「安眠」カテゴリーアーカイブ

夜間の豆電球使用が肥満・脂質異常症のリスクになる可能性を示唆

寝るときの部屋の明るさについては、賛否両論あるようです。明るすぎるのは問題外として、真っ暗がいいのか、少しくらいの明かりがあったほうがいいのか、それぞれに理由があるのですが、きちんとした研究成果として、論文発表になっているものでは真っ暗に結果が出ているようです。

奈良県立医科大学  発表日:平成25年1月9日

夜間の豆電球仕様が肥満・脂質異常症のリスクになる可能性を示唆

本研究は、528人の高齢者の自宅寝室に設置した照度センサーで測定した夜間暴露照度が平均3ルクス以上の群(中央値:83.7ルクス)で平均3ルクス未満の群と比べ、肥満症や脂質異常症の有病割合が1.9倍であることを認めました。

http://www.naramed-u.ac.jp/pdf/news/2013/250109Endocrine-News.pdf

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乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りに“睡眠の質”を高める効果があることを確認

乳酸菌の香りに安眠効果があるという研究発表がありましたので、ご紹介いたします。具体的にどんな香なのか気になります。

イメージは吟醸香なのですが・・・酒飲みの発想でしょうか・・

乳酸菌と酵母による2度の発酵でつくるアサヒ飲料社独自の発酵乳(以下、本発酵乳)には、一般的な乳酸菌でつくる発酵乳とは異なる果実のような独特な芳香があります。これまでの研究で、本発酵乳の香りには、不安を和らげたり、日周リズム(体の昼夜のリズム)を改善する効果があることを動物実験で明らかにしています。今回、本発酵乳の香りの効果をさらに明らかにするために、睡眠の質に与える影響を調べました。
※本研究成果は日本農芸化学会2016年度大会(2016年3月27日~30日)で発表した内容です。

http://www.asahigroup-holdings.com/research/group/report/report26.html

睡眠の仕組み ~質の良い睡眠とは?~

ヒトの睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠から構成されます。ノンレム睡眠中は、身体が真に休まっている状態にあることから、ノンレム睡眠の割合が多い睡眠が、質の良い睡眠といえます。また、睡眠中の覚醒(目覚め)は、眠りが浅いことを意味し、覚醒回数が少ないことも、質の良い睡眠といえます。

実験方法
ラットの睡眠は、覚醒回数が多い点でヒトと異なりますが、ノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返される基本的な睡眠のリズムはヒトと同じです。そこで、ラットを用いて、本発酵乳の香りが睡眠に与える影響を調べました。
ラットを2つのグループに分け、一方のグループにのみ休息期(主に寝ている時間帯)に、本発酵乳の香りを1日1回30分間、7日間毎日嗅がせました。香りが睡眠に与える短期的な影響と、長期的な影響を調べるため、1回目の香りを嗅がせた翌日(2回目の香りを嗅ぐ前)と、7日間香りを嗅がせた翌日に、脳波等を測定して、休息期のノンレム睡眠、レム睡眠、覚醒の時間や回数を調べました。

<結果1>睡眠時のノンレム睡眠(深い眠り)の割合が増加
1回目の香りを嗅がせた翌日、香りを嗅がせたラットは、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期初期(休息期に入って初めの3時間)のノンレム睡眠が占める割合が増加する傾向がみられました。また、7日間香りを嗅がせると、休息期初期のノンレム睡眠が占める割合が有意に増加しました。

<結果2>睡眠時の覚醒(目覚め)の回数が減少
7日間香りを嗅がせると、香りを嗅がせていないラットと比べて、休息期の覚醒回数が有意に減少しました。

まとめと今後の展望
本発酵乳の香りを嗅いだラットは、休息期におけるノンレム睡眠の割合が増加し、覚醒回数が減少しました。また、これらの効果は、1回目に香りを嗅がせた翌日よりも、7日間香りを嗅がせた翌日に、顕著にみられました。このことから、本発酵乳の香りには睡眠の質を高める効果があること、さらに、継続的に嗅ぐことで、効果が高まる可能性があることがわかりました。今後、有効成分の解明やヒトの睡眠の質に与える影響について検討を進めてまいります。
これまでの研究成果
■乳酸菌と酵母でつくる発酵乳の香りには、自律神経に働きかけ、日周リズムの改善や不安を和らげるはたらきがあることを確認
(日本農芸化学会2014年度大会にて発表  発表タイトル:「乳酸菌と酵母で発酵した発酵乳の香りが自律神経と行動に与える影響」)

■乳酸菌発酵後に酵母発酵を加えると発酵乳の嗜好性が向上すること、その要因として発酵から生まれた「香り」が重要であることを確認
(日本農芸化学会2012年度大会にて発表 発表タイトル:「発酵乳の嗜好性向上に与える乳酸菌および酵母の役割」)

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地震対策としての安眠家具

東日本大震災から6年。3月11日が1か月後に廻ってきます。2017年に入ってから地鳴りの情報が多くなっているという話もあり、地震の前兆といわれる現象に話題が集中します。ニュージーランドのクジラ400頭座礁も、その後さらにイルカが200頭座礁したと伝わってくると、信じない人でも気になってくるものです。

さて、いたずらに不安をあおるだけのニュースかもしれませんが、6年前に一所懸命持ち出し袋など用意したご家庭も、少しずつ喉元の熱さを忘れかけているころではないでしょうか?3月11日のことは簡単に忘れることはないでしょうが、備蓄の中の食料や乾電池が賞味期限切れや放電してしまっているなど、見直しが必要な時期ではないでしょうか。

食料や持ち出し袋が必要な規模の地震は、そうそう来ないかもしれませんが、棚の上のものが落ちてくる程度の地震は案外頻繁に発生します。タンスや棚の固定はきちんとしていますか?そのうちしようと思って案外そのままという方が多いのではないですか?

2016年4月に発生した熊本地震では、亡くなられた方の多くが建物や家具の転倒による圧死であったことが報道されています。安眠家具を使っていればひょっとしたら助かった方もいるのではないかと思われます。
ラダースリープラボは、災害対策を目的とした家具ではありませんので、上に物を載せたり、人が乗るなどの想定はしていません。お子様でも上に乗ったりはしないでください。
しかし、地震で額などが落ちてきたり、タンスが倒れかかってきたときには、丈夫な構造が少しでも役に立つでしょう。

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インフルエンザ対策としての安眠家具

インフルエンザが流行っています。受験シーズンが重なるので、本人だけでなく親や先生がピリピリしていますね。
ニュースでは、ボクシングスーパーライト級タイトルマッチで、計量や記者会見を行った日にインフルエンザを発症して、翌日のタイトルマッチをドクターストップで欠席した選手が、無期限の公式戦出場停止処分となり、物議をかもしています。
アイドルグループ私立恵比寿中学の松野莉奈さん(享年18)の死因をめぐって、ネット上にインフルエンザ脳症という臆測が広がっているらしいですね。18歳のアイドルの急死は衝撃ですし、ご冥福をお祈りいたします。残されたメンバーの方もショックは大きいでしょう。

インフルエンザの予防には予防接種がありますが、厚生労働省も感染予防はできないと言ってます。65歳以上の高齢者には重症化防止の効果があると言っています。だったら若い人はほぼ関係ないということでしょうか?それとも脳症にならなくて済んだのでしょうか?アイドルは予防接種してそうですけどね。

厚生労働省インフルエンザQ&A
【インフルエンザワクチンの接種について】
Q.18: ワクチンの接種を受けたのに、インフルエンザにかかったことがあるのですが、ワクチンは効果があるのですか?
インフルエンザにかかる時はインフルエンザウイルスが口や鼻から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が起こります。この状態を「発症」といいます。ワクチンには、この発症を抑える効果が一定程度認められています。
発症後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や御高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。ワクチンの最も大きな効果は、この重症化を予防する効果です。

※平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」の報告では、65歳以上の老人福祉施設・病院に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。

以上のように、インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。
ただし、この効果も100%ではないことに御留意ください。
インフルエンザ予防にはマスクや手洗いなどもありますが、風邪と同じくのどの粘膜に感染するウイルスに対抗するには、喉の乾燥を防止することが必要です。それも一番は寝ているときの乾燥防止です。

【インフルエンザの予防・治療について】
Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?
4) 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
喉の乾燥を予防するのにも、安眠家具が役に立ちます。人が呼吸で失う水分量は24時間で約400mlと言われます。8時間睡眠としても約130mlもの水分です。これをそのまま発散させるか、安眠家具内にとどめておくかで大きな違いが出るのです。

インフルエンザ流行データ

2017年 第04週 (1月23日~1月29日) 2017年2月1日現在
2017年第4週の定点当たり報告数は39.41(患者報告数195,501)となり、前週の定点当たり報告数28.66よりも増加した。
都道府県別では宮崎県(59.08)、福岡県(55.10)、愛知県(54.68)、埼玉県(51.68)、千葉県(51.40)、山口県(51.40)、大分県(51.12)、神奈川県(49.49)、静岡県(47.40)、三重県(45.58)、福井県(43.56)、岡山県(42.29)、佐賀県(41.92)、宮城県(41.84)、長野県(41.07)、石川県(41.02)、徳島県(40.54)、熊本県(40.51)、高知県(39.94)、大阪府(39.80)の順となっている。全47都道府県で前週の定点当たり報告数よりも増加がみられた。
全国で警報レベルを超えている保健所地域は355箇所(45都道府県)で、注意報レベルを超えている保健所地域は184箇所(42都道府県)であった。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約201万人(95%信頼区間:188~214万人)となり、前週の推計値(約161万人)よりも増加した。年齢別では、5~9歳が約35万人、10~14歳が約32万人、0~4歳、15~19歳がそれぞれ約20万人、40代が約19万人、30代が約18万人、70歳以上が約16万人、20代、50代がそれぞれ約15万人、60代が約12万人となっている。また、2016年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約748万人となった。
基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は1,588例であり、前週(1,241例)から増加した。全47都道府県から報告があり、年齢別では0歳(61例)、1~9歳(267例)、10代(66例)、20代(14例)、30代(27例)、40代(34例)、50代(41例)、60代(141例)、70代(293例)、80歳以上(644例)であった。
国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、直近の5週間(2016年第52週~2017年第4週)ではAH3亜型の検出割合が最も多く、次いでB型、AH1pdm09の順であった。
詳細は国立感染症研究所ホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html)を参照されたい。

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笑顔になれる睡眠環境

埼玉県さいたま市の氷川神社の参道で、3月26日日曜日に

「さんきゅう参道2017」が実施されます。(雨天中止)

その実行委員会に参加させていただいています。

イベントテーマは「みんなが笑顔になること」。

笑顔が伝染するようなイベントのイメージが、少しずつ形になってきました。さいたま市から世界に向けて笑顔が拡散するように、笑顔プロジェクトが始まる予感です。

株式会社RUDDERとしてもいびき防止で家族みんなが笑顔になること。

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寝不足はダイエットの敵

柳沢正史教授が機構長を務める筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構から、新たなプレスリリースが出ています。
睡眠にまつわる脳活動の解明で次々と新しい発見を行っていますので、注目しています。

http://wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/…/si…/2/2017/01/0110_LazPR.pdf

プレスリリース
2017.1.10|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)

寝不足はダイエットの敵

睡眠時間が足りないと甘いものがほしくなる理由

研究成果のポイント
1. レム睡眠量が減少すると、ショ糖や脂質など、太りやすい食物の摂取量が増加する原因の一端を見出しました。
2. 前頭前皮質の神経活動を抑制すると、レム睡眠量が減少してもショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の抑制の影響を受けることなく増加しました。
3. レム睡眠が不足しているときに、肥満につながる食物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしました。食べ物の味や香り、食感などの嗜好を判断する役割を担う脳部位である前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が減少しても、ショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の神経活動抑制の影響を受けることなく、対照群と同様に増加しました。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、体重を増加させる可能性のある、ショ糖が多く含まれる食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。
本研究成果は、eLife誌にて2016年12月6日付でオンライン公開されました。
研究の背景
睡眠不足は、体重増加をもたらす要因のひとつであることが知られています。睡眠不足の人は、十分な睡眠をとっている人に比べて、体重を増加させる嗜好性の高い食品をより多く摂取し、太りやすくなる傾向があるからです。睡眠の成分の中でも特にレム睡眠が不足すると、体重が増加することも報告されてきました。しかし、睡眠不足になるとなぜ高カロリーの食品を欲するようになるのか、その背景にある神経機構は不明でした。また、食物の嗜好に関わる前頭前皮質が重要な役割を果たしていると考えられてきたものの、睡眠との直接的な関係は不明でした。

研究内容と成果
研究グループは、マウスのレム睡眠だけが特異的に減少することが観察された器具を用いてレム睡眠不足に陥ったマウスを準備し、その摂食行動に注目しました。レム睡眠が不足したマウスでは、ショ糖、脂質ともに摂食量が増加しました(図 1)。遺伝子改変技術と化学物質の組み合わせにより、人為的に前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が不足してもショ糖の摂取量は増加しませんでしたが、脂質の摂取量は神経活動を操作してもその影響を受けず、対照群と同様に増加することがわかりました(図 1)。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、ショ糖を多く含み体重を増加させる、いわゆる「太りやすい」食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質によって直接的に制御されている可能性が示唆されました。この成果は、レム睡眠と前頭前皮質、食物の嗜好性との直接的なつながりを示した初めての成果です。

今後の展開
レム睡眠は加齢とともに減少することが知られています。本研究から、レム睡眠量の減少は代謝やエネルギーバランスに悪影響を与え、体重増加につながる可能性があることが示唆されました。糖尿病や心血管疾患など、肥満と密接に関連する疾患は増加の一途を辿り、社会的に多大な経済的損失を招く原因にもなることが懸念されています。今回得られた知見を足がかりに、高齢化社会で健康的な食事行動を促進する、新たな神経薬理学的な戦略の開発が期待されます。

参考図

図 1|レム睡眠が不足するとショ糖・脂質ともに摂取量が増加する。前頭前皮質の神経活動を 阻害すると、ショ糖摂取量の増加は抑えられる。

図 2|レム睡眠の不足は、糖質や脂質などを多く含む「不健康な」食べ物への欲求を高める。

掲載論文
【題 名】Chemogenetic inhibition of the medial prefrontal cortex reverses the effects of REM sleep loss onsucrose consumption
【著者名】McEown K, Takata Y, Cherasse Y, Nagata N, Aritake K, Lazarus M.
【掲載誌】eLife DOI: 10.7554/eLife.20269.001
お問い合わせ
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)広報連携チーム 担当:雀部(ささべ)
住所 〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1 睡眠医科学研究棟
E-mail wpi-iiis-alliance@ml.cc.tsukuba.ac.jp
電話 029-853-5857

 

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労働時間と睡眠時間

労働時間が睡眠時間にどう影響するかを調べた報告書です。仕事とストレス。ストレスと睡眠。よく考えなければいけません。

今から7年前。民主党政権時代から報告書は出ているのですが、変わらないですね。
電通の事件を契機に、やっと残業時間についての見直し提言が出ていますが、経済界が反発している。
見直しといっても基準は過労死ラインとの線引きの話。
仕事って死ぬか生きるかのラインでやることでしょうか?

http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou054/hou54_03_02.pdf
3 研究論文集

労働時間と睡眠時間

獨協大学経済学部 教授 阿部 正浩

要旨

この論文の目的は、日本人の睡眠行動と労働の関係を探ることにある。社会生活基本調査を用いて実証分析した結果、次のような結論が得られた。
一つ目の結論は、労働時間の長さは睡眠時間に影響するということである。男性の平均的な睡眠時間は女性に比べて長いが、その分布は広く、労働時間によって睡眠時間の長さが変化していることになる。女性の場合には雇用形態によってその度合いは異なるが、全般的に労働時間が長いほど睡眠時間は短くなる。二つ目の結論は、男性と女性正規雇用者の睡眠に関する固定時間費用は小さく、労働時間の変動を睡眠時間の長さで調整していることだ。1 日24 時間だから、一つの行動が長くなれば他の行動を短くするのは当然だ。しかし、男性と女性の正規雇用者に関しては、労働時間の長さを、他の行動ではなくて、睡眠を短くすることで調整している傾向にある。これに対して女性パート・アルバイトについては、家事の固定時間費用が低く、労働時間の変動を家事時間で吸収する傾向にある。
そして、睡眠時間の固定時間費用は高く、睡眠時間で調整は正規雇用者に比べて小さい。
以上の結論は、我が国において労働時間管理が、人々の健康管理の上でも重要な役割を果たすことを示唆する。特に正規雇用者の場合、他の雇用形態と比べて、労働時間の長さを睡眠時間で調整しようとする傾向にあり、長時間労働は睡眠不足をもたらす。たとえば、表4 の男性正規雇用者の労働時間の係数は、0.147 だが、これは労働時間が1 時間長くなる毎に9 分ほど睡眠時間が短くなることを意味する。ワーク・ライフ・バランス政策の推進は、仕事と家庭の両立だけでなく、国民の健康促進の上でも重要である。

1 はじめに
この論文の目的は、日本人の睡眠行動と労働の関係を探ることにある。
ヒトはその生涯の三分の一ほどを眠って過ごすと言われる。睡眠はヒトの生存や健康にとって重要な役割を果たす生理現象であるにも関わらず、睡眠の科学的研究は最近になって行われるようになったに過ぎない。(※睡眠に関する医学的研究を紹介した櫻井(2010)を参照されたい。)最近の睡眠に関する医学的研究によれば、睡眠は、身体を休息させるのみならず、脳の修復や整備を行う役割を果たすと考えられている。また、睡眠不足は心血管疾患や代謝異常のリスクを高めるとの指摘もあるし、夜更かしは体温上昇を遅くし体調に影響するとも指摘されている。
1964 年にアメリカのある一人の高校生によって行われた「不眠実験」は、ヒトが眠らずにいるとどのような症状が起きるかを我々に教えてくれる(Dement[1999])。この実験では11 日間(264 時間)もの間、17 歳の高校生が一睡もせずに起き続けたが、体調不良をはじめとして、記憶障害や妄想、言語障害、などの症状がみられた。これ以外の例からも、長時間にわたる断眠は、体調不良や精神障害を引き起こすことがわかっている。(※ なお、多少の断眠が続いたとしても、その後の睡眠で回復することもわかっている。休日のいわゆる「寝だめ」は、したがって、平日の睡眠不足による障害を回復するのに役立っている。【※※最近寝だめは意味がないと言われていますね。後挿入】)
では、睡眠時間は何によって規定されているのだろうか。
これまでの研究では、長時間労働が平均的に睡眠時間を短くしているとの指摘はあるものの、十分な研究蓄積があるわけではない。とくに、労働時間制度や労働時間の長さが個人の起床と就寝行動にどのような影響を与えているかまで踏み込んで研究を行ったものは、筆者の知る限り存在しない。
また、職種や職業などと睡眠時間との関連性を分析している研究もない。たとえば、経済のサービス化の進展で不定期に働く人々も増加しているが、そうした人々の睡眠時間はどうなっているのか。早朝や深夜に働かなければならない人々の睡眠行動はどうなっているのか。さらに、労働時間管理をされていないはずの管理的職業従事者、フレックスタイムなどが適用されるケースが多い専門的・技術的職業従事者と、労働時間管理されている事務・販売従事者との違いはどうなのか。雇用者と自営業者との違いもどうなっているのか。
起床や就寝時間は労働時間だけでなく、通勤時間や家事・育児時間とも関連する。通勤時間が長い都市部とそれ以外では、起床・就寝時間に違いがあるだろう。また、子供の有無や三世代同居の有無など、世帯構成は家事・育児時間に影響することを通じて、睡眠時間にも影響する可能性がある。果たして、どうなっているのだろうか。
睡眠と労働時間との関係について検討している研究はほとんどないが、以下の論文は、今回の研究の問題意識に近い研究を行ったものである。
上でも触れたように、長時間労働は睡眠の質の低下をもたらし、健康状態に影響する。我々の健康を支える医師の労働時間も長時間化しており、しばしば問題視されている。我が国でも研修医の労働環境が劣悪であり、長時間労働により過労死が起きているという報道はしばしばなされるが、米国でも状況は似ているようだ。
そこで、米国では研修医の労働条件を改善するため、2003 年2 月に研修医の労働時間を4 週間あたり320 時間(週80 時間)未満に制限している(詳細はThe Accreditation Council for Graduate Medical Education (ACGME)のホームページを参照)。しかしながら、例外として32 時間までは追加で研修を行っても良いことになっている。また、この規制が実施される直前まで研修医は週140 時間もの労働を行っていることから、実際にこの規制が研修医の労働条件の改善に結実するかどうかに関して、不明な点が多かった。
Lockly et.al[2004]は、この米国の研修医の労働時間規制が効果的かどうかを調査したHarvard Work Hours, Health and Safety Group の結果をまとめたものである。Locklyらのグループは、2002 年3 月に、卒業1 年目の内科臨床研修医51 名について、異なる二つの研修スケジュール・シフトを設計して、それぞれのグループの研修医たちの労働時間と睡眠時間の違いについて検討を行った。
その結果、通常行われている研修スケジュール・シフトでは労働時間が長くなりがちで、睡眠時間は短い。他方、もう一方の研修スケジュール・シフトで仕事を行った研修医たちの労働時間は短く、睡眠時間は長くなった。これは研修スケジュール・シフトによって、同一の労働を行ったとしても、労働時間や睡眠時間に差がつくことを示唆している。
Basner et.al[2007]は、American time use survey を用いて、起きている間の各種活動と睡眠時間との関係を検討している。彼らが行った回帰分析の結果、まず労働時間が睡眠時間に強く影響し、次いで通勤時間が睡眠時間に影響していることを見いだした。
Hamermesh et.al[2006]は、American time use survey を用いて、アメリカ各地の標準時間とTV 放映時間の違いが、人々の行動にどのような影響を与えているかを検討している。その結果、標準時間とTV 放映時間が労働と睡眠の時間に強く影響していることがわかった。
こうした過去の研究はあるものの、労働時間と睡眠時間の関係に関する研究はこれ以外にない。

2 素朴な観察
2-1 データ
この稿で用いたデータは、『平成18 年社会生活基本調査』(総務省統計局)の調査票B(個票)である。『社会生活基本調査』は平成13 年調査から、それまでのプリコード方式調査に加えて、アフターコード方式調査を実施するようになった。両者の違いは、回答者の回答方法である。プリコード方式では、調査票には回答の分類肢があらかじめ設けられており、回答者はそれらを選択して回答する。他方、アフターコード方式では、調査段階では回答者が自由に調査票に回答を記入し、集計段階で事前に定められた分類基準に従って分類コードを与えている。したがって、アフターコード方式による調査票B のほうが人々のより詳細な行動がわかる。
さて、『社会生活基本調査』では、調査期間(平成18 年10 月14 日から22 日)の間に連続する2 日間に関して生活時間を調査しており、1 日目の0 時から15 分刻みで翌日の23 時59 分まで調査される。このため、行動がその開始から終了まで2 回以上識別出来る仕事などの行動とは違って、就寝から起床まで連続する睡眠時間がわかるのは1 回だけである。
なお、行動の開始と終了はデータ上に明示されているわけではない。以下では、連続する時間帯でそれぞれの行動の分類コードに変化があった場合に、当該行動の開始あるいは終了とした。ただし、仕事の場合には休憩時間が挟まれる場合があるため、連続する二つの時間帯に仕事と仕事以外が入った場合でも、その45 分から1 時間15 分後に仕事を再開している場合には、仕事を継続中とした。また、家事や育児の場合には、他の活動と断続的あるいは交互に行われるケースが多く、この二つの活動の開始と終了を特定化することはしなかった。
以下の分析で用いるサンプルは、特に記述がない場合は学校を卒業した15 歳以上の男女で、仕事をしている者に限られる。在学中の者は、就業者であってもサンプルには含まれていない。また、既卒者であっても就業中でない者はサンプルに含まれない。

2-2 睡眠時間
表1 には、調査された二日間平均の睡眠時間の基本統計量が示されている。上述したように、就寝と起床時間とその間の睡眠時間がわかるのはそれぞれ1 回だけである。しかし、それを用いると日常の行動がわからない恐れがある。そこで、睡眠時間は二日間の平均値を計算した。
全サンプル(既卒の15 歳以上男女)の睡眠の平均時間は、約470 分(7 時間50 分)である。男性に限ると約482 分(8 時間2 分)、女性は455 分(7 時間35 分)であり、男性に比べて女性の睡眠時間は短い。ちなみに、睡眠は約90 分毎にノンレム睡眠とレム睡眠が交互に繰り返され、このサイクルを4 回から5 回程度繰り返すのが一般的だ。だとすれば、7 時間程度の睡眠が望ましいということになる。その意味でも、日本人の男女の睡眠時間は平均的である。
図1 には、平均睡眠時間の分布が男女別に示されている。この図からわかることは、平均よりも長い睡眠時間の者は相対的に少なく、対照的に短い睡眠時間の者が多いことだ。これは男女ともに言えることであるし、主に仕事をしている者についても言えることだ。ただし、女性に比べて男性のほうが分布の右側に裾野が長くなっている。これは、平均よりも長い睡眠をとっている男性が相当にいるということを意味している。

表1 にもどって、サンプルを幾つかの個人属性に分けて、睡眠の平均時間をみてみよう。
まず、主に就業している者にサンプルを限ると、若干だが全サンプルに比べて睡眠時間は長くなる。これは主に就業しているのは男性に多く、男性の平均時間以上に睡眠をとっているサンプルが全体の平均を押し上げていることと、女性の睡眠時間が長くなっていることが影響している。ただし、主に就業している男性の睡眠時間の平均値は、全サンプルよりも短い。
未婚者は、睡眠時間が長い。男女計でみると、それは約8 時間となる。ただし、男性に限ると全サンプルとの違いは3 分程度だ。他方、女性未婚者は全サンプルと比べて20 分程度長い。
既婚者は、睡眠時間は短くなる。特に既婚女性の睡眠時間は短くなり、447 分(7 時間27 分)となる。女性全体と比べて、8 分ほど短くなる。他方、既婚男性は全サンプルと比べて1 分だけ短くなるだけである。
死別・離別者の睡眠時間は、未婚者と既婚者のちょうど間にある。
配偶関係によって、特に女性で、睡眠時間に相違があるのは、女性の家事育児時間が男性に比べて長時間になるからであろう。この点は、以下でも検討してみたい。
表1 には、正規雇用者とパート・アルバイトのそれぞれについても、睡眠時間をみている。正規雇用者の場合には全サンプルと大きな違いはないが、男性正規雇用者に限れば4分ほど男性全体に比べて睡眠時間は短い。女性正規雇用者も約1 分だけ女性全体に比べて短くなっている。
他方、パート・アルバイトの場合には、全サンプルと比べて16 分ほど睡眠時間が短い。これは、パート・アルバイトでは女性比率が高まることと、女性パート・アルバイトの睡眠時間が女性全体と比べて5 分ほどさらに短くなっていることが影響している。女性パート・アルバイトが女性正規雇用者に比べて睡眠時間を短くしている理由については、以下でも検討してみたい。

2-3 睡眠時間の分布
表1 では睡眠時間の平均値だけでなく、標準偏差にも男女や配偶関係ごとの特徴がある。
まず、女性に比べて男性の睡眠時間の標準偏差は大きくなる。平均値の大きさの影響を除くために変動係数を計算しても、女性に比べて男性のそれは大きい。つまり、睡眠時間の分布に関しては、男性が女性よりも大きいことを意味する。これは図1 でも見たことだ。
また、配偶関係によっても分布の大きさが違う。既婚者に比べて未婚者の標準偏差が大きく、変動係数も大きい。これは男女ともに言えることである。
正規雇用者とパート・アルバイトを比較すると、前者の分布が大きい。
分布の大きさは、睡眠時間の個体間の散らばり具合をみたものである。それが、個人属性によって変化するのは、なぜなのか。

一つの要因は、個人属性によって時間制約が変化することが考えられる。未婚者に比べて既婚者は、家事労働や育児の時間が増加するかもしれない。また、正規雇用者はパート・アルバイトに比べて勤務時間や勤務日が長かったり、固定されていたりするだろう。こうした時間制約の変化は、当該グループをある一定時間に行動パターンを集約させてしまっているのかもしれない。

2-4 就寝・起床時間
表1 には、平均睡眠時間とともに、起床時間と就寝時間の平均が示されている。
起床時間と就寝時間は、0:00〜0:15 を1、0:15〜0:30 を2、というように15 分間毎の階級値で示されている。たとえば、男女計の就寝時間の平均は95.17 とあるが、これは調査1 日目の午後11 時30 分から45 分の間であることを意味する。また、男女計の起床時間は123.82 とあるが、これは調査2 日目の午前6 時45 分〜7 時の間であることを意味する。
男女で就寝と起床時間を比較すると、就寝の平均時間は女性の方が遅く、起床の平均時間は男女ともにほぼ同じである。女性は睡眠時間が男性よりも短かったが、それは就寝時間が遅く、起床時間が同じであるところに原因がある。
図2 には就寝時間の分布が、図3 には起床時間の分布が、それぞれ示されている。
概して、平均就寝時間よりも早く寝る人が多く、平均起床時間よりも遅く起きる人が多いことを、これらのグラフは示している。また、就寝時間と比べると起床時間の分布は大きくないこともわかる。特に、男性と比較して女性の起床時間の分布は小さい。
就寝時間と起床時間を、個人属性別にみると、睡眠時間と同様な特徴があることがわかる。
未婚者の就寝時間は相対的に遅く、未婚者の起床時間も遅い。他方、既婚者の就寝時間は早い。また、起床時間も早いが、それは特に女性既婚者の起床時間が相対的に早いことが影響している。
正規雇用者の場合、相対的に就寝時間は遅い。特に男性正規雇用者の就寝時間は男性全体に比べて遅くなっており、パート・アルバイトと比較すると平均して30 分ほど就寝時間は遅い。女性の場合も、正規雇用者はパート・アルバイトと比較して15 分ほど就寝時間は遅い。

2-5 労働時間、家事・育児時間、自己啓発の時間
表2 には、労働時間や家事・育児時間の基本統計量が掲げられている。ここで、これらの数値に関しては説明を補足しておく。先にも触れたように、社会生活基本調査は連続する二日間で調査されている。したがって、これらの時間は二日間の平均値を計算した。ただし、二日間のうち「休日」あるいは「休暇」の日もあるので、その場合には通常の労働日とは異なる活動時間が計算される可能性がある。

男女計の労働時間は4 時間47 分、家事時間は1 時間38 分、育児時間は13 分となっている。男女別には、男性の場合はそれぞれ順に5 時間23 分、37 分、9 分、女性は4 時間、2 時間56 分、19 分、となっている。
個人属性別に見ると、未婚者の労働時間は既婚者に比べて長い一方、家事や育児時間は短い。特に女性で顕著に見られる特徴だ。
正規雇用者とパート・アルバイトを比較すると、正規雇用者の労働時間は長く、家事や育児時間は相対的に短い。

3 労働時間と睡眠時間の関係
3-1 モデル
労働経済学の教科書を紐解くと、時間配分の問題では予算制約の下で労働時間とそれ以外の余暇時間をどのように配分するかが説明されている。この余暇時間は、1 日24 時間から労働時間を差し引いた時間に等しく、家事や育児、学習やテレビを見る、そして入浴や睡眠時間が余暇時間にすべて含まれる。
基本的な時間配分モデルにしたがえば、労働時間M は、所得制約の下で余暇L から得られる効用を最大化するように求められる。
U(I+w[24-L],L)
ただし、w は時間あたり賃金率、I は非労働所得である。
この基本モデルでは、余暇に含まれる様々な行動が同一の価値を持つことが暗に仮定されることになる。たとえば、家事に費やす時間価値と友人とショッピングに出かける時間価値が同じであるとか、育児に費やす時間価値と友人とゴルフに費やす時間価値が同じである、ということを仮定しているのである。果たして、そうなのか。
上述したように、睡眠はヒトの恒常性機能を維持する上で大事な役割を果たす。睡眠不足は、心血管疾患や代謝異常のリスクを高めたり、精神障害を引き起こしたりすることがわかっている。睡眠時間は我々の健康、強いては生死にまで関わる問題だ。日本人にとっての睡眠の価値は、他の行動とどのような位置づけにあるのだろうか。
Hamermesh[2007]は、労働以外の各行動はそれぞれ価値が異なるのではないかという問題意識から、American Time Use Survey を用いて分析を行っている。そこでは、次のようなモデルを考える。貯蓄を無視すれば、人々の効用は、
U(I,S,L) if M=0
U(I+w[24-S-L], μSS, μLL) if M > 0 (0≦μS, μL≦1)
となる。ただし、S は家事や育児、L は余暇時間である。また、μs、μl は固定時間費用と呼ばれる係数である。固定時間費用とは、Hamermesh[2007]では、労働のために犠牲にする他の行動時間のことをいう。たとえば、仕事に遅刻しないように早く起きて、早く食事をするとか、次の日に寝坊しないように前夜のテレビを見ずに早く寝るとか、そうした労働以外の行動を労働のために犠牲にすることが、これに該当する。そして、こうした固定時間費用は、もしそれがなければ当該行動から得られたはずの効用よりも、効用水準を低下させるはずだ。たとえば、家族とゆっくり夕食をとることの効用と、残業から帰って一人で夕食をとることの効用では、どちらが高いだろうか。人によっては後者の場合もあるかもしれないが、一般的には前者であろう。
さて、効用単位での労働の固定時間費用V は、
V = U(I,S,L) – U(I,μSS,μLL) > 0
人々は、効用を最大化するように、最適な家事や育児時間S*、最適な余暇時間L*、最適労働時間M*を選択することになる。もし最適労働時間が0、つまり働かないことが最も効用が高いのであれば、
U2/U3 = 1、
他方、最適労働時間が正であれば、
U2/U3 = μL/μS
が、それぞれ得られる。
固定時間費用の存在によって、労働から得られる便益が固定時間費用を上回らない限り、労働供給時間は正にはならないはずだから、
U(I+w[24-S*-L*],μSS*,μLL*) – U(I,μSS*, μLL*) > V
もし労働時間が正であれば、S とL の相対価格は1 からμL/μS≠1 に変化しているに違いない。
しかしながら、我々は固定時間費用を直接観察することはできない。また、この費用は個人によって異なる。たとえば、固定時間費用が変化したときに、非労働所得が高い人ほど、時間を家事や育児に割く代わりに、お金を使って商品やサービスを市場から調達するかもしれない。

3-2 分析結果
固定時間費用を推定する一つの方法は、労働供給行動を識別することが可能な操作変数を用いることである。しかしながら、特に男性については、適当な操作変数を見つけることは至難である。
ここでは、睡眠時間や家事時間、そして育児時間について労働時間を回帰することで、労働時間が各行動にどう影響しているかを見ていきたい。
表3 は、既卒者で仕事をしている者に限って推定した結果が示されている。この回帰式には、平均労働時間、雇用形態ダミー(自営業・家族従業員がレファレンス・グループ)、性別ダミー(男性がレファレンス・グループ)、年齢、配偶関係(未婚者がレファレンス・グループ)、学歴(中学・旧小卒がレファレンス・グループ)、末子の年齢(0:子供なし、1:末子0 歳、2:末子1〜2 歳、3:末子3〜5 歳、4:末子6〜8 歳、5:末子9〜12 歳、6:末子12〜14 歳、7:末子15〜17 歳、8:末子18 歳以上)、休日ダミー(労働日がレファレンス・グループ)が説明変数として含まれている。
平均労働時間の係数は、睡眠時間については−0.129、家事時間については−0.144、育児時間については−0.0301 で、それぞれ統計的に有意な結果が得られた。これは、平均労働時間が1 分長くなると、睡眠時間は0.13 分、家事時間は0.14 分、育児時間は0.03 分だけ短くなることを意味する。

他の変数についてみると、雇用形態別については、まず役員は家事時間と育児時間に関して統計的に有意なマイナスの係数が推定されている。この結果は、役員の家事や育児時間は自営業者・家族従業員と比較して短いことを意味する。正規雇用者については、全ての時間について統計的にマイナスの係数が推定されており、睡眠も家事も育児も短い。パート・アルバイトは、睡眠時間と育児時間については統計的に有意なマイナスの、家事時間については統計的に有意なプラスの係数がそれぞれ推定されている。つまり、パート・アルバイトの家事は相対的に長く、睡眠や育児時間は短い。派遣社員については家事と育児に関して統計的に有意なマイナスの係数が推定されており、その他の雇用者については睡眠と育児に関して統計的に有意なマイナスの係数が推定されている。
女性は、男性と比べて睡眠時間は37 分ほど平均して短く、家事時間は122.4 分ほど長く、育児時間は6.6 分ほど長いことがわかる。
年齢については、加齢とともに睡眠時間は短くなり、家事時間は長くなる。育児時間は加齢とともに短くなっている。
配偶関係別には、配偶者有りの人たちは、未婚者と比べて、睡眠時間が短く、家事時間と育児時間は長い。配偶者と離死別した人たちは、家事と育児は長く、睡眠時間は未婚者と同じ程度である。
学歴別には、高学歴者ほど睡眠時間は長く、育児時間もやや長い。しかし、家事時間に大きな違いはない。
休日は、睡眠時間が長くなっている。
以上の結果は、労働時間が長くなると他の行動時間が短くなるだけでなく、それぞれの行動に対する労働時間の影響が異なることを示している。つまり、睡眠時間よりも家事時間をより短くしており、睡眠時間の固定時間費用が相対的に高いことを示唆している。
ただし、推定結果では雇用形態や性によって各行動時間が異なっていることも示されており、労働時間が与える各行動時間への影響も雇用形態によって異なっている可能性も考えられる。
そこで、性別に正規雇用者とパート・アルバイトに限定して回帰式を推定した。結果は表4 の通りである。
まず、正規雇用者についてみる。男性に関しては、睡眠時間の係数が最も大きく、睡眠時間の固定時間費用が低いことを示唆している。他方、女性に関しては、睡眠時間と家事時間の係数が同じであり、同等の固定時間費用であることがわかる。男女を比較すると、睡眠時間の係数は男性のほうが大きな値であり、家事時間については女性のほうが大きな値である。

パート・アルバイトに関しては、男性では睡眠時間の係数が大きく、やはり固定時間費用が低いことを示唆する。ただし、家事時間の係数は正規雇用者よりも大きく、男性パート・アルバイトの家事時間の固定費用は相対的に低いことを示唆する。他方、女性パート・アルバイトについては、家事時間の係数が最も大きく、家事の固定時間費用は低い。一方、睡眠時間の係数は小さな値であり、女性パート・アルバイトにとっての睡眠時間は固定時間費用が高い行動ということになる。
では、女性の家事や育児時間の固定時間費用は、その重要性によって変化するだろうか。たとえば、末子の年齢が低ければ家事や育児に要する時間は増えるだろうから、相対価格は高くなるだろう。
表5 は、女性にサンプルを限定し、正規雇用者とパート・アルバイト別に、末子の年齢が固定時間費用にどう影響するかを検討した結果である。この表では、末子の年齢と平均労働時間の交差項を説明変数に加えており、この交差項の推定された係数が固定時間費用の効果を見ていることになる。

結果によれば、家事時間の固定時間費用は末子の年齢によって変わることはないが、育児の固定時間費用には影響している。末子年齢が0 歳の場合、パート・タイマーの育児時間の係数はプラスとなっており、労働時間よりも育児時間の相対価格が高いことを示唆している。(※末子0 歳がいる正規雇用者は数が少なく(育児休業取得者が多い可能性が高い)、係数は推計できなかった。)
ただし、末子が1〜2 歳と3〜5 歳の係数は統計的に有意なマイナスが正規雇用者とパート・アルバイトで計測されており、これらのグループで育児の固定時間費用が低いことを示唆している。(※5 歳以下の子供を持つグループでは、正規雇用者やパート・アルバイトが長く働くために、保育サービスを購入しているのではないだろうか。)

4 むすびにかえて
この稿の結論は、ふたつある。
一つ目は、労働時間の長さは睡眠時間に影響するということである。男性の平均的な睡眠時間は女性に比べて長いが、その分布は広く、労働時間によって睡眠時間の長さが変化していることになる。女性の場合には雇用形態によってその度合いは異なるが、全般的に労働時間が長いほど睡眠時間は短くなる。
二つ目の結論は、男性と女性正規雇用者の睡眠に関する固定時間費用は小さく、労働時間の変動を睡眠時間の長さで調整していることだ。1 日24 時間だから、一つの行動が長くなれば他の行動を短くするのは当然だ。しかし、男性と女性の正規雇用者に関しては、労働時間の長さを、他の行動ではなくて、睡眠を短くすることで調整している傾向にある。
これに対して女性パート・アルバイトについては、家事の固定時間費用が低く、労働時間の変動を家事時間で吸収する傾向にある。そして、睡眠時間の固定時間費用は高く、睡眠時間で調整は正規雇用者に比べて小さい。
以上の結論は、我が国において労働時間管理が、人々の健康管理の上でも重要な役割を果たすことを示唆する。特に正規雇用者の場合、他の雇用形態と比べて、労働時間の長さを睡眠時間で調整しようとする傾向にあり、長時間労働は睡眠不足をもたらす。たとえば、表4 の男性正規雇用者の労働時間の係数は、0.147 だが、これは労働時間が1 時間長くなる毎に9 分ほど睡眠時間が短くなることを意味する。ワーク・ライフ・バランス政策の推進は、仕事と家庭の両立だけでなく、国民の健康促進の上でも重要である。

参考文献
Basner, Mathias, Kenneth M. Fomberstein, Farid M. Razavi, Siobhan Banks, Jeffrey H.William, Roger R. Rosa, and David F. Dinges. [2007] “American Time Use Survey:Sleep Time and Its Relationship to Waking Activities,” Sleep 30(9): pp.1085–95.
Dement, William C. [1999] “The Promise of Sleep: A Pioneer in Sleep MedicineExplores the Vital Connection Between Health, Happiness, and a Good Night’sSleep,” Delacorte Press.
Hamermesh, Daniel S., Caitlin Knowles Myers, Mark L. Pocock. [2006]. “Time Zones asCues for Coordination: Latitude, Longitude, and Letterman,” NBER WorkingPapers 12350, National Bureau of Economic Research, Inc.
Hamermesh, Daniel S., Stephen Donald. [2007] “The Time and Timing Costs of MarketWork”, NBER Working Papers No 13127, National Bureau of Economic Research,Inc.
Lockley, Steven W., John W. Cronin, Erin E. Evans, Brian E. Cade, Clark J. Lee,Christopher P. Landrigan, Jeffrey M. Rothschild, Joel T. Katz, Craig M. Lilly, PeterH. Stone, Daniel Aeschbach, Charles A. Czeisler. [2004] “Effect of ReducingInterns’ Weekly Work Hours on Sleep and Attentional Failures,” The New EnglandJourgnal of Medicine 351(18): pp.1829-37

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総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果

安眠と香りを調べるうちに見つけた論文です。ハーブなので香りというより効能かもしれません。
昔から寝る前にハーブティーを飲むとよく眠れるなどと言われてはいますが、その実証ということです。カモミールは母の薬草と言われるように、女性に効果があると言われていたようですが、実験でも男女で大きく効果の差があるようです。男性よりも女性のほうがハーブティーを好むと思っていたのですが、実際に効果に違いがあるわけですから当然と言えば当然だったのですね。論文をご紹介いたします。

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/14686/1/2005-97-95.pdf
北海道大学大学院教育学研究科
紀要第97号2005年12月
Title 総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果
Author(s) 角田(矢野), 悦子; 森谷, 絜
Citation 北海道大学大学院教育学研究科紀要, 97: 95-103
Issue Date 2005-12-20
DOI 10.14943/b.edu.97.95
Doc URL http://hdl.handle.net/2115/14686
Right
Type bulletin
Additional
Information
File
Information 2005-97-95.pdf

総説植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果
角田(矢野)悦子* 森谷**
*北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座修士課程(健康科学・健康教育研究グループ)
**北海道大学大学院教育学研究科健康スポーツ科学講座教授(健康科学・健康教育研究グループ)

Physiological and Psychological Effects in Humans
of Chamomile (a kind of plants)Drinking and Eating
Etsuko YANO-KAKUTA Kiyoshi MORIYA
【要旨】植物カモミール(Matricaria chamomilla)は,ヨーロッパを中心に古くから鎮静効果をもつ植物として利用されてきた。カモミールの摂食によるリラックス効果及び睡眠影響について報告された論文を総説としてまとめた。カモミール茶の摂食が末梢皮膚温を上昇させる,心拍数を低下させる,自律神経系を副交感神経優位にするという報告,感情測定尺度(MCL-S.1)によってリラックス感得点の上昇を認めたことが報告されている。
また,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合には末梢皮膚温の上昇や心拍数の低下が起こり,副交感神経優位の傾向が示されたが,低温で摂食した場合にはその効果が認められなかったと報告されている。OSA 睡眠調査票を用いた睡眠実験から,カモミールエキス添加ゼリー摂食日の夜間睡眠では,ねむ気の因子,寝つきの因子などが無添加ゼリーを摂食した日に比べて改善したことが報告されている。
【キーワード】カモミール,摂食,自覚的感覚,睡眠,中高年女性

1.はじめに
近年,日本の社会では経済活動の停滞や急速な高齢化の進行などが顕著となり,それに伴い人々の心身に対するストレスが増加してきている。厚生労働省の保健福祉動向調査1)では,心身の健康とストレス,睡眠の結果が以下のように報告されている。ストレスの程度別構成割合では,最近1か月間の日常生活においてストレスがあったとする者の割合が54%を超えており,ストレスが「大いにある」とする者の割合は,男性が10.8%,女性12.8%であり,一方ストレスが「多少ある」とする者の割合は男性39.7%,女性44.9%である。なんらかのストレスありの者のストレス要因をみると,「仕事上のこと」30.5%が最も多く,「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」「職場や学校での人づきあい」が続いている。性別にみると男性は「仕事上のこと」が41.3%ときわだって多く,女性は「自分の健康・病気・介護」「収入・家計」が25%を超え,年齢階級別にみると,男性65歳以上,女性55歳以上では「自分の健康・病気・介護」が最も多いと報告されている。また,睡眠について最近1か月で問題と感じていることは「朝起きても熟睡感がない」が24.2%で最も多く,加齢とともに「朝早く目が覚めてしまう」「夜中に何度も目が覚める」が増加している。
加齢とともに睡眠障害で悩む人の割合が増加し,女性で男性よりも多いとの報告もある2)。特に中高年の女性(55歳以上)がストレスの内容として「自分の健康・病気・介護」をあげている一方で,睡眠不足の理由として「悩みやストレスなどから」をあげる者が66%(45歳~54歳および55歳~64歳)程度と報告されている1)。一方,更年期の女性の睡眠の質に関する調査3)では,閉経後の人達では何らかの睡眠困難を感じることが多く,入眠しにくく睡眠効率が低下し,日中の眠気や意欲の低下を感じ,総合的に睡眠の質の悪化を示唆すると報告されている。
このようなストレスに対する対処法の一つとして,生活の質(QOL)の向上と健康増進などを目的として植物を用いる補充療法の社会的認知と普及が進みつつある。例えば薬用人参(Panax Ginseng),イチョウ葉(Ginkgo Biloba)などの摂取による身体的ストレスの改善効果やハーブのセントジョンズワート(Hypericum Perforatum)によるうつ症状の緩和などが良く知られている4)。また,植物の香り成分によるアロマセラピーやフィトンチッドと呼ばれる森の香りを利用した森林浴による鎮静・リラックス効果などを,生活の中により積極的に取り入れることが注目されている。
筆者らはこのような観点に立ち,植物カモミール(Matricaria chamomilla)を食品のお茶やゼリーとして摂食することによる生理・心理的効果,夜間睡眠への影響について研究を続けてきた5)6)。
本稿では植物カモミールの摂食が心身に及ぼす効果について,歴史的背景や食文化とその生理心理的効果および夜間睡眠に対する影響についての研究をまとめることを意図する。

2.カモミール摂食の歴史と文化
上述のように人々はその社会活動や食生活の中で増加する多種類の人為的ストレスにさらされているが,その解決には必ずしも現在の西洋医学だけで充分とはいえない。近年になり西洋医学を補う医療として補充医療(Alternative Therapies)が再評価されつつある。例えば東洋医学における漢方やインドのアーユルヴェーダなどの伝統的医学が知られている4)。これらの医療体系の中では,ハーブ(香草)を含むさまざまな植物を薬草として治療手段に用いている。
また,漢方の分野では医食(薬食)同源と呼ばれる概念があり,人間の健康維持や医療における食物摂取の役割や機能を認めている。またアーユルヴェーダでは1000種類もの薬用植物が記載されており,古代のエジプトでは薬草療法にハーブが利用され,例えばフェンネル,クミン,アロエなどのハーブが食品・薬・化粧品・香水・香料や殺菌剤などに広く利用されていた7)。また,古代ギリシャ・ローマ時代においても,古くは植物誌(Theophrastus,BC 3世紀頃)に数百種類のハーブが記載されその利用が行われていた。その後16世紀頃から草本書(ハーバル,Herbal)が多数著される時代になり,数千種類ものハーブが記載され栽培法や料理法が詳しく知られるようになった。17世紀には草本家のカルペパー(Nicholas Culpeper,1616-1654)により,占星術とハーブの医学的効用などを関連づけた本草百科(The Complete Herbal)が著された。一方,アメリカ新大陸では健康を維持するために,家庭菜園にラベンダー,ローズマリー,カモミールなどの多種類のハーブが栽培された。このようにハーブは薬草療法の素材植物として,例えばうがい薬や煎じ薬,入浴剤そして誘眠効果をもたらす自然の睡眠薬などとして広く用いられてきている8)。このようなハーブ植物の一つにカモミール(カミルレ,カミツレ,Chamomile)があり,補充医療の一つであるアロマセラピー(Aromatherapy,芳香療法)や日常の食生活においてハーブティーなどに広く用いられている9)。このカモミールはサクソン人の時代からイギリスでよく用いられている薬用植物の一つで,ラベンダーやペパーミントなどとならぶイギリス産精油植物として知られている。ギリシャ人はこの花の香りがリンゴの香りに例えられることから「カマイ・メロン」(地面のリンゴ)と呼びこれがChamomileの語源とされている10)。また,スペインでは現在でも薬草としてカモミールがシェリー酒マンサニリャの香り付けに使用されている。
カモミールはヨーロッパ,北アフリカおよびアジアの地域に生育し四つ程度の属に分類される11)。薬用・香料用として用いられるのは,主にローマンカモミール(Chamomile Roman,学名Anthemis nobilis L.)とジャーマンカモミール(Chamomile blue,学名Matricariachamomilla L.)の二種類である。両者ともに開花した花部から精油を水蒸気蒸留により抽出・生産されている12)。
ジャーマンカモミールは世界的に各国の薬局方に公定薬品として登録されていることが多く,抗炎症,鎮痙,消毒用に用いられている。また化粧品業界ではスキンケア製品に利用されている。主な生産国はアルゼンチン,エジプト,ハンガリーそしてドイツなどである。カモミールの精油の主要な化学成分としてテルペノイド類(モノテルペン,セスキテルペンなど)が含まれ,ジャーマンカモミールの特徴成分としてはアズレン(azuren)誘導体,ビサボロール(bisabolol)誘導体があり,ローマンカモミールはアンゲリカ酸エステル,チグリン酸エステルが特徴的成分であると報告されている12)。精油に含まれるカマズレンは品種や産地により含有量には差があるが,抗ヒスタミン作用とロイコトリエン生合成阻害などのメカニズムにより抗炎症作用があるといわれている。また,嘔吐抑制や精神的ストレスによる鼓腸性消化不良,喫煙・水泳などが原因の目の刺激,擦過傷や虫さされなどに用いられている13)。
ローマンカモミールはジャーマンカモミールと異なり多年生植物であり,精油が豊富に含まれ,消化器疾患や毛・頭皮の治療や鎮静・鎮痙剤そして発汗剤などに使用される。その精油の主な用途は化粧品などであり,主産地はベルギー,オランダ,イギリス,フランス,ローマなどである。一般的にカモミールは強肝,強壮,駆虫,解熱,健胃,抗うつ,抗アレルギー,抗リウマチ,抗神経障害,消化促進,鎮痛,通経,瘢痕形成,皮膚軟化,癒傷,利尿作用などがあるとされている14)。
カモミールの食品への応用では,菓子,デザート類およびゼリーなどの香料として用いられているほか,お茶として世界中で慣習的に飲用されている。また苦味酒,ベルモット,ハーブビールなどにも使用されている。近年の日本では高齢化が進行し,高齢者は外部から水分や食物を口に取り込み咽頭と食道を経て胃へ送り込む運動(嚥下)に異常の生じる傾向がある。この嚥下(swallowing,degulutition)障害の結果,栄養摂取不良,誤嚥そして食べる楽しみの喪失などの問題が生ずる15)。この問題を解決するための食品として多種類のゲル化食品(ゼリー)が開発されているが,今後は病院食だけではなくハーブなどを用いた日常の嗜好にかなう嚥下障害の少ないゼリーが期待されていると考える。

3.カモミールの摂食による生理・心理的影響
カモミールは日常生活のなかで食品としても用いられており,健康に良い効果があるお茶としてヨーロッパやアメリカを始め世界的に飲まれている。童話のピーターラビット(PETERRABBIT)では,母さんウサギが子供のピーターに就寝前にカモミール茶を飲ませる場面が記載されている。童話の世界だけではなくカモミール茶の利用は古くから行われているが,就寝前に飲むことから鎮静や催眠効果を期待していると考えられる。しかし,その作用や効果についての学術的報告は極めて少ない。食生活に取り入れられているハーブ茶の効果については,森谷らがカモミール(Matricaria chamomilla)について,カモミール茶(55℃,150ml)摂取による青年男性の自律神経機能と感情指標の変化について白湯と比較した検討を行い,心拍数や末梢皮膚温の変化および感情得点の変化を計測した報告を行った5)。この報告ではカモミール茶と白湯を飲用後の心拍数変化量について検討した。飲む直前の心拍数の平均値には2群間に有意差は無く,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の心拍数の平均低下量が有意に大きいことが示された。また,心拍R-R 間隔変動周波数解析の結果から,交感神経の指標として参考にされるLF/HF 比について,同様に飲用後30分間の2群の平均低下量はカモミール茶を飲用したほうが有意に大きいことが明らかにされた。一方,副交感神経の指標と考えられているHF パワー成分にはカモミール茶と白湯を飲む直前の,2群間には有意差はなく,それぞれを飲んだ後の30分間の変化量についても有意差は認められなかったと報告している。末梢皮膚温変動については,右足の第5趾趾根部で計測が行われ,飲む直前の末梢皮膚温平均値については2群間に有意差はなく,飲用後の時間変動に有意差が認められ,白湯に比べカモミール茶を飲用後30分間の平均上昇値が有意に大きいことが示された。心理指標については,橋本と徳永により開発されたMood Check List -Short Form 1(MCL-S.1)16)を用いて感情得点の変化について検討された。飲む直前のリラックス感得点には有意差はないが,カモミール茶を飲用後15分後と30分後には白湯およびカモミール茶のそれぞれの場合に有意なリラックス感得点の上昇が認められた。飲用後の2群間に有意差は認められなかった。また,快感情得点についても同様の検討が行われたが,有意差はなかったと報告している。


森谷と小田は,感情得点と自律神経機能の関連について,心拍数,LF/HF,末梢皮膚温とリラックス感得点などとの相関について検討を行った17)。その結果,図1に示すように心拍数とリラックス感得点の変化量に負の相関(ピアソンの相関係数(r)=-0.496,P=0.019,n=22)が認められた。またピアソンの相関係数による評価から,リラックス感得点とHF の変化量の間に有意な正の相関があることが認められた。さらに末梢皮膚温の実測値とリラックス感得点の間にも有意な正の相関が明らかにされた((r)=0.465,P=0.006,n=22)。このようにカモミール茶飲用後には,自律神経機能の心拍数や末梢皮膚温の測定値とMCL-S.1によって評価したリラックス感得点の間にかなり良い対応関係があることが示されている。この報告ではカモミール茶の飲用は白湯の飲用よりも副交感神経系優位の効果が現れることを明らかにしているが,感情指標についてはその効果が必ずしも明確でない場合があり,嗜好の影響の可能性について示唆している。
近年,井上らは18)ジャスミン茶の香りの嗜好性と自律神経系の活動の関係について,POMSで評価した感情得点を用いた報告を行っている。香りが高濃度と低濃度の場合について,嗜好性の違いによる感情得点とその自律神経活動に対するへの影響について検討し,ジャスミン茶の香気成分が低濃度の場合は好む群と好まない群の両方とも副交感神経活動が上昇し,高濃度の香りの場合は好みの群で副交感神経活動を亢進させ心理状態を鎮静化させ,好まない群においては交感神経活動を上昇させると報告している。
また,角田らはカモミール(Matricaria chamomilla)エキス入りの温めたカモミールゼリーを摂食させたときの自律神経機能と感情指標に対する影響について検討を行った6)。この報告では無農薬栽培のジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla)を原料として抽出したエキスに,果糖・砂糖,ゲル化剤等を加え,ブリックス糖度を14としたゼリーを調製試作(北海道夕張市,S社製造)し,実験に用いている。カモミールエキス以外の成分をほぼ同一とし,同エキスを添加および無添加(対照)のゼリー(75ml)の2種類を用意し,飲食前に60℃あるいは10℃の2種類の温度に調整したものを被験者(健常な30代及び40代の男女40名)に摂食させ,末梢皮膚温(左足第5趾趾根部)および脳波・感性スペクトルの計測および心理指標値としてMCL-S.1による感情得点の測定を行った。その結果,低温で摂食させた場合には末梢皮膚温の上昇は認められないが,温めた状態で摂食させた場合には男性(n=7)および女性(n=8)の両グループともに摂食後22分間に有意(二元配置分散分析,P<0.05)に末梢皮膚温が上昇することを明らかにした。また同エキス無添加のゼリーを摂食した場合には,低温および温めた状態の両者ともに有意な末梢皮膚温上昇は認められなかったと報告している。
MCL-S.1による感情得点の結果から,温めたカモミールゼリーを摂食後の男女のグループについてはリラックス感の増加する傾向が認められたと報告している。また同実験において自律神経活動を評価した報告19)によれば,温めたゼリーを摂食した男女のグループともに心拍数の低下と副交感神経優位の傾向が示された。
これらの結果から,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合,お茶より少ないカモミール量で,揮発性香り成分がより効果的に発散し,生理的効果を与える可能性が示唆されたと考えられる。

4.カモミール摂食と睡眠
近年になり,夜間睡眠における睡眠不調・睡眠障害に悩む人たちが多く,中でも中年期以降に睡眠不調・障害の多発することが知られるようになってきた。健康づくりに関する意識調査20)において,「眠りを助けるための睡眠剤や安定剤などの薬やアルコール飲料を使いますか」の質問に対して「時々ある」「しばしばある」「常にある」と答えた人の割合が14.1%あり,健康日本21「3.休養・こころの健康づくり」では2010年までの到達目標を13%としている。
例えばハーブ植物の一種のバレリアン(吉草根)については,鎮静作用等のほかに,OSA 睡眠調査票を用いた実験調査による睡眠の改善作用が最近報告されている21)。また,樹木由来の香気成分の一種であるセドロールについて,その睡眠に与える影響の検討が報告された22)。この報告では,何らかの睡眠不満を自覚している20代女性の性周期低温期において,自宅で3日間の生活調整期間後6日間の宿泊試験を1クールとして実験を実施している。セドロール使用量は被験者が全く感じないかあるいはかすかに感じる程度の濃度に調節され,就寝前・就寝時合わせて4時間提示している。この実験では睡眠段階(覚醒,睡眠深度,レム・ノンレム睡眠など)の判定は睡眠脳波により行われ,眼振電位,オトガイ筋筋電位,心拍,呼吸および皮膚電位反応が記録され,プラセボ夜およびセドロール夜の試行はダブルブラインドテストで実施されている。この実験結果から,総睡眠時間はプラセボ夜では平均394.7分に対し,セドロール夜では平均408.0分であり,有意に延長したことが示された。入眠潜時は前者が平均16.8分に対し,セドロール夜では9.3分と有意に短縮し,睡眠効率については前者が91.9%に対し,セドロール夜では95.2%まで上昇する傾向が認められている。中途覚醒時間には,有意差はなかったと報告している。この報告では,セドロールが交感神経系を鎮め,睡眠前に副交感神経活動優位に切り替えることをスムーズに行うことで心身がリラックスし,入眠が円滑に起こり良好な睡眠が維持されたと推察している。一方,徐波睡眠出現率および段階REM 出現率に関する解析では全く差がなく,セドロールは本来の睡眠構造自体には変化を与えず,睡眠を良好な状態にすることを示唆している。
カモミールについては伝統的に睡眠改善に良いといわれてきているが,明確な実証データや学術報告は多くない。一つの報告としては23),心臓病患者を被験者として心室カテーテル実施の際にカモミール茶(約170ml,白湯摂取などの対照実験なし)を飲用させ,血行力学的反応について評価した実験である。この実験結果ではカモミール茶飲用後に全ての患者(10名)が眠りについたと報告され,催眠効果があるとされている。カモミールの催眠効果については殆どがこの報告を基に引用されているが,その後詳細な研究報告は未だ行われていない。
既に報告されているように,カモミール茶やカモミールエキスを含んだゼリーの摂食がリラックス感得点の上昇や副交感神経活動優位の傾向をもたらすことから,睡眠への影響が期待されると考えられる。そこで,筆者らはカモミールゼリーの摂食が被験者の副交感神経系および自覚的睡眠感に及ぼす影響について検討を行った24)。この実験では前述の摂食実験と同様の実験条件下で,カモミールエキス添加ゼリーと同エキス無添加ゼリーを温めて摂食させ,OSA睡眠調査票起床時調査によって検討がされた。睡眠感の評価には,睡眠現象を統合的に把握するために小栗ら25)が開発したOSA 睡眠調査票を用いた。この調査票は,睡眠前調査により不適切な被験者の除外と生活態度や就寝前の身体的・精神的状況を把握するための21項目の質問と,起床時の調査により睡眠感を構成する因子のもとになる31項目の質問および身体的愁訴とその有無に関する質問に答えてもらうよう構成されている。この報告ではOSA 睡眠調査票の結果をもとに,小栗らの抽出した①ねむ気の因子,②睡眠維持の因子,③気がかりの因子,④統合的睡眠の因子そして⑤寝つきの因子の5つの下位因子に分けて検討が行われた。同実験は第1期と第2期に分けて実施され,第1期の被験者は特に睡眠障害を持たない健常な30代および40代の男性7名を被験者として実施され〔年齢:37.7±5.4(mean±SD)〕,第2期は同様に健常な閉経後の50代および60代の女性7名を被験者として〔年齢:60.3±2.7(mean±SD)〕実施されている。第1期の実験結果では,無添加(対照)と比較し,カモミール添加ゼリーの摂食夜は3つの因子,①ねむ気の因子(t=-2.4679,p=0.0486),②睡眠維持の因子(t=-2.5809,p=0.0417),⑤寝つきの因子(t=-2.5262,p=0.0449)について有意に高い値を示した。(図2参照)

この報告の第2期の実験では,第1期と同様に温めたゼリーを摂食させ,睡眠に関する5つの下位因子について比較分析を行った。その結果,①ねむ気,②睡眠維持,③気がかり,④統合的睡眠そして⑤寝つきの5因子について対照と比較し,カモミール添加ゼリー摂食夜には②睡眠維持の因子について有意差(t 検定,p=0.0313)が認められた。(図3参照)

筆者らは,温めたカモミールゼリーを摂食した場合に,皮膚温の上昇と末梢血流の増大,副交感神経優位状態やリラックス感が増大することを既に報告している。一般に情動が睡眠状態に関係しリラックス感のようなポジティブな感情が睡眠を良好にすることが知られており,これらの結果から温めたカモミールゼリー摂食の心理生理的効果が帰宅後の就寝前まで持続し,ねむ気,寝つきを良くする傾向をもたらし,睡眠維持に効果のあった可能性が示唆されている。前述のセドロールの場合においても,就寝前の精神的・生理的状態の重要性が指摘され,眠りにつく前の自律神経活動が交感神経支配から副交感神経支配優位に切り替わることが入眠を円滑にすると指摘されている。
また最近,セドロールが野生のカモミール(Chamomilla recutita,Matricaria chamomilla)とその組織培養株に含まれる新しいテルペノイドとして報告され,カモミールの自覚的睡眠感や自律神経系へ影響する作用物質としての可能性が注目される26)。

5.おわりに
植物カモミールは人類の歴史や食文化,医薬学などの進歩・発展とともに,その補充・伝統医療や身近な生活の場面などに用いられてきている。今後の日本は高齢化社会が進み,人々の日常生活のなかでの健康維持やストレスが大きな課題になると考えられる。それにともない加齢による睡眠障害に悩む人の割合が増加し,ストレスに悩む中高年の男性や女性にとって大きな心身上の課題となり,この解決に植物カモミールの摂食が貢献できる可能性が期待される。
既にカモミール茶や温めて食べるカモミールゼリーが自律神経活動に影響を与え副交感神経優位をもたらし,この現象と相関して感情評価尺度によるリラックス感得点が上昇することが明らかにされた。一方,植物カモミールに含まれる香気成分やその他の含有成分が心身に及ぼす作用機構や作用物質などについて,新しい知見も見出されつつあるが未解明の部分がまだ多く,特に睡眠に対する影響などについての研究が必要と考えられる。
今後はこれらの研究成果が,例えば睡眠不満やストレスに悩む中高年世代や介護高齢者の睡眠改善へ応用され,人々の健康維持や向上に貢献することが期待される。
[引用文献]
1) 厚生労働省:平成12年度保健福祉動向調査,2000,http://www.mhlw.go.jp/
2) 中沢洋一,小鳥居湛:不眠,睡眠の科学(鳥居鎮夫編),朝倉書店,224-227,1989.
3) 香坂雅子:固有の診療科を離れた立場から―女性に特有な睡眠障害,診断と治療,92⑺,1207-1212,2004.4) Christine Maguth Nezu, Arthur M.Nezu, Kim P.Baron, and Elizabeth Roessler:Alternative Therapies,
Encyclopedia of stress, 1, 150-158, 2000.
5) 森谷,小田史郎,中村裕美,矢野悦子,角田英男:カモミール茶摂取による自律神経機能と感情指標の変化―青年男性における検討―バイオフィードバック研究,28,61-70,2001.
6) 角田英男,矢野悦子,前田智雄,武藤俊昭,森谷:カモミールのリラックス効果とその応用―機能性を有する温めるゼリー食品―AROMA RESEARCH,Vol.3,No.2,31-36,2002.
7) 陽川昌範:ハーブの科学,養賢堂,1998.
8) 鳥居鎮夫:香りの謎,フレグランスジャーナル社,1994.
9) Shirey Price(高山林太郎訳):実践アロマテラピー,1983.
10) Robert Tisserand(高山林太郎訳):アロマテラピー芳香療法の理論と実際,フレグランスジャーナル社,1985.
11) 阿部誠:カモミールとその近縁種,Aromatopia 8,44-47,1994.
12) 和智進一:カモミールの精油と分析,Aromatopia 8,52-55,1994.
13) K.P.ズボボダ,J.B.ハンプソン:エッセンシャルオイルとその成分の生理活性―ローマンカモミール―(Chamaemelum nobile L.),AROMA RESEARCH Vol.1,No.3,80-85,2000.
14) ワンダー・セラー(高山林太郎訳):アロマテラピーのための84の精油,フレグランスジャーナル社,1996.
15) 聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル,医歯薬出版,2003.
16) 橋本公雄,徳永幹雄:運動中の感情状態を測定する尺度(短縮版)作成の試み―MCL-S1尺度の信頼性と妥当性―,健康科学,18,109-114,1996.
17) 森谷,小田史郎:香り効果判定における自律神経機能と感情指標の対応,AROMA RESEARCH,Vol.3,No.4,72-77,2002.
18) Naohiko Inoue, Kyoko Kuroda, Akio Sugimoto, Takami Kakuda, and Tohru Fushiki:AutonomicNervous Responses According to Preference for the Odor of Jasmine Tea,Biosci.Biotechnol.Biochem.,67(6), 1206-1214, 2003.
19) 橋本恵子:カモミールゼリーの摂食がもたらす生理心理的効果,北海道大学大学院教育学研究科修士論文,2002.
20) 財団法人健康・体力づくり事業財団:平成8年度健康づくりに関する意識調査,1997.
21) 株式会社ファンケル:プレスリリース,重工記者クラブ,平成14年11月22日配布資料,1-5,2002.
22) 山本由華吏,白川修一郎,永嶋義直,大須弘之,東條聡,鈴木めぐみ,矢田幸博,鈴木敏幸:香気成分セドロールが睡眠に及ぼす影響,日本生理人類学会誌,Vol.8,No.2,25-29,2003.
23) Lawrence Gould, C.V.Ramana Reddy, Robert F.Gomprecht:The Journal of Pharmacology, Nov.-Dec., 475-479, 1973.
24) 矢野悦子,橋本恵子,生野寿恵,角田英男,森谷:温めたカモミールゼリーの摂食が自覚的睡眠感に与える影響,日本生理人類学会誌,Vol.9,特別号⑴,132-133,2004.
25) 小栗貢,白川修一郎,阿住一雄:OSA 睡眠調査票の開発,精神医学27⑺,791-799,1985.
26) Eva Szoke, Emoke Maday, Erno Tyihak, Inna N Kuzovkina, Eva Lemberkovics:New Terpinoidesin cultivated and wild chamomile (in vivo and in vitro), Jouranal Of Chromatography. B, AnalyticalTechnologies In The Biomedical And Life Sciences, Vol. 800, Issue 1-2, Feb. 5, 231-238, 2004.

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香りと睡眠

香りと安眠についての論文がありましたので紹介いたします。これまで例えばラベンダーの香りが安眠に良いなどと言われることがありましたが、具体的に体がどういう反応を示しているのかなどは、実験の方法などによりとらえられ方が難しい部分もありました。

被検者へのストレスを極力減らす方法で、微妙な心理的反応を見た実験の論文です。

http://www.kinki-shasej.org/upload/pdf/kaori.pdf

香りと睡眠

The effect of odor inhalation during sleep

滋賀大学 教育学部 健康科学研究室

Faculty of Education, Shiga University

大平 雅子 Masako OHIRA

キーワード:睡眠(sleep)、香り(odor)、バイオマーカー(biomarker)、唾液(saliva)、

オルファクトメーター(olfactometer)

1.新たな睡眠評価指標の提案

睡眠障害による経済損失は年間 3 兆 4,700 億にものぼるという試算があるように 1),現在,睡眠に纏わる諸問題は個々人のみならず,社会・経済においても重大な関心事となっている.本来睡眠は日々の疲れを癒すものであり,脳や身体にとって必要不可欠な活動である.

しかしながら一方で,現代社会においては睡眠時間の減少や夜型生活による睡眠の質の低下が進行しており 2),睡眠が健康状態に直接的な影響を及ぼす例も相次いで報告されている 3, 4).こうした背景から,睡眠環境における「精神的な」影響・負担を正確に評価することの重要性が増してきている.

一方,人間の精神的なストレスを体内に分泌されるホルモン等の生化学物質により,客観的に(物質的に)評価する試みがなされている 5).現在最もよく用いられている精神的ストレスマーカーの指標として,コルチゾールがある.コルチゾールはアカデミックな口頭試問など,急性でかつ強い社会心理的なストレッサーに対して唾液中や血中の濃度が増加することが知られており 6),ストレスの物質的指標(ストレス・バイオマーカー)として期待されている.特に,起床後 30‐60 分に濃度が上昇する起床時コルチゾール反応(cortisol awakening response: CAR)7, 8)には慢性的なストレスとの関連も数多く報告されている 9. 10).

ストレス・バイオマーカーはコルチゾールの他にも 10種類以上研究されており,前述した睡眠環境における「精神的な」負担を評価する方法論としても期待できる.しかしながら,我々が知る限り,これまで睡眠中にこれらストレス・バイオマーカーを検証した研究は例えばSpiegel ら(2004)11)などごく僅かである.またさらに,同研究を含め,検体として血液を用いている研究は,そもそも血液採取による精神的な負担が無視できないと想像される.そこで,我々は生体試料として唾液に着目し,唾液中に分泌される標記ストレス・バイオマーカーを経時的に定量する手法を提案する.また,本研究において注目する物質は,コルチゾール,免疫グロブリン A 型(secretory Immunoglobulin A: sIgA),α アミラーゼの3 種類である.コルチゾールは CAR について数多くの知見があるが,睡眠中の唾液による定量の報告は無い.一方,sIgA と α アミラーゼも急性ストレスのマーカーとしてよく研究されているものの 12-15),やはり睡眠中の濃度変化については知られていない.

以上をまとめると,睡眠の状態(あるいは睡眠の質)を客観的に評価することは現代社会において重要な課題である.しかしながら,従前の血液採取による手法では心身にかかる負荷が大きく,とりわけ精神的な影響を正確に測定できないと想定される.これに対し, 我々は非侵襲的な方法で睡眠中の唾液を断続的に採取する方法を提案する.本研究ではこの方法を用いて,睡眠中及び睡眠前後におけるストレス・バイオマーカーの変化を経時的に捉え,睡眠様態の新たな評価手法の提案とその応用可能性について検証した.

1.1 評価方法

1.1.1 被験者

男子大学生を対象とし,本研究に関する説明と被験者として協力することの要請を行った.承諾を得られた男子大学生 10 名(22.8±1.0 歳)を被験者とした.被験者は罹患しておらず,また薬物などの処方も受けていないことを確認した.実験に際しては,被験者よりインフォームド・コンセントを得た.

なお,本実験は事前に長岡技術科学大学倫理審査委員会の承認を受けて実施された.

1.1.2 実験手続き

図1に実験の概要を示す.本研究では,各被験者に対して6時間の就寝時間中および起床後1時間にわたる唾液を採取し,唾液中の生化学物質を分析した.以下にその詳細を述べる.

本研究では被験者に午前 0 時に就床させ,午前 6 時に起床させた.ただし,就寝時間・起床時刻を統制する意図により,被験者にはあらかじめ起床時刻(午前 6 時)は知らせなかった.実験当日,被験者には 22 時までに実験室に入室してもらい,実験の説明,インフォームド・コンセント,および測定機器の装着・動作確認を行った.実験は空調管理された実験室(平均室温 22°C, 平均湿度 55%)において 1 晩(22 時~翌朝 7 時まで) に 1 人ずつ実施した.

また,被験者が午前 6 時(起床予定時刻)よりも前に 自然に覚醒してしまう可能性を低減させる意図により, 全被験者に対してそれぞれの実験実施日の 3 日前から 午前 0 時前に就床し,6 時間以上の睡眠をとるよう指示した.さらに,唾液中の生化学物質の分泌への影響を考慮し,被験者には実験実施日の前日からアルコールの摂取を禁止し,実験開始 1 時間前(21 時)より終了後 (翌日午前 7 時)まで飲食,喫煙,激しい運動を禁止した.また,被験者の就寝中はビデオカメラにより監視を行った.

1.1.3 電気生理指標

生体アンプ(BIOPAC MP150,Biopac System Inc., 米国)により,就床直前から起床後 1 時間までの被験者の心電図(Electrocardiogram:ECG)を測定した. ECG の測定電極は,左鎖骨下窩(N),右鎖骨下窩(-),及び左前脇窩線上最下肋骨(+)の 3 点に配置し(第II誘導),サンプリングレートは 500Hz とした.さらに,連続血圧測定システム(Finometer,Finapres Medical Systems B.V., オランダ)により,起床時刻 1 時間前(午前 5 時)から起床時刻 1 時間後(午前 7 時)までの血圧を測定した.

1.1.4 唾液採取方法

本研究では,カスタムメイドされたマウスピースによる吸引部とペリスタルティックポンプ(Peristaltic pump)(SJ-1211H ペリスタポンプ® 高流量タイプ,ATTO)による輸液部からなる唾液採取系を構成し,睡眠時における継続的な唾液採取を実現させた.マウスピース(NIGHT GUARD ADVANCED COMFORT, Doctor’s Co. Ltd., 米国)は実験当日に被験者が入室してから成形し,装着感を確認した.成形したマウスピースにメラ唾液持続吸引チューブ(SP-2,泉工医科工業株式会社)を固定し,シリコンチューブを介してペリスタルティックポンプに接続した(図 2).メラ唾液持続吸引チューブの先端部分はコットンで保護して長時間の採取による口腔内の鬱血を予防した.

唾液採取は,就床 10 分前,睡眠中(就床後 4 時間は30 分間隔,その後,起床前 2 時間は 20 分間隔),起床直後,20 分後,40 分後,および 60 分後の計 19 回実施した.睡眠中の唾液は上述したペリスタルティックポンプによる方法で採取し,就床前・起床後の唾液は,ストローを使って 3 分間に自然に分泌される唾液を採取した(passive drooling)16).

採取した唾液サンプルは-25°Cの冷凍庫に保存し,コルチゾールと sIgA の定量分析には酵素免疫測定法 ( Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay : ELISA ) (cortisol: High Sensitivity Salivary Cortisol Enzyme Immunoassay Kit, Salimetrics LLC , sIgA : SIgA Immunoassay Kit, Salimetrcs LLC)を用い,α アミラーゼの測定には酵素反応測定(Salivary α-Amylase Assay Kit, Salimetrics LLC)を用いた.

1.2 評価結果

1.2.1 睡眠条件統制

全被験者における実験日前 3 日間の平均睡眠時間 は 7.0±1.1 時間であり,被験者は実験日前 3 日間に与えた指示を遵守していた.全ての被験者は就床後直ぐに就寝したこと(なかなか寝つけなかったという報告は無かった),および,実験中に覚醒しなかったことを内省報告したが,これは実験の記録ビデオにおいても追認された.さらに,実験者は起床予定 時刻(午前 6 時)に被験者が睡眠状態であったことを直接確認し,その後,被験者を起床させた.

1.2.2 電気生理指標

図 3 に ECG より求めた被験者の心拍数の平均値(標準誤差)(図 3(a))および血圧の平均値(標準誤差)(図 3(b))の推移を示す.同図に眺められるように,心拍数・血圧ともに就寝中は低い値で安定的に推移し,起床直後において急激に上昇した.このことからも,本実験において中途覚醒はなく,起床の指示により覚醒したことが示された.

1.2.3 唾液中の生化学物質濃度

図 4 に唾液により定量したコルチゾール,sIgA,αアミラーゼの濃度変化(平均値±標準誤差)を示す.また,就床前,就寝中,起床後のコルチゾール, sIgA,αアミラーゼそれぞれの平均値の濃度比較を 図 5 に示す.統計処理については一元配置分散分析および Bonferroni 法による多重比較を検討した.全 ての検定について有意水準は 5%とした.

1.2.3.1. 唾液コルチゾール濃度

図 4(a)に示されるように,コルチゾールは就床前から就寝中にかけてほぼ濃度変化は認められなかった.その後,起床直後から徐々に濃度が上昇し,起床 40 分後にピークに達した.また,就床前,就寝中,起床後を比較すると,コルチゾール濃度では就床前,就寝中から,起床後にかけて濃度が有意に上昇した(p<.001)(図 5(a)).

1.2.3.2. 唾液 sIgA 濃度

図 4(b)に示されるように,sIgA は就寝後徐々に濃度が増加していき,平均値で眺めた場合,6 時間の睡眠中に就寝前の約 5 倍にまで達した.その後,起床直後に急激に濃度が減少し,起床 1 時間後までに就床前とほぼ同程度まで回復した.また,就床前,就寝中,起床後を比較すると,就床前から就寝中にかけて濃度が有意に増加し(p<.001),その後,起床とともに上昇した濃度が有意に減少した(p<.05)(図 5(b)).

1.2.3.3 唾液αアミラーゼ濃度

図 4(c)に示されるように,αアミラーゼは就寝直後に減少し,睡眠中には徐々に濃度が上昇していった.起床後は sIgA と同様に起床後 20 分までに急激に濃度が減少し,その後は安定したレベルを示した.また,就床前,就寝中,起床後を比較しても,有意な変動は認められなかった(図 5(c)).

1.2.3.4. 生化学物質間の相関

sIgAとαアミラーゼは比較的似た傾向の濃度変化を示しており,2 つの物質間には有意な正の相関が認められた(r=0.55, p<.001).一方,コルチゾールは,sIgAあるいはαアミラーゼとの間に有意な相関関係は認められなかった(sIgA:r=-0.09, p>0.05, αアミラーゼ:r=1.93, p>.05).

1.3 考察

1.3.1 睡眠中の唾液採取について

本研究では内省報告および心拍数・血圧により全被験者が就床時刻帯(あるいは,少なくとも午前 1 時から午前 6 時)において睡眠状態にあったこと,また,起床時刻に実験者の指示により覚醒したことが確認できた.また,唾液の採取においては各生化学物質の定量分析に必要充分な量の唾液が採取できた.

したがって,我々が構築した唾液採取系により,被験者を中途覚醒させることなく,当初の期待通り唾液を継続的に採取することができた.

1.3.2 唾液中の生化学物質の変動特性

1.3.2.1 就寝中の生化学物質の変動特性

本研究では睡眠時に唾液中に分泌される 3 種類の物質(コルチゾール・sIgA・α アミラーゼ)の経時変化を検証した. 過去の研究において“日中”に採取された検体の定量分析により,各物質には朝に濃度が高く夜にかけて減少するという概日変動が報告されている 7, 8, 17, 18).しかしながら,本研究結果を眺めた場合,sIgA と αアミラーゼでは既に就寝中から濃度の増加が認められ, コルチゾールでは就寝中は一定のレベルを保ち,起床後に初めて増加することが詳細に示された.したがって,コルチゾール・sIgA・α アミラーゼは一様に朝高夕低の概日変化を示すものの,就寝中には異なる分泌特性をもつことが示され,これは本研究により得られた新しい知見である.

1.3.2.2 起床時コルチゾール反応(CAR)研究の課題 と本研究の方法論

諸言に述べたように,CAR は日常的なストレス状態を反映する評価指標として注目を集めている 7, 8).過去のCAR 研究によると,コルチゾールは起床後 30~60 分の 間にその濃度が 1 日のピークを迎えることが報告されている 7, 8).本研究においても,コルチゾール濃度は起床 40 分後にピークに達し,これは先行研究の結果を支持している.ただし,これまでの CAR に関する研究は,“起床直後”からのコルチゾールを定量したものであり,睡眠中から起床後にかけての経時的変化を報告した研究はほとんどない.さらに,CAR 研究はほぼ全てが唾液を用いた研究であるが,それらの研究は多くの場合,被験者自身に自宅で起床時の唾液を採取させている.そのため,起床時刻や“起床直後”という唾液の採取時間が正確に統制されているとは言い難く,翻って起床時のCAR が観察されていない場合も散見される.実際, Michaud ら(2006)の CAR 研究ではやはり自宅で行ったセッションにおいて起床時刻が統制できていないことが示されており,実験統制上の課題として挙げられている 19).

先行研究において,唯一睡眠中のコルチゾールの経時変化を報告しているのが,Spiegel ら(2004)の研究である 11).しかしながら,同研究では起床予定時刻の前からコルチゾールの増加が認められ,ひいては起床後のCAR も明確には認めることができない.これは,実験条件における睡眠時間(より正確には「ベットに居る」時間)の設定が 8-12 時間睡眠と非常に長いため,被験者が 途中覚醒していることに由来すると考えられる.

また,何よりも同研究では 24 時間の間に 10~30 分間隔で採血を繰り返し行っており,被験者の精神的・肉体的負担は甚大であると想定され,明確な CAR が観察されなくても不思議ではない.

これに対し,本研究で用いた唾液連続採取による評価方法は被験者への負担も非常に小さく,また被験者の途中覚醒も生じない.したがって,本研究で構成した唾液採取方法は睡眠時および起床時の生化学物質の変動特性を検証する上で有用な方法であると考えられる.

1.3.2.3 生化学物質間の変動特性の比較

図 5 による物質の変化傾向及び物質間の相関分析の結果,sIgA と α アミラーゼ間には弱いながらも正の相関が認められた.また,その濃度は睡眠中から徐々に増 し,起床直後にピークを迎えるという類似した変化傾向を示した.これに対し,コルチゾールでは起床後に濃度が上昇し始めるという全く異なる変化傾向を示した.これらの生化学物質間の変動特性の差異は,それぞれの物質の分泌機序に由来しているのかもしれない.生体にストレスが負荷されると視床下部―下垂体―副腎の内分泌系(HPA 系)と視床下部で分かれて橋―延髄―脊髄―副腎髄質の自律神経系(NA 系)の 2 つの系が腑活されることが知られている 5, 20).コルチゾールはHPA 系のストレス応答ホルモンであり,ノルアドレナリン系に関連した物質である α アミラーゼ,および免疫系物質である IgA は NA 系の物質であることが知られている5, 20).したがって,これら生化学物質の経時変化はそれぞれの物質の分泌機序(HPA 系と NA 系)を反映している可能性が考えられる.ただし,この点は他の HPA 系・NA 系の生化学物質の分泌の様態も明らかにしなければならず,本稿でこれ以上の議論をすることはできない.

1.3.2.4 本研究の制約

本研究で構成した唾液採取系は,睡眠中の唾液を継続的に採取することを可能にした上,仕組みが非常に簡便であり,操作方法も容易である.これまで睡眠中の内分泌系指標の評価には,採血が必須であったが,本研究の方法を用いれば,非侵襲的な方法で生化学物質の定量が可能になり,被験者の負担も軽減し得る.ただし,一般に睡眠時の唾液分泌量は覚醒時や,刺激を与えた場合と比べて減少することが知られており,少ない唾液量を出来るだけ安定して確保が行えるように今後工夫の余地もある. また,本研究の参加者は全員が男子大学生(21~24歳)であり,唾液分析に係るコストの制約から被験者の数も小規模である(10 名),したがって,本研究を解釈するうえで,被験者選択によるサンプリングバイアスには充分注意が必要である.

  1. 香りを用いた介入研究

香りの効能は,近年,心理学または生理学の分野で実証的に研究がなされ多くの知見がもたらされている. 例えば,ラベンダーは,リラックス状態の促進および副交感神経の亢進作用をもつことが知られている 21, 22).一方で,ジャスミンは抑うつ状態の改善や気分の向上を示す効果および交感神経の亢進作用をもつことが知られている 23).しかしながら,これまでの香りの生理・心理研究は,その殆どが脳・中枢神経系や自律神経に対する効果を評価したものである.これに対し,本研究で扱う内分泌系に対する生理効果を検証した研究報告は極めて少ない. 例えば,Fukuiら(2007)は,ジャコウ,またはローズの香りが急性ストレス刺激に対するコルチゾールの分泌を抑制することを報告している 24).しかしながら,香りに対する内分泌系の効果についての研究は未だ限定的であり統一的な理解はなされていない.

そこで,本研究では先行研究 25)で構築した実験系を踏襲し,ラベンダーが内分泌系に及ぼす効果を検討した.更にラベンダーと拮抗する作用を有すると想定されるジャスミンについても検証した.

2.1 評価方法

2.1.1 被験者

本研究の被験者は,実験参加への承諾が得られた男子大学生 18 名(平均年齢(標準偏差):22.0(1.2)歳, 平均 BMI(標準偏差):23.0(5.0))であった.被験者はいずれも健常者であり,薬物等の処方も受けていないことを確認した.ただし,この内 2 名は定量分析に必要な唾液量が採取できず分析から除外した. なお,本実験は事前に長岡技術科学大学倫理審査委員会の承認を受けて実施された.

2.1.2 実験手続き

本研究の概要を図 6 に示す.実験は空調管理された実験室(平均室温 24.6°C,平均湿度 51.9%)において 1 晩(23 時から翌朝 7 時まで)に 1 人ずつ実施した. 被験者の就寝時間は合計 6 時間であり,午前 0 時に就床させ,実験者が午前 6 時に被験者を起床させた.

また,被験者が午前 6 時(起床予定時刻)よりも前に自然に覚醒してしまう可能性を低減させる意図により, 全被験者に対して,実験初日の 5 日以上前から睡眠統制(1午前 0 時までに就床する,2毎日 6 時間以上の睡眠を確保する)を実施した.各被験者の睡眠統制の状況については就寝前・起床後にメールで報告させることで確認した.

さらに,唾液中の生化学物質の分泌への影響を考慮し,実験実施日の前日からアルコール摂取の禁止,実験開始 2 時間前(21 時)より終了(翌日午前 7 時)までの間の飲食・喫煙・激しい運動・入浴を禁止した.また,就寝中の被験者の様子をビデオカメラにより観察した.

2.1.3 香りの呈示条件

本研究では,香り条件としてラベンダー精油(フランス産,高砂香料工業株式会社),およびジャスミン精油(モロッコ産,高砂香料工業株式会社)を用いた.また,コントロール条件として無臭空気を用いた.精油は,それぞれ無臭溶媒のクエン酸トリエチル(Triethyl cit-rate: TEC) を用いて 10 wt%に希釈した.

香りおよび無臭空気の呈示は,マルチチャンネル・オルファクトメーター(株式会社テクニカ(東京都)設計・製作)により制御した.本研究では同装置により,被験者の鼻孔直下に設置したカニューレを用いて香りを呈示した.香りの呈示は,5 分毎に 1 回・1 分間とし,これを被験者の就寝時間(午前 0 時から 6 時)中,断続的に繰り返した(合計 72 回(同分)).実験初日は第 1 夜として解析から除外し,残りの 3 条件は順序効果に配慮した被験者内デザインにより比較した.また,各条件の実施日には,3 日以上のインターバル期間を設けた(各被験者は約 20 日間の期間に計 4 回実験を実施した).

2.1.4 電気生理指標

生体アンプ(PolymateII,ティアック株式会社)により,就床直前から起床後 1 時間までの被験者の心電図 (Electrocardiogram:ECG)を測定した. ECG の測定電極は,左鎖骨下窩(G),右鎖骨下窩(-),及び左前脇窩線上最下肋骨(+)の 3 点に配置し,サンプリングレートは 500Hz とした.

2.1.5 唾液の採取方法・分析

唾液採取は,就床 10 分前,就寝中(30 分毎・計 12回),起床後(0分,15分,30分,45分,および60 分後)の計 17 回実施した(図 1).睡眠時の継続的な唾液採取には,我々が過去の研究で独自に構築した唾液採取法を用いた 26).就床前・起床後の唾液は,ストローを使って 3 分間に自然に分泌される唾液を採取した(passive drooling 法)16).

採取した唾液は定量分析の日まで-25°Cの冷凍庫に保存した.唾液のコルチゾールの定量分析には,酵素免疫測定法(Enzyme-linked immuno-sorbent assay: ELISA ) ( High Sensitivity Salivary Cortisol Enzyme Immunoassay Kit, Salimetrics LLC., 米国)を用いた.

2.1.6 心理指標

被験者の睡眠前後の心理状態を評価するため,就床前と起床直後に日本語版 POMS 短縮版 26)に回答させた.この心理指標は, T-A: 緊 張-不 安( Tension- Anxiety),D:抑うつ-落込み(Depression-Dejection), A-H:怒り-敵意(Anger-Hostility),V:活気(Vigor), F:疲労(Fatigue),C:混乱(Confusion)の 6 つの気分尺度について,それぞれに対応する計 30 項目の質問からなる.

2.2 評価結果

2.2.1 電気生理指標

図 7 に ECG より求めた被験者の心拍数の平均値(標準誤差)の推移を示す.ただし,心拍数は個人差が大きいため,被験者・実験条件毎の心拍数の最小-最大値 を 0~1 に規格化している.また,平均値の算出区間については後述するコルチゾール定量のための唾液採取区間に準じている.同図に眺められるように,心拍数は就寝後徐々に減少していき,その後,起床直後に急激に上昇し,ピークに達した.この変動傾向は,いずれの香り条件においても同様であった.

一方,ジャスミン呈示時において,就寝後 1 時間半の心拍数(平均値)がコントロール条件よりも高い傾向が認められた(p< 0.10,Bonferroni 補正 t 検定).

2.2.2 唾液中のコルチゾール濃度

図 8 に唾液により定量したコルチゾールの濃度の平均値(標準誤差)を示す.ただし,同図はコルチゾール分泌における個人差を考慮し,被験者・実験条件毎のコルチゾール分泌の最小-最大値を 0~1 に規格化し ている.同図に示されるように,コルチゾールの分泌は就寝後徐々に濃度が増加していき,平均値で眺めた場合,6 時間の睡眠中に就寝前の 3~4 倍に達した.その後,起床直後より濃度が顕著に上昇し,起床 30~45 分後 にピークに達した.この変動傾向は,いずれの香り条件においても同様であった.

一方,各香り条件における起床直後(6:00)と起床後15 分(6:15)のコルチゾール濃度の平均値(標準偏差)を図9 に示す.同様に,同図でも被験者毎のコルチゾール分泌を規格化した値を用いている.同図に示されるように,起床後 15 分間のコルチゾール濃度の平均値にお い て ,ラ ベン ダ ー 呈 示 時 は ジ ャ ス ミ ン ( p<0.05,Bonferroni 補正 t 検定)およびコントロール(p<0.01, 同t 検定)より有意に濃度が高かった.

2.2.3 心理指標

表 1 に就床前と起床直後に回答させた日本語版POMS 短縮版の得点(標準偏差)から,各香り条件における睡眠前後の主観的な気分の変化を示す.同表に示すとおり,疲労感(要因「F(疲労)」)において,ラベンダー呈示時はジャスミンよりも有意に疲労感が回復し(p<0.05, Bonferroni 補正 t 検定),またコントロールに対してもその傾向が認められた(p<0.10, 同 t 検定).

2.3 考察

本研究は,香りが睡眠中の内分泌系に及ぼす効果を明らかにするために,就寝中の香り呈示に対する唾液中コルチゾールの分泌を評価した.その結果,図 8 に示すように,就寝中のラベンダー呈示により(香りを呈示していない)起床後のコルチゾール分泌の増大が認められた.

もともと,コルチゾールには起床後に 1 日のピークを迎える“起床時コルチゾール反応(cortisol awak-ening response: CAR)”と呼ばれる分泌特性がある 7, 8).しかしながら,本研究で観察されたラベンダー呈示による起床後のコルチゾール分泌の増加は,次に挙げる2つの理由から,この CAR とは別の生理機序を背景とする生理効果であると考えられる.

第一に,ラベンダーの呈示によるコルチゾールの分泌への影響が起床直後~15 分に限定されていた点が挙げられる.CARはコルチゾールの濃度が起床 30~45分後に 1 日のピークに達する顕著な分泌特性である 7, 8). 本研究においても図 8 のコントロール条件で起床後 45分をピークとする CAR が確認できる.ただ同時に同図に認められる様に,本研究では香り条件間でこの CARのピーク値には差異は認められなかった.その一方で, 通常 CAR がピークを迎えるよりも“前の”時間帯-起床直後~起床後 15 分-においてコルチゾールの分泌に有意な差異が認められた(図 9 および図 8:矢印).したがって,本研究で観察された起床後のラベンダーの分泌動態は,通常の CAR の他にラベンダー自体による(起床直後の)生理効果が重畳したものであったと考えられる.

第二に,通常 CAR の増大は心理状態の悪化を示唆するが,本研究ではラベンダーの呈示によりむしろポジティブな心理状態が導かれた点が挙げられる.生体にストレスが負荷されるとコルチゾールの分泌,あるいはその起床時反応である CAR も増大することが知られている9, 10).これに対し,本研究ではラベンダーの呈示によりコルチゾールの分泌が増大した一方で(図 9),同時に疲労感(要因「F(疲労)」)の改善傾向も認められた.したがって,本研究で観察されたコルチゾールの増加は,少なくとも心理的なストレスが媒介する生理的なストレス反応ではないと考えられる.

一方,このラベンダーによるコルチゾールの分泌変化は,自律神経系が直接的に関与する生理応答であるとは考えにくい.CAR と自律神経活動の関係性については交感神経 27)あるいはその反対に副交感神経 28)との関連が報告されているものの,研究数はごく僅かであり統一的な理解も得られていない.本研究でも,ジャスミン呈示時に就寝時の心拍数低下が抑制される傾向が認められた(図 7)ものの, CAR 自体はジャスミンとコントロール条件において差異は認められなかった.その反対に,就寝中の心拍数においてコントロール条件と差が無かったラベンダーにおいて起床時のコルチゾール分泌に有意な差が認められた.つまりラベンダーで観察された起床後 15 分間のコルチゾールの増大は自律神経系を介する生理応答とは考えにくい. このことについて,本稿の中でこれ以上の考察を進めることは難しい.今後, 中枢神経系を含む統合的研究が望まれる.

  1. まとめ

我々の研究により,就寝中のラベンダーの呈示により,“起床直後”から HPA 系が活性化される場合,それはむしろ起床時の生理的な覚醒を促し,心理的には疲労回復効果をもたらすのかもしれないことが示唆された.

香りには,個人の好み・感受性に依存しない一定の生理効果があることは明らかである.しかしながら,その効果がポジティブなものであるのか,ネガティブなものであるのかという議論は尚早である.これまでの研究では, 香りの定量的な呈示方法が確立しておらず,再現性に大きな問題がある.呈示方法のばらつきには,呈示手段 (例えば,試香紙,ディフューザー,精油を直接嗅ぐ)以外にも,濃度や呈示時間等多くの可変要素が含まれる.こうした背景から,ヒトの心身へもたらす影響については統一的な理解がなされていない.

さらに,評価軸の問題がある.我々は,既述したように,就寝中の体内のホルモンレベルが特定の香りによって大きく変動することを明らかにした。これらの成果は, 我々が開発した新しい方法論により明らかになったものである.この方法論を用いたことで,ホルモンを睡眠評価における新機軸として導入することが可能になり,これまで捉えることができなかった香りの影響を明らかにすることができた.したがって,今後も従来の指標に新たな指標を組み合わせた統合的な評価方法を用いることで,香りの効果をより正確に評価することが可能になる.

将来的に,香りを日常生活や医療現場の中で用いるためにも,「香り」が心身にもたらす影響については,現時点ではひとつひとつ基礎的な知見を積み上げていくことが重要である.

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レム睡眠とノンレム睡眠の両方を調節する神経を同定

以前ご紹介した筑波大学の柳沢教授はフォワードジェネティクス解析で特定遺伝子を発見する手法です。人為的な突然変異を起こした多くのマウスを作り、その中から目的とするマウスを見つけ出してその遺伝子の変異を確認するという手法です。
本日ご紹介の名古屋大学の山中教授はオプトジェネティクスで、機序を解析する手法です。特定の光に反応する部位を持つ遺伝子を組み込んだマウスを作り、特に脳内に光と反応する部位を作り出すことで、生きた状態でその機能を確認するという手法です。

名古屋大学 山中教授による「レム睡眠とノンレム睡眠の両方を調節する神経を同定」のプレスリリースがありましたのでご紹介させていただきます。
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20140515_riem.pdf

いびきや睡眠時無呼吸を調べていくと、レム睡眠時とノンレム睡眠時の状態での違いが示唆されていて、ノンレム睡眠時は、睡眠時無呼吸患者でも静かに寝ている状態がみられるようです。しかしながら、なぜそうなのかまだまだ分かっていないことが多く、多くの研究者が眠りの科学的な解明を目指しています。

2014/5/14

レム睡眠とノンレム睡眠の両方を調節する神経を同定

名古屋大学環境医学研究所 ストレス受容・応答研究部門 神経系分野IIの研究グループ(山中章弘教授、常松友美研究員等)は、メラニン凝集ホルモン(MCH)を作る神経細胞(MCH 神経)が睡眠・覚醒の制御に関わっていることを様々な遺伝子改変マウスを用いることで解明しました。これまで、MCH 神経は摂食行動やエネルギー代謝に重要であることが報告されてきましたが、正確な生理的役割については十分わかっていませんでした。 今回研究グループは、MCH 神経の活動を光で操作すること、また運命制御することに成功し、以下の知見を見出しました。(1)MCH 神経を活性化させると、レム睡眠が始まる、(2)MCH 神経だけを脱落させると、ノンレム睡眠時間が減少した。これらのことから、MCH神経が睡眠の制御に関わっており、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方の調節に重要な役割を担っていることを見出しました。今回の発見により、レム睡眠、ノンレム睡眠を調節する新たな神経回路が明らかになりました。未だに謎が多い睡眠覚醒を調節する神経回路とその動作の原理を理解することにつながり、今後睡眠薬の開発といった創薬に期待できると考えています。

なお、この研究成果は、5 月 14 日付(米国東部時間)で、米国神経科学学会誌「The Journal of Neuroscience(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)」に掲載されました。

レム睡眠とノンレム睡眠を調節する神経を同定

-睡眠覚醒を調節する新たな神経を発見-

【概要】

名古屋大学環境医学研究所神経系分野 II の研究グループ(山中章弘教授、常松友美研究員等)は、メラニン凝集ホルモン(MCH)を作る神経細胞(MCH 神経)が睡眠・覚醒の制御に関わっていることを様々な遺伝子改変マウスを用いることで解明しました。これまで、MCH 神経は摂食行動やエネルギー代謝に重要であることが報告されてきましたが、正確な生理的役割については十分分かっていませんでした。今回研究グループは、MCH 神経の活動を光で操作すること、また運命制御することに成功し、以下の知見を見出しました。(1)MCH 神経を活性化させると、レム睡眠が始まる、(2)MCH 神経だけを脱落させると、ノンレム睡眠時間が減少する。これらのことから、MCH神経が睡眠の制御に関わっており、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方の調節に重要な役割を担っていることを見出しました。

【ポイント】

○ 神経活動の光操作技術を使って、MCH 神経だけの活動を光を使って活性化、抑制できる遺伝子改変マウスを作成しました。

○ MCH 神経の活動を活性化することで、レム睡眠を増やすことに成功しました。

○ MCH神経だけを脱落させたマウスでは、ノンレム睡眠時間が減少することが分かりました。

【背景】

ヒトの場合、1 日 8 時間の睡眠をとるとすると、実に人生の約 1/3 を睡眠に費やすことになります。睡眠には、脳が休んでいるノンレム睡眠と、脳が活動しているレム睡眠があります。必ずノンレム睡眠が先行し、その後にレム睡眠が現れます。一晩のうちにこのサイクルを約 90 分の周期で数回繰り返し、朝を迎えます。このノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えの時に脳の中でどの神経が働いているのかよく分かっていませんでした。

今回の研究では、本能行動の制御に重要な脳の領域である視床下部に局在しているメラニン凝集ホルモン(MCH)を産生する神経に着目しました。MCH 神経はこれまで摂食行動やエネルギー代謝に関わっており、一方で睡眠にも関わっているという報告もあり、その生理的役割は研究者の中でも議論の的となっていました。そこで今回、MCH 神経だけの活動を急性的に光で操作する技術と、MCH 神経だけを慢性的に脱落させる技術を使って、MCH 神経の生理的役割を明らかにすることにしました。

【研究の内容】

本研究では、MCH 神経だけの活動を自在に制御したり、MCH 神経だけを脱落させたりするために、新たに 3 種類の遺伝子改変マウスの作出を行いました(図)。

  • 青色の光を照射することで神経活動を活性化できる光スイッチ分子、チャネルロドプシン 2(注 1)を MCH 神経だけに発現するマウスを作成しました。このマウスの脳内に青色光を照射し、MCH 神経の活動だけを活性化すると、レム睡眠の割合が約 3 倍に増えることが分かりました。また、ノンレム睡眠の時にMCH神経を活性化した場合に、速やかにノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わることを見出し、レム睡眠を誘導することに成功しました。このことから、MCH 神経の活性化がレム睡眠のスイッチとしての役割を持っている可能 性が考えられます。
  • 緑色の光を照射することで神経活動を抑制できる光スイッチ分子、アーキロドプシン T (注 2)を MCH 神経だけに遺伝子導入したマウスを作成しました。このマウスの脳内に緑色光を照射し、MCH 神経の活動を抑制しました。しかし、マウスの睡眠覚醒の状態に変化は見られませんでした。このことは、MCH 神経の活動はレム睡眠を誘導するために十分条件であって、必要条件ではないことを示しています。脳の中には MCH 神経以外にもレム睡眠制御を担っている神経が存在している可能性を示唆する結果です。
  • 次に、MCH 神経だけを特異的に脱落させてしまったら、マウスの睡眠がどう変化するのかを調べました。細胞死を誘導することのできるジフテリア毒素 A 断片を MCH 神経だけに発現させたマウスを作成しました。MCH 神経だけが脱落すると、1日の中での覚醒時間が増加し、ノンレム睡眠の時間が減少することが明らかとなりました。予想されたレム睡眠への影響は全く見られませんでした。このことから、MCH 神経は長期的にはノンレム睡眠の制御に関わっている可能性が考えられます。

以上のことから、MCH 神経は睡眠の制御に重要な神経であり、ノンレム睡眠とレム睡眠の制御に関わっていることを明らかにしました。

【成果の意義】

MCH 神経の生理的役割は十分わかっていませんでした。今回、MCH 神経だけの活動や運命を制御することで、MCH 神経がノンレム睡眠とレム睡眠の制御に関わっていることを示しました。 これらの結果からノンレム睡眠とレム睡眠を調節する神経回路とその動作原理を理解することにつながり、今後睡眠薬の開発など創薬に期待できる結果と考えています。

【用語説明】

注1、 青色光によって活性化される緑藻類クラミドモナス由来のタンパク質。陽イオンを通す膜タンパク質。光を照射することで神経細胞の活動を活性化することができる。

注2、 緑色光によって活性化される古細菌由来のタンパク質。水素イオンを細胞の中から外 に汲み出す膜タンパク質なので、光を照射することで神経細胞の活動を抑制すること ができる。

【論文名】

“Optogenetic manipulation of activity and temporally-controlled cell-specific ablation reveal a role for MCH neurons in sleep/wake regulation”

(MCH 神経活動の光操作と時期特異的な細胞死誘導の手法を用いた睡眠覚醒制御機構の解明)

Tomomi Tsunematsu, Takafumi Ueno, Sawako Tabuchi, Ayumu Inutsuka, Kenji F. Tanaka, Hidetoshi Hasuwa, Thomas S. Kilduff, Akira Terao, Akihiro Yamanaka

(常松友美、上野貴文、田淵紗和子、犬束歩、田中謙二、蓮輪英毅、Thomas S. Kilduff、寺尾晶、山中章弘)

掲載誌;The Journal of Neuroscience

研究内容を表した図

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