「不眠」タグアーカイブ

(論文)発酵乳の香りに「睡眠の質」を高める効果

22日の夕方から降り続いた雨が23日の午前中に上がると一気に晴れて暖かくなりました。
富士山が望めるところまで自転車でサイクリング。気持ちのいい午後でしたね。

安眠と香りについての論文です。乳酸菌と酵母で作る発酵乳の香りって、おいしい日本酒の吟醸香のような香りでしょうかね?よく眠れそうです。

乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りに“睡眠の質”を高める効果があることを確認
乳酸菌と酵母による2度の発酵でつくるアサヒ飲料社独自の発酵乳(以下、本発酵乳)には、一般的な乳酸菌でつくる発酵乳とは異なる果実のような独特な芳香があります。これまでの研究で、本発酵乳の香りには、不安を和らげたり、日周リズム(体の昼夜のリズム)を改善する効果があることを動物実験で明らかにしています。今回、本発酵乳の香りの効果をさらに明らかにするために、睡眠の質に与える影響を調べました。
※本研究成果は日本農芸化学会2016年度大会(2016年3月27日~30日)で発表した内容です。

http://www.asahigroup-holdings.com/research/group/report/report26.html

睡眠の仕組み ~質の良い睡眠とは?~

ヒトの睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠から構成されます。ノンレム睡眠中は、身体が真に休まっている状態にあることから、ノンレム睡眠の割合が多い睡眠が、質の良い睡眠といえます。また、睡眠中の覚醒(目覚め)は、眠りが浅いことを意味し、覚醒回数が少ないことも、質の良い睡眠といえます。

実験方法
ラットの睡眠は、覚醒回数が多い点でヒトと異なりますが、ノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返される基本的な睡眠のリズムはヒトと同じです。そこで、ラットを用いて、本発酵乳の香りが睡眠に与える影響を調べました。
ラットを2つのグループに分け、一方のグループにのみ休息期(主に寝ている時間帯)に、本発酵乳の香りを1日1回30分間、7日間毎日嗅がせました。香りが睡眠に与える短期的な影響と、長期的な影響を調べるため、1回目の香りを嗅がせた翌日(2回目の香りを嗅ぐ前)と、7日間香りを嗅がせた翌日に、脳波等を測定して、休息期のノンレム睡眠、レム睡眠、覚醒の時間や回数を調べました。

<結果1>睡眠時のノンレム睡眠(深い眠り)の割合が増加
1回目の香りを嗅がせた翌日、香りを嗅がせたラットは、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期初期(休息期に入って初めの3時間)のノンレム睡眠が占める割合が増加する傾向がみられました。また、7日間香りを嗅がせると、休息期初期のノンレム睡眠が占める割合が有意に増加しました。

<結果2>睡眠時の覚醒(目覚め)の回数が減少
7日間香りを嗅がせると、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期の覚醒回数が有意に減少しました。

まとめと今後の展望
本発酵乳の香りを嗅いだラットは、休息期におけるノンレム睡眠の割合が増加し、覚醒回数が減少しました。また、これらの効果は、1回目に香りを嗅がせた翌日よりも、7日間香りを嗅がせた翌日に、顕著にみられました。このことから、本発酵乳の香りには睡眠の質を高める効果があること、さらに、継続的に嗅ぐことで、効果が高まる可能性があることがわかりました。今後、有効成分の解明やヒトの睡眠の質に与える影響について検討を進めてまいります。

これまでの研究成果
■乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りには、自律神経に働きかけ、日周リズムの改善や不安を和らげるはたらきがあることを確認
(日本農芸化学会2014年度大会にて発表  発表タイトル:「乳酸菌と酵母で発酵した発酵乳の香りが自律神経と行動に与える影響」)

■乳酸菌発酵後に酵母発酵を加えると発酵乳の嗜好性が向上すること、その要因として発酵から生まれた「香り」が重要であることを確認(日本農芸化学会2012年度大会にて発表 発表タイトル:「発酵乳の嗜好性向上に与える乳酸菌および酵母の役割」)

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(論文)寝不足はダイエットの敵?

私は徹夜が続いて痩せてしまいましたが、実際徹夜した後は甘いものが食べたくなります。寝不足の状態が脳の活動にどのような影響を与えるかの研究の中からの成果を、一般の方の関心事に向けて警告しているということですね。実際は同じ睡眠でもレム睡眠とノンレム睡眠の違いや睡眠の質というものにもかかわってくるものです。安眠が大切であることを分かりやすく示しています。

柳沢正史教授が機構長を務める筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構からのプレスリリースをご紹介します。
睡眠にまつわる脳活動の解明で次々と新しい発見を行っていますので、注目しています。

ポイントを紹介いたしますので、全文はURLから確認してください。
http://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/…/si…/2/2017/01/0110_LazPR.pdf

プレスリリース
2017.1.10|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)

(論文)寝不足はダイエットの敵
睡眠時間が足りないと甘いものがほしくなる理由

研究成果のポイント
1. レム睡眠量が減少すると、ショ糖や脂質など、太りやすい食物の摂取量が増加する原因の一端を見出しました。
2. 前頭前皮質の神経活動を抑制すると、レム睡眠量が減少してもショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の抑制の影響を受けることなく増加しました。
3. レム睡眠が不足しているときに、肥満につながる食物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしました。食べ物の味や香り、食感などの嗜好を判断する役割を担う脳部位である前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が減少しても、ショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の神経活動抑制の影響を受けることなく、対照群と同様に増加しました。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、体重を増加させる可能性のある、ショ糖が多く含まれる食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。
本研究成果は、eLife誌にて2016年12月6日付でオンライン公開されました。

図 2|レム睡眠の不足は、糖質や脂質などを多く含む「不健康な」食べ物への欲求を高める。

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(論文)労働時間と睡眠の時間

さいたま市北区大成町付近
国道17号陸橋。JR川越線と高崎線の上をまたぎ、新幹線とニューシャトルが並走しています。

(論文)労働時間と睡眠時間
労働時間が睡眠時間にどう影響するかを調べた報告書です。仕事とストレス。ストレスと睡眠。よく考えなければいけません。
全文は長いので、以下のURLで原文をご覧ください。ここでは要旨のみをご紹介させていただきます。

http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou054/hou54_03_02.pdf

3 研究論文集
労働時間と睡眠時間
獨協大学経済学部 教授 阿部 正浩

要旨
この論文の目的は、日本人の睡眠行動と労働の関係を探ることにある。社会生活基本調査を用いて実証分析した結果、次のような結論が得られた。
一つ目の結論は、労働時間の長さは睡眠時間に影響するということである。男性の平均的な睡眠時間は女性に比べて長いが、その分布は広く、労働時間によって睡眠時間の長さが変化していることになる。女性の場合には雇用形態によってその度合いは異なるが、全般的に労働時間が長いほど睡眠時間は短くなる。二つ目の結論は、男性と女性正規雇用者の睡眠に関する固定時間費用は小さく、労働時間の変動を睡眠時間の長さで調整していることだ。1 日24 時間だから、一つの行動が長くなれば他の行動を短くするのは当然だ。しかし、男性と女性の正規雇用者に関しては、労働時間の長さを、他の行動ではなくて、睡眠を短くすることで調整している傾向にある。これに対して女性パート・アルバイトについては、家事の固定時間費用が低く、労働時間の変動を家事時間で吸収する傾向にある。
そして、睡眠時間の固定時間費用は高く、睡眠時間で調整は正規雇用者に比べて小さい。
以上の結論は、我が国において労働時間管理が、人々の健康管理の上でも重要な役割を果たすことを示唆する。特に正規雇用者の場合、他の雇用形態と比べて、労働時間の長さを睡眠時間で調整しようとする傾向にあり、長時間労働は睡眠不足をもたらす。たとえば、表4 の男性正規雇用者の労働時間の係数は、0.147 だが、これは労働時間が1 時間長くなる毎に9 分ほど睡眠時間が短くなることを意味する。ワーク・ライフ・バランス政策の推進は、仕事と家庭の両立だけでなく、国民の健康促進の上でも重要である。

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(論文)総説:日本における睡眠障害の頻度と健康影響

睡眠障害と健康との因果関係については、誰でも承知と思ってはいるものの、実際のエビデンスに基づいた資料などが体系的に示されているものがあまりなかった。
それを様々な実験結果や調査結果と関連付けて総説とした論文です。最終的なまとめも結果的には私の安眠家具につながると思いますが、一つだけ気に入らないのが、睡眠薬を医師の指導で正しく使えば安全というところですね。少なくとも日本の医師で不眠症の症状を患者の申告ではなく、検査を行ったうえで正しく処方しているほうが、圧倒的に少ない現状が正しくないと思っています。

(論文)総説:日本における睡眠障害の頻度と健康影響
https://www.niph.go.jp/journal/data/61-1/201261010002.pdf

土井由利子
国立保健医療科学院統括研究官(疫学調査研究分野)
Prevalence and health impacts of sleep disorders in Japan

抄録
近年,国内外の数多くの睡眠研究によって,睡眠障害が罹病のリスクを高め生命予後を悪化させるというエビデンスが積み重ねられて来た.世界的に睡眠研究が進む中,睡眠問題は取り組むべき重要課題として認識されるようになり,日本を含む各国で,国家的健康戦略の1 つとして取り上げられつつある。このような流れの中で,過去10 年間を振り返って,日本における睡眠障害の頻度(有症率)と睡眠障害による健康影響について,エビデンスをもとにレビューすることは,公衆衛生上,有意義なことと考える。
文献レビューの結果,睡眠障害の有症率は,慢性不眠で約20%,睡眠時無呼吸症候群で3% ~ 22%,周期性四肢運動障害で2 ~ 12%, レストレスレッグス症候群で0.96 ~ 1.80%,ナルコレプシーで0.16 ~ 0.59%,睡眠相後退障害で0.13 ~ 0.40%であった。
健康影響に関するコホート研究では,死亡に対し短時間睡眠で1.3 ~ 2.4,長時間睡眠で1.4 ~ 1.6,2 型糖尿病の罹病に対し入眠困難で1.6 ~ 3.0,中途覚醒で2.2 と有意なリスク比,入眠困難と抑うつとの間で1.6 と有意なオッズ比を認めた.日本国内外のコホート研究に基づくメタアナリシス研究でも同様の結果であった。
以上より,睡眠障害へ適切に対処することが人々の健康増進やQOL の向上に大きく寄与することが示唆された。そのためには,睡眠衛生に関する健康教育の充実をはかるとともに,それを支援する社会や職場での環境整備が重要である。また,睡眠障害の中には,通常の睡眠薬では無効な難治性の神経筋疾患なども含まれており,睡眠専門医との連携など保健医療福祉における環境整備も進める必要がある。
キーワード:睡眠障害,睡眠時間,不眠,死亡,罹病

Ⅰ.はじめに
近年,国内外の数多くの睡眠研究によって,睡眠障害が罹病のリスクを高め生命予後を悪化させるというエビデンスが積み重ねられて来た.世界的に睡眠研究が進む中,睡眠問題は取り組むべき重要課題として認識されるようになり,日本を含む各国で,国家的健康戦略の1 つとして取り上げられつつある.このような流れの中で,過去10 年間における日本の睡眠障害の実態を明らかにし,その健康影響についてエビデンスをもとに概観することは,公衆衛生上,有意義なことと考える。
そこで,本稿では,ヒトの正常睡眠と睡眠障害について概説した上で,これまでに蓄積された疫学研究の成果をもとに,日本における睡眠障害の頻度(有症率)と健康影響についてレビューする。

Ⅱ.睡眠の量,質,リズム
私たちの眠り(睡眠)と目覚め(覚醒)は,体内にある生物時計による時刻依存性(サーカディアンリズム)と,時刻に依存しないで覚醒時間の長さによって量と質が決定される恒常性維持機能(ホメオスターシス)によって制御されている.以下に,ヒトの正常睡眠について簡単に解説する。

1.睡眠の量と質
夜間ヒトの睡眠中に電極を付けて終夜ポリグラフ(脳波・眼球運動・筋電位)をとると,脳波では,覚醒→ノンレム睡眠(段階1 →段階2 →段階3 →段階4)→レム睡眠を1 サイクル(約90 分)として,1 晩に3 ~ 5 サイクルを繰り返す.覚醒と浅いノンレム睡眠(段階1 と段階2)が混在する移行期を入眠過程という。浅いノンレム睡眠から,徐波睡眠(段階3 と段階4)とよばれる深いノンレム睡眠へ進み,レム睡眠(脳波↑,筋電位↓,急速眼球運動)を経て1 サイクルが終わる[1]。
Ohayon ら[2] は,5 ~ 102 歳の健常人3,577 人(5-19 歳:1,186 人,20-102 歳: 2,391 人)を対象に実施された終夜ポリグラフまたはアクチグラフから得られた睡眠変数(総睡眠時間,睡眠潜時,睡眠効率(睡眠/(睡眠+覚醒)),睡眠段階1(%),睡眠段階2( %),徐波睡眠(%),レム睡眠(%),レム睡眠潜時,中途覚醒時間)をプールし,年齢による睡眠変数への影響についてメタアナリシスを行った(図1)。
この研究によれば,年齢が進むにつれて,総睡眠時間,睡眠効率,徐波睡眠,レム睡眠,レム睡眠潜時が減少,睡眠潜時,中途覚醒時間,睡眠段階1,睡眠段階2 が増加することが認められた.年齢以外では,精神疾患,身体疾患,服薬や飲酒,睡眠時無呼吸などの睡眠障害,性別,睡眠習慣などが,睡眠変数の分布に影響を及ぼすことが確認された。

2.睡眠・覚醒リズム
ヒトの睡眠・覚醒リズム(概日リズム)の概念図を示す(図2)[3,4].生物時計の機能は,①自律性の概日リズム,②昼夜変化(明暗サイクル)への同調,③生体機能への概日リズムの伝達と発現の3 要素に分解できる.睡眠・覚醒リズムあるいは睡眠・覚醒傾向は,生物時計,恒常性維持機能,明暗サイクル(光)によって制御され,その他の要因(図2 の左上のボックス内,右のボックス内)によって影響を受ける。
生物時計自体の発する概日リズムを直接測定することはできないが,深部体温,メラトニン,ホルモン(コルチゾール,成長ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,プロラクチンなど)の測定値が概日リズムを示すことによって,生物時計の概日リズムを間接的に観測することができる。

Ⅲ.睡眠障害
睡眠障害に関する国際分類には,世界保健機関(WHO)による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)),米国精神医学会(APA)による「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders( DSM))」などがあるが,ここでは,米国睡眠障害連合(ASDA)が中心となってまとめた「睡眠障害国際分類(International Classifi cation of Sleep Disorders(ICSD))」を紹介する。加えて,主な睡眠障害が日本ではどのくらいの頻度でみられるのか,これまでに行われた疫学研究をもとに紹介する。

1.睡眠障害国際分類
2005 年に改訂された睡眠障害国際分類第2 版(ICSD-2)[5,6] による主要な睡眠障害(8 項目)を表1 に示す。
それぞれの睡眠障害は,さらに次のように,細分類される。
不眠症(適応障害性,精神生理性,逆説性,特発性,精神障害,不適切な睡眠衛生,行動的(小児期),薬剤・物質,内科的疾患,特定不能(非器質的),特定不能(器質的)),睡眠関連呼吸障害(中枢性睡眠時無呼吸症候群,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,睡眠関連低換気/ 低酸素血症症候群,その他),中枢性過眠症(ナルコレプシー,反復性,特発性,行動起因性睡眠不足症候群,内科的疾患,薬剤・物質,特定不能(非器質的),特定不能(器質的)),概日リズム睡眠障害(睡眠相後退型,睡眠相前進型,不規則睡眠・覚醒リズム,自由継続型,時差型,交代勤務型,内科的疾患,薬剤・物質,その他),睡眠時随伴症(ノンレム睡眠からの覚醒障害,レム睡眠関連,その他),睡眠関連運動障害(レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群),周期性四肢運動障害,睡眠関連下肢こむらがえり,睡眠関連歯ぎしり,睡眠関連律動性運動障害,特定不能,薬剤・物質,身体疾患),孤発性の諸症状・正常範囲内の異型症状・未解決の諸問題(長時間睡眠者,短時間睡眠者,いびき,寝言,ひきつけ,ミオクローヌス),その他の睡眠障害(環境性,その他)。
いずれの睡眠障害も,疾患特異的な症状のほかに,夜間の不眠や日中の眠気といった症状を呈する。睡眠障害に応じて治療方法が異なるので,ICSD-2 に基づいて,正しく診断・分類することが肝要である。

2.睡眠障害の頻度
表2 に,それぞれの睡眠障害を有する人々がどれくらいいるのか,日本で実施された主な疫学研究の結果(有症率)を示す。

いずれも地域・職域で行われた比較的大規模なヒト集団を対象としたものであるため,その多くは,目的とする睡眠障害に適した質問紙を用いて,対象者の自己申告に基づき,睡眠障害があるかどうかの判定を行っている。
1997 年に実施された全国調査によれば,入眠困難(寝付きが悪い)や中途覚醒(夜間・早朝に目が覚める)などの不眠の症状が一時的ではなく1 ヶ月以上続く,慢性不眠の有症率は約20% と推定された[7,8].ICSD-2(2005 年)の不眠症の判定基準では[5],夜間の不眠の症状に,日中の機能障害(日中の眠気,注意力・集中力の低下など)が追記されたので,この判定基準に照らし合わせると,不眠症の有症率は,これよりも低くなるであろう。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の判定の場合には,終夜ポリグラフ検査による睡眠中の呼吸イベント(無呼吸・低呼吸/ 睡眠1 時間)の確認が必須であるが[5],疫学研究では,携帯型の簡易装置(パルスオキシメーター,鼻口呼吸センサー,気道音センサー)を用いて睡眠1 時間あたりの動脈血酸素飽和度の3%以上の低下や無呼吸・低呼吸の頻度を測定して代用している.睡眠時無呼吸症候群の有症率は,おそらく対象とした集団や測定方法の違いなどからであろう,低いものでは約3%(地域住民女性),高いものでは
約22%(職域男性)と,大きな開きがみられた[9-12]。
ナルコレプシーの有症率は0.16 ~ 0.59%[13,14],睡眠相後退障害の有症率は0.13 ~ 0.40% [15,16],レストレスレッグス症候群の有症率は0.96 ~ 1.80%[17-19] と,不眠症や睡眠時無呼吸症候群に比べると,その頻度は低い。
周期性四肢運動障害は,ノンレム睡眠期に足関節の周期的な不随意運動によって夜間の睡眠が妨げられる障害であるため,判定には終夜ポリグラフ検査が必須である[5]。
ここで報告されている周期性四肢運動障害の有症率2 ~12%[20,21] は,第3 者(ベッドパートナーやルームメイトなど)による評価(眠っている間に足のビクンとする動きがある)に基づいて判定されたものである。

Ⅳ.睡眠と健康
ここでは,睡眠時間と死亡(総死亡)や罹病(2 型糖尿病),慢性不眠と併存疾患や罹病(2 型糖尿病,うつ病)に関して,これまでに蓄積された疫学研究の成果から,現時点で明らかになっていることについて解説する。

1.睡眠時間
1)分布
2007 年に厚生労働省によって実施された2 つの実態調査(国民健康・栄養調査[22]) と労働安全衛生特別調査[23])の報告をもとに,睡眠時間の分布を示す(図3)。

無作為に抽出された全国の15 歳以上の一般住民(8,119 人)および20 歳以上の民営事業所従業員(11,440 人)ともに,6-6.9 時間を中央値・最頻値とした正規分布をしていた。睡眠時間が6 時間未満の者の割合は,15 歳以上の住民では,男性26%,女性31%,20 歳以上の従業員では,男性41%,女性45% であった.年齢階級別(図4)では40-49 歳(37%),

職種別(図5)では保安(68%),運輸(50%),営業・サービス(49%)が高い割合を示した.一般住民[24],ホワイトカラー[25],シフトワーカー[26] を対象とした先行研究では,睡眠時間が6 時間を下回ると,日中に過度の眠気を来すことが報告されている。

睡眠時間が9 時間以上の者に関しては,従業員ではみられなかったが,15 歳以上の一般住民では全体で3% であった(図3)。これを年齢階級別に見ると,70 歳以上では10% に上っていたが,70 歳未満は2% 以下であった(図4).終夜ポリグラフから客観的に得られた健常人の睡眠時間は,年齢とともに減少することが確認されている(図1)。
高齢者の場合,本人の自己申告(アンケート調査や生活時間調査など)による睡眠時間には,実際の睡眠時間(図1の総睡眠時間に相当)の他に,床の中で寝付くまでに要する時間(図1 の睡眠潜時に相当)や途中で目が覚めた時間(図1 の中途覚醒に相当)や午睡の時間が含まれている可能性がある。

2)死亡
近年,多くの疫学研究(コホート研究)により,睡眠時間が総死亡と有意な関連(U字型)を示したとする報告が相次いだ.これらのコホート研究をもとに,Gallicchio Lら[27] とCappuccio FP ら[28] は,それぞれ独自に睡眠時間と死亡に関するメタアナリシスを行った.メタアナリシスには,異質性や公表バイアスなど研究方法上の限界はあるものの,ここでは,2009 年3 月までに発表された論文をもとにCappuccio FP ら[28] が行ったメタアナリシスによる最新の知見を紹介する.この中には,日本からのコホート研究[29-33] が含まれているが,同一のコホート研究からの発表論文[32,33] は基準に合致した方が採用されている.その結果,死亡に対する相対リスク(95% 信頼区間)は,短時間睡眠(7 時間未満,6 時間未満,5 時間未満,4時間未満と定義は異なる)で1.12(1.06-1.18),長時間睡眠(8時間以上,9-9.9 時間,9 時間以上,10 時間以上,12 時間以上と定義は異なる)で1.30(1.22-1.38)と有意に高くなっていた(表3)。

短時間睡眠と死亡との因果関係の機序については,充分に解明されているわけではないが,短時間睡眠による糖代謝および交感神経系や免疫系への影響が示唆されている。長時間睡眠と死亡との因果関係については,その機序を示唆する研究は今のところ無い。むしろ,調整しきれなかった交絡要因(潜在要因を含む)や併存疾患によるものではないかと考えられている.例えば,長時間睡眠と関連があるとされる,芳しくない健康状態,診断のついていない病気,身体活動状態の低下,抑うつ状態,良好ではない社会経済状態などである。

3)2 型糖尿病
Cappuccio FP ら[34] は,2009 年4 月までに発表されたコホート研究の論文をもとに,睡眠の量(睡眠時間)や質(不眠)と2 型糖尿病の罹病に関するメタアナリシスを行った(表3).その結果,2 型糖尿病の罹病に対する相対リスクは,短時間睡眠(7 時間未満,6 時間未満,5 時間未満,と定義は異なる)で1.28(1.03-1.60),長時間睡眠(8 時間以上9 時間以上と定義は異なる)で1.48(1.13-1.96)と有意に高くなっていた.これらの因果関係の機序については,Ⅳ -1-2)と同様に,考えられている。
なお,この中には,日本から職域でのコホート研究(6,509人)[35] が含まれているが,2 型糖尿病の罹病に対する相対リスクは,短時間睡眠,長時間睡眠,いずれにおいても有意ではなかった。

2.不眠
1)併存する症状や疾患
不眠の症状は,さまざまな心身の症状と関連しており,身体疾患や精神疾患などと併存している[5].前述のⅢ- 2で紹介した全国調査によれば,慢性不眠の症状(入眠困難や中途覚醒)と関連する心身の症状として,腰痛,心窩部痛,体重減少,頭痛,疲労,心配,いらいら,興味の喪失[36],併存疾患として,高血圧症,心疾患,糖尿病,筋骨格系疾患,胃・十二指腸潰瘍[37] が認められた。

2)2 型糖尿病
前述したCappuccio FP ら[34] による,睡眠の量(睡眠時間)や質(不眠)と2 型糖尿病の罹病に関するメタアナリシスでは,2 型糖尿病の罹病に対する不眠の症状の相対リスクは,入眠困難で1.57(1.25-1.97),中途覚醒で1.84(1.39-2.43)と有意に高くなっていた.これらの因果関係の機序については,Ⅳ -1-2)と同様に,考えられている。
なお,この中には,日本から,前述の職域でのコホート研究[35] と地域でのコホート研究(2,265人)[38] が含まれている. 地域のコホート研究では, 入眠困難で2.98(1.36-6.53),中途覚醒で2.23(1.08-4.61),職域のコホート研究では入眠困難で1.62(1.01-2.59)と有意であったものの,中途覚醒では1.36(0.87-2.14)と有意差を認めることができなかった.職域のコホート研究では,睡眠時間でも有意差を認めなかったことなどを考え合わせると,理由の1 つとして,健康労働者効果などが考えられる。

3)うつ病
Baglioni C ら[39] は,2010 年2 月までに発表されたコホート研究の論文をもとに,主としてDSM- ⅣまたはTR に基づく不眠症とうつ病の罹病に関するメタアナリシスを行った(表3).その結果,うつ病の罹病に対する不眠症のオッズ比(95% 信頼区間)は,2.10(1.86-2.38)であった.なお,この中には,日本からの研究は含まれていなかった。
近年,日本において,不眠の症状と抑うつの関連をみたコホート研究では,65 歳以上の地域住民3,065 人を3 年間追跡した結果,入眠困難を有する者はそうでない者に比べ抑うつを呈したオッズ比が1.59(1.01-2.50)であったと報告されている[40]。

Ⅴ.おわりに
以上,日本における睡眠障害の頻度と睡眠障害による健康影響について,解説した.夜間の睡眠障害と日中のQOL(主観的健康感の低下や仕事上・人間関係上のトラブルや事故など)の低下には有意な関連がある[41].しかしながら,睡眠が障害されても適切な対処行動が取られず,寝酒を常用する(男性37.4%,女性10.0%)などして,かえって早朝覚醒を来し充分な睡眠を維持できず悪循環に陥る[42]。
睡眠障害に適切に対処することによって,人々の健康増進やQOL の向上に,大いに貢献できるものと考えられる。
表4 に睡眠障害に対処するための指針を示した。
一人一人が睡眠衛生の面から自分に合った睡眠を確保できるよう,健康教育の充実をはかるとともに,それを支援する社会や職場での環境整備が求められている.睡眠障害の多くが,夜間の不眠の症状に日中の眠気など不眠症に共通の症状を呈するが[5],通常の睡眠薬では効果が期待できない疾患,あるいは憎悪してしまう疾患もある.この中には,難治性の神経筋疾患や神経変性疾患なども含まれている[43].症状が改善しない場合には,睡眠障害を専門とする医師による診断と治療が必要となる.保健医療福祉の諸機関と睡眠専門医療機関との連携といった環境面での整備も望まれるところである。

文献
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[2] Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C,Vitiello MV. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals: developing normative sleep values across the human lifespan. Sleep. 2004;27(7):1255-73.
[3] Turek FW. Chronobiology. In: Kryger MH, Roth T, Dement WC, editors. Principles and practice of sleep medicine. 4th ed. Philadelphia: Elsevier Saunders;2005. p.375-443.
[4] 本間研一,堀忠雄,清水徹男,内山真,木村真由美,千葉茂,他.生物リズムと睡眠.日本睡眠学会,編.睡眠学.東京:朝倉書店;2009.p.150-240.
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(論文)総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果

安眠と香りを調べるうちに見つけた論文です。ハーブなので香りというより効能かもしれません。
昔から寝る前にハーブティーを飲むとよく眠れるなどと言われてはいますが、その実証ということです。カモミールは母の薬草と言われるように、女性に効果があると言われていたようですが、実験でも男女で大きく効果の差があるようです。男性よりも女性のほうがハーブティーを好むと思っていたのですが、実際に効果に違いがあるわけですから当然と言えば当然だったのですね。論文をご紹介いたします。

(論文)総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/14686/1/2005-97-95.pdf

総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果

角田(矢野)悦子* 森谷**
*北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座修士課程(健康科学・健康教育研究グループ)
**北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座教授(健康科学・健康教育研究グループ)

Physiological and Psychological Effects in Humans
of Chamomile (a kind of plants)Drinking and Eating
Etsuko YANO-KAKUTA Kiyoshi MORIYA
【要旨】植物カモミール(Matricaria chamomilla)は,ヨーロッパを中心に古くから鎮静効果をもつ植物として利用されてきた。カモミールの摂食によるリラックス効果及び睡眠影響について報告された論文を総説としてまとめた。カモミール茶の摂食が末梢皮膚温を上昇させる,心拍数を低下させる,自律神経系を副交感神経優位にするという報告,感情測定尺度(MCL-S.1)によってリラックス感得点の上昇を認めたことが報告されている。
また,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合には末梢皮膚温の上昇や心拍数の低下が起こり,副交感神経優位の傾向が示されたが,低温で摂食した場合にはその効果が認められなかったと報告されている。OSA 睡眠調査票を用いた睡眠実験から,カモミールエキス添加ゼリー摂食日の夜間睡眠では,ねむ気の因子,寝つきの因子などが無添加ゼリーを摂食した日に比べて改善したことが報告されている。
【キーワード】カモミール,摂食,自覚的感覚,睡眠,中高年女性

1.はじめに
近年,日本の社会では経済活動の停滞や急速な高齢化の進行などが顕著となり,それに伴い人々の心身に対するストレスが増加してきている。厚生労働省の保健福祉動向調査1)では,心身の健康とストレス,睡眠の結果が以下のように報告されている。ストレスの程度別構成割合では,最近1か月間の日常生活においてストレスがあったとする者の割合が54%を超えており,ストレスが「大いにある」とする者の割合は,男性が10.8%,女性12.8%であり,一方ストレスが「多少ある」とする者の割合は男性39.7%,女性44.9%である。なんらかのストレスありの者のストレス要因をみると,「仕事上のこと」30.5%が最も多く,「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」「職場や学校での人づきあい」が続いている。性別にみると男性は「仕事上のこと」が41.3%ときわだって多く,女性は「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」が25%を超え,年齢階級別にみると,男性65歳以上,女性55歳以上では「自分の健康・病気・介護」が最も多いと報告されている。また,睡眠について最近1か月で問題と感じていることは「朝起きても熟睡感がない」が24.2%で最も多く,加齢とともに「朝早く目が覚めてしまう」「夜中に何度も目が覚める」が増加している。
加齢とともに睡眠障害で悩む人の割合が増加し,女性で男性よりも多いとの報告もある2)。特に中高年の女性(55歳以上)がストレスの内容として「自分の健康・病気・介護」をあげている一方で,睡眠不足の理由として「悩みやストレスなどから」をあげる者が66%(45歳~54歳および55歳~64歳)程度と報告されている1)。一方,更年期の女性の睡眠の質に関する調査3)では,閉経後の人達では何らかの睡眠困難を感じることが多く,入眠しにくく睡眠効率が低下し,日中の眠気や意欲の低下を感じ,総合的に睡眠の質の悪化を示唆すると報告されている。
このようなストレスに対する対処法の一つとして,生活の質(QOL)の向上と健康増進などを目的として植物を用いる補充療法の社会的認知と普及が進みつつある。例えば薬用人参(Panax Ginseng),イチョウ葉(Ginkgo Biloba)などの摂取による身体的ストレスの改善効果やハーブのセントジョンズワート(Hypericum Perforatum)によるうつ症状の緩和などが良く知られている4)。また,植物の香り成分によるアロマセラピーやフィトンチッドと呼ばれる森の香りを利用した森林浴による鎮静・リラックス効果などを,生活の中により積極的に取り入れることが注目されている。
筆者らはこのような観点に立ち,植物カモミール(Matricaria chamomilla)を食品のお茶やゼリーとして摂食することによる生理・心理的効果,夜間睡眠への影響について研究を続けてきた5)6)。
本稿では植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果について,歴史的背景や食文化とその生理心理的効果および夜間睡眠に対する影響についての研究をまとめることを意図する。

2.カモミール摂食の歴史と文化
上述のように人々はその社会活動や食生活の中で増加する多種類の人為的ストレスにさらされているが,その解決には必ずしも現在の西洋医学だけで充分とはいえない。近年になり西洋医学を補う医療として補充医療(Alternative Therapies)が再評価されつつある。例えば東洋医学における漢方やインドのアーユルヴェーダなどの伝統的医学が知られている4)。これらの医療体系の中では,ハーブ(香草)を含むさまざまな植物を薬草として治療手段に用いている。
また,漢方の分野では医食(薬食)同源と呼ばれる概念があり,人間の健康維持や医療における食物摂取の役割や機能を認めている。またアーユルヴェーダでは1000種類もの薬用植物が記載されており,古代のエジプトでは薬草療法にハーブが利用され,例えばフェンネル,クミン,アロエなどのハーブが食品・薬・化粧品・香水・香料や殺菌剤などに広く利用されていた7)。また,古代ギリシャ・ローマ時代においても,古くは植物誌(Theophrastus,BC 3世紀頃)に数百種類のハーブが記載されその利用が行われていた。その後16世紀頃から草本書(ハーバル,Herbal)が多数著される時代になり,数千種類ものハーブが記載され栽培法や料理法が詳しく知られるようになった。17世紀には草本家のカルペパー(Nicholas Culpeper,1616-1654)により,占星術とハーブの医学的効用などを関連づけた本草百科(The Complete Herbal)が著された。一方,アメリカ新大陸では健康を維持するために,家庭菜園にラベンダー,ローズマリー,カモミールなどの多種類のハーブが栽培された。このようにハーブは薬草療法の素材植物として,例えばうがい薬や煎じ薬,入浴剤そして誘眠効果をもたらす自然の睡眠薬などとして広く用いられてきている8)。このようなハーブ植物の一つにカモミール(カミルレ,カミツレ,Chamomile)があり,補充医療の一つであるアロマセラピー(Aromatherapy,芳香療法)や日常の食生活においてハーブティーなどに広く用いられている9)。このカモミールはサクソン人の時代からイギリスでよく用いられている薬用植物の一つで,ラベンダーやペパーミントなどとならぶイギリス産精油植物として知られている。ギリシャ人はこの花の香りがリンゴの香りに例えられることから「カマイ・メロン」(地面のリンゴ)と呼びこれがChamomileの語源とされている10)。また,スペインでは現在でも薬草としてカモミールがシェリー酒マンサニリャの香り付けに使用されている。
カモミールはヨーロッパ,北アフリカおよびアジアの地域に生育し四つ程度の属に分類される11)。薬用・香料用として用いられるのは,主にローマンカモミール(Chamomile Roman,学名Anthemis nobilis L.)とジャーマンカモミール(Chamomile blue,学名Matricariachamomilla L.)の二種類である。両者ともに開花した花部から精油を水蒸気蒸留により抽出・生産されている12)。
ジャーマンカモミールは世界的に各国の薬局方に公定薬品として登録されていることが多く,抗炎症,鎮痙,消毒用に用いられている。また化粧品業界ではスキンケア製品に利用されている。主な生産国はアルゼンチン,エジプト,ハンガリーそしてドイツなどである。カモミールの精油の主要な化学成分としてテルペノイド類(モノテルペン,セスキテルペンなど)が含まれ,ジャーマンカモミールの特徴成分としてはアズレン(azuren)誘導体,ビサボロール(bisabolol)誘導体があり,ローマンカモミールはアンゲリカ酸エステル,チグリン酸エステルが特徴的成分であると報告されている12)。精油に含まれるカマズレンは品種や産地により含有量には差があるが,抗ヒスタミン作用とロイコトリエン生合成阻害などのメカニズムにより抗炎症作用があるといわれている。また,嘔吐抑制や精神的ストレスによる鼓腸性消化不良,喫煙・水泳などが原因の目の刺激,擦過傷や虫さされなどに用いられている13)。
ローマンカモミールはジャーマンカモミールと異なり多年生植物であり,精油が豊富に含まれ,消化器疾患や毛・頭皮の治療や鎮静・鎮痙剤そして発汗剤などに使用される。その精油の主な用途は化粧品などであり,主産地はベルギー,オランダ,イギリス,フランス,ローマなどである。一般的にカモミールは強肝,強壮,駆虫,解熱,健胃,抗うつ,抗アレルギー,抗リウマチ,抗神経障害,消化促進,鎮痛,通経,瘢痕形成,皮膚軟化,癒傷,利尿作用などがあるとされている14)。
カモミールの食品への応用では,菓子,デザート類およびゼリーなどの香料として用いられているほか,お茶として世界中で慣習的に飲用されている。また苦味酒,ベルモット,ハーブビールなどにも使用されている。近年の日本では高齢化が進行し,高齢者は外部から水分や食物を口に取り込み咽頭と食道を経て胃へ送り込む運動(嚥下)に異常の生じる傾向がある。この嚥下(swallowing,degulutition)障害の結果,栄養摂取不良,誤嚥そして食べる楽しみの喪失などの問題が生ずる15)。この問題を解決するための食品として多種類のゲル化食品(ゼリー)が開発されているが,今後は病院食だけではなくハーブなどを用いた日常の嗜好にかなう嚥下障害の少ないゼリーが期待されていると考える。

3.カモミールの摂食による生理・心理的影響
カモミールは日常生活のなかで食品としても用いられており,健康に良い効果があるお茶としてヨーロッパやアメリカを始め世界的に飲まれている。童話のピーターラビット(PETERRABBIT)では,母さんウサギが子供のピーターに就寝前にカモミール茶を飲ませる場面が記載されている。童話の世界だけではなくカモミール茶の利用は古くから行われているが,就寝前に飲むことから鎮静や催眠効果を期待していると考えられる。しかし,その作用や効果についての学術的報告は極めて少ない。食生活に取り入れられているハーブ茶の効果については,森谷らがカモミール(Matricaria chamomilla)について,カモミール茶(55℃,150ml)摂取による青年男性の自律神経機能と感情指標の変化について白湯と比較した検討を行い,心拍数や末梢皮膚温の変化および感情得点の変化を計測した報告を行った5)。この報告ではカモミール茶と白湯を飲用後の心拍数変化量について検討した。飲む直前の心拍数の平均値には2群間に有意差は無く,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の心拍数の平均低下量が有意に大きいことが示された。また,心拍R-R 間隔変動周波数解析の結果から,交感神経の指標として参考にされるLF/HF 比について,同様に飲用後30分間の2群の平均低下量はカモミール茶を飲用したほうが有意に大きいことが明らかにされた。一方,副交感神経の指標と考えられているHF パワー成分にはカモミール茶と白湯を飲む直前の,2群間には有意差はなく,それぞれを飲んだ後の30分間の変化量についても有意差は認められなかったと報告している。末梢皮膚温変動については,右足の第5趾趾根部で計測が行われ,飲む直前の末梢皮膚温平均値については2群間に有意差はなく,飲用後の時間変動に有意差が認められ,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の平均上昇値が有意に大きいことが示された。心理指標については,橋本と徳永により開発されたMood Check List -Short Form 1(MCL-S.1)16)を用いて感情得点の変化について検討された。飲む直前のリラックス感得点には有意差はないが,カモミール茶を飲用後15分後と30分後には白湯およびカモミール茶のそれぞれの場合に有意なリラックス感得点の上昇が認められた。飲用後の2群間に有意差は認められなかった。また,快感情得点についても同様の検討が行われたが,有意差はなかったと報告している。

森谷と小田は,感情得点と自律神経機能の関連について,心拍数,LF/HF,末梢皮膚温とリラックス感得点などとの相関について検討を行った17)。その結果,図1に示すように心拍数とリラックス感得点の変化量に負の相関(ピアソンの相関係数(r)=-0.496,P=0.019,n=22)が認められた。またピアソンの相関係数による評価から,リラックス感得点とHF の変化量の間に有意な正の相関があることが認められた。さらに末梢皮膚温の実測値とリラックス感得点の間にも有意な正の相関が明らかにされた((r)=0.465,P=0.006,n=22)。このようにカモミール茶飲用後には,自律神経機能の心拍数や末梢皮膚温の測定値とMCL-S.1によって評価したリラックス感得点の間にかなり良い対応関係があることが示されている。この報告ではカモミール茶の飲用は白湯の飲用よりも副交感神経系優位の効果が現れることを明らかにしているが,感情指標についてはその効果が必ずしも明確でない場合があり,嗜好の影響の可能性について示唆している。
近年,井上らは18)ジャスミン茶の香りの嗜好性と自律神経系の活動の関係について,POMSで評価した感情得点を用いた報告を行っている。香りが高濃度と低濃度の場合について,嗜好性の違いによる感情得点とその自律神経活動に対するへの影響について検討し,ジャスミン茶の香気成分が低濃度の場合は好む群と好まない群の両方とも副交感神経活動が上昇し,高濃度の香りの場合は好みの群で副交感神経活動を亢進させ心理状態を鎮静化させ,好まない群においては交感神経活動を上昇させると報告している。
また,角田らはカモミール(Matricaria chamomilla)エキス入りの温めたカモミールゼリーを摂食させたときの自律神経機能と感情指標に対する影響について検討を行った6)。この報告では無農薬栽培のジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla)を原料として抽出したエキスに,果糖・砂糖,ゲル化剤等を加え,ブリックス糖度を14としたゼリーを調製試作(北海道夕張市,S社製造)し,実験に用いている。カモミールエキス以外の成分をほぼ同一とし,同エキスを添加および無添加(対照)のゼリー(75ml)の2種類を用意し,飲食前に60℃あるいは10℃の2種類の温度に調整したものを被験者(健常な30代及び40代の男女40名)に摂食させ,末梢皮膚温(左足第5趾趾根部)および脳波・感性スペクトルの計測および心理指標値としてMCL-S.1による感情得点の測定を行った。その結果,低温で摂食させた場合には末梢皮膚温の上昇は認められないが,温めた状態で摂食させた場合には男性(n=7)および女性(n=8)の両グループともに摂食後22分間に有意(二元配置分散分析,P<0.05)に末梢皮膚温が上昇することを明らかにした。また同エキス無添加のゼリーを摂食した場合には,低温および温めた状態の両者ともに有意な末梢皮膚温上昇は認められなかったと報告している。
MCL-S.1による感情得点の結果から,温めたカモミールゼリーを摂食後の男女のグループについてはリラックス感の増加する傾向が認められたと報告している。また同実験において自律神経活動を評価した報告19)によれば,温めたゼリーを摂食した男女のグループともに心拍数の低下と副交感神経優位の傾向が示された。
これらの結果から,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合,お茶より少ないカモミール量で,揮発性香り成分がより効果的に発散し,生理的効果を与える可能性が示唆されたと考えられる。

4.カモミール摂食と睡眠
近年になり,夜間睡眠における睡眠不調・睡眠障害に悩む人たちが多く,中でも中年期以降に睡眠不調・障害の多発することが知られるようになってきた。健康づくりに関する意識調査20)において,「眠りを助けるための睡眠剤や安定剤などの薬やアルコール飲料を使いますか」の質問に対して「時々ある」「しばしばある」「常にある」と答えた人の割合が14.1%あり,健康日本21「3.休養・こころの健康づくり」では2010年までの到達目標を13%としている。
例えばハーブ植物の一種のバレリアン(吉草根)については,鎮静作用等のほかに,OSA 睡眠調査票を用いた実験調査による睡眠の改善作用が最近報告されている21)。また,樹木由来の香気成分の一種であるセドロールについて,その睡眠に与える影響の検討が報告された22)。この報告では,何らかの睡眠不満を自覚している20代女性の性周期低温期において,自宅で3日間の生活調整期間後6日間の宿泊試験を1クールとして実験を実施している。セドロール使用量は被験者が全く感じないかあるいはかすかに感じる程度の濃度に調節され,就寝前・就寝時合わせて4時間提示している。この実験では睡眠段階(覚醒,睡眠深度,レム・ノンレム睡眠など)の判定は睡眠脳波により行われ,眼振電位,オトガイ筋筋電位,心拍,呼吸および皮膚電位反応が記録され,プラセボ夜およびセドロール夜の試行はダブルブラインドテストで実施されている。この実験結果から,総睡眠時間はプラセボ夜では平均394.7分に対し,セドロール夜では平均408.0分であり,有意に延長したことが示された。入眠潜時は前者が平均16.8分に対し,セドロール夜では9.3分と有意に短縮し,睡眠効率については前者が91.9%に対し,セドロール夜では95.2%まで上昇する傾向が認められている。中途覚醒時間には,有意差はなかったと報告している。この報告では,セドロールが交感神経系を鎮め,睡眠前に副交感神経活動優位に切り替えることをスムーズに行うことで心身がリラックスし,入眠が円滑に起こり良好な睡眠が維持されたと推察している。一方,徐波睡眠出現率および段階REM 出現率に関する解析では全く差がなく,セドロールは本来の睡眠構造自体には変化を与えず,睡眠を良好な状態にすることを示唆している。
カモミールについては伝統的に睡眠改善に良いといわれてきているが,明確な実証データや学術報告は多くない。一つの報告としては23),心臓病患者を被験者として心室カテーテル実施の際にカモミール茶(約170ml,白湯摂取などの対照実験なし)を飲用させ,血行力学的反応について評価した実験である。この実験結果ではカモミール茶飲用後に全ての患者(10名)が眠りについたと報告され,催眠効果があるとされている。カモミールの催眠効果については殆どがこの報告を基に引用されているが,その後詳細な研究報告は未だ行われていない。
既に報告されているように,カモミール茶やカモミールエキスを含んだゼリーの摂食がリラックス感得点の上昇や副交感神経活動優位の傾向をもたらすことから,睡眠への影響が期待されると考えられる。そこで,筆者らはカモミールゼリーの摂食が被験者の副交感神経系および自覚的睡眠感に及ぼす影響について検討を行った24)。この実験では前述の摂食実験と同様の実験条件下で,カモミールエキス添加ゼリーと同エキス無添加ゼリーを温めて摂食させ,OSA睡眠調査票起床時調査によって検討がされた。睡眠感の評価には,睡眠現象を統合的に把握するために小栗ら25)が開発したOSA 睡眠調査票を用いた。この調査票は,睡眠前調査により不適切な被験者の除外と生活態度や就寝前の身体的・精神的状況を把握するための21項目の質問と,起床時の調査により睡眠感を構成する因子のもとになる31項目の質問および身体的愁訴とその有無に関する質問に答えてもらうよう構成されている。この報告ではOSA 睡眠調査票の結果をもとに,小栗らの抽出した①ねむ気の因子,②睡眠維持の因子,③気がかりの因子,④統合的睡眠の因子そして⑤寝つきの因子の5つの下位因子に分けて検討が行われた。同実験は第1期と第2期に分けて実施され,第1期の被験者は特に睡眠障害を持たない健常な30代および40代の男性7名を被験者として実施され〔年齢:37.7±5.4(mean±SD)〕,第2期は同様に健常な閉経後の50代および60代の女性7名を被験者として〔年齢:60.3±2.7(mean±SD)〕実施されている。第1期の実験結果では,無添加(対照)と比較し,カモミール添加ゼリーの摂食夜は3つの因子,①ねむ気の因子(t=-2.4679,p=0.0486),②睡眠維持の因子(t=-2.5809,p=0.0417),⑤寝つきの因子(t=-2.5262,p=0.0449)について有意に高い値を示した。(図2参照)

この報告の第2期の実験では,第1期と同様に温めたゼリーを摂食させ,睡眠に関する5つの下位因子について比較分析を行った。その結果,①ねむ気,②睡眠維持,③気がかり,④統合的睡眠そして⑤寝つきの5因子について対照と比較し,カモミール添加ゼリー摂食夜には②睡眠維持の因子について有意差(t 検定,p=0.0313)が認められた。(図3参照)

筆者らは,温めたカモミールゼリーを摂食した場合に,皮膚温の上昇と末梢血流の増大,副交感神経優位状態やリラックス感が増大することを既に報告している。一般に情動が睡眠状態に関係しリラックス感のようなポジティブな感情が睡眠を良好にすることが知られており,これらの結果から温めたカモミールゼリー摂食の心理生理的効果が帰宅後の就寝前まで持続し,ねむ気,寝つきを良くする傾向をもたらし,睡眠維持に効果のあった可能性が示唆されている。前述のセドロールの場合においても,就寝前の精神的・生理的状態の重要性が指摘され,眠りにつく前の自律神経活動が交感神経支配から副交感神経支配優位に切り替わることが入眠を円滑にすると指摘されている。
また最近,セドロールが野生のカモミール(Chamomilla recutita,Matricaria chamomilla)とその組織培養株に含まれる新しいテルペノイドとして報告され,カモミールの自覚的睡眠感や自律神経系へ影響する作用物質としての可能性が注目される26)。

5.おわりに
植物カモミールは人類の歴史や食文化,医薬学などの進歩・発展とともに,その補充・伝統医療や身近な生活の場面などに用いられてきている。今後の日本は高齢化社会が進み,人々の日常生活のなかでの健康維持やストレスが大きな課題になると考えられる。それにともない加齢による睡眠障害に悩む人の割合が増加し,ストレスに悩む中高年の男性や女性にとって大きな心身上の課題となり,この解決に植物カモミールの摂食が貢献できる可能性が期待される。
既にカモミール茶や温めて食べるカモミールゼリーが自律神経活動に影響を与え副交感神経優位をもたらし,この現象と相関して感情評価尺度によるリラックス感得点が上昇することが明らかにされた。一方,植物カモミールに含まれる香気成分やその他の含有成分が心身に及ぼす作用機構や作用物質などについて,新しい知見も見出されつつあるが未解明の部分がまだ多く,特に睡眠に対する影響などについての研究が必要と考えられる。
今後はこれらの研究成果が,例えば睡眠不満やストレスに悩む中高年世代や介護高齢者の睡眠改善へ応用され,人々の健康維持や向上に貢献することが期待される。

[引用文献]
1) 厚生労働省:平成12年度保健福祉動向調査,2000,http://www.mhlw.go.jp/
2) 中沢洋一,小鳥居湛:不眠,睡眠の科学(鳥居鎮夫編),朝倉書店,224-227,1989.
3) 香坂雅子:固有の診療科を離れた立場から―女性に特有な睡眠障害,診断と治療,92⑺,1207-1212,2004.4) Christine Maguth Nezu, Arthur M.Nezu, Kim P.Baron, and Elizabeth Roessler:Alternative Therapies,
Encyclopedia of stress, 1, 150-158, 2000.
5) 森谷,小田史郎,中村裕美,矢野悦子,角田英男:カモミール茶摂取による自律神経機能と感情指標の変化―青年男性における検討―バイオフィードバック研究,28,61-70,2001.
6) 角田英男,矢野悦子,前田智雄,武藤俊昭,森谷:カモミールのリラックス効果とその応用―機能性を有する温めるゼリー食品―AROMA RESEARCH,Vol.3,No.2,31-36,2002.
7) 陽川昌範:ハーブの科学,養賢堂,1998.
8) 鳥居鎮夫:香りの謎,フレグランスジャーナル社,1994.
9) Shirey Price(高山林太郎訳):実践アロマテラピー,1983.
10) Robert Tisserand(高山林太郎訳):アロマテラピー芳香療法の理論と実際,フレグランスジャーナル社,1985.
11) 阿部誠:カモミールとその近縁種,Aromatopia 8,44-47,1994.
12) 和智進一:カモミールの精油と分析,Aromatopia 8,52-55,1994.
13) K.P.ズボボダ,J.B.ハンプソン:エッセンシャルオイルとその成分の生理活性―ローマンカモミール―(Chamaemelum nobile L.),AROMA RESEARCH Vol.1,No.3,80-85,2000.
14) ワンダー・セラー(高山林太郎訳):アロマテラピーのための84の精油,フレグランスジャーナル社,1996.
15) 聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル,医歯薬出版,2003.
16) 橋本公雄,徳永幹雄:運動中の感情状態を測定する尺度(短縮版)作成の試み―MCL-S1尺度の信頼性と妥当性―,健康科学,18,109-114,1996.
17) 森谷,小田史郎:香り効果判定における自律神経機能と感情指標の対応,AROMA RESEARCH,Vol.3,No.4,72-77,2002.
18) Naohiko Inoue, Kyoko Kuroda, Akio Sugimoto, Takami Kakuda, and Tohru Fushiki:AutonomicNervous Responses According to Preference for the Odor of Jasmine Tea,Biosci.Biotechnol.Biochem.,67(6), 1206-1214, 2003.
19) 橋本恵子:カモミールゼリーの摂食がもたらす生理心理的効果,北海道大学大学院教育学研究科修士論文,2002.
20) 財団法人健康・体力づくり事業財団:平成8年度健康づくりに関する意識調査,1997.
21) 株式会社ファンケル:プレスリリース,重工記者クラブ,平成14年11月22日配布資料,1-5,2002.
22) 山本由華吏,白川修一郎,永嶋義直,大須弘之,東條聡,鈴木めぐみ,矢田幸博,鈴木敏幸:香気成分セドロールが睡眠に及ぼす影響,日本生理人類学会誌,Vol.8,No.2,25-29,2003.
23) Lawrence Gould, C.V.Ramana Reddy, Robert F.Gomprecht:The Journal of Pharmacology, Nov.-Dec., 475-479, 1973.
24) 矢野悦子,橋本恵子,生野寿恵,角田英男,森谷:温めたカモミールゼリーの摂食が自覚的睡眠感に与える影響,日本生理人類学会誌,Vol.9,特別号⑴,132-133,2004.
25) 小栗貢,白川修一郎,阿住一雄:OSA 睡眠調査票の開発,精神医学27⑺,791-799,1985.
26) Eva Szoke, Emoke Maday, Erno Tyihak, Inna N Kuzovkina, Eva Lemberkovics:New Terpinoidesin cultivated and wild chamomile (in vivo and in vitro), Jouranal Of Chromatography. B, AnalyticalTechnologies In The Biomedical And Life Sciences, Vol. 800, Issue 1-2, Feb. 5, 231-238, 2004.

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(論文)心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響

最近不眠症の方の話をよく聞きます。毎日1時間とか2時間しか眠れなくてつらいとかの話です。ほとんどの場合は眠れなくてもベッドの中にいるようなので、体よりも眠れないという主に脳の疲れが問題のようです。
睡眠薬は副作用もあり、出来れば使いたくないという方も多く、環境や睡眠時間誤認など考えられる原因と解決策を話しています。
心理的要因はその中でもかなり大きな原因です。

(論文)心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響
「相愛大学人間発達学研究」に心理的要因と睡眠の質との関係を調査した論文がありましたので少し要約してご紹介いたします。(原文はURLから)
経験的には、悲観的な考えにいつまでもとらわれて、寝つきが悪いとか、よく眠れない等が続くと、抑うつ的な気分になるということが言われているが、科学的な検証がされていません。よってアンケート調査により統計的な検証を行ったというものです。その結果、統制の所在と私的自己意識がネガティブな反すう傾向に影響し、ネガティブな反すう傾向は睡眠傾向に影響することが検証されました。

ではその対処法の一つをかいておきます。
布団に入って目を瞑っていてもいろいろと考えてしまい、もやもやして眠れない時に頭の中の思考を止める方法です。

実は頭の中であっても思考は言葉です。
同時にいろいろとしゃべれないように、頭の中であっても同時にいろいろと思考の言葉を作り出すことはできません。
何か考えてしまうときには、頭の中で、「ンー」とか「ムーン」とかを言葉として思い浮かべると、ほかのことを考えられなくなります。

色々な宗教で瞑想するときに「ムーン」とか「オーム」等を低く発するものがありますが、邪念を払う効果があります。
まあ、オーム真理教の事件で「オーム」って言葉がイメージ悪いですが、元々はちゃんとしたものです。

実際に言葉を発する必要はなく、頭の中だけで大丈夫です。
そうするといろいろと頭の中で考えずに済むので、心を落ち着けて眠りに入りやすくなります。

相愛大学人間発達学研究
2010. 3. 49-56
https://www.soai.ac.jp/univ/pdf/kenkyu_h1nishisako.PDF

心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響
西迫成一郎*

統制の所在、自己意識、自己開示傾向がネガティブな反すうを媒介して睡眠状況に影響することを検討するために、大学生を調査対象とし質問紙調査を行った。その結果、統制の所在と私的自己意識がネガティブな反すう傾向に影響し、ネガティブな反すう傾向は入眠時間に影響することが検証された。また,「寝付きの良さ」「起床時の気分」および「眠りの深さ」を「睡眠傾向」と設定し検討した。その結果、統制の所在と私的自己意識がネガティブな反すう傾向に影響し、ネガティブな反すう傾向は睡眠傾向に影響することが検証された。

用語
統制の所在=内的統制とは、自己の努力や能力が、物事がうまくいくために役立つという考えを意味する。それに対して、外的統制とは、物事がうまくいくかどうかを決定するのは、運や強力な他者であるという考えを意味する。得点が高いほど内的統制型。

自己意識=自己の情緒・思考・態度といった他者から観察されない自己の私的な側面への注意の向きやすさを示す私的自己意識、自己の容姿・行動など他者が観察可能な自己の公的な側面への注意の向きやすさを示す公的自己意識。公的自己意識が、ネガティブな反すうに影響する。

自己開示傾向=自分自身のことについて他者に話すことを意味するが,自己開示が精神的健康にポジティブな影響を与えることを報告する研究は多い。これについては、自己に起こったネガティブな出来事を他者に話すことで、自己への語りかけともいえるネガティブな反すうをする必要性が弱くなる可能性が考えられる。

ネガティブな反すう=ネガティブな出来事を長い間繰り返し考えること。

1. 問題

睡眠は、心身の疲労を低減し次の日の活動を可能とするだけでなく、心身の健康を左右する重要な要因である。
睡眠と心の健康に関しては、睡眠のあり方が、抑うつといった心理的傾向に影響することがこれまでも示唆されてきた。しかし、逆に、睡眠の質は、多分に心理的傾向に影響されるという側面も持つ。これに関しては、近年、睡眠傾向に影響する就寝前の認知的活動の重要性が指摘されているが、特に注目されているのが、ネガティブな出来事を長い間繰り返し考えることであるネガティブな反すうである。ネガティブな反すうは、うつ状態を引き起こす要因の一つとされてきたが、これまでの研究により、ネガティブな反すう傾向が抑うつに直接的に影響するだけでなく、ネガティブな反すう傾向から入眠時間へ、入眠時間から睡眠の質へ、睡眠の質から抑うつに影響することを検証している。このように、ネガティブな反すうは、抑うつ傾向といった心理的傾向だけでなく、睡眠状況にも影響する重要な要因である。
それでは、ネガティブな反すうを形成する要因はなんであろうか。その一つの要因として、自己注目をあげることができる。この要因を考えるにあたって有用な理論が、客体的自覚理論、その精緻化が試みられた制御理論がある。これらの理論によれば、個人の注意が、環境と自己のうち、自己に向かっている自己注目の状態では、その注意はその個人がおかれている状況においてもっとも関連度・重要度の高い側面に絞られて向けられる。そして、その注意の対象となった側面は、その個人が有する個人的信念、理想自己、または社会的規範といった適切さの基準と照合され、その側面に対しての評価が行われる。この評価の結果、注意を向けた側面が、適切さの基準に達していないという判断がなされると、適切さの基準に自己を合わさなければならないという問題の認識がその個人に起こるのである。これらの理論に従えば、ネガティブな出来事のあとに自己注目の状態になることは、ネガティブな反すうを誘発することになろう。
これに関連して、どの方向に注目が向かうかについては安定した個人的傾向があるとする研究に依拠し、自己注目およびネガティブな反すうの抑うつへの影響過程について研究を行った。自己注目についての個人差を自己意識と総称した。そして、自己意識は,自己の情緒・思考・態度といった他者から観察されない自己の私的な側面への注意の向きやすさを示す私的自己意識、自己の容姿・行動など他者が観察可能な自己の公的な側面への注意の向きやすさを示す公的自己意識、そして他者に対する動揺のしやすさを示す社会的不安より構成されるとしている。自己意識のうち、公的自己意識が、ネガティブな反すうに影響し、そしてネガティブな反すうが抑うつ傾向に影響するとしている。
ネガティブな反すうに影響する要因は自己意識以外にも考えられよう。その一つとして、統制の所在を考えてみる。統制の所在には、内的統制と外的統制がある。内的統制とは、自己の努力や能力が、物事がうまくいくために役立つという考えを意味する。それに対して、外的統制とは、物事がうまくいくかどうかを決定するのは、運や強力な他者であるという考えを意味する。すると、内的統制型の人は、ネガティブな出来事が生じても、努力すれば自ら統制することができると考えるために、その問題についてネガティブに考え続けることは少ないであろう。また、自ら統制できるとの考えは、その問題を克服しようとすることにもつながる。その努力によって、問題を後々に残すことが比較的少なくなりネガティブな反すうを減少させると予測できる。
また、ネガティブな反すうに影響することが予測される要因として、個人の自己開示の傾向を本研究の俎上にあげる。自己開示とは、自分自身のことについて他者に話すことを意味するが、自己開示が精神的健康にポジティブな影響を与えることを報告する研究は多い。しかし、その詳細な影響過程についてはまだ検討の余地があり、自己開示がネガティブな反すう傾向に影響するかどうかを検討することは意義あることであろう。これについては、自己に起こったネガティブな出来事を他者に話すことで、自己への語りかけともいえるネガティブな反すうをする必要性が弱くなる可能性が考えられる。
以上より、統制の所在がネガティブな反すうを媒介して睡眠状況に影響するモデルと、自己開示がネガティブな反すうを媒介して睡眠状況に影響するモデルを想定することができ、本研究ではこれらのモデルを検証する。また、自己意識についても、自己意識がネガティブな反すうを媒介して抑うつ傾向に影響することを検討しているが、本研究では睡眠状況に対して影響することを仮定するモデルを検討する。このように、ネガティブな反すうに影響することを予測する心理的要因を複数取り上げることによって、それぞれの要因とネガティブな反すうとの関連の程度を比較することも可能となる。

2.方法
(1)材料
各個人の睡眠状況を測定する項目、統制の所在を測定する尺度、自己意識特性を測定する尺度、自己開示傾向を測定する尺度、ネガティブな反すうを測定する尺度を用意した。
a, 各個人の睡眠状況を測定する項目:項目1は、消灯時刻の変動。項目2は,睡眠時間の変動。項目3は寝付くまでの時間(入眠時間)。項目4は寝付きの良さ。項目5は、目覚める回数。項目6は起床時の気分。項目7は眠りの深さ。
b.統制の所在を測定する尺度: 18項目より構成され、それぞれの項目に記述してある内容に自分がどの程度当てはまるかを、“そう思わない(1)”,“ややそう思わない(2)”,“ややそう思う(3)”,“そう思う(4)”の4段階で評定すること求めた。得点が高いほど内的統制型であることを示す。
c.自己意識を測定する尺度:私的自己意識に強く負荷する5項目と公的自己意識に強く負荷する5項目を用いた。
d.自己開示傾向を測定する尺度:パーソナリティ領域に属する「罪や恥の感情を抱いた経験」,「非常に腹のたつような出来事」,「ゆううつな沈んだ気分にさせる出来事」,「気に病み、心配し、恐れるような出来事」の4項目を選択した。
これらの項目を選らんだのは、ネガティブな出来事についての自己開示について測定するためであった。4項目について、友人と家族それぞれに対して、“何も語らないかうそを言う(0)”,“いちおう語る(1)”,“十分に詳しく語る(2)”の3段階で評定することを求めた。
e.ネガティブな反すうを測定する尺度:ネガティブな反すう傾向を測定する7項目、ネガティブな反すうのコントロール不可能性を測定する4項目、filler item 3項目から構成される。これら14項目の内容について、自分がどの程度あてはまるかを、“あてはまらない(1)”,“あまりあてはまらない(2)”,“どちらかというとあてはまらない(3)”,“どちらかというとあてはまる(4)”,“ややあてはまる(5)”,“あてはまる(6)”の6段階で評定することを求めた。

(2)調査対象者
調査の対象者は大阪府のS大学および京都府のR大学に通う大学生であり、記入漏れや記入ミスのあった者を除く201名(男性99名,女性102名)を分析の対象とした。平均年齢は、19.51歳(18~24歳)であった。
(3)調査時期
2009年12月に実施した。

3.結果
(1)各尺度の因子分析と信頼性係数
割愛

(2)各変数間の相関分析
Table lには、その結果および基本統計量を示した。主な結果は次のとおりである。ネガティブな反すう傾向については、統制の所在と有意な傾向の負の相関が、私的自己意識と有意な正の相関が、そして入眠時間と有意な傾向の正の相関が認められた。ネガティブな反すうのコントロール不可能性(Table lではコントロール不可能性と略記)については、統制の所在と有意な傾向の負の相関があり、また公的自己意識と有意な正の相関が見られたが、睡眠状況と関連する4変数とは有意な相関は認められなかった。

(3)構造方程式モデリングによる検討
統制の所在、2つの自己意識、および2つの自己開示のいずれかが、2つのネガティブな反すうを媒介して消灯時間の変動、睡眠時間の変動、入眠時間、目覚める回数のいずれかに影響することを仮定するパスを設定したモデルを作成し、構造方程式モデリングによる検討をおこなった。その結果、設定しうるモデルのうち、すべてのパスが有意であったモデルはなかった。そこで、有意な傾向があるものも認めることとした。すると、採用可能なモデルは、統制の所在からネガティブな反すう傾向、ネガティブな反すう傾向から入眠時間へのパスを設定したモデルと、私的自己意識からネガティブな反すう傾向、ネガティブな反すう傾向から入眠時間へのパスを設定したモデルであったが、統制の所在と私的自己意識の相関を認め、統制の所在および私的自己意識がネガティブな反すう傾向を媒介して入眠時間に影響するパスを設定したモデルをモデル1として採用した。その分析結果をFigure lに示した。

この結果から、統制の所在が内的統制型であるほどネガティブな反すう傾向が低くなり、自己の私的側面へ注意を向けやすいほどネガティブな反すう傾向が高くなること、そしてネガティブな反すう傾向が高いほど、入眠までの時間が長くなるという一連の影響過程があることが示唆された。
本研究では、さらに、Figure1のモデルの入眠時間の代わりに、睡眠傾向をあてはめたモデル2について、検討をおこなった。その結果をFigure 2に示した。

この結果は、統制の所在が内的統制型であるほどネガティブな反すう傾向が低くなり、自己の私的側面へ注意を向けやすいほどネガティブな反すう傾向が高くなること、そしてネガティブな反すう傾向が高いほど睡眠傾向がネガティブな状態になるという、一連の影響過程があることを示している。

4.考察
分析結果について、過去の研究からの知見も含めて、考察を加える。
分析結果は、統制の所在および私的自己意識が、ネガティブな反すう傾向を媒介して、入眠時間や睡眠傾向といった睡眠状況に影響することを示していた。また、私的自己意識の方が統制の所在よりもネガティブな反すう傾向への影響はやや強いことが認められた。これに対して、自己開示傾向と公的自己意識のネガティブな反すう傾向への影響は、認められなかった。また、ネガティブな反すうのコントロール不可能性は、相関分析によって統制の所在および公的自己意識と相関が認められたが、睡眠状況との関連性は本研究の分析からは認められなかった。
統制の所在については、内的統制型であるほどネガティブな反すう傾向が低くなるという結果が認められたが、これは予測されたように内的統制型の個人は生じた問題は自分の努力によって解決できると考えるために、その問題についてネガティブに考え続けることは少ないのであろう。また、実際に問題解決に向けて努力するために、問題を持ち続けることが比較的少なくネガティブな反すう傾向が低くなるものと考えられよう。内的統制型傾向が高いことについては、その心理的性質からネガティブな出来事についても、自己の努力や能力が関係していると考え、ネガティブな反すう傾向を高める可能性もある。本研究の結果からは、内的統制型傾向が高いことは、ネガティブな反すうを引きおこすのではなく、ネガティブな出来事に対しても、これから努力を尽くせば覆ると前向きに未来をとらえさせることを示している。
次に、本研究の問題点について言及するならば、その一つは、今回の研究で設定した、消灯時刻の変動、睡眠時間の変動、目覚める回数については、ネガティブな反すうの影響は見られなかったことである。消灯時刻の変動、睡眠時間の変動に関しては、その回答のなかに平均的な値から大きく離れた値が存在した。これによって、データの性質が大きく左右されてしまったことが、影響を認めることができなかった原因かもしれない。
自己開示傾向についても、想定したような影響を見いだすことはできなかった。これに関連して、Wicklund(1982)は、自己開示が自己への注意を促進するとしている。この自己注目がネガティブな反すう傾向の促進効果を有しており、想定された自己開示のネガティブな反すうの傾向の抑制効果を相殺したとも考えられよう。今後、さらに検討が必要である。また、「寝付きの良さ」、「起床時の気分」、および「眠りの深さ」を観測変数として潜在変数「睡眠傾向」を設定したが、睡眠傾向をとらえるにあたってさらに十分な観測変数を検討することも必要であろう。
本研究では、想定された影響過程の一部が認められた。ネガティブな反すうに影響する要因を今後さらに検討することが、睡眠状況の改善に貢献をもたらすであろう。さらに、睡眠状況がいかなる臨床的問題を引き起こすのかまでを含んだ研究も、心身の健康を考えるうえで今後必要であろう。

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笑顔で目覚める安眠(5)不眠症の対処

昨日は立冬。季節は冬になってしまいました。それでも昨日は暖かくてさわやかな良い天気。気持ちよかったのでカメラをもって散歩に出かけました。タンポポの綿毛が残っていました。

笑顔で目覚める安眠⑤不眠症の対処
最近はストレスの多い社会というのは誰でも思うところではないでしょうか?
その中でも眠れないという悩みを聞くと、いろいろな事柄が頭の中でもやもやと渦巻き、寝付けないというものです。
「相愛大学人間発達学研究」の論文は、経験的には、悲観的な考えにいつまでもとらわれて、寝つきが悪いとか、よく眠れない等が続くと、抑うつ的な気分になるということが言われているが、科学的な検証がされていないこのような案件を、アンケート調査により統計的な検証を行ったというものです。

心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響

心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響

その結果、統制の所在と私的自己意識がネガティブな反すう傾向に影響し、ネガティブな反すう傾向は睡眠傾向に影響することが検証されました。

ではその対処法の一つをかいておきます。
布団に入って目を瞑っていてもいろいろと考えてしまい、もやもやして眠れない時に頭の中の思考を止める方法です。

実は頭の中であっても思考は言葉です。
同時にいろいろとしゃべれないように、頭の中であっても同時にいろいろと思考の言葉を作り出すことはできません。
何か考えてしまうときには、頭の中で、「ンー」とか「ムーン」とかを言葉として思い浮かべると、ほかのことを考えられなくなります。

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笑顔で目覚める安眠(2)騒音

近所の駐車場の整備工事で、一日中ガタガタと騒音が響いています。昼間だけど、夜勤で寝ている人や赤ん坊のいる家にとっては安眠妨害でしょうね。
一般的な道路工事などは夜間の交通量の少ない時にやる為、近隣にとっては肉体的・精神的な迷惑になることでしょう。そういう事がきっかけとなって「不眠症」になる方って結構いるようです。

笑顔で目覚める安眠②騒音

音の問題は、実際の音量以上に感覚的な音量に左右されることが多い問題です。
「ミソフォニア(音嫌悪症)」のような症状も、特に病的なものでなければ誰にだって経験があるはずです。
音は気になりだしたら、我慢をするより先に、能動的に対処するほうがよいと思われます。対処の仕方は相手の音を止めようとする方法ではなく、自身の快適性を求めるための方法です。簡単なところでは耳栓であり、大掛かりなところでは防音工事や場合によっては騒音源から離れるための引っ越しも含めた対処ですね。
もちろん「いびき」には安眠家具SleepLaboが最適です。

ミソフォニアを頂点とする騒音に対する嫌悪感をストレスからくる症状ととらえた場合の対処方法を以下に示します。
東洋医学の考えで、病気の症状で病気を治す方法というのがあります。病気の症状は、体がその病気を治すために戦って出ている症状ですから、同じ状態にして免疫の力を加算するということです。風邪の時に熱が出るので、風邪っぽいと思ったら体を温めるという考えです。

生活音を聞いてイライラする感情が高ぶるというのも、その音に関するなにがしかの原因(過去のトラウマなど)に、精神が支障をきたさないように、早く逃げろとか音源を排除しろという体の反応だと思われます。
我慢するのではなく、とりあえずその音を聞かないようにするのがまず第一です。

次に、根本治療として原因を見つけて解決する方法としては、カウンセリングなどのテクニックにより原因を突き止め排除するという方法があります。
他人の発する騒音は小さくてもストレスになります。
自分の音は当然ストレスにはなりません。自分の音を録音するなどして聞きなれ耳に慣れさせることで、他人の音に対しても許容量を増やしていくことが対処法として有効だと思われます。
ストレスへの対処の仕方としての基本的な考えになると思っています。免疫療法と同じ考えです。
そのうえで物理的な遮音があれば、気持ちよく安眠ができるというものです。
安眠家具の20dB減の機能は、数値としては結構大きい効果なのですが、メンタルな面を合わせて考えるとより効果的になります。笑顔で目覚めるにはメンタルも満たされた状態で眠りにつけることが重要です。

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笑顔で目覚める安眠(1)明かるさ

笑顔で目覚める安眠①明かるさ
皆さんの寝起きはいかがですか?すっきりと気持ちよく目覚めることができているでしょうか?
寝すぎると顔がむくんでると感じることも多いですし、寝不足だと、なんだか疲れが取れてなくて、口角も下がってほうれい線もくっきりの老け顔になっちゃいますね。
「眠くなって寝る」「自然に目覚める」が良いのかもしれませんが、時間に縛られた生活をしていればそういうわけにもいきません。
時間に合わせた生活に体を合わせていき、リズムを上手く作れるようにすることが、ストレスも少なくて良いようです。

リズムといえば自律神経のバランス。交感神経と副交感神経の切り替えが自律神経のバランスを整え、すっきりした目覚めにつながります。
自律神経失調症の治療にも使われる高照度療法という方法があるように、朝の明るい光(太陽光)をしっかりと受けることで、交感神経を活発にします。反対に副交感神経を優位にするためには、強い光を受けないことが大切です。夜はブルーライトを受けないようにしましょうと、少し前にブルーライト用の眼鏡が流行りましたね。パソコンのブルーライトが交感神経を活発にするから、夜はブルーライトを目に入れないようにしようというものでしたが、皆さん昼間のパソコン作業時にずっとかけてました。昼間は逆に交感神経優位にしておくほうがいいので、まったく逆に使ってたということですね。

さて、光のコントロールをしっかりすることで自律神経のバランスを整えるのであれば、寝ている間も周りが明るくないほうが良いわけです。その明るくない光というと、実は3ルクス程度。室内灯の豆電球で9ルクス程度あるようですので、3ルクスはかなり暗いです。

不規則な時間で生活する人は、周りが明るい環境で寝る状態であったりします。実は睡眠時間は足りていてもバランスは崩れやすく体調に影響があります。
安眠の為の環境コントロールとして、明るさ、暗さの調整が、笑顔で目覚めるための第1段階として必要です。

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アロマオイルがもたらす睡眠への効果

ラベンダーの香りが安眠を誘うというのは、欧米ではかなり昔から言われていたようです。日本にアロマオイルというものが紹介されてまだそれほど経っていないため、きちんとした研究結果などもあまり知られておらず、まだまだそういう話もあるのか程度だとおもいます。
しかしこの研究のように、精神科や高齢者施設などの睡眠薬の多用などに比べると、安価でかつ効果があるのであれば、多くの成果が期待できると思います。
ちなみにラベンダーの香りというと、原田知世の「時をかける少女」を思い出します。なんとなくラベンダーの香りに神秘的な感覚を持ったことを思い出しました。

アロマオイルがもたらす睡眠への効果

I.はじめに

精神疾患を持つ患者は、多数が何かしらの睡眠障害を持つことが多い。更に、精神科の閉鎖病棟入院患者は、日中の活動が多いとはいえない。
実際、日中の活動をみてみると、数時間の作業療法、入浴などがあるが、毎日のことではない。活動のない時は、日中ホールで過ごすか、自室で臥床していることが多い。日中、臥床時間が多い患者は、やはり夜勤帯での中途覚醒や早朝覚醒がみられる。 また、不眠を訴える患者もみられ、頓服の睡眠薬を希望する患者もいる。
桶谷I)らは、「睡眠障害は、精神症状の変化と密接に関連しており、睡眠-覚醒、休息-活動などの 生活リズムを整えることは、患者の安定した状態を保つ意味で看護の重要な役割である。」と述べている。このとから、看護面からの睡眠改善への介入の必要性を感じた。睡眠改善することにより、日中活動量が増え、生活リズムの改善へ繫がると考えた。
介入方法としては、松澤2)の研究により、「ベルガモットオイルを用いた芳香療法はアルコール依存症患者に対して、睡眠維持、特に中途覚醒の減少に対して有効である。」との結果を得ていることから、一般的に安眠効果があるといわれているラベンダーオイルを用い、不眠がみられる患者を対象に、睡眠改善対策として実施・考案した結果、睡眠改善がわずかではあるが認められたのでここに報告する。

II.用語の定義3)

不眠       :睡眠の開始と維持の障害で以下の4項目がみられた状態
中途覚醒 :ちょっとした物音などの刺激で目が覚めてしまい、途中で目が覚めてしまう
入眠障害 :夜寝ようとしてから実際に寝付くまでの時間がかかるもの(1時間以上)
早朝覚醒 :朝早く目が覚めてしまい、その後眠れない。朝の目覚めが普段より2時間以上早い。
睡眠時間短縮 :時間のゆとりがあるにもかかわらず一晩の睡眠時間の合計が5時間以下。

III.対象と方法

・ 期間:10月14日~11月15日

・ 倫理的配慮 :主治医の承諾を得た後、対象者に目的・方法・研究参加への自由意志、プライバシーや個人情報の保護について、口頭で説明した。
・ 対象   :A 病棟入院患者で不眠が認められる6名。
・ 介入方法 :就寝時にラベンダーオイル1~2滴を含ませたコットンを枕カバー内へ入れ、朝までの睡眠状況を観察した。
・ 評価方法 :中途覚醒、早朝覚醒、睡眠薬希望の有無に焦点をあて、介入前後を比較するとともに、対象者に介入前後の睡眠について感想を聞いた。

IV.結果

対象者は、男性1名(59 歳 器質性精神障害)女性5名(77 歳 統合失調症、57 歳 統合失調症、65 歳 双極性感情障害、63 歳 統合失調症、68 歳 統合失調症)

介入前 介入後
中途覚醒 78 52
早朝覚醒 2 1
睡眠薬希望(使用) 2 0

(回数)

・ 68 歳女性、介入前、早朝覚醒がみられていた。
介入初日より、「いつもよりよく眠れた」と話しており、その後も早朝覚醒なく、朝まで良眠されていた。

・ 65 歳女性、以前より夜間帯、頻回のナースコールがあり、まとまりのない話をしていた。介入後もナースコールはあるが、以前のような頻回なナースコールではなく、トイレ時の数回のナースコールでおさまっている。介入の拒否は、 全体で2回であった。対象者全員が、介入前よりよく眠れたと述べた。1名の対象者は「良い匂いでリラックスできる」と感想を述べ、別の 1名の対象者は、就寝時に「今日は、アロマオイルないの?」と自ら希望される発言が聞かれた。

V.考察

介入前後でわずかではあるが、改善がみとめられた。拒否は2回と少なく、対象者全員が介入前よりよく眠れたと感じており、アロマオイルの効果はあったと考えられる。
しかし、対象者の中には、研究期間に処方内容が変更されている患者もいたため、アロマオイルのみの効果で睡眠改善したと言い切れない部分はある。ただ、その対象者は、「いい匂い」と感想を述べており、アロマオイルが睡眠の妨げになったとは考えにくく、悪影響はなかったと考える。
介入後も、中途覚醒や早朝覚醒はみられたが、回数は減少しており、介入前はそのまま入眠することができず、徘徊や頻回のナースコールに繫がっていたものが、介入後には入眠困難を呈することなく再入眠されている。このことから、睡眠時間は十分確保できていると考えられる。しかし、対象者の1名は、睡眠時間が確保できているにも関わらず、日中の臥床傾向は変わらなかった。日中の活動量がふえていけば、日中臥床することなく、さらに夜間のより良い睡眠に繋げていけると思われる。今後は、日中の活動量を増やす介入方法を検討していく必要 があると考える。

VI.結論

ラベンダーオイルを用いた芳香療法は、睡眠改善に有効である。アロマオイルには鎮静効果が高く、リラックス作用があるため睡眠の質が改善されたと思われる。

VII.おわりに

今回の研究によって、ラベンダーオイルが睡眠障害の改善に少なからず寄与していることがわかっ た。
アロマオイルには多くの種類があり、それぞれにさまざまな効果があることが、多くの関連図書で紹介されている。例えば、柑橘系のアロマオイルには、 覚醒作用のあるものが多い。今後、そのような効果を持つオイルを用いて日中の覚醒を促し、今回の介入方法を継続することによって、本来あるべき生活リズムを取り戻す手助けになればと思う。
アロマテラピーは、日本では臨床報告例は少ないが、フランスの医療現場では、かなり厳密な使い方が求められる治療手段の一つとして行われている。
また、アロマテラピーは、簡便かつ安価で行えるので、活用できれば医療費の軽減につながると思われる。
当院の入院患者は、高齢者も多く、経済的な問題を抱える患者も少なくない。早朝覚醒や夜間排泄に行くのは高齢者におおいため、短時間でより良い睡眠を確保することは大切なことである。今回のアロマオイル介入により以前よりも質の良い睡眠を得る手助けが出来たのではないかと考える。

VIII.参考引用文献

1)桶谷玲子・上山和子 不眠・過眠を繰り返す慢性統合失調症患者への援助 看護技術 1995
2)松澤亮 アルコ-ル依存症患者に対する芳香療法 日本看護学会論文集 精神看護 2005
3)中川博幾・伊﨑公徳 不眠の原因と病態 臨床看護 1993

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