですよね。

よく言われるのは寝ると重みで舌の根元などが下がって気道が狭くなるというもの。睡眠時無呼吸症候群の原因もそうやって気道が狭くなるということです。しかし、それが本当の理由なら相撲取りや柔道の選手が、練習や試合で気を失うようなときに、窒息死事故が頻発します。実際には自発呼吸が普通にできています。

人間の体がいくら太ろうが、物理的な作用で息が止まってしまうような事態になるとは到底思えません。無呼吸になるには無呼吸になる体の作用があると思うのが普通だと思います。

しかも睡眠時無呼吸は、病気認定されるには1時間に20回程度以上息が止まる場合ですが、普通の人でも1時間に5回程度は息が止まっています。いびきをかかない人は音が静かなので息が止まっていることを観察されづらいだけです。
中枢型の無呼吸と言われる作用と、一般的な無呼吸が全く違う作用で起こっていると考えることに、違和感がないでしょうか。

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レム睡眠ノンレム睡眠といびき

東京のソメイヨシノの開花が3月20日ごろと予想されています。例年より1週間ほども早いとか。氷川神社の参道で行われる「さんきゅう参道」の開催が、4月7日、8日の土日なのですが、ひょっとして桜は散っているかも・・・。

以前ご紹介した日本大学医学部の論文で、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のメカニズム。
この研究の調査で判明したことが、いびきや無呼吸の症状は、non-REM睡眠のステージ2,3,4では現れず、重症の睡眠時無呼吸患者でも、深いnon-REM睡眠時には静かな呼吸が確保されています。
ではいびきはどの状態でかくのか?無呼吸は?といえば、REM睡眠とnon-REM睡眠のステージ1となります。
一般の睡眠はnon-REM睡眠ステージ1から入り、徐々に2,3,4と深まり、入眠から90分でREM睡眠が20分ほど入りこれを繰り返します。また、目覚めに近いほどREM睡眠の時間が長くなります。
いびきをかく人は、寝入りばなにいびきをかき、睡眠が深まることで、いびきが消えます。そして入眠から90分弱程度でREM睡眠になり20分ほどのいびきタイムが始まるということです。

ところが、あまり激しいいびきや無呼吸では、深いステージに入れず覚醒してしまい、ステージ1か2とREM睡眠を繰り返します。
この状態になると、いびきや無呼吸で苦しいだけでなく、体や脳も休息が取れない状態となります。

ただ、いびきが激しい人も朝方になると、静かになっていきます。胃食道逆流症で胃の中のものが逆流することがいびきの原因であったものが、徐々に消化され胃の中のものがなくなるとともにいびきもおさまるということです。

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さんきゅう参道に出ます

昨年も参加した「さんきゅう参道」に今年も参加することとしました。昨年は雨で人通りも期待するほどではなかったのですが、それでも楽しくできました。
今年は4月の7日土曜日と8日日曜日の2日開催のため、期待できます。
「いびき研究所」でいびき防止や安眠に関しての説明をしようと思っています。参加募集は3月25日までやっています。趣味やサークルの活動をみんなに発表してみたいとか、イベントに参加してみたいと思われる方はこの機会にご検討ください。
なお、神社の参道で開催する催しのため、ある程度の審査があります。大きな音が出るものや、タロット占いなどの神社での催しにはふさわしくないと思われる内容はご遠慮いただいておりますし、一般的な露店販売の場ではないので、そこをご了解いただければ、基本的にウェルカムでやっています。
詳しくはフェイスブックの募集要項をご覧ください。
https://www.facebook.com/ThankYouSandou/

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花粉症といびき

暖かくなってきました。
つくしも頭を出していました。これまでは「もう春かな」「まだ冬かな」という三寒四温の日が続いていましたが、やっと「春だな」といえるようですね。
さあ、暖かいと過ごしやすいけれど、花粉症に苦しむ人には同時につらい時期でもあります。
突然鼻水が止まらなくなり、何度も鼻をかんでいるうちにつらい鼻づまり。鼻呼吸がうまくできなくなると、口で呼吸することになり、のどの乾燥などからくる痛みや、扁桃腺の腫れ、微熱などの症状につながることもあります。
口呼吸でいびきが出るなんて人も多いようですが、さてどうなのでしょう。

花粉症の患者数
花粉症がこれだけ言われている割には正確な数というのはよくわかっていません。厚生労働省の発表では、2008年の疫学調査の結果、29.8%という数字があります。しかも1998年の結果と比較して、10%も増加していることから考えると、少なくとも35百万人から4千万人位いるのではないかと推察されます。

鼻洗浄(鼻うがい)
花粉症対策やアレルギー性鼻炎の対策として、鼻洗浄が見直されています。以前はプール後に鼻炎が悪化することから、鼻に水が入ることで鼻粘膜を痛めるために良くないとされていました。
花粉症患者の増加などから近年は有効性が見直され、医療機関等でも推奨するところが増えています。
https://www.m3.com/open/sanpiRyouron/article/131501/

痛くない簡単なやり方は、
(1)百円ショップなどでも手に入るはちみつ容器やドレッシング容器を使い、温度40度程度の生理食塩水(0.9%の食塩水。500ccのお湯なら、ティースプーンすり切り一杯程度。)を用意します。
(2)うつむきで、鼻から生理食塩水をいれ、鼻又は口から吐き出します。両方の鼻孔で行います。

注意:洗浄中に嚥下を行うと中耳に水が入り、中耳炎になる可能性があります。また飲み込まないようにしましょう。
子供や幼児は医療機関でやるようにしましょう。


花粉対策
普段いびきをかかない方もこの時期はいびきをかいてしまうという話も聞きますので、いびき対策として、安眠家具SleepLaboが効果を発揮します。
いびきは口呼吸が原因ではないのですが、口呼吸になれば、普段ほとんど音が出ない程度のいびきだったものが、大きな音を出すようになるため鼻が詰まればいびきをかくように感じてしまいます。
詳しくは「完全いびきコントロール」を検索してください。
https://rudder-coltd.jp/ibikicontrol/

さて、いびき対策としてではなく、花粉症対策としてもSleepLaboは優れていることをお知らせしたいと思います。
花粉アレルギーは当然ながらアレルゲンとしての花粉を体内に取り込んでしまうことが、原因として症状を起こします。
できるだけアレルゲンを体に取り込まないことが一番の対策ですが、そうはいっても空中を漂っている花粉は呼吸だけで入ってしまいます。窓を閉めても、外出していれば服について、入ってきますし、洗濯物にもついてきます。
寝ている間は、自律神経の働きも弱まりアレルギー症状が治まっていても、起きたときにその間にたまったアレルゲンに対する症状が強く出て、モーニングアタックと言われる症状を起こします。
朝からつらい症状が出るとその日一日が全く憂鬱になってきますね。
モーニングアタックをできるだけ鎮めるためには、マスクをして寝るということですが、寝相が悪くて外れたり、違和感があるので無意識にとってしまったりしがちです。
SleepLaboでは、睡眠時にカーテンで頭の空間を閉じているため、花粉の流入も抑えられます。

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災害対策としての「安眠家具」

昨日は2011年3月11日に起きた東日本大震災の日でした。
テレビで何度も津波の映像が流れ、14時46分には黙祷を捧げました。あれから7年。実際には黙とうをささげた地震の時ではなくそれからしばらくして津波が襲うわけですが、死者15,895人もの罪もない人々の命が失われ、今でも2,539名の行方不明者を出しました。多くの負傷者とピーク時の避難者は40万人以上にもなりました。

2016年4月に発生した熊本地震では、震度7の地震が2度も発生して、本震と余震が入れ替わったり、熊本と大分の二か所で繰り返したり、これまで経験したことのないタイプの地震でした。
また、活断層型の地震で、震源が浅いため局地的な被害が大変大きくなりました。
耐震性に優れた日本の建築物でも、震度7で2回、震度6強で2回、6弱で3回ゆすられると、多くの建物が倒壊しました。
地震の揺れによる直接被害で亡くなった方50人のうち、37人が家屋の倒壊、10人が土砂災害での犠牲となっています。
亡くなられた方の多くが建物や家具の転倒による圧死であったことが報道されています。安眠家具を使っていればひょっとしたら助かった方もいるのではないかと思われます。

日本には必ず来ると言われる大災害が今後も予測されているということ自体、考えれば恐ろしいことですが、備えをしっかりして少しでも被害を小さく抑える努力が必要ですね。

ラダースリープラボは、災害対策を目的とした家具ではありませんので、上に物を載せたり、人が乗るなどの想定はしていません。お子様でも上に乗ったりはしないでください。
しかし、地震で額などが落ちてきたり、タンスが倒れかかってきたときには、丈夫な構造が少しでも役に立つでしょう。

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人間の3大欲求

人間の三大欲求として上げられる食欲・睡眠欲・性欲について、考えてみます。なぜ睡眠をとるのか?安眠出来ないとはどういうことか?不眠を克服するにはどうすればいいのかを考えました。
更に、人間としての生きること死ぬことを哲学してみました。
たまにはそんなことを考えてみるのも面白いですよ。

食欲

食欲は生きるために必要な欲望なのですが、実は制御可能な欲望です。
どうしても抑えられないものでもありません。
極端な話、死ぬまで食べないでいることが可能です。
しかし食べることは必然的に排泄が伴いますが、排泄は通常の制御はできますが、最終的に制御不能です。
しかし排泄は欲と言わないのが不思議です。
食べる。その中から必要な栄養を取り込む。栄養を取り込んだ残りや、体から不要な代謝物を排泄する。
入れれば出すというのが当たり前の流れですね。

睡眠欲

さて睡眠の欲求に関しては、食欲や性欲と違って抗うことができません。
最終的に制御不能なところは、むしろ排泄に近い欲求です。
実は最近の研究では睡眠は排泄機能ではないかというものがあります。
認知症の原因物質とされる「アミロイドβ蛋白」の蓄積を睡眠中に脳脊髄液が流してしまうというものです。
そして睡眠中に脳は短期記憶を長期記憶に置き換える作業を行っているということです。
もし睡眠が排せつ機能であれば、入るものは何かというと、情報ということになります。食物を食べて、必要な栄養素を吸収し、不要なものを排泄するように、五感を通して入ってくる情報や、思考情報などが脳に大量に記憶され、寝ている間に整理されて、不要情報を排泄するのだと思います。
だから不眠症になると、便秘と同じで排泄が出来ずに辛くなるのでしょうね。
排泄できないのですから新たな情報を入れるのもつらいですね。
これが鬱症状なのではないかと思えます。
食欲不振と同じなので、無理に鬱を薬で抑えて新しい情報を入れると、脳がパンクしてしまいます。
先にきちんと睡眠をとり、きちんと排泄できれば鬱も治るのではないでしょうか?
「不眠症の解消」
さて、不眠症を便秘解消と同じような解消方法で考えると、腸の蠕動運動を促すためには、腸内環境を整え、バランスの良い食事と、適度な運動、そして食事と食事の間のインターバル時間をしっかりとることです。
また、交感神経と副交感神経の切り替えをしっかりと促すことも大事です。
不眠症に当てはめてみると、入れる情報の質を整えること。
交感神経優位の時にしっかりと情報を入れたら、副交感神経優位の時には、出来るだけゆっくりと過剰に情報を入れないようにすることも大事だということになります。
現代のように情報の洪水の中で、ストレスにまみれ、常に情報を入れ続ける環境であれば、不眠症になってもおかしくないと言えるのではないでしょうか。

次に環境についていえば、トイレに行くだけで排泄感が増すのが正しい感覚で、便秘症状が強い人はその感覚がなくなっているのだと思います。
同じように不眠症の環境で言えば、ベッドに入るのは、眠くなってからにすることです。実は不眠症に陥る一番の原因は、眠れないのに布団の中にいることで、布団の中が眠れない場所と体が覚えてしまうことです。

不眠を便秘に例えて説明したわけですが、実は便秘と不眠症は本当につながっているという説もあります。NHKスペシャル「人体」でも紹介されたように、脳に次いで神経組織を持っているのが腸であり、腸が第二の脳といわれる所以である訳ですが、実際に便秘症の人に不眠症の人が多いのは事実のようです。自律神経の影響で交感神経副交感神経の切り替わりが上手くできないことが便秘症も不眠症も生み出していますので、便秘が治れば不眠も解消できるし、不眠が治れば便秘も治るということです。

性欲

これはまさに本能の成せる欲求です。
子孫を残す、DNAを拡大させることは生まれた目的ともいえる本能です。
そして、生まれることと対をなすのは死ぬということです。
死ぬことは当然ながら欲求とは思えないのですが、出来るだけ先に延ばそうと抑制してしまいますね。
そして制御不能となって最後を迎えます。
入れたら出すという当たり前の流れです。

生き物はDNAを拡散させることが生きる目的であるし、DNAの拡散ができない状態になれば、もはや生きる目的はありません。虫や魚などには卵を産んだりすればそれで死んでしまうものは少なくありません。
子供を育てる動物は、DNA拡散の能力がなくなっても、子供を守り更なるDNA拡散を確実にするためにしばらくは生きていますが、孫世代まで生きていればそのお役目も終わるために寿命が来ます。
まあ、人間の場合は例外的に長生きしているので、もっと別の目的を見だしてもいいでしょう。

「意識の哲学」
生物学ではなく哲学として断って持論を入れますと、食欲は体に必要な栄養を取り込む。睡眠欲は情報を取り込む。では性欲は何か?生きる事とは何か?ということになりますが、もちろん生物としてDNAの拡散が第一にありますが、人間は別の目的を持ちます。思想・生きている考え・意識を成長させることではないかと思います。
人が生きている間に、どれだけ自分の魂を成長させることができるか、教えを広げることができるか、自分の生き方で影響を与えることができるか。
子孫を残すことが、DNAを拡大させることと同じように、自分の思想・信条で多くの人に影響を残し、たとえ死後であっても長くそれを残し続けることができるか、思想信条のDNAを多くの人に残し長く語り継がれることができるか。

「死は排泄」
そして死を排泄ととらえると、人は死ねば仏や聖人になることができるように、生きている間の善行や悪行のうち、悪行を捨てて善行だけを残すのが排せつではないかと思います。
多少の悪事は、死とともに解消され、善行のみがその人の思い出として残すことができます。
その善行や思想信条が、優れていればいるほど、広く長く後の人に影響を与え、たたえられ続けることができる。多くの子孫を残すことができるのと同じように、思想信条のDNAを残すことができます。
キリストやブッダやムハンマドは、多くのDNAを長く残したことになりますね。
それこそが天国に行ったことになるわけです。
そして殺人鬼や独裁者としての悪行等があまりにひどく、死とともに排泄しきれずに、むしろそれが強く多く残った人は、いつまでも悪人として後の人に記憶として残る。これこそが地獄ではないかと思います。

多少の悪行は誰にでもあるので、そこにあまり強く罪悪感を持ったり、自暴自棄に陥る必要はなく、善行を施すことが少しでもあり、人々の記憶に残れば、死とともに悪行は排泄され、仏様や聖人になれるということです。それこそが天国に行くことです。

「意識のDNA」
人は子供や孫の中に、自身のDNAを残し広げます。そこには生物としての情報はありますが、意識はありません。しかし、思想信条生き方のDNAを残し、多くの人の中にそれを残すことができれば、自分の意識の広がりを持つことができます。人々がインターネットでつながることができるように、人々の意識の中のネットワークに、自身の意識を持つことができるかもしれません。
人が天の啓示を聴いたり、ひらめいたり、宇宙の意識からメッセージを受け取ったりするという人がいますが、もしかしたら人々の中に思想信条生き方のDNAとして残った意識が人の意識のネットワークをもってそのような意識の表れとして、出現しているのかもしれません。
輪廻転生を現実に調査してその現象を科学的に検証したという報告もありますが、その意識が一体どこに残っていて、新しく生まれた子供に宿るのか、それはどこか異次元の世界にあるのではなく、われわれ人間のもつ意識のネットワークの中に宿り続け、やがてその子供の意識の中に強く現出した結果ではないかと思います。

「永遠の意識」
生物の中でも人間だけは、肉体の死をもってしても意識は永遠に生き続けることができるのかもしれません。
永遠の意識が天国で生きるのか、地獄で生きるのか。それは生きている間にどれだけの善行ができ、多くの人にそのDNAを残すことができるか。人々から完全に忘れ去られる時は、本当の意識の消失として終焉を迎えるということですね。

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(article)医師が教える【不眠】と睡眠薬が効きづらい4つの理由

見沼田んぼを流れる芝川の鴨
柴川の土手の上を散歩します。鴨や亀、鯉などが水辺で生きているのを眺めていると、ここには、わずかながらの自然があるんだなと思います。ちょっと前にはカワセミも見ました。
もうすぐつくしも出てくるのかな。

「不眠症には安眠家具」を裏付けるための情報収集中に面白い記事を見つけました。
私の都合の良い解釈をさせていただければ、睡眠薬が効きづらい環境要因による不眠症や睡眠過誤による不眠症の訴えに関しては、睡眠薬よりも安眠家具のほうがはるかに効果的であるということです。
「医者が教えない精神科のこと」というサイトで、管理人の「Dr.G」による、医学的根拠に基づいた情報と医師個人の見解ということです。

http://tokyo-mentalclinic.com/insomnia/post-1559/
医師が教える【不眠】と睡眠薬が効きづらい4つの理由
目次
1 不眠
1.1 睡眠薬が効く不眠症と、効きにくい不眠症
1.1.1 1.環境要因による不眠
1.1.2 2.心理的要因による不眠
1.1.3 3.精神疾患による不眠
1.1.3.1 躁うつ病(双極性障害)による不眠
1.1.3.2 アルコール依存症による不眠
1.1.3.3 高齢者の不眠
1.1.4 4.身体症状による不眠
2 まとめ
3 不眠に関するQ&A

不眠

不眠とはよく眠れないことを指す症状ですが、どこからが不眠なのでしょうか?
この定義は意外に重要で、患者さんを診ていると、異常に睡眠にこだわっていて患者さん自身のいう睡眠を満たさないと不眠だという「厳しい不眠」という患者さん独自の不眠もあるほどです。
つまり実際には不眠ではなく、患者さんの思い込みによる不眠も相当数いると考えられます。
それでは不眠とはどの程度のことを指すのか?
まず「眠れていない」という感覚は必要条件ではあるのですが、本人の訴えだけでは睡眠過誤ということもあり得ます。
また睡眠過誤とは眠れているのにもかかわらず、本人の感覚では眠れていないという感覚のずれを指します。
日本の成人の睡眠の調査では、6時間を切ると「よく眠れていない」という感覚に陥りやすいことがわかっています。
睡眠薬はそもそも不眠を治療するものですので、よく眠れていないという感覚を治療するものではありません。
ましてや睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系)の依存性は最短で1ヶ月以内の内服でもできることがあることを考えると、いくら短期間といえども安易に飲むべきではないのかもしれませんね。
つまりは睡眠薬を飲むべき状況というのは、健康な睡眠をとっている前提で(生活習慣的に、極端に寝る時間が少なくはない、明らかに眠れないだろうという状況がない、パートナーからも「よく眠っていそうだよ」と言われる)にもかかわらず、日中過度の眠気が来てしまう、これを不眠症として睡眠薬での治療を検討するのがいいのだと思います。
実際の臨床現場でも、「睡眠薬がやめられない」という方は本当に増えている印象があります。
おそらく本当の不眠症だけでなく、感覚的な不眠であっても睡眠薬を飲んだりしている例も多いのだと思います。

睡眠薬が効く不眠症と、効きにくい不眠症

不眠だからといっていかなる状況でも睡眠薬が効くというわけではありません。
不眠症の分類が正式にこうやって分類されるというわけではありませんが、医師の立場からこのように分類するとあらかじめ睡眠薬を処方したときの効果が予測できるというものを示します。
おそらく精神科・心療内科の主治医の先生のお考え、かかりつけの内科で処方してもらうときの先生のお考えもあるでしょうから必ずしも一致するものではないということを前提にお読みいただければと思います。
1.環境要因による不眠
2.心理的要因による不眠
3.精神疾患による不眠
4.身体症状による不眠

1.環境要因による不眠

その字のごとく、眠る場所・環境に問題があることで起こる不眠です。
温度や湿度、部屋の明るさ、音、仕事の不規則さ(シフトで動く交代制勤務など)が挙げられます。
物理的な要因による不眠ですからこの場合、睡眠薬はメインにはなりません。
睡眠薬を飲むよりよっぽど環境面を整えた方がはるかに効果が高いからです。
しかし勘違いしないでいただきたいのは、睡眠薬を使用しないというわけではないことです。
自身の努力ではどうやっても変えられない部分もあるからです。
でも大事なことは、環境を調整できるところはしてみるという努力です。
この前提のもと短時間だけ作用するような睡眠薬を飲んでみるのはありです。
短時間だけというのは睡眠導入剤といわれるものです。
その目的は、環境が明らかに悪くこれによって不眠になっているのも明白だけど不眠が重なって悪循環になっている。このときはリセットするという意味で睡眠薬(短時間作用)を飲むのです。
お分かりだと思いますが、これで眠れたからと言って連日服用し環境の調整ができなければそのうち耐性ができて、睡眠薬の量を増やすことになり、さらに依存性もできて気づいたらやめられないことになりかねません。
睡眠薬はレスキューとして飲むという感覚が処方されている側にも必要なのが、この環境面によって起こる不眠です。

2.心理的要因による不眠

環境的な要因と対をなすのがこの心理的な要因による不眠です。
一言で言うなら、ストレスによる不眠です。
実際、ストレスによって睡眠が不十分になってしまうことは、生理的な範疇で結構経験されることかもしれません。
これが慢性的に続くと、生理的な範疇と言えないくらい夜眠る時間がくるのが怖くなったり、だるさや日中頭が働かないことが日常茶飯事になり、この状態を心理的な要因による不眠症というのかと思います。
ストレスに対する反応は様々で、些細なことで必要以上に辛く感じてしまう方、些細なことは些細なことで感じられる方様々だと思います。
知覚過敏もそうですが、ある刺激に対して必要以上に神経の興奮が起こる、必要以上に冷たく痛く感じてしまう、アイスや冷たいものを口にするときにでもおこってしまうこの現象、ストレスでも同じ現象があるのではと思います。
これはもう本人の性格の問題ではないのではと思っています。(あくまで個人的な見解かもしれませんが・・・。)
ストレス反応によって脳の中ではノルアドレナリンが増える、これによって覚醒する方向に脳は動き出してしまい、眠れなくなるのでしょう。
おそらくそれだけでなく、同じことをぐるぐると考えだしてしまい、そこにもブレーキがかからないそんな状況からくる不眠が心理的要因による不眠だと定義できると思います。
その心理的因子に影響するストレスがなくなれば再び眠れるようにはなるはずなのでその状況を乗り切るという意味で睡眠薬を使用するのはありですが、なかには解決しない問題もあるでしょう。
このときには長期に服用する状況になりやすく、依存性に注意を払う必要があります。
心理要因による不眠では、睡眠薬としての側面もそうですが、抗不安作用を期待してベンゾジアゼピン系の睡眠薬・安定剤(抗不安薬)が処方されることが多いと思います。(よく処方されることが多いのはデパス®です。)

【睡眠薬・安定剤(抗不安薬)】の実際でも書きましたが、依存性は強いのでこの場合は催眠効果の強い抗うつ薬(トラゾドン:レスリン®、デジレル®)も併用することでベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用量が多くならないようにするのもありかと思います。
実際、うつ病を併発していることもあります。

3.精神疾患による不眠

統合失調症、うつ病、躁うつ病(双極性障害)、認知症、アルコール依存症などの精神疾患は多くの場合「不眠」を伴います。
ただ背景に上記の精神疾患があり、そこから出る「不眠」なのでその基礎となる疾患の治療が「不眠」の治療に必要になります。
そこに、対症療法的にマイナートランキライザー(睡眠薬・安定剤)をメインにして飲んでいても、もとの精神疾患の治療が進まなければ耐性と依存によってどんどん処方される量が多くなっていくだけになってしまいます。
そうなると、短時間作用型の睡眠薬だけでなく長時間作用型も一緒に飲むようになり、翌日まで眠くなり結局、仕事の効率が落ちたり、眠っていることが多くなったりなど生活レベルは落ちていくだけになってしまいます。
ですから基礎の精神疾患に対する治療をしっかりやっていくことが大切になりますので、薬物療法であれば睡眠薬・安定剤(抗不安薬)を増やすのではなく、うつ病なら抗うつ薬、躁うつ病(双極性障害)なら気分安定薬(これは当サイトでマイナートランキライザーと同じ意味で使っている安定剤とは違う薬の種類です)、統合失調症であれば抗精神病薬を強化していくのが原則なのではないかと思います。

躁うつ病(双極性障害)による不眠

躁状態はハイテンションのイメージが強く、気分が高まって眠れないイメージですが、必ずしも気分がハイになって調子がいいことを示すものではありません。
イライラや焦燥感(そわそわ、じっとしていられない)がメインの躁状態もあり、その精神運動興奮により眠れなくなることがあります。
この場合の対応は抗精神病薬(エビリファイ®やセロクエル®など)や気分安定薬(ラミクタール®やデパケン®)を飲むとおさまって眠りやすくなることがありますので、躁状態というのが気分がハイであるイメージにとらわれず相談するようにしてみてください。

アルコール依存症による不眠

アルコール依存症で注意が必要なのは、アルコールと睡眠薬・安定剤(抗不安薬)がお互いに干渉しあう(交叉耐性といいます)ことです。
つまり、アルコールもマイナートランキライザーと同じ作用をするし、マイナートランキライザーもアルコールのような成分を持つという意味です。
アルコールが睡眠薬・安定剤(抗不安薬)に変わったところで、単にアルコールそのものではなくなっただけであって、解決はしていないということです。(逆にアルコール離脱症状に病院ではアルコールで抑えるわけにはいきませんので、マイナートランキライザーを使うこともありますが・・・実のところ意味はないですね)
アルコールの不眠には睡眠薬・安定剤よりは、抗精神病薬や抗てんかん薬(気分安定薬)を使用することがあります。

高齢者の不眠

高齢者の不眠では徘徊やせん妄(軽い意識障害を伴い、本人は記憶なく行動しているような状態)となることがあります。
特に中途半端に睡眠薬が効くとかえってこのような症状が強くなり、周囲も大変ですし、転倒して骨折して寝たきりになってしまうようなリスクさえあります。
ですから、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(例えばマイスリー®、ジェネリックではゾルピデム)が処方されることが多いと思います。

4.身体症状による不眠

風邪をひいて咳で眠れないとか、虫歯は夜にずきずき痛み出すので一晩中痛みと闘っていたりなど身体症状による不快から眠れないという経験をしたことはありませんか?
呼吸が苦しい、痛みが強い、その他の症状で不快感が強いことによって起こる不眠を「身体症状による不眠」としました。
当然この場合、睡眠薬が解決にならないのはわかるかと思います。
原則、不快な症状そのものを抑えないといけませんよね。
不快な症状に打ち勝つような強い睡眠薬でしか眠れないでしょうし、かえって痛み止めなどでその症状そのものを緩和してしまえば効いている間は眠れるはずです。
このような不眠は一過性ですので、あまり睡眠薬による依存などのリスクを考える必要はないと思います。

まとめ

不眠は生理的な反応であって、病気としてとらえにくい面があります(疾患としての不眠ももちろんあるのでしょうが・・・)。
本人が不眠と言えば「不眠症」であって、通常病院でそのことを言われれば「睡眠導入剤」を出したくなるのが医師の人情なのかもしれません。
でもそのことが結果、飲む側にとってはとんでもない災難になることもあります。

「やめられない・・・」と。

研修医のころ、患者さんが「眠れない」と訴えたら「睡眠薬を処方します」ではなく「話を聞きなさい」と言われました。
たぶんこれが一番正しいのかもしれません。

「先生に話を聞いてもらって、少し安心した。」

この言葉が出るのが一番の薬なのかもしれません。
でもこれは綺麗ごとで、不眠の方にとっては「夜が来るのが怖い」とも聞きます。
だから、「睡眠薬があると安心する」これも事実です。
大事なことは、「どの睡眠薬が効くか」とか「この睡眠薬ではだめだ」ではなく、いったい今何がこの不眠の原因になっているのかを考えられること、「眠れない=病気」と直結させないことではないでしょうか。
医者になって10年以上経ちますが、結局のところ不眠に対する正しい治療法は未だわかりません。

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(paper)騒音による睡眠妨害に関する一考察

さいたま新都心駅
駅を挟んで、東西のコクーンと新都心。人の流れもあり、いつ行ってもにぎわっています。もちろんスーパーアリーナなどの箱もシンボルとしてありますが、毎週のようにイベントを行い人が集まるように常に努力をしているたまものでしょう。
そこに行けば何か面白いことに出会えると人々に認知されるようになれば、さらにイベントに出店したいと思う企業も増えるというスパイラルを作ることができます。

睡眠障害を起こす騒音は、幹線道路などの騒音よりも、近隣生活音などのほうが多いということです。また騒音やストレスなどが原因で起こる不眠は、環境の改善やストレス元の排除などが先決であって睡眠薬・睡眠導入剤に頼ることは、依存症などを引き起こす元となりやすいようです。
安眠家具SleepLaboは、依存症や副作用の無い、家具の睡眠薬のようなものと思えば、不眠に苦しむ方の助けになるものと思います。

1 はじめに
睡眠は人間の生理的な要求の一つであり,これを妨害されることは深刻なダメージに繋がる。騒音による睡眠妨害に関しては,種々の騒音影響の中で最も低い騒音レベルで生じるほか,常時出ている音よりも突発的な音,機械音などの無意味音よりも話し声などの有意味音,若者よりも年配者,感受性の低い人よりも高い人の方がそれぞれ妨害を受けやすく,一方で聴取妨害や作業妨害などに比べれば慣れの要素が高い,などと言われている。
最近,我が国で行われた交通騒音を対象とした社会調査では,うるささや悩ましさなどの被害に比べ,睡眠妨害を受けている人は比較的少ないという結果が報告されている[1, 2]。
筆者らは,これらの結果を踏まえ,現代人の騒音による睡眠妨害の現状を把握するためにE メールによるアンケート調査を実施した。
ここでは,そこで得られた結果や最近の社会調査の結果をもとに騒音による睡眠被害の実態について考察した結果を報告する。

2 交通騒音による睡眠妨害
2.1 最近の社会調査の調査事例
環境省の依頼を受けて平成12~16 年度に日本騒音制御工学会が幹線道路の沿道と在来鉄道の沿線の居住者を対象に実施した社会調査の結果では,当該騒音に悩まされしかも睡眠の妨害になると回答した住民の割合は,道路交通騒音に関しては22.0 %(232/1,056 名),在来鉄道騒音では7.7 %(51/662 名)と報告されている[1]。同調査において,騒音によって明確な被害を受けていると答えた回答者の割合が道路交通騒音で40 %,在来鉄道騒音で約50 %であることを考えれば,睡眠妨害を受けている人の割合は比較的低いといえる。
図 1 は,環境省の研究助成費を受けてインターネットとGIS を利用して行われた社会調査の結果の一例で,上と同じく当該騒音に悩まされしかも睡眠の妨害になると回答した住民の割合である[2]。回答者は,道路及び在来鉄道については両側100 m 以内,新幹線鉄道は150 m 以内,航空機はWECPNL > 60 の地域の居住者である。道路と在来鉄道に関する睡眠妨害の訴え率は文献[1]とほぼ同等である。原則として夜間運航のない航空機や深夜運行のない新幹線鉄道に関しては,レベル依存性が認められるものの睡眠妨害の訴え率は在来鉄道と同じく10 % 未満とみなせる。
日本騒音制御工学会では,文献[2]の調査で道路交通騒音が睡眠の妨害になると答えた200 名あまりの回答者に再アンケートを行い,
妨害になる音の詳細を尋ねた[3]。その結果を図2 に示す。横軸の夜間の等価騒音レベルは,主要道路(センサス道路)からの騒音レベルである。騒音レベルの高い道路の近くでは主要道路からの音の指摘が高く,道路から離れるに従って生活道路若しくはその他の音の指摘が高くなる傾向が明確に示されている。

2.2 睡眠妨害に関するアンケート調査
本調査は,睡眠妨害の経験者の割合,原因となった発生源,妨害が起こるようになったきっかけ,更には妨害を避けるために採った手段などを把握する目的で,平成20 年6 月~7 月に行った。アンケートはE メールにより質問票の送信と回答結果の受信を行った。主質問とその回答結果を以下に示す。回答総数は587 名(男性:60%,女性:40%)であった。

Q1.自宅や下宿先で音によって睡眠妨害を受けた経験の有無

1.ある 52 % 2.ない 48 %

以下は,睡眠妨害を受けたことがあると回答した305 名についての集計結果である。

Q.2.妨害を受けた時期

現在 4年以内 10 年以内 10 年以前
16 % 44 % 24 % 15 %

Q3.睡眠妨害の原因となった音

図 3 に妨害をもたらした音源の内訳を示す。
隣近所(集合住宅の隣戸を含む)からの音の指摘が高い。2 番目に高い指摘のあった「その他」の内訳は,暴走族,救急車のサイレン,犬や鳥の鳴き声,などである。
Q.4.睡眠妨害のきっかけ
図 4 に睡眠妨害が起こるようになったきっかけの内訳を示す。問題となる騒音が引越し先にあったこと及び自宅周辺で新たに発生したことの2つが原因の大半を占めている。

Q.6.睡眠妨害解消のための発生源別の対応策
(複数回答可)
睡眠妨害を解消するために回答者が取った対応策の一覧を発生源別に図5 に示す。約4割の回答者が「我慢しているうちに慣れた」と回答しているが,隣近所・自宅内・その他の中の暴走族などの発生源に関しては「今も我慢をしている」という回答者が多い。
3 まとめ
交通騒音を対象に行われた社会調査の結果によれば,アノイアンス等に比べれば睡眠妨害を受けている住民は比較的少ないこと,道路に関しては家の周りの生活道路からの音の影響が高いことなどが明らかになった。一方,無作為抽出に近い形で行われたアンケート調査でも同様の結果が得られ,さらに隣近所や自宅内の音といったいわゆる近隣生活騒音の指摘が極めて高いことも分かった。交通騒音に比べてこの種の騒音が慣れにくいということを裏付ける結果と考えることもできる。
最後にアンケートにご協力いただいた多くの方々にこの場を借りて感謝の意を表する。

参考文献
[1] 日本騒音制御工学会,環境省請負業務結果報告書‐騒音による影響の評価に関する総合的研究,平成13~17 年3 月.
[2] 加来,横田,難波,緒方,山田,日本騒音制御工学会研究発表会講演論文集(9,2008)投稿中.
[3] 日本騒音制御工学会,環境省請負業務結果報告書‐騒音による住民反応(不快感)に関する社会調査,平成20 年3 月.

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(paper)温熱環境の睡眠および自律神経活動に及ぼす影響

さいたま新都心スーパーアリーナ
自然の森の季節変化は美しいですが、都会のビルの幾何学的直線や曲線もすっきりした美しさを感じます。
ケヤキ広場で一休みしようと思ったら、すでに日陰に入っていたのでちょっと寒い。駅を通り越してコクーンのベンチで日向ぼっこしながら一休み。もうすぐ春を感じさせる日差しの中で缶コーヒーも悪くありません。

ちょっと季節的には会わないかもしれませんが、温熱環境の睡眠が自律神経に及ぼす影響ということで富山大学の論文をご紹介させていただきます。
富山は、年間を通して日本で最も湿度の高い地域の一つで、肌のきれいな美人が多いことでも有名ですね。その湿度の高さや夏場の気温の高さが、睡眠時に人体に与える影響についての研究です。
https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:qctbul7LffsJ:https://toyama.repo.nii.ac.jp/index.php%3Faction%3Dpages_view_main%26active_action%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D2714%26item_no%3D1%26attribute_id%3D18%26file_no%3D1%26page_id%3D32%26block_id%3D36+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&lr=lang_ja

温熱環境の睡眠および自律神経活動に及ぼす影響
四十竹 美千代,安井 宏,堀 悦郎
八塚 美樹,笽島 茂,小野 武年,西条 寿夫
1)富山大学大学院医学薬学研究部 システム情動科学
2)富山大学大学院医学薬学研究部 成人看護学
3)三重大学医学部 公衆衛生・産業医学
4)富山大学大学院医学薬学研究部 神経・整復学

要旨
環境温の睡眠に及ぼす影響を明らかにするため、健常被験者を27℃に室温を維持した環境(コントロール)、および室温を27℃から2時間毎に22℃に変化させる環境(テスト)下で睡眠させ、脳波,室温,直腸温,および心電図を記録した。その結果、テスト条件において、深睡眠ステージの占める割合が増大するとともに、副交感神経活動が低下し、環境温度が睡眠深度や睡眠中の自律神経活動に影響を及ぼすことが示された。本研究では、睡眠中に副交感神経反応が低下したが、本研究のように環境温が主観的に暑く感ずる条件下では、放熱反応のために皮膚血流量が増加し、心拍出量を維持するために睡眠下にも関わらず副交感神経系の活動が低下したと推測された。日本の夏期は高温多湿になるため、夏期には多くの健康成人が本研究結果と同様な生理学的動態を示すようになると推測され、快適な睡眠のための環境温の制御の必要性が強く示唆された。

キーワード
温度、睡眠障害、自立神経活動

はじめに
睡眠は,意識の維持,記憶と学習機能の維持、生体リズムの維持、生体の修復と防御(免疫)機能の維持などに関係し、睡眠不足によりとくに高次脳機能が低下する。先行研究では,睡眠障害や断眠により、1)自己の生き方や判断に対する自信や他者からの信頼性に対する自信(社会的自信度)が低下する。2)社会に対する協調性や自己の生活に対する満足度(社会適応)が低下する。3)せん妄や夜間徘徊などの行動異常を呈する。4)睡眠時呼吸障害による心臓・血管系のリスクを上昇させ高血圧や心疾患の誘因となる。5)記憶・学習機能を低下させる。6)陽性感情から陰性感情に逆転する。ことなどが報告されている。このように睡眠障害や断眠は人間の生理心理機能を顕著に低下させる。2010年のNHK9)の生活調査のデータによれば、睡眠時間は1970年以降,最も低い水準になったことが報告されており、近年のストレス社会の到来と相まって、睡眠障害が著しく増加していると考えられる。最近のわが国においては、がん,脳血管障害,心臓病,あるいは糖尿病などの慢性疾患が主な疾患となっており、これら疾患の進行は食事、睡眠、および運動など個人の生活習慣に密接に関係している。すなわち、生活習慣をより健康的に変化させることが、健康管理の重要課題となっている。とくに現代はストレス社会であることから、ストレスを低下させるためにも良質な睡眠をとることが重要であり、心身の健康管理という面から適切な睡眠の質と量、睡眠環境の改善などについて多くの研究が行われている。
睡眠環境の物理的条件の中でもとくに温熱、光、音は、睡眠に及ぼす3大環境要因といわれている。
これらの環境条件については、日常生活状態で発生する各種の条件を変数として、それらの要因が終夜睡眠に及ぼす影響について研究が行われている。例えば、日常われわれが暴露されている条件の範囲内においては、これら要因の中でも温熱環境条件が睡眠に及ぼす影響が最も大きく、寝室の温湿度条件が寝具を通して寝床内気候にさまざまな影響を及ぼし、睡眠の質的レベルに大きく関わっていることが示唆されている。
日本人の睡眠は,盛夏である7~ 8月に短く、晩秋から初冬の11~12月にかけて長くなる。富山県の湿度は年間平均で75.8%(1994~2003年までの平均)であり、年間を通じて平均湿度が60%を下回ることは少なく、全国でもっとも高い(富山気象台発表の年間気象情報より)。一方、富山県の気温は、夏季に高温となり、秋季(10月)には日本海側気候と呼ばれるように平均気温が下がり、とくに夏季と秋季との差が大きい。このように富山県では、とくに夏季においては高温・多湿により不快指数は高く、睡眠に対する影響も大きいと考えられる。
一方、近年の技術革新により、冷暖房器具を生活環境に設置することにより、各個人にとって快と思われる温度や湿度に容易に設定できるようになってきている。しかし、環境温の調節範囲に関しては経験や勘・習慣などに頼っている場合が多く、最適温熱条件の調節方法に関する知識の不足から、不適切な温熱条件設定により、心筋梗塞,高血圧,精神病等の発症に間接的に関わる場合も少なくない。特に覚醒時に比べて睡眠中は体温調節機能が低下しているため、温熱条件の影響を受けやすく、良質な睡眠が得られように温熱環境を設定することが重要であると考えられる。しかし、睡眠を含む生体機能に対する温度や湿度の最適な設定法については明らかにされていない。本研究では、環境温のヒトの睡眠に及ぼす影響を明らかにするため、環境温,睡眠中の脳波,直腸温,および自律神経活動間の関連性を解析した。

実験条件および環境温度の設定
対象被験者には,過去5年以内に,医学的な治療が必要な疾患(心疾患,血圧異常,肝機能障害,精神疾患等)の病歴がない20~25歳の健常成人3名を用いた.尚,前日の活動について聞き取り調査した結果,精神的・肉体的ストレスやとくに問題となる睡眠不足等は認められなかった.本研究は,京都大学倫理審査委員会の承認を得ている.
人体の温熱快適性には,気温・放射・気流・湿度の環境的要素と,着衣量・代謝量の人的要素の合計6つの要素が関与している.生体は,摂取した食物をもとに生命活動による熱エネルギーを発生させ,その一部は,対流・放射・蒸発により周囲環境に放散する.また,太陽からの熱エネルギー放射の吸収や人体の着衣は,これら熱平衡に大きな影響を与える.本研究では,実験条件を単純化するため,空調を除いて閉鎖された環境制御実験室を用い,環境温のみを変化させ,その他の条件が一定になるように設定した.
環境制御実験室は, 2つの部屋から構成され,第1実験室は睡眠被験者の居住用に用い,第2実験室には,第1実験室の環境制御機器および生体情報測定機器等を設置した.第1実験室(間口
2.6m,奥行き6m,高さ2.6m)は,薄いクリーム色の遮光・高気密性の壁で囲まれ,温度と湿度制御用の空気噴出し口および吸い込み口がそれぞれ天井に設置されている.部屋中央付近には,睡眠用ダブルベッド(190× 160cm,コイルスプリング式のマットレスを使用)を設置し,被験者を睡眠させた.布団は,病院の毛布を,枕は低反発性のものを使用した.さらに,温度および湿度を空気噴出し口と吸い込み口の下に置き,これらセンサーから得られた環境情報を第2実験室の環境制御装置に入力して第1実験室の環境を制御した.
本実験における環境設定は,1)室温27℃,湿度40±10%の条件を8時間一定に保持するコントロール条件,および2)上記と同じ環境条件で,室温のみ2時間毎に27℃から,ついで22℃へ変化させる2条件に設定した.各被験者から,これら2つの実験条件でそれぞれ1回ずつ記録した.さらに, 1人の被験者においては,最初に22℃に設定し,ついで27℃に変化させるテスト条件で1回記録した.

生体情報の記録
睡眠時の生体情報収集のため,被験者には,脳波用電極,眼球電位図(EOG)用電極,頤上筋電図用電極,心電図用電極,直腸温度センサー,額上部皮膚温度センサー,呼吸センサー(口鼻の熱感知フロー,胸部と腹部のストレインゲージ),および動脈血酸素飽和度センサーを装着した.これら生体情報は,A/D変換後のディジタルデータをハードディスクに収録した.脳波用電極は国際10-10法に準じて19部位(FP1、FP2、F3、F4、C3、C4、P3、P4、F7、F8、T7、T8、P7、P8、O1、O2、Fz、Cz、Pz)に設置した。これらのデータの計測・記録には,日本睡眠学会PSG共通フォー Matをサポートした市販ソフトウェアを使用した.また,環境温度( 8チャンネル),および湿度(4チャンネル)は,汎用データレコーダーを用いて記録した。

実験手順
被験者を午後7時に実験室に集合させ,2500kcalの夕食を摂取させた.水分は実験中も含め自由に摂取させた.被験者は,実験開始の1時間前に実験着(病院の病衣)に着替え,27℃に設定された第1実験室に入室した.その後,生体情報収集に必要な各センサーを取り付け,記録収集までベット上で待機させた.記録収集は午後9-11時より翌日の午前5-7時まで合計8時間行った.

データ解析
脳波による睡眠ステージの判定は日本睡眠学会の基準15)に準じて行った.市販解析ソフトを使用してFp1,Fp2,F3,F4から導出された脳波データを解析し,睡眠ステージを30秒間隔毎に覚醒・REM・睡眠深度Ⅰ~Ⅳに分類し,さらに各睡眠ステージの割合を5分間毎に算出した.また,睡深度をδ波の含有率から推定した.
自律神経活動は,市販心拍変動スペクトル解析プログラムにより算出した.まず,心電図のRR間隔からなるデータを一次線形補間して1Hz間隔のデータに変換した.このデータを30秒毎に最大エントロピー法(MEM)を用いて解析し,心拍変動スペクトルを算出した.この心拍変動スペクトルのうち,0.03-0.15Hzの帯域のパワーの総和を低周波(LF)成分,0.15-0.4Hzの帯域のパワーの総和を高周波(HF)成分として算出した.これまでの研究より,HFは副交感神経活動の指標,LF/HF比は交感神経活動の指標となることが報告されている.さらに,これら自律神経活動のパラメータと直腸温,室温,δ波含有率との相関を,ピアソンの相関係数を用いてそれぞれ解析した.相関係数の有意性は相関係数を標準化後,有意水準P<0.05でt検定を行った。

環境温による睡眠および自律機能の変化
図1に,コンロール条件(室温27℃一定)における直腸温(A),30秒毎の睡眠ステージ(B),δ波含有率(C)および自律神経機能(HF,LF成分)(D)の変化を示してある.また,図2に,同じ被験者のテスト条件(室温を22℃から27℃に変化)における直腸温(A),30秒毎の睡眠ステージ(B),δ波含有率(C),および自律神経機能(HF,LF成分)(D)の変化を示してある.これらのデータを俯瞰すると,コントロールおよびテストの両条件において,実験開始から2- 3時間毎に周期的に睡眠ステージが変化し,最後の6時間以後は睡眠深度が次第に浅くなった.この所見は,一般的な睡眠のパターンと一致し,他の被験者においても同様の所見であった.
一方,図3には,各被験者毎(被験者A-C)に,テストおよびコントロール条件における睡眠ステージⅢおよびⅣの含有率(深睡眠ステージの割合)の変化を示してある.すべての被験者において,コントロールと比較してテスト条件において深睡眠ステージの占める割合が高い傾向が認められた.
以上のように記録した3人の被験者のLFおよびHF成分の総和を表1に示してある.副交感神経の活動性を反映するHF成分の総和は,被験者3名全員がコントロールよりもテスト条件で減少した.また,LFに関しても被験者2名(被験者A,C)が,コントロールよりもテスト条件で減少した.
ヒトの睡眠は,生物一般にみられる「休息と活動」の概日リズム(サーカディアン・リズム)を基盤に発達してきたことが示唆されている.動物は一般的に1日に何回も眠るパターン(多相性睡眠)を示す.しかし,ヒトは他の動物と違い,連続して長く覚醒し, 1日1回の長い睡眠(単相性睡眠)をとる.これは,ヒトの活動が生体のサーカディアン・リズムだけでなく,仕事など様々な日中の文化,社会的活動に拘束にされているためである.すなわち,ヒトの睡眠は社会・文化的に管理されたものであり,現代人は日中に長時間活動するために,睡眠をまとめて効率良くとる必要がある.一方,本研究により,環境温は,睡眠深度や睡眠中の自律神経活動に影響を及ぼすことが示され,とくに室温を27℃で一定にしているコントロール条件よりも,22℃までに室温を下げるテスト条件の方が深睡眠ステージの割合が高まる傾向が認められた.これらの結果は,環境温を制御することにより睡眠深度を向上させることが可能であることを示唆し,睡眠障害の治療等に応用できる可能性がある.しかし,本研究では時間的制限から被験者を3人のみに限定しており,今後も研究を継続して被験者数を増やしていく必要があると考えられる.

各パラメータ間の相関
室温または直腸温と自律神経活動の相関性は,コントロール条件では,被験者Aで直腸温とHF間で負の相関が,被験者Bで直腸温とLF間で高い正相関が認められた.テスト条件では,被験者Aで室温および直腸温とHF間で負相関が認められた(表2).このように,室温および直腸温度と自律神経機能間では,特定の被験者の特定のパラメータ間に高い正または負の相関が認められたが,一定の傾向は認められなかった.
一方,相関性が低いがδ波含有率と心拍変動のLFおよびHF成分との間に負の相関が認められた(表3).従来の研究では,non-REM 睡眠時やnon-REM 期に副交感神経系の指標であるHF成分が上昇する,あるいは交感神経系の指標となるLF/HF比が低下するなど副交感神経系が優位になるという報告が多い.しかし,本研究では,被験者3人においてこのような副交感神経系優位の傾向が認められなかった.上述の従来の研究では,本研究で行ったような室温および直腸温の制御や測定をしておらず,本研究と同じ条件で実験したかどうか不明である.また,本研究では,すべての被験者が27℃という環境温の設定では「暑苦しい」という感想を述べており,発汗などによる放熱反応が亢進していたと推測される.これまでの研究により,環境温度が上昇すると,放熱反応のために皮膚血流量が増加し,内臓,筋への血流流量が減少する.これにより右心房圧が低下して心拍出量が減少し,さらには,動脈圧を維持するために心臓副交感神経活動が低下することが示唆されており,本研究でも同様の現象が起きていたと推察される.一方,従来の研究では,本研究と異なり,より快適な条件で記録を行っていたために,δ波含有率と副交感神経系の活動との間に正の相関が認められたと考えられる.以上の結果は,環境温により,睡眠時の生体の自律神経系の活動性が大きく異なり,主観的に暑く感ずる環境下では睡眠ステージⅢおよびⅣの深睡眠下でも副交感神経優位にならないために快適な睡眠状態には至らないことを示唆している.2007年には,岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で史上最高気温40.9℃となり,各地で高齢者が就寝中に熱中症で死亡したことが報告されている.また,熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)の日数が多い年ほど熱中症死亡数が多くなることが報告されている.これらのことから,熱帯夜のような不快な環境下で就寝すると,深睡眠となっても交感神経が相対的に優位となるため心血管系に対する負担が増大し,このような生体反応が就寝中の死亡に関与している可能性があると考えられる.さらに熱中症による脱水は,この生理反応を促進すると考えられる.今後,高い環境温の条件下では何故δ波とHF成分との関係が逆説的になるのか,その生理学的メカニズムを解明していく必要があると考えられる.
富山県も含めて日本の夏期は高温多湿になるため,クーラーなどの空調機器がない状態では一般に本研究結果と同様な睡眠状態になると考えられ,快適な睡眠のための環境温の制御の必要性が強く示唆される.さらに,本実験条件の27℃コントロール下においては睡眠ステージⅢおよびⅣにおいて交感神経系が相対的に優位になったことから,慢性心不全などの心疾患に対する悪影響も予想され,医学的見地からも環境温の制御の重要性が示唆される.

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