「いびきをかかない方法」タグアーカイブ

(paper)食道運動からみた睡眠と胃食道逆流症との関連について

大宮第2公園で、梅まつり&大陶器市が開催されています。3月11日までなので、陶器に興味のある方はお早めに。
梅はまさに満開です。お天気が良ければ上着もいらないくらいの陽気になってきていますので、気持ちよく散歩ができますよ。

胃食道逆流症と睡眠時無呼吸との関係を調査した論文がありましたので、ご紹介いたします。
結果的には、睡眠時無呼吸患者で逆流性食道炎を併発している患者と、睡眠時無呼吸はあるが、逆流性食道炎を併発していない患者に食道陰圧による胃食道逆流症の差異が見られず、睡眠時無呼吸患者と、健常者(睡眠時無呼吸ではない)との差異は、一過性下部食道括約筋弛緩=胃の中に物があれば胃食道逆流を起こす要因であったという事でした。
要するに何かの原因で胃の噴門にゆるみがみられることで、胃食道逆流症をおこすことが、睡眠時無呼吸の原因となり、食道の陰圧が原因ではなかったことになります。また、睡眠時無呼吸患者が逆流性食道炎にかかりやすいのではなく、逆流性食道炎にかかる要因となる胃の噴門のゆるみが睡眠時無呼吸を引き起こしていることが分かったという結果と思われます。

食道運動からみた睡眠と胃食道逆流症との関連について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kmj/66/1/66_75/_pdf
栗林志行
1 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院消化器内科
文献情報
投稿履歴:
受付平成27年11月26日
採択平成27年12月10日
論文別刷請求先:
栗林志行
〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15
群馬大学医学部附属病院消化器内科
電話:027-220-8137
E-mail:shikokuri@yahoo.co.jp

はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) 症候群では胃食道逆流症(GERD) の合併が多いことが報告されている。 この原因として, OSA イベントの際には食道内圧が低下するため、 この陰圧により胃内容物が食道内に引き上げられることが推測されてきた。 しかし、 生理学的検討で食道胃接合部(EGJ) には高圧帯があり、 胃食道逆流(GER) を防止していることが明らかになっており、 食道内が陰圧になってもEGJの逆流防止機能が保たれていればGER は生じないはずである。 今回、 OSA 時のEGJ圧変化とOSA 患者において夜間に発生するGER の発生機序について検討を行った。

方法
8人の逆流性食道炎(RE) を合併したOSA 患者と9 人の逆流性食道炎を合併していないOSA 患者及び8人の健常人に対して、食道内圧検査と食道内pH モニタリング、睡眠ポリソムノグラム(PSG) を同時に行い、 OSA イベントの際のEGJの圧変化とGER 発生の有無及びOSA 患者におけるGER の発生機序を調べた。

結果
OSA イベントの際には従来報告されているように、 呼吸努力に伴い食道内圧が低下することが確認された。 EGJについては、 この食道内圧の低下に対応して逆に圧が上昇することが明らかになった(図1)。また、 OSA 患者で睡眠中に生じるGER の主要なメカニズムは健常人と同様に一過性下部食道括約部弛緩(TLESR)であった。なお、RE の有無に関係なく、 OSA 患者では睡眠中のTLESR が健常人に比べて有意に多く発生していた(p<0.05)。 しかし、 睡眠中のGER の頻度はRE を合併したOSA 患者は、 RE を合併していないOSA 患者や健常人に比べて有意に多かったものの(p<0.05、RE を合併していないOSA 患者と健常人では差が見られなかった。 OSA 患者でRE 合併の原因について検討すると、 RE を合併している患者では、 合併していない患者に比べてbody mass indexが高く、 睡眠深度が浅い傾向が見られた。

考察
ほとんどのOSA イベントではGER は認められず、 今回認められたOSA イベント時のEGJ圧上昇により、 GER発生を防御していると考えられた。 OSA とGERD の併存が多いことの原因としては、 肥満などリスクファクターを共有していることが要因と考えられる。

図1 閉塞性睡眠時無呼吸イベント時の食道内圧変化
A:睡眠ポリソムノグラムで検出された閉塞性睡眠時無呼吸イベントである. 上から, 2チャンネルが眼球運動, 眼球運動の下の4チャンネルが脳波, 脳波の下のチャンネルが頤の筋電図, 頤筋電図の下のチャンネルが心電図,心電図の下の2チャンネルが下肢の筋電図,下肢の筋電図の下のチャンネルがいびき検出マイク,いびき検出マイクの下のチャンネルが呼吸による圧,その下の3チャンネルが呼吸・胸部・腹部の運動計,一番下のチャンネルが酸素飽和度を示している. 脳波ではこの図で示されている期間はstage 2またはstage 1の睡眠状態である.
図の中心付近で胸腹部の運動が続いているにも関わらず,呼吸による圧変化が著しく減少しており,閉塞性睡眠時無呼吸が生じている. なお, 無呼吸の終了時に脳波上の一時的な覚醒が生じている.
B:A で示された時間の食道内圧である. 上記で示された閉塞性睡眠時無呼吸イベントの発生時間が青い四角で表示されている. 上から, 咽頭内圧,上部食道括約部圧,上部食道圧, 中部食道圧, 下部食道圧, 食道胃接合部圧, 胃内圧を示している. 閉塞性睡眠時無呼吸イベント時には吸気に伴う食道陰圧低下が徐々に大きくなっているが,それに一致して食道胃接合部圧は上昇している.

謝辞
平成27年度北関東医学会奨励賞を頂くにあたり, ご指導を賜りました群馬大学医学部附属病院光学診療部草野元康診療教授及び群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学山田正信教授をはじめ, 教室員の皆様に深く感謝を申し上げます.

引用文献
1. Kerr P, Shoenut JP, Millar T, et al. Nasal CPAP reducesgastroesophageal reflux in obstructive sleep apnea syndrome.Chest 1992; 101: 1539-1544.
2. Kuribayashi S, Massey BT, Hafeezullah M, et al. Upperesophageal sphincter and gastroesophageal junction pressurechanges act to prevent gastroesophageal and esophagopharyngealreflux during apneic episodes in patients withobstructive sleep apnea. Chest 2010; 137: 769-776.
3. Kuribayashi S,Kusano M,Kawamura O,et al. Mechanismof gastroesophageal reflux in patients with obstructive sleepapnea syndrome. Neurogastroenterol Motil 2010; 22: 611-e172.

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(paper)脳構造および認知能力の睡眠持続および年齢に関連した変化

上尾運動公園児童広場の滑り台
岡本太郎さんの太陽の塔にリスペクトされたのかな。子供がまだここで遊べるくらいの頃に、来たことがあります。どこかに行った帰りに寄ったような気がしますが、どこに行ったかは全く覚えていません。この遊具のインパクトが強くて、そこだけが記憶に残っています。

高齢者の認知能力と睡眠の関係を調査した論文をご紹介させていただきます。睡眠時間の長さと、脳の萎縮変化をMRIで調査した結果、睡眠時間が短い対象者の脳萎縮が顕著にみられたという内容です。
要約をご紹介いたします。原文は以下のURLから参照願います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4098802/

「脳構造および認知能力の睡眠持続および年齢に関連した変化」

測定と結果
参加者は2年ごとに磁気共鳴イメージングと神経心理学的評価を受けた。睡眠持続時間および質ならびに血液サンプルの主観評価を得た。ベースライン時の睡眠時間の減少の1時間ごとに、脳室の年間拡大率を0.59%(P = 0.007)、世界的認知能力の年率低下率を0.67%(P = 0.050)年齢、性別、教育、および体格指数の影響。対照的に、ベースラインにおける全身睡眠の質は、脳または認知的老化を調節しなかった。全身性炎症のマーカーである高感受性C反応性タンパク質は、ベースライン睡眠期間、脳構造、または認知能力と相関がなかった。

結論
健康な高齢者では、短い睡眠期間は年齢関連の脳萎縮および認知低下と関連している。これらの関連は、短い睡眠者間の上昇した炎症反応に関連していない。

結果
脳構造の経時変化に対するベースライン時の睡眠の影響

我々のコホートにおける全脳容積、灰白質体積、白質体積、海馬容積、総心室容積、下前頭回流容積、および上前頭回容積の縦方向変化は、報告されたものに匹敵するか、健康な高齢者の他のサンプル。

参加者は、心室拡張の割合が変化し、一部は顕著な変化を示さず、その他は最大APCが8.35%であった。心室APCの変動の約10.2%がベースライン時の睡眠持続時間によって説明された(P = 0.039)。eTIVの影響をコントロールした後、ベースライン時の睡眠持続時間の1時間ごとの減少は、脳室の年間拡張を0.55%増加させた(標準化されていない係数:B = -0.552、P = 0.013)。年齢、性別、教育、およびBMIの影響をさらに管理した後、ベースライン睡眠期間の影響は統計的に有意であった。ベースライン時の睡眠期間の1時間ごとの減少は、毎年の心室膨張率の0.59%の増加を予測した(B= -0.587、P = 0.007)。さらに、両心室の総心室容積が3SDを超える2人の参加者を除外した後でさえ、心室拡張の速度に対するベースライン睡眠持続時間の有意な寄与を見出した(B = -0.616、P = 0.005)。この睡眠期間の影響は、他の脳尺度では観察されなかった(P> 0.148)。

結論
比較的健康な高齢者であっても2 年の短い間隔であっても、自己報告されたベースライン時の短い睡眠は、より速い心室拡張を予測する。ベースラインでの短い睡眠期間の効果は、認知能力の低下を加速させる上でより多様で控えめであり、予備的とみなされるべきである。あまり健康でない高齢者の脳および認知老化を予測する上で、睡眠の持続時間がより重要な役割を果たすかどうかはまだ調査されている。

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(paper)日中と夜間の明かりに関する生理の研究

中山道沿いの上尾駅の少し南側にある民家。現状はどうかわかりませんが、道路沿いが全面ガラス扉なので、何かの商店だったのだと思います。造りから見ると、大正から昭和の初期くらいに建てられたと思われます。間口も広く大店だったんでしょうね。
ポストが丸ければ、そのまま三丁目の夕日の雰囲気。

どうしても夜間の仕事で日中睡眠をとる必要がある方たちがいます。その方たちができるだけ健康な睡眠をとり、ストレスを軽減できるよう、安眠家具Sleep Laboを使っていただきたいと思います。
不眠症の克服には、日中の活動、特にどれだけ日光を浴びるかが重要だということです。むしろ浴びないと眠れなくなるということのようですね。
奈良県立大学による光暴露の研究論文をご紹介します。
原文はURLからご覧ください。概要のみご紹介させていただきます。

光曝露およびメラトニン分泌量に関する時間疫学研究
大林賢史
奈良県立医科大学医学部 地域健康医学講座
http://chronobiology.jp/journal/JSC2015-1-013.pdf

概要
現代人は日中に屋内で生活することが多いため日中光曝露量が少なく、夜間は人工照明を使うため夜間光曝露量が多い傾向があります(図1)[2]。

現代人のこのような光の浴び方が、生体リズムの変化やメラトニン分泌の減少を引き起こし、現代社会で増加している肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、不眠症、うつ病など多くの疾病の原因になっているのではないか?これが私どもの研究仮説です。

メラトニン分泌量と関連を認めた因子は、年齢・喫煙状況・ベンゾジアゼピン内服・日長時間・身体活動量および日中光曝露量でした。夜間光曝露量はメラトニン分泌と関連を認めませんでした。これらの潜在的交絡因子を同時投入した多変量線形回帰分析モデルにおいて、日中光曝露量( 日中平均光曝露量および1000 lux以上の光曝露時間)はメラトニン分泌量と有意に関連していました(ともに回帰係数0.101, P<0.05)。それぞれの項目に平均値を代入した回帰式より、1000 lux以上の光曝露時間とメラトニン分泌の関連を図4に示します[6]。

528人を夜間平均光曝露量 = 3luxをカットオフ値として、夜間光曝露量が多い群(145人)と少ない群(383人)の2群に分け、年齢・性別・喫煙状況・飲酒習慣・世帯収入・教育年数を同時投入した多変量ロジスティック回帰分析モデルにおいて、夜間光曝露量が<3luxの群に比較して、≧3luxの群における肥満症および脂質異常症のオッズ比は、それぞれ1.89、1.72と有意に高いことが分かりました(ともにP<0.05, 図5)[7]。

これらの結果は、先に述べた三島先生やFonkenらの先行実験研究で示されていた日中・夜間光曝露による生体影響が日常生活でも同様で起こる可能性を一般高齢者集団で実証した点で重要なものであると思われます。さらに夜間の光曝露量はアクチグラフで測定した睡眠の質、質問票を用いて測定した睡眠の質やうつ症状、頚動脈超音波検査による動脈硬化指標などと関連することを報告しました[8-10]。また、メラトニン分泌量は血圧変動、夜間頻尿、白血球・血小板数、Cardio-ankle vascularindexによる動脈硬化指標などと関連することを報告しました[11-14]。

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(paper)発酵乳の香りに“睡眠の質”を高める効果

散歩の途中で時折、「おや?」っていうものに出会いますね。ちなみに緑のラインはグリーンベルトというらしく、ここでは通学路を表しています。電信柱か何かあったんでしょうね。律儀に回り込んでラインが引かれていたのが、障害物がなくなって、路側帯の白線だけが上書きされたようです。なんだかちょっとだけ気にかかる。

(paper)発酵乳の香りに“睡眠の質”を高める効果
安眠と香りについての論文です。乳酸菌と酵母で作る発酵乳の香りって、おいしい日本酒の吟醸香のような香りでしょうかね?よく眠れそうです。

乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りに“睡眠の質”を高める効果があることを確認
乳酸菌と酵母による2度の発酵でつくるアサヒ飲料社独自の発酵乳(以下、本発酵乳)には、一般的な乳酸菌でつくる発酵乳とは異なる果実のような独特な芳香があります。これまでの研究で、本発酵乳の香りには、不安を和らげたり、日周リズム(体の昼夜のリズム)を改善する効果があることを動物実験で明らかにしています。今回、本発酵乳の香りの効果をさらに明らかにするために、睡眠の質に与える影響を調べました。
※本研究成果は日本農芸化学会2016年度大会(2016年3月27日~30日)で発表した内容です。

http://www.asahigroup-holdings.com/research/group/report/report26.html

睡眠の仕組み ~質の良い睡眠とは?~

ヒトの睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠から構成されます。ノンレム睡眠中は、身体が真に休まっている状態にあることから、ノンレム睡眠の割合が多い睡眠が、質の良い睡眠といえます。また、睡眠中の覚醒(目覚め)は、眠りが浅いことを意味し、覚醒回数が少ないことも、質の良い睡眠といえます。


実験方法
ラットの睡眠は、覚醒回数が多い点でヒトと異なりますが、ノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返される基本的な睡眠のリズムはヒトと同じです。そこで、ラットを用いて、本発酵乳の香りが睡眠に与える影響を調べました。
ラットを2つのグループに分け、一方のグループにのみ休息期(主に寝ている時間帯)に、本発酵乳の香りを1日1回30分間、7日間毎日嗅がせました。香りが睡眠に与える短期的な影響と、長期的な影響を調べるため、1回目の香りを嗅がせた翌日(2回目の香りを嗅ぐ前)と、7日間香りを嗅がせた翌日に、脳波等を測定して、休息期のノンレム睡眠、レム睡眠、覚醒の時間や回数を調べました。

<結果1>睡眠時のノンレム睡眠(深い眠り)の割合が増加
1回目の香りを嗅がせた翌日、香りを嗅がせたラットは、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期初期(休息期に入って初めの3時間)のノンレム睡眠が占める割合が増加する傾向がみられました。また、7日間香りを嗅がせると、休息期初期のノンレム睡眠が占める割合が有意に増加しました。

<結果2>睡眠時の覚醒(目覚め)の回数が減少
7日間香りを嗅がせると、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期の覚醒回数が有意に減少しました。
まとめと今後の展望
本発酵乳の香りを嗅いだラットは、休息期におけるノンレム睡眠の割合が増加し、覚醒回数が減少しました。また、これらの効果は、1回目に香りを嗅がせた翌日よりも、7日間香りを嗅がせた翌日に、顕著にみられました。このことから、本発酵乳の香りには睡眠の質を高める効果があること、さらに、継続的に嗅ぐことで、効果が高まる可能性があることがわかりました。今後、有効成分の解明やヒトの睡眠の質に与える影響について検討を進めてまいります。
これまでの研究成果
■乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りには、自律神経に働きかけ、日周リズムの改善や不安を和らげるはたらきがあることを確認
(日本農芸化学会2014年度大会にて発表  発表タイトル:「乳酸菌と酵母で発酵した発酵乳の香りが自律神経と行動に与える影響」)

■乳酸菌発酵後に酵母発酵を加えると発酵乳の嗜好性が向上すること、その要因として発酵から生まれた「香り」が重要であることを確認
(日本農芸化学会2012年度大会にて発表 発表タイトル:「発酵乳の嗜好性向上に与える乳酸菌および酵母の役割」)

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(paper)寝不足はダイエットの敵

葉の落ちた街路樹を下から眺めると、何やら踊っているようにも見えます。
最近は樹木の枝の伸び方などに、驚かされることが多いです。動かないと思われる樹木が驚くほど活動的で、隣の木ときちんと空間を分け合っているところなどを発見すると感心してしまいます。

私は徹夜が続いて痩せてしまいましたが、実際徹夜した後は甘いものが食べたくなります。寝不足の状態が脳の活動にどのような影響を与えるかの研究の中からの成果を、一般の方の関心事に向けて警告しているということですね。実際は同じ睡眠でもレム睡眠とノンレム睡眠の違いや睡眠の質というものにもかかわってくるものです。安眠が大切であることを分かりやすく示しています。

柳沢正史教授が機構長を務める筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構からのプレスリリースをご紹介します。睡眠にまつわる脳活動の解明で次々と新しい発見を行っていますので、注目しています。

ポイントを紹介いたしますので、全文はURLから確認してください。

http://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/…/si…/2/2017/01/0110_LazPR.pdf

プレスリリース

2017.1.10|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)

寝不足はダイエットの敵

睡眠時間が足りないと甘いものがほしくなる理由

 

研究成果のポイント

  1. レム睡眠量が減少すると、ショ糖や脂質など、太りやすい食物の摂取量が増加する原因の一端を見出しました。
  2. 前頭前皮質の神経活動を抑制すると、レム睡眠量が減少してもショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の抑制の影響を受けることなく増加しました。
  3. レム睡眠が不足しているときに、肥満につながる食物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしました。食べ物の味や香り、食感などの嗜好を判断する役割を担う脳部位である前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が減少しても、ショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の神経活動抑制の影響を受けることなく、対照群と同様に増加しました。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、体重を増加させる可能性のある、ショ糖が多く含まれる食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。

本研究成果は、eLife誌にて2016年12月6日付でオンライン公開されました。

図 2|レム睡眠の不足は、糖質や脂質などを多く含む「不健康な」食べ物への欲求を高める。

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(paper)慢性咳嗽と睡眠時無呼吸をつなぐ胃食道逆流症

さいたま市北区宮原にある天神社
紅梅が咲き始めですね。鳥居にかかっています。
この鳥居の高さが170cmくらいしかありません。石造りのちゃんとした鳥居で、昭和54年2月吉日、岸尚?郎さんという方が建立と彫られているのですが、小さな神社なので小さい鳥居にしたのか、参道の石畳とサイズを合わせたのか不明ですが、ちょっと?な感じです。

(論文)慢性咳嗽と睡眠時無呼吸をつなぐ胃食道逆流症
慢性の咳と睡眠時無呼吸の関係が胃食道逆流症でつながっているとの見解意見文です。
私は以前から「いびき」と「睡眠時無呼吸」の原因は、胃食道逆流症だとしてきていますが、間接的にそのつながりを示した論文とその点をもっと説明するべきだという意見文となっています。

慢性の咳症状の原因として、咳喘息や胃食道逆流症があるが、それらの症状を改善しても治らない慢性の咳があり、特発性咳嗽とされていました。近年特発性咳嗽に対し閉塞性無呼吸症候群が関与している可能性が示唆されているという事。それは特発性咳嗽に対しCPAPを使う事で症状が緩和されるからというのが論文。睡眠時無呼吸症候群患者の慢性咳嗽も増加しているという報告もあるということです。

しかしながらCPAPが睡眠時無呼吸症候群の対症療法である事から、特発性咳嗽の原因が睡眠時無呼吸症候群というのは少しおかしいのではないかと思うわけです。
睡眠時無呼吸患者は慢性的な咳症状となることが多いが、原因として胃食道逆流症を見逃してはいけませんという意見です。

CPAPが効くのは、CPAPにより胃食道逆流症の症状が改善し、結果それが慢性咳嗽に効果を発揮しているのではないかということです。
そしてその機序としては、食道や肺への悪影響を改善することができたからではないかと思えるのです。

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/004040340j.pdf

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(paper)労働時間と睡眠時間

上尾運動公園の南、中山道沿いに大きなゲームセンターがあったのですが、昨年8月で閉店していたようです。(別のお店と合併のようですね)行ったことはなかったですが、この道を通ると嫌でも目に飛び込んでくる「ゲーム」の文字に、何の生産性のないものに、お金と時間を使うなんて・・と思っていたものです。
でもオリンピックなんか見てると、元は単なる遊びだったものがずいぶん出世してたりしますよね。ゲームもプロが大金を稼ぐ時代だし。国会では働き方改革って一生懸命やってるけど、今後AIで仕事が奪われるとか言われてるし、何が仕事で何が遊びなのかわからなくなるのかな。(論文)労働時間と睡眠時間
労働時間が睡眠時間にどう影響するかを調べた報告書です。仕事とストレス。ストレスと睡眠。よく考えなければいけません。
全文は長いので、以下のURLで原文をご覧ください。ここでは要旨のみをご紹介させていただきます。
http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou054/hou54_03_02.pdf
3 研究論文集
労働時間と睡眠時間
獨協大学経済学部 教授 阿部 正浩
要旨
この論文の目的は、日本人の睡眠行動と労働の関係を探ることにある。社会生活基本調査を用いて実証分析した結果、次のような結論が得られた。
一つ目の結論は、労働時間の長さは睡眠時間に影響するということである。男性の平均的な睡眠時間は女性に比べて長いが、その分布は広く、労働時間によって睡眠時間の長さが変化していることになる。女性の場合には雇用形態によってその度合いは異なるが、全般的に労働時間が長いほど睡眠時間は短くなる。二つ目の結論は、男性と女性正規雇用者の睡眠に関する固定時間費用は小さく、労働時間の変動を睡眠時間の長さで調整していることだ。1 日24 時間だから、一つの行動が長くなれば他の行動を短くするのは当然だ。しかし、男性と女性の正規雇用者に関しては、労働時間の長さを、他の行動ではなくて、睡眠を短くすることで調整している傾向にある。これに対して女性パート・アルバイトについては、家事の固定時間費用が低く、労働時間の変動を家事時間で吸収する傾向にある。
そして、睡眠時間の固定時間費用は高く、睡眠時間で調整は正規雇用者に比べて小さい。
以上の結論は、我が国において労働時間管理が、人々の健康管理の上でも重要な役割を果たすことを示唆する。特に正規雇用者の場合、他の雇用形態と比べて、労働時間の長さを睡眠時間で調整しようとする傾向にあり、長時間労働は睡眠不足をもたらす。たとえば、表4 の男性正規雇用者の労働時間の係数は、0.147 だが、これは労働時間が1 時間長くなる毎に9 分ほど睡眠時間が短くなることを意味する。ワーク・ライフ・バランス政策の推進は、仕事と家庭の両立だけでなく、国民の健康促進の上でも重要である。

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(paper)REM睡眠とnon-REM睡眠の両方を調節する神経を同定

梅は紅白だけでなく種類がたくさんあるのでしょうね。すでに満開の木が有るかと思えば、まだほとんど開花していない木もあります。今日で2月も終わり、いよいよ春がやってきます。

昨日ご紹介した筑波大学の柳沢教授はフォワードジェネティクス解析で特定遺伝子を発見する手法です。人為的な突然変異を起こした多くのマウスを作り、その中から目的とするマウスを見つけ出してその遺伝子の変異を確認するという手法です。
本日ご紹介の名古屋大学の山中教授はオプトジェネティクスで、機序を解析する手法です。特定の光に反応する部位を持つ遺伝子を組み込んだマウスを作り、特に脳内に光と反応する部位を作り出すことで、生きた状態でその機能を確認するという手法です。

名古屋大学 山中教授による「レム睡眠とノンレム睡眠の両方を調節する神経を同定」のプレスリリースがありましたのでご紹介させていただきます。
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20140515_riem.pdf

いびきや睡眠時無呼吸を調べていくと、レム睡眠時とノンレム睡眠時の状態での違いが示唆されていて、ノンレム睡眠時は、睡眠時無呼吸患者でも静かに寝ている状態がみられるようです。しかしながら、なぜそうなのかまだまだ分かっていないことが多く、多くの研究者が眠りの科学的な解明を目指しています。

2014/5/14
レム睡眠とノンレム睡眠の両方を調節する神経を同定

名古屋大学環境医学研究所 ストレス受容・応答研究部門 神経系分野IIの研究グループ(山中章弘教授、常松友美研究員等)は、メラニン凝集ホルモン(MCH)を作る神経細胞(MCH 神経)が睡眠・覚醒の制御に関わっていることを様々な遺伝子改変マウスを用いることで解明しました。これまで、MCH 神経は摂食行動やエネルギー代謝に重要であることが報告されてきましたが、正確な生理的役割については十分わかっていませんでした。 今回研究グループは、MCH 神経の活動を光で操作すること、また運命制御することに成功し、以下の知見を見出しました。(1)MCH 神経を活性化させると、レム睡眠が始まる、(2)MCH 神経だけを脱落させると、ノンレム睡眠時間が減少した。これらのことから、MCH神経が睡眠の制御に関わっており、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方の調節に重要な役割を担っていることを見出しました。今回の発見により、レム睡眠、ノンレム睡眠を調節する新たな神経回路が明らかになりました。未だに謎が多い睡眠覚醒を調節する神経回路とその動作の原理を理解することにつながり、今後睡眠薬の開発といった創薬に期待できると考えています。
なお、この研究成果は、5 月 14 日付(米国東部時間)で、米国神経科学学会誌「The Journal of Neuroscience(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)」に掲載されました。

レム睡眠とノンレム睡眠を調節する神経を同定
-睡眠覚醒を調節する新たな神経を発見-

【概要】
名古屋大学環境医学研究所神経系分野 II の研究グループ(山中章弘教授、常松友美研究員等)は、メラニン凝集ホルモン(MCH)を作る神経細胞(MCH 神経)が睡眠・覚醒の制御に関わっていることを様々な遺伝子改変マウスを用いることで解明しました。これまで、MCH 神経は摂食行動やエネルギー代謝に重要であることが報告されてきましたが、正確な生理的役割については十分分かっていませんでした。今回研究グループは、MCH 神経の活動を光で操作すること、また運命制御することに成功し、以下の知見を見出しました。(1)MCH 神経を活性化させると、レム睡眠が始まる、(2)MCH 神経だけを脱落させると、ノンレム睡眠時間が減少する。これらのことから、MCH神経が睡眠の制御に関わっており、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方の調節に重要な役割を担っていることを見出しました。

【ポイント】
○ 神経活動の光操作技術を使って、MCH 神経だけの活動を光を使って活性化、抑制できる遺伝子改変マウスを作成しました。
○ MCH 神経の活動を活性化することで、レム睡眠を増やすことに成功しました。
○ MCH神経だけを脱落させたマウスでは、ノンレム睡眠時間が減少することが分かりました。

【背景】
ヒトの場合、1 日 8 時間の睡眠をとるとすると、実に人生の約 1/3 を睡眠に費やすことになります。睡眠には、脳が休んでいるノンレム睡眠と、脳が活動しているレム睡眠があります。必ずノンレム睡眠が先行し、その後にレム睡眠が現れます。一晩のうちにこのサイクルを約 90 分の周期で数回繰り返し、朝を迎えます。このノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えの時に脳の中でどの神経が働いているのかよく分かっていませんでした。
今回の研究では、本能行動の制御に重要な脳の領域である視床下部に局在しているメラニン凝集ホルモン(MCH)を産生する神経に着目しました。MCH 神経はこれまで摂食行動やエネルギー代謝に関わっており、一方で睡眠にも関わっているという報告もあり、その生理的役割は研究者の中でも議論の的となっていました。そこで今回、MCH 神経だけの活動を急性的に光で操作する技術と、MCH 神経だけを慢性的に脱落させる技術を使って、MCH 神経の生理的役割を明らかにすることにしました。
【研究の内容】
本研究では、MCH 神経だけの活動を自在に制御したり、MCH 神経だけを脱落させたりするために、新たに 3 種類の遺伝子改変マウスの作出を行いました。

(1) 青色の光を照射することで神経活動を活性化できる光スイッチ分子、チャネルロドプシン 2(注 1)を MCH 神経だけに発現するマウスを作成しました。このマウスの脳内に青色光を照射し、MCH 神経の活動だけを活性化すると、レム睡眠の割合が約 3 倍に増えることが分かりました。また、ノンレム睡眠の時にMCH神経を活性化した場合に、速やかにノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わることを見出し、レム睡眠を誘導することに成功しました。このことから、MCH 神経の活性化がレム睡眠のスイッチとしての役割を持っている可能 性が考えられます。

(2) 緑色の光を照射することで神経活動を抑制できる光スイッチ分子、アーキロドプシン T (注 2)を MCH 神経だけに遺伝子導入したマウスを作成しました。このマウスの脳内に緑色光を照射し、MCH 神経の活動を抑制しました。しかし、マウスの睡眠覚醒の状態に変化は見られませんでした。このことは、MCH 神経の活動はレム睡眠を誘導するために十分条件であって、必要条件ではないことを示しています。脳の中には MCH 神経以外にもレム睡眠制御を担っている神経が存在している可能性を示唆する結果です。

(3) 次に、MCH 神経だけを特異的に脱落させてしまったら、マウスの睡眠がどう変化するのかを調べました。細胞死を誘導することのできるジフテリア毒素 A 断片を MCH 神経だけに発現させたマウスを作成しました。MCH 神経だけが脱落すると、1日の中での覚醒時間が増加し、ノンレム睡眠の時間が減少することが明らかとなりました。予想されたレム睡眠への影響は全く見られませんでした。このことから、MCH 神経は長期的にはノンレム睡眠の制御に関わっている可能性が考えられます。
以上のことから、MCH 神経は睡眠の制御に重要な神経であり、ノンレム睡眠とレム睡眠の制御に関わっていることを明らかにしました。

【成果の意義】
MCH 神経の生理的役割は十分わかっていませんでした。今回、MCH 神経だけの活動や運命を制御することで、MCH 神経がノンレム睡眠とレム睡眠の制御に関わっていることを示しました。 これらの結果からノンレム睡眠とレム睡眠を調節する神経回路とその動作原理を理解することにつながり、今後睡眠薬の開発など創薬に期待できる結果と考えています。

【用語説明】
注1、 青色光によって活性化される緑藻類クラミドモナス由来のタンパク質。陽イオンを通す膜タンパク質。光を照射することで神経細胞の活動を活性化することができる。
注2、 緑色光によって活性化される古細菌由来のタンパク質。水素イオンを細胞の中から外 に汲み出す膜タンパク質なので、光を照射することで神経細胞の活動を抑制すること ができる。

【論文名】
“Optogenetic manipulation of activity and temporally-controlled cell-specific ablation reveal a role for MCH neurons in sleep/wake regulation”
(MCH 神経活動の光操作と時期特異的な細胞死誘導の手法を用いた睡眠覚醒制御機構の解明)
Tomomi Tsunematsu, Takafumi Ueno, Sawako Tabuchi, Ayumu Inutsuka, Kenji F. Tanaka, Hidetoshi Hasuwa, Thomas S. Kilduff, Akira Terao, Akihiro Yamanaka
(常松友美、上野貴文、田淵紗和子、犬束歩、田中謙二、蓮輪英毅、Thomas S. Kilduff、寺尾晶、山中章弘)
掲載誌;The Journal of Neuroscience
研究内容を表した図

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(paper)REM睡眠non-REM睡眠の切り替えを担うニューロンの同定

Siriに「いびきを治す方法を教えて」と聞いても、「該当するものがありませんでした。」と返ってきます。仕方がないので、「いびきを解決する方法を教えて」と聞くと、当社のホームページが二番目に表示されました。
一番になるのはどうすればいいのでしょうね。

安眠のための科学って、実はそれほど進んでいるわけではありません。
人がなぜ眠るのか?
なぜ夢を見るのか?
なぜいびきをかくのか?
等は実はまだすべてわかったわけではないのです。それだけに情報はばらばらだし、いびきを止めるようなサプリやツールもたくさんあります。
医者でさえ、治せるわけでもないと断りながら、手術や対症療法を進めます。
その中でも論文として発表されるものは、少なくとも何人かの被検者を科学的に調査し、仮説を立て検証するという手順を踏んでいるだけ、調査結果データについては信ぴょう性が高いとみてよいと思っています。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構のレム睡眠ノンレム睡眠のプレスリリース論文をご紹介します。
レム睡眠の役割は、ノンレム睡眠の徐波の発生に寄与している。ノンレム睡眠の徐波とは、記憶の定着やシナプスの結合を強める効果があることが分かっているので、レム睡眠が阻害されると、記憶力が弱くなったりするのかもしれません。

これまで、夢を見るのは睡眠の状態の中でもREM睡眠(急速眼球運動)の時とされていましたが、non-REM睡眠時であっても、脳の活動状況によって夢を見ていることが確認されました。

実はこれまでもnon-REM睡眠時にも、夢を見ていることがある事はわかっていたのですが、その仕組みについてはわかっていませんでした。
夢を見ているときには、脳の中で高周波電気活動が生じるのですが、脳の後部が高周波電気活動を示す「ホットゾーン」の活動をモニタリングすることで、92%の確率で夢を見ていることが確認でき、81%の確率で夢を見ていないことが確認できたということです。更には、夢の内容も脳の活動領域の活性を確認することで特定できることが分かりました。
言語知覚及び理解に関与する大脳皮質の領域で活動を引き起こしたときには、夢の中で会話をしていたり、人が出てくる場合には脳の顔認識をつかさどる領域が活動していたということです。

実験には46人のボランティアに256の電極で覆われたネットを着用して眠ってもらい、脳内の電気活動のモニタリングと被検者の夢の報告を比較したもので調べた結果です。

この実験は人の意識を研究する一環で、夢を見ているときは、起きて活動しているときと同じ脳の領域を使っており、夢はその人の本当の経験となっている。
「人の意識と脳領域の関係を理解する」意識の根幹をなすものが何かということの研究です。
今話題のAI研究でも意識というものを最終的に機械が持てるのかということが話題になったりします。
人間とは何かというものを研究するうえで、夢を見ることも謎を解明する糸口なのですね。

フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気ひつじの夢を見るか?」というSF(映画ブレードランナーの原作)を思い出します。

(論文)REM睡眠non-REM睡眠の切り替えを担うニューロンの同定
「レム睡眠とノンレム睡眠との切り替えを担うニューロンの同定により明らかにされたレム睡眠の役割」(1筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構,2理化学研究所脳科学総合研究センター 行動遺伝学技術開発チーム)
http://first.lifesciencedb.jp/archives/11921

目 次
要 約
はじめに
1.レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンの同定
2.睡眠から覚醒への切り替えを担うニューロンも同一の発生学的な起源から生じる
3.レム睡眠からノンレム睡眠の切り替えを担うGABA作動性ニューロンの同定
4.レム睡眠はノンレム睡眠における徐波の発生に寄与する
おわりに
文 献
生命科学の教科書における関連するセクションへのリンク
著者プロフィール

要 約
哺乳類の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠という2つの独立したステージからなる.レム睡眠において夢をみることがよく知られているが,その役割は脳科学における最大の謎のひとつであった.また,レム睡眠とノンレム睡眠はそれぞれ特徴的な脳の活動をともなうが,そのあいだをすばやく切り替える機構についてもよくわかっていなかった.今回,筆者らは,マウスの胎生期において特定の細胞系譜を遺伝学的に標識し,生後にその神経活動を化学遺伝学的に操作するという新規のアプローチにより,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンを同定した.さらに,同じ細胞系譜から生じ隣接する位置へと移動するニューロンが睡眠から覚醒への切り替えを担うことも明らかにされた.そして,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンの下流においてはたらく抑制性のニューロンも同定された.これらの発見を生かし,従来とはまったく異なる,外部からの刺激によらないレム睡眠の操作法を確立したことにより,レム睡眠には記憶の形成や脳の機能の回復において重要な神経活動とされる除波をノンレム睡眠において誘発する役割のあることが明らかにされた.この作用を介し,レム睡眠が脳の発達や学習に貢献している可能性が示唆された。

はじめに
レム睡眠およびノンレム睡眠がみられるのは鳥類や哺乳類など発達した大脳をもつ脊椎動物のみである.したがって,レム睡眠およびノンレム睡眠は脳の高等な機能にかかわると考えられてきた.レム睡眠は新生児期1) や学習の直後に多い2) ことが知られていたが,レム睡眠を強制的な覚醒により阻害する実験では刺激そのものによるストレスが生じてしまうなど,レム睡眠を有効に阻害する方法がなかったため,その具体的な役割はわかっていなかった.
また,レム睡眠とノンレム睡眠との切り替えの機構を解き明かそうと数多くの研究がなされてきた.これまでに,脳幹の橋被蓋野とよばれる領域がノンレム睡眠からレム睡眠への切り替えに重要であることが示唆されていたが3-5),その反対の,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えの機構についてはよくわかっていなかった.おもに用いられてきた薬理学的な実験では細胞種や厳密な領域に対する特異性を欠くこともあり,複数の研究グループにより,レム睡眠とノンレム睡眠との切り替えに関する異なるモデルが提唱されてきたが,いずれも決定的な証拠はなかった.
脳幹は明確な神経核の構造を欠き複雑なうえ,機能的にも多様なニューロンのあつまりである.これまでの技術では,特定の機能をもつニューロンのみを解析することは困難であった.今回,筆者らは,ニューロンの機能はその発生学的な起源とリンクするという仮説にたち,発生学的な手法と化学遺伝学的な手法とを組み合わせ,特定の細胞系譜に由来するニューロンのみを標識して操作し睡眠の制御への関与について検討した.その結果,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンの同定に成功した.また,これらの新たに同定したニューロンの操作により,刺激に依存しない新規なレム睡眠の阻害法を確立し,レム睡眠の機能についても解析した.
1.レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンの同定
脳幹はヘテロな性質および機能をもつニューロンのあつまりであり,正確な機能の解析や評価は困難であった.そこで,発生学的な手法により特定の細胞系譜に由来するニューロンのみを標識し操作することにより,特定の機能をもつニューロンを抽出することを試みた.ここで注目した小脳菱脳唇は胎生期に一過的に現われる神経上皮で,小脳の顆粒細胞の発生学的な起源としてよく知られている.一方,近年,小脳菱脳唇の一部の細胞が大きく移動して脳幹の橋のグルタミン酸作動性ニューロンへと分化することが報告された6,7).そこで,これらの小脳菱脳唇に由来する脳幹のニューロンが睡眠の覚醒に関与しているかどうか検討した.
これらのニューロンを特異的に操作するため,胎生期において小脳菱脳唇の神経前駆細胞を遺伝学的に標識し,出生ののち,その標識に依存してニューロンの活動の人為的な操作を可能にするような遺伝子を発現させた.具体的には,小脳菱脳唇のマーカー遺伝子であるAtoh1遺伝子のプロモーターの制御のもとでタモキシフェンに依存的なCreを発現するマウスを作製した.このマウスを,Creに依存して転写因子tTAを発現するマウスと交配し,小脳菱脳唇から脳幹の細胞が生じる胎生期10.5日目にタモキシフェンを投与した.これにより,小脳菱脳唇の神経前駆細胞およびその子孫の細胞はtTAを発現するようになる.そして,成体になったのち,人工的にデザインされたGタンパク質共役受容体DREADD-hM3DqをtTAに依存して発現するアデノ随伴ウイルスベクターを局所に注入し,これらのニューロンのみを操作することを可能にした.このDREADD-hM3DqはリガンドであるCNOを腹腔内投与することにより一過的に神経興奮をひき起こす8).
小脳菱脳唇に由来する脳幹のニューロンは,その分布からおおまかに2つ,正中線の近くに位置するものと遠くに位置するものとに分けられた(図1).正中線に近いニューロンは外背側被蓋核から内側傍小脳脚核にかけて分布していた.一方,正中線から遠いニューロンは外側傍小脳脚核を中心に分布していた.
図1 共通の発生学的な起源に由来するニューロンによる睡眠と覚醒およびレム睡眠とノンレム睡眠の制御
胎生期に小脳菱脳唇において生じた神経前駆細胞のうち,脳幹橋の正中線の近くに移動したニューロンはレム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを,正中線から遠くに移動したニューロンは睡眠から覚醒への切り替えを制御する.

正中線の近くに位置するニューロンにDREADD-hM3Dqを発現させ,CNOの投与により活性化させたのち,睡眠と覚醒のサイクルを観察した.その結果,レム睡眠が強く抑制され,代わりに,ノンレム睡眠が増加した.一方,覚醒の量に影響はみられなかった.したがって,正中線の近くに位置するニューロンはレム睡眠からノンレム睡眠の切り替えを担うことが判明した.
2.睡眠から覚醒への切り替えを担うニューロンも同一の発生学的な起源から生じる
小脳菱脳唇に由来する脳幹のニューロンのうち,正中線から遠くに位置するニューロンを活性化させたところ,さきの結果とは対照的に,睡眠そのものの量が大幅に減少し覚醒が強く誘導された.ほかの研究グループから,この近辺のグルタミン酸作動性ニューロンが覚醒を促進することが報告されていたが9),同定された正中線から遠いニューロンと同一のニューロンである可能性が高いと考えられた.以上のことから,小脳菱脳唇は,レム睡眠とノンレム睡眠,覚醒と睡眠など,さまざまな脳の状態の切り替えを担うニューロンの共通の発生学的な起源であることが判明した.
3.レム睡眠からノンレム睡眠の切り替えを担うGABA作動性ニューロンの同定
正中線の近くに位置するニューロンがどのような機構によりレム睡眠を制御しているのか調べるため,その投射先を調べたところ,軸索を吻側へと伸ばし中脳深部核の背側の領域へと投射していた.この領域には古典的な薬理学的な実験からレム睡眠を抑制するニューロンの存在が示唆されていたが,どのような細胞種がかかわるかについては不明であった4,10).この領域の抑制性のGABA作動性ニューロンに注目し,DREADD-hM3Dqを発現させて神経活動を誘導したところ,正中線に近いニューロンを活性化したときと同様に,ノンレム睡眠が増加しレム睡眠が抑制された.反対に,神経活動を抑制するDREADD-hM4Diを発現させて神経活動を抑制したところ,レム睡眠が誘導された.これらの結果から,正中線の近くに位置するニューロンは,中脳深部核の背側部のGABA作動性ニューロンをつうじてレム睡眠を制御していることが強く示唆された.
4.レム睡眠はノンレム睡眠における徐波の発生に寄与する
レム睡眠の役割はほとんど不明である.これまでのレム睡眠の機能に関する研究においては,対象がレム睡眠に入るとただちに外部から刺激をくわえ,覚醒させることによりレム睡眠を強制的に終了させる方法が広く用いられてきた.しかしながら,この方法では,レム睡眠だけでなくノンレム睡眠の量も大幅に減少させてしまう点や,対象に大きなストレスがかかる点などから,その結果は解釈がむずかしく,純粋にレム睡眠が減少したためとはいえないという問題があった.一方,レム睡眠を制御する中枢に対する化学遺伝学的な操作によりレム睡眠を阻害することが可能になったことから,この新規に確立されたレム睡眠の阻害法を用いてレム睡眠の機能について検討した.
レム睡眠を阻害されたマウスにはいっけん影響はないようにみえたが,時間がたつにつれ,睡眠そのものの質に影響が現われた.具体的には,ノンレム睡眠において生じる徐波とよばれる脳の活動がしだいに低下した.徐波とは周波数4 Hz以下のゆっくりとした脳波であり,大脳皮質のニューロンの膜電位が同調してゆっくり振動することにより生じる.深いノンレム睡眠の際に生じやすく,神経の可塑性に貢献することが知られている11,12).今回のレム睡眠の阻害実験では,この徐波はしだいに減弱したが,レム睡眠の操作の効果がきれてふたたび正常なレム睡眠に入ると,その直後に,ノンレム睡眠における徐波の成分ももとのレベルに回復した.反対に,レム睡眠を人為的に増加させるとノンレム睡眠における徐波は強まった.また,レム睡眠を操作していない自然な睡眠においても,レム睡眠の長さとそれにつづくノンレム睡眠における徐波の成分とのあいだには正の相関関係があった.これらの結果をあわせて,レム睡眠がノンレム睡眠における徐波の発生に寄与していることが明らかにされた.マウスでは睡眠のあいだ頻繁に短い覚醒がみられるが,これらの覚醒については,レム睡眠のような徐波を促進する効果は確認されなかった.したがって,レム睡眠と覚醒は大脳の活動が活発となるという点においては共通するが,徐波の誘導に関しては効果が異なると考えられた.
おわりに
今回,筆者らは,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えの起こる機構,および,レム睡眠が徐波の発生に関与するというその生理的な意義の一端について明らかにした.レム睡眠が誘導する徐波には,記憶の定着を促進する効果11) やシナプスの結合を強める効果12) のあることが知られている.今回の結果をふまえると,レム睡眠が徐波の発生をつうじて記憶の定着に関与している可能性が示唆される.今後,レム睡眠の操作の可能なマウスにおいて学習能力や記憶力を検証することにより,レム睡眠が記憶や学習にどのように寄与するのかについてさらなる解明が期待される.
なお,今回の筆者らの報告とほぼ同じ時期に,米国の研究グループにより,延髄に存在するGABA作動性ニューロンが,筆者らにより同定された中脳深部核のGABA作動性ニューロンと同一と考えられるニューロンに投射し,レム睡眠を制御しているという報告が発表された13).筆者らの結果とあわせると,中脳深部核のGABA作動性ニューロンはレム睡眠からノンレム睡眠への切り替えにおいて中枢的な役割を担うことが推察される.
一方,ノンレム睡眠からレム睡眠への切り替えに関しては,どのような細胞種が重要なのか詳細は不明なままである.ネコの橋被蓋野の青斑下核という領域にアセチルコリン受容体の作動薬を注入するとレム睡眠が強く誘導されることが知られている3).このレム睡眠の誘導にかかわる青斑下核のニューロンのアイデンティティの解明は今後の重要な課題のひとつである.
また,今回の研究においては,レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担うニューロンがどの神経前駆細胞に由来するのかを調べることにより,その発生学的な起源として小脳菱脳唇が同定された.興味深いことに,この小脳菱脳唇の神経前駆細胞からは,レム睡眠とノンレム睡眠との切り替えを担うニューロンだけでなく,睡眠から覚醒への切り替えを担うニューロンも生じることが判明した.この研究から,小脳菱脳唇から脳の状態の切り替えを担うスイッチとなる多様なニューロンを生じることがはじめて明らかにされた.小脳菱脳唇はレム睡眠およびノンレム睡眠のみられない硬骨魚類においても保存されており,今回の発見は,睡眠と覚醒だけの単純な脳の状態しかもたない生物から,レム睡眠やノンレム睡眠といったより複雑な脳の状態をもつ生物が進化した歴史の理解にもつながると期待される.

文 献
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Vanni-Mercier, G., Sakai, K., Lin, J. S. et al.: Mapping of cholinoceptive brainstem structures responsible for the generation of paradoxical sleep in the cat. Arch. Ital. Biol., 127, 133-164 (1989)[PubMed]
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Armbruster, B. N., Li, X., Pausch, M. H. et al.: Evolving the lock to fit the key to create a family of G protein-coupled receptors potently activated by an inert ligand. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104, 5163-5168 (2007)[PubMed]
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Weber, F., Chung, S., Beier, K. T. et al.: Control of REM sleep by ventral medulla GABAergic neurons. Nature, 526, 435-438 (2015)[PubMed]

著者プロフィール
林 悠(Yu Hayashi)
略歴:2008年 東京大学大学院理学系研究科博士課程 修了.同年 理化学研究所脳科学総合研究センター 基礎科学特別研究員を経て,2013年より筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 助教.
研究テーマ:睡眠の意義,機構,進化.
抱負:なぜ眠るのか,なぜ夢をみるのかについて明らかにしたい.
柏木 光昭(Mitsuaki Kashiwagi)
筑波大学大学院人間総合科学研究科修士課程 在学中.
糸原 重美(Shigeyoshi Itohara)
理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダー.

© 2015 林 悠・柏木光昭・糸原重美 Licensed under CC 表示 2.1 日本

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(paper)総説:日本における睡眠障害の頻度と健康影響

散歩中に見つけた油膜とヘドロの側溝。いろいろなエフェクト機能を使ってみました。ただの汚い側溝ですが、色の変化は面白いです。こうやって眺めると、同じ景色を同時に様々な側面で感じる面白さだと思います。
私は夢を見ているときの感覚ってこういう感じかもしれません。

総説:日本における睡眠障害の頻度と健康影響
睡眠障害と健康との因果関係については、誰でも承知と思ってはいるものの、実際のエビデンスに基づいた資料などが体系的に示されているものがあまりなかった。
それを様々な実験結果や調査結果と関連付けて総説とした論文です。最終的なまとめも結果的には私の安眠家具につながると思いますが、一つだけ気に入らないのが、睡眠薬を医師の指導で正しく使えば安全というところですね。少なくとも日本の医師で不眠症の症状を患者の申告ではなく、検査を行ったうえで正しく処方しているほうが、圧倒的に少ない現状が正しくないと思っています。

(論文)総説:日本における睡眠障害の頻度と健康影響
https://www.niph.go.jp/journal/data/61-1/201261010002.pdf

土井由利子
国立保健医療科学院統括研究官(疫学調査研究分野)
Prevalence and health impacts of sleep disorders in Japan

抄録
近年,国内外の数多くの睡眠研究によって,睡眠障害が罹病のリスクを高め生命予後を悪化させるというエビデンスが積み重ねられて来た.世界的に睡眠研究が進む中,睡眠問題は取り組むべき重要課題として認識されるようになり,日本を含む各国で,国家的健康戦略の1 つとして取り上げられつつある。このような流れの中で,過去10 年間を振り返って,日本における睡眠障害の頻度(有症率)と睡眠障害による健康影響について,エビデンスをもとにレビューすることは,公衆衛生上,有意義なことと考える。
文献レビューの結果,睡眠障害の有症率は,慢性不眠で約20%,睡眠時無呼吸症候群で3% ~ 22%,周期性四肢運動障害で2 ~ 12%, レストレスレッグス症候群で0.96 ~ 1.80%,ナルコレプシーで0.16 ~ 0.59%,睡眠相後退障害で0.13 ~ 0.40%であった。
健康影響に関するコホート研究では,死亡に対し短時間睡眠で1.3 ~ 2.4,長時間睡眠で1.4 ~ 1.6,2 型糖尿病の罹病に対し入眠困難で1.6 ~ 3.0,中途覚醒で2.2 と有意なリスク比,入眠困難と抑うつとの間で1.6 と有意なオッズ比を認めた.日本国内外のコホート研究に基づくメタアナリシス研究でも同様の結果であった。
以上より,睡眠障害へ適切に対処することが人々の健康増進やQOL の向上に大きく寄与することが示唆された。そのためには,睡眠衛生に関する健康教育の充実をはかるとともに,それを支援する社会や職場での環境整備が重要である。また,睡眠障害の中には,通常の睡眠薬では無効な難治性の神経筋疾患なども含まれており,睡眠専門医との連携など保健医療福祉における環境整備も進める必要がある。
キーワード:睡眠障害,睡眠時間,不眠,死亡,罹病

Ⅰ.はじめに
近年,国内外の数多くの睡眠研究によって,睡眠障害が罹病のリスクを高め生命予後を悪化させるというエビデンスが積み重ねられて来た.世界的に睡眠研究が進む中,睡眠問題は取り組むべき重要課題として認識されるようになり,日本を含む各国で,国家的健康戦略の1 つとして取り上げられつつある.このような流れの中で,過去10 年間における日本の睡眠障害の実態を明らかにし,その健康影響についてエビデンスをもとに概観することは,公衆衛生上,有意義なことと考える。
そこで,本稿では,ヒトの正常睡眠と睡眠障害について概説した上で,これまでに蓄積された疫学研究の成果をもとに,日本における睡眠障害の頻度(有症率)と健康影響についてレビューする。

Ⅱ.睡眠の量,質,リズム
私たちの眠り(睡眠)と目覚め(覚醒)は,体内にある生物時計による時刻依存性(サーカディアンリズム)と,時刻に依存しないで覚醒時間の長さによって量と質が決定される恒常性維持機能(ホメオスターシス)によって制御されている.以下に,ヒトの正常睡眠について簡単に解説する。

1.睡眠の量と質
夜間ヒトの睡眠中に電極を付けて終夜ポリグラフ(脳波・眼球運動・筋電位)をとると,脳波では,覚醒→ノンレム睡眠(段階1 →段階2 →段階3 →段階4)→レム睡眠を1 サイクル(約90 分)として,1 晩に3 ~ 5 サイクルを繰り返す.覚醒と浅いノンレム睡眠(段階1 と段階2)が混在する移行期を入眠過程という。浅いノンレム睡眠から,徐波睡眠(段階3 と段階4)とよばれる深いノンレム睡眠へ進み,レム睡眠(脳波↑,筋電位↓,急速眼球運動)を経て1 サイクルが終わる[1]。
Ohayon ら[2] は,5 ~ 102 歳の健常人3,577 人(5-19 歳:1,186 人,20-102 歳: 2,391 人)を対象に実施された終夜ポリグラフまたはアクチグラフから得られた睡眠変数(総睡眠時間,睡眠潜時,睡眠効率(睡眠/(睡眠+覚醒)),睡眠段階1(%),睡眠段階2( %),徐波睡眠(%),レム睡眠(%),レム睡眠潜時,中途覚醒時間)をプールし,年齢による睡眠変数への影響についてメタアナリシスを行った(図1)。
この研究によれば,年齢が進むにつれて,総睡眠時間,睡眠効率,徐波睡眠,レム睡眠,レム睡眠潜時が減少,睡眠潜時,中途覚醒時間,睡眠段階1,睡眠段階2 が増加することが認められた.年齢以外では,精神疾患,身体疾患,服薬や飲酒,睡眠時無呼吸などの睡眠障害,性別,睡眠習慣などが,睡眠変数の分布に影響を及ぼすことが確認された。2.睡眠・覚醒リズム
ヒトの睡眠・覚醒リズム(概日リズム)の概念図を示す(図2)[3,4].生物時計の機能は,①自律性の概日リズム,②昼夜変化(明暗サイクル)への同調,③生体機能への概日リズムの伝達と発現の3 要素に分解できる.睡眠・覚醒リズムあるいは睡眠・覚醒傾向は,生物時計,恒常性維持機能,明暗サイクル(光)によって制御され,その他の要因(図2 の左上のボックス内,右のボックス内)によって影響を受ける。
生物時計自体の発する概日リズムを直接測定することはできないが,深部体温,メラトニン,ホルモン(コルチゾール,成長ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,プロラクチンなど)の測定値が概日リズムを示すことによって,生物時計の概日リズムを間接的に観測することができる。

Ⅲ.睡眠障害
睡眠障害に関する国際分類には,世界保健機関(WHO)による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)),米国精神医学会(APA)による「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders( DSM))」などがあるが,ここでは,米国睡眠障害連合(ASDA)が中心となってまとめた「睡眠障害国際分類(International Classifi cation of Sleep Disorders(ICSD))」を紹介する。加えて,主な睡眠障害が日本ではどのくらいの頻度でみられるのか,これまでに行われた疫学研究をもとに紹介する。

1.睡眠障害国際分類
2005 年に改訂された睡眠障害国際分類第2 版(ICSD-2)[5,6] による主要な睡眠障害(8 項目)を表1 に示す。
それぞれの睡眠障害は,さらに次のように,細分類される。
不眠症(適応障害性,精神生理性,逆説性,特発性,精神障害,不適切な睡眠衛生,行動的(小児期),薬剤・物質,内科的疾患,特定不能(非器質的),特定不能(器質的)),睡眠関連呼吸障害(中枢性睡眠時無呼吸症候群,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,睡眠関連低換気/ 低酸素血症症候群,その他),中枢性過眠症(ナルコレプシー,反復性,特発性,行動起因性睡眠不足症候群,内科的疾患,薬剤・物質,特定不能(非器質的),特定不能(器質的)),概日リズム睡眠障害(睡眠相後退型,睡眠相前進型,不規則睡眠・覚醒リズム,自由継続型,時差型,交代勤務型,内科的疾患,薬剤・物質,その他),睡眠時随伴症(ノンレム睡眠からの覚醒障害,レム睡眠関連,その他),睡眠関連運動障害(レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群),周期性四肢運動障害,睡眠関連下肢こむらがえり,睡眠関連歯ぎしり,睡眠関連律動性運動障害,特定不能,薬剤・物質,身体疾患),孤発性の諸症状・正常範囲内の異型症状・未解決の諸問題(長時間睡眠者,短時間睡眠者,いびき,寝言,ひきつけ,ミオクローヌス),その他の睡眠障害(環境性,その他)。
いずれの睡眠障害も,疾患特異的な症状のほかに,夜間の不眠や日中の眠気といった症状を呈する。睡眠障害に応じて治療方法が異なるので,ICSD-2 に基づいて,正しく診断・分類することが肝要である。

2.睡眠障害の頻度
表2 に,それぞれの睡眠障害を有する人々がどれくらいいるのか,日本で実施された主な疫学研究の結果(有症率)を示す。

いずれも地域・職域で行われた比較的大規模なヒト集団を対象としたものであるため,その多くは,目的とする睡眠障害に適した質問紙を用いて,対象者の自己申告に基づき,睡眠障害があるかどうかの判定を行っている。
1997 年に実施された全国調査によれば,入眠困難(寝付きが悪い)や中途覚醒(夜間・早朝に目が覚める)などの不眠の症状が一時的ではなく1 ヶ月以上続く,慢性不眠の有症率は約20% と推定された[7,8].ICSD-2(2005 年)の不眠症の判定基準では[5],夜間の不眠の症状に,日中の機能障害(日中の眠気,注意力・集中力の低下など)が追記されたので,この判定基準に照らし合わせると,不眠症の有症率は,これよりも低くなるであろう。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の判定の場合には,終夜ポリグラフ検査による睡眠中の呼吸イベント(無呼吸・低呼吸/ 睡眠1 時間)の確認が必須であるが[5],疫学研究では,携帯型の簡易装置(パルスオキシメーター,鼻口呼吸センサー,気道音センサー)を用いて睡眠1 時間あたりの動脈血酸素飽和度の3%以上の低下や無呼吸・低呼吸の頻度を測定して代用している.睡眠時無呼吸症候群の有症率は,おそらく対象とした集団や測定方法の違いなどからであろう,低いものでは約3%(地域住民女性),高いものでは
約22%(職域男性)と,大きな開きがみられた[9-12]。
ナルコレプシーの有症率は0.16 ~ 0.59%[13,14],睡眠相後退障害の有症率は0.13 ~ 0.40% [15,16],レストレスレッグス症候群の有症率は0.96 ~ 1.80%[17-19] と,不眠症や睡眠時無呼吸症候群に比べると,その頻度は低い。
周期性四肢運動障害は,ノンレム睡眠期に足関節の周期的な不随意運動によって夜間の睡眠が妨げられる障害であるため,判定には終夜ポリグラフ検査が必須である[5]。
ここで報告されている周期性四肢運動障害の有症率2 ~12%[20,21] は,第3 者(ベッドパートナーやルームメイトなど)による評価(眠っている間に足のビクンとする動きがある)に基づいて判定されたものである。

Ⅳ.睡眠と健康
ここでは,睡眠時間と死亡(総死亡)や罹病(2 型糖尿病),慢性不眠と併存疾患や罹病(2 型糖尿病,うつ病)に関して,これまでに蓄積された疫学研究の成果から,現時点で明らかになっていることについて解説する。

1.睡眠時間
1)分布
2007 年に厚生労働省によって実施された2 つの実態調査(国民健康・栄養調査[22]) と労働安全衛生特別調査[23])の報告をもとに,睡眠時間の分布を示す(図3)。

無作為に抽出された全国の15 歳以上の一般住民(8,119 人)および20 歳以上の民営事業所従業員(11,440 人)ともに,6-6.9 時間を中央値・最頻値とした正規分布をしていた。睡眠時間が6 時間未満の者の割合は,15 歳以上の住民では,男性26%,女性31%,20 歳以上の従業員では,男性41%,女性45% であった.年齢階級別(図4)では40-49 歳(37%),

職種別(図5)では保安(68%),運輸(50%),営業・サービス(49%)が高い割合を示した.一般住民[24],ホワイトカラー[25],シフトワーカー[26] を対象とした先行研究では,睡眠時間が6 時間を下回ると,日中に過度の眠気を来すことが報告されている。
睡眠時間が9 時間以上の者に関しては,従業員ではみられなかったが,15 歳以上の一般住民では全体で3% であった(図3)。これを年齢階級別に見ると,70 歳以上では10% に上っていたが,70 歳未満は2% 以下であった(図4).終夜ポリグラフから客観的に得られた健常人の睡眠時間は,年齢とともに減少することが確認されている(図1)。
高齢者の場合,本人の自己申告(アンケート調査や生活時間調査など)による睡眠時間には,実際の睡眠時間(図1の総睡眠時間に相当)の他に,床の中で寝付くまでに要する時間(図1 の睡眠潜時に相当)や途中で目が覚めた時間(図1 の中途覚醒に相当)や午睡の時間が含まれている可能性がある。

2)死亡
近年,多くの疫学研究(コホート研究)により,睡眠時間が総死亡と有意な関連(U字型)を示したとする報告が相次いだ.これらのコホート研究をもとに,Gallicchio Lら[27] とCappuccio FP ら[28] は,それぞれ独自に睡眠時間と死亡に関するメタアナリシスを行った.メタアナリシスには,異質性や公表バイアスなど研究方法上の限界はあるものの,ここでは,2009 年3 月までに発表された論文をもとにCappuccio FP ら[28] が行ったメタアナリシスによる最新の知見を紹介する.この中には,日本からのコホート研究[29-33] が含まれているが,同一のコホート研究からの発表論文[32,33] は基準に合致した方が採用されている.その結果,死亡に対する相対リスク(95% 信頼区間)は,短時間睡眠(7 時間未満,6 時間未満,5 時間未満,4時間未満と定義は異なる)で1.12(1.06-1.18),長時間睡眠(8時間以上,9-9.9 時間,9 時間以上,10 時間以上,12 時間以上と定義は異なる)で1.30(1.22-1.38)と有意に高くなっていた(表3)。

短時間睡眠と死亡との因果関係の機序については,充分に解明されているわけではないが,短時間睡眠による糖代謝および交感神経系や免疫系への影響が示唆されている。長時間睡眠と死亡との因果関係については,その機序を示唆する研究は今のところ無い。むしろ,調整しきれなかった交絡要因(潜在要因を含む)や併存疾患によるものではないかと考えられている.例えば,長時間睡眠と関連があるとされる,芳しくない健康状態,診断のついていない病気,身体活動状態の低下,抑うつ状態,良好ではない社会経済状態などである。

3)2 型糖尿病
Cappuccio FP ら[34] は,2009 年4 月までに発表されたコホート研究の論文をもとに,睡眠の量(睡眠時間)や質(不眠)と2 型糖尿病の罹病に関するメタアナリシスを行った(表3).その結果,2 型糖尿病の罹病に対する相対リスクは,短時間睡眠(7 時間未満,6 時間未満,5 時間未満,と定義は異なる)で1.28(1.03-1.60),長時間睡眠(8 時間以上9 時間以上と定義は異なる)で1.48(1.13-1.96)と有意に高くなっていた.これらの因果関係の機序については,Ⅳ -1-2)と同様に,考えられている。
なお,この中には,日本から職域でのコホート研究(6,509人)[35] が含まれているが,2 型糖尿病の罹病に対する相対リスクは,短時間睡眠,長時間睡眠,いずれにおいても有意ではなかった。

2.不眠
1)併存する症状や疾患
不眠の症状は,さまざまな心身の症状と関連しており,身体疾患や精神疾患などと併存している[5].前述のⅢ- 2で紹介した全国調査によれば,慢性不眠の症状(入眠困難や中途覚醒)と関連する心身の症状として,腰痛,心窩部痛,体重減少,頭痛,疲労,心配,いらいら,興味の喪失[36],併存疾患として,高血圧症,心疾患,糖尿病,筋骨格系疾患,胃・十二指腸潰瘍[37] が認められた。

2)2 型糖尿病
前述したCappuccio FP ら[34] による,睡眠の量(睡眠時間)や質(不眠)と2 型糖尿病の罹病に関するメタアナリシスでは,2 型糖尿病の罹病に対する不眠の症状の相対リスクは,入眠困難で1.57(1.25-1.97),中途覚醒で1.84(1.39-2.43)と有意に高くなっていた.これらの因果関係の機序については,Ⅳ -1-2)と同様に,考えられている。
なお,この中には,日本から,前述の職域でのコホート研究[35] と地域でのコホート研究(2,265人)[38] が含まれている. 地域のコホート研究では, 入眠困難で2.98(1.36-6.53),中途覚醒で2.23(1.08-4.61),職域のコホート研究では入眠困難で1.62(1.01-2.59)と有意であったものの,中途覚醒では1.36(0.87-2.14)と有意差を認めることができなかった.職域のコホート研究では,睡眠時間でも有意差を認めなかったことなどを考え合わせると,理由の1 つとして,健康労働者効果などが考えられる。

3)うつ病
Baglioni C ら[39] は,2010 年2 月までに発表されたコホート研究の論文をもとに,主としてDSM- ⅣまたはTR に基づく不眠症とうつ病の罹病に関するメタアナリシスを行った(表3).その結果,うつ病の罹病に対する不眠症のオッズ比(95% 信頼区間)は,2.10(1.86-2.38)であった.なお,この中には,日本からの研究は含まれていなかった。
近年,日本において,不眠の症状と抑うつの関連をみたコホート研究では,65 歳以上の地域住民3,065 人を3 年間追跡した結果,入眠困難を有する者はそうでない者に比べ抑うつを呈したオッズ比が1.59(1.01-2.50)であったと報告されている[40]。

Ⅴ.おわりに
以上,日本における睡眠障害の頻度と睡眠障害による健康影響について,解説した.夜間の睡眠障害と日中のQOL(主観的健康感の低下や仕事上・人間関係上のトラブルや事故など)の低下には有意な関連がある[41].しかしながら,睡眠が障害されても適切な対処行動が取られず,寝酒を常用する(男性37.4%,女性10.0%)などして,かえって早朝覚醒を来し充分な睡眠を維持できず悪循環に陥る[42]。
睡眠障害に適切に対処することによって,人々の健康増進やQOL の向上に,大いに貢献できるものと考えられる。
表4 に睡眠障害に対処するための指針を示した。
一人一人が睡眠衛生の面から自分に合った睡眠を確保できるよう,健康教育の充実をはかるとともに,それを支援する社会や職場での環境整備が求められている.睡眠障害の多くが,夜間の不眠の症状に日中の眠気など不眠症に共通の症状を呈するが[5],通常の睡眠薬では効果が期待できない疾患,あるいは憎悪してしまう疾患もある.この中には,難治性の神経筋疾患や神経変性疾患なども含まれている[43].症状が改善しない場合には,睡眠障害を専門とする医師による診断と治療が必要となる.保健医療福祉の諸機関と睡眠専門医療機関との連携といった環境面での整備も望まれるところである。

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